人工知能と特許調査(補遺)

あまり間を開けてないので申し訳ないんですが、またまた人工知能と知財業務(本日は特に弁理士業務)との関係についてです。最近、日本弁理士会の梶副会長(同じ委員会で何年もご一緒した方です)が、「AI(人工知能)が弁理士の仕事を奪う」という報道に対してどこかのオープンな場所で反論をされているようです。

個人的には日本弁理士会としてこういった情報を提供し、見解をオープンに示すことの意義は大きいと思いますので、大変歓迎しています。

で、前回の記事でも少し取り上げた、AIにより弁理士業務(ここでは明細書作成業務に絞って話をします)が代替されるかについて、前回もかなり詳細に記しましたが、その補遺として少し説明したいと考えます。

ご存じの方も多いと思いますが、弁理士が企業から出願代理を依頼される時、発明者様が作成した発明提案書をお送りいただき、この発明提案書の内容に基づいて(そして結構な割合で直接発明者様と打ち合わせをさせていただいて)明細書作成業務を行います。企業の立場からすると、明細書作成業務は、この発明提案書を作成するまでの業務と、この発明提案書に基づいて弁理士が作成した明細書原稿をチェックする業務とに分かれます。弁理士の立場からすると、大抵は発明提案書をいただいてから作業が開始します(とはいえ、全くのスクラッチで発明者様と打ち合わせをしてヒアリング結果に基づいて明細書作成業務を行うこともありますが、話がややこしくなるので、このルーチンは今回の検討からさくっと外します)。

つまり、企業の側からAIを使って明細書作成業務の省力化を図るインセンティブは、主に、発明者が発明提案書を作成することの省力化になろうかと考えます。で、発明提案書の作成業務は、前回書いたようにやってできないことはないレベルだろうと思います。企業は特定の技術分野にフォーカスした研究開発活動を行っており、ドキュメントのそれなりの蓄積があります。蓄積されたドキュメントを参考に、新規提案について対話型のチュートリアルというかツアーをすれば、発明提案書ができようかと思います。このようなシステムは、発明者に発明提案書作成業務に割く手間をかなり省力化できるメリットがあります。

一方、企業の側から発明提案書をベースとした明細書作成業務の省力化を図るインセンティブはあまり見つかりません。ただしこれは、従来通り特許事務所に出願代理を依頼することを前提とした場合です。この点をもう少し詳しく考えてみます。
発明提案書から明細書を仕上げる作業は、現状のAIではなかなかアプローチが見つからないというお話を前回しました。となると、仮に実現可能であったとしても、明細書作成業務を実行するAIシステムを構築する手間及び費用はかなりのものになろうと考えます。であるならば、明細書作成業務はブラックボックスとして置いておき、従前通り出願代理は特許事務所に依頼するという判断はそれなりの合理性があるのではないかと考えます。
一方、仮に実現可能であるならば、弁理士側がAIを用いた明細書作成システムを研究するということはあり得ることですが、一方でこれは自分の首を絞めかねない(明細書作成業務に従事する弁理士の人数を含めた工数減をもたらす)ですから、悩ましい問題ではあります。とは言え、完全な明細書作成とまではいかずとも、AIにより弁理士の明細書作成業務をサポートするシステムの実現の可能性はあると思います。どこが、ってのは各弁理士が切磋琢磨すればいいと思うのでここでは特段指摘せずにおきます(自分なりの考えはあるんですよ)。
で、地味に悩ましいのが、こういった省力化を図ったことが企業の耳に入った時、省力化の分の値下げを要求されないかということです。しかし、省力化の分は特許事務所の絶え間ない努力によるものですから、その分を価格に転嫁して値引きをするのはよろしい考え方とは言えないように思います。例えてみれば、消費者が「この商品は中国製なんだからもっと値引きしてよ」という話に近いです。特許事務所側の価格競争はあり得る話(とはいえ悩ましい話)ですが、それはあくまで自発的なものであって、依頼先から言われることでもなかろうかと思うのです。
どこまで実現の可能性があるかにもよるんですが、特許事務所としてはAIを使ってどんどん省力化して短時間勤務を実現し、豊かな生活を図るのがよろしいんではなかろうかとbleah
なお、膨大な件数の特許出願をしている大企業であるならば、AIを用いた明細書作成システムを研究して実現できれば、相当のコストダウンになろうかと思います。ただ、この大企業をクライアントとする弁理士が一気に仕事を失ってしまうというのも悩ましいところです。

人工知能と特許調査(続き?)

先週、特許・情報フェアに行って参りました。私自身は特許事務所内でひたすら明細書作成、中間処理作成業務をしていますから、特許・情報フェアに行くことは自分の業務に直接結びつくわけではないのですが、このところBLOGでしつこく取り上げている知財業務とAI(人工知能)との関わり方について現状を把握するために参加して参りました。実際、特許調査業務についてはいくつもの企業がAIを用いた商品を提案しており、その意味で非常に参考になりました。そこで、今回の知見を基に、先日書いた内容を振り返りながら、現時点で私が考える知財業務とAIとの関わり方について再度まとめてみました。

今回、特許・情報フェアで「人工知能」として展示されていたものは、いわゆる機械学習によるものとテキストマイニング(特に係り受け解析というか形態素解析)とがありました。テキストマイニングによるものを人工知能と呼んでいいものかどうか微妙なところなのですが、人間の作業労力軽減という観点からは同列に論じうるものですから、ひとくくりに「人工知能」と呼ぶことにします。

まず、特許調査業務についてです。見た目は概念検索的な特許調査DB、つまり、適当にキーワードを投げると最も関連すると思われる特許文献を検索してくるDBは幾つか展示されていました。入出力だけ考えると従前の概念検索とあまり変わらないように見えるわけですが、通常の特許調査DBエンジンに対してどのようなキーワードを投げるか、そして、抽出された大量の特許文献の中から関連性の高いものを抽出するか、この2点において人工知能を利用するものが展示されていました。
前者の場合、適切なキーワードを抽出するに当たっては、それまでのサーチャーのノウハウを機械学習等によりシステム化できるといいわけですが、私が見た例では、元々人手をかけてインデックスやDBを構築している既存企業が、人工知能によりある意味あいまい検索的にこれらインデックスやDBを用いて母集団を作成し、これを繰り返すことで抽出文献を収束させる取り組みをしていました。このやり方は、ある意味、インデックスやDBによる教師学習とでも言うべきもので、丁寧に作り込まれたインデックス等があったからこそできるビジネスであり、当該企業ならではのアプローチであると感心しました。新規企業ではこういったアプローチはできません。そして、教師モデルがしっかりしているからこそ納得できる出力が得られるわけです。
後者の場合、文書の近接度という観点からのアプローチになりますから、大量の文書を処理しうる人工知能であれば一定の結論を得ることができます。問題は、特許文献の近接度は技術的近接度であり、技術的近接度を単語なり係り受けからどの程度正確に見積もることができるかが勝負になります。この点、教師学習として特許調査子会社のサーチャーの方々のノウハウを積極的に導入されている企業もあり、既に大手企業が幾つも採用しているようです。ただ、このシステム、どのように導入されているのかを担当者にお伺いしたところ、企業が有する特許検索システムとの一体化はせずに、検索結果に対して後処理的に行うスタンドアロンのアプリケーションとして現状は提供しているようです。この場合、抽出結果をどのようにアプリケーションにフィードバックするんだろうと少し疑問に思ってしまいました。
後者のシステムは、ある意味で汎用的な文書処理人工知能エンジンの適用が可能なところです。実際、ある企業ではやや汎用的な人工知能エンジンを特許調査にどのように適用できるかについてのアドバルーン的な展示をしていました。また、上に書いたように、人工知能ではなくてテキストマイニングの専門企業が、係り受け解析において術語の切り分けを正確に行い(よくある特許明細書において長たらしい術語が出てきますが、これを途中で切断することなくきれいに切り分けている)、また、述語としての動詞の係り受け解析をきちんとしている例を紹介していました。係り受け解析において動詞の係り受け解析ができると、例えば、発明の目的のように「~することができる」という文章を綺麗に抽出することができますから、明細書中から課題を自動抽出できます。これは、私にとっては結構な驚きでした。こういった、やや汎用的な人工知能エンジンを利用したものについては、今後の展開が楽しみです。

このように、特許調査業務においては、人工知能を使ったシステムが着実に進化していることが理解できました。やはり、人工知能エンジンを専門的にかつ自前で揃えることができる企業がこれからどんどん強みを発揮するんだろうと思います。つまり、今の時点で本気で人工知能エンジンの開発、チューニングを行った企業のみが生き残れると思うのです。

次に、明細書作成業務ですが、これについては人工知能を使った展示がありませんでした(私が見る限りなかった)ので、最近考えていることについて補充します。

企業内のエンジニアが自分のアイデアを提案書にまとめる作業については、やや定型的なところがありますので、この作業について人工知能を用いてよりまとまった提案書を作成することは可能だと思っています。今現在でも、穴埋め形式で適宜文章を当て嵌めると提案書が完成するシステムはあります。とは言え、企業内で検討し、さらに特許事務所に出願代理を依頼するレベルまでブラッシュアップされた提案書を作成できるかどうかについては、発明者側のスキル(慣れだとか文章力だとか)に依存するところがまだまだあります。発明者の記載内容に対して不足部分を指摘するのは、例えば類似技術の自社公報を参照するとできない相談ではなさそうです。また、提案書作成システムであるならば、その後に知財部のチェックが入ることを前提に、提案されたアイデアの新規性/進歩性判断は知財部員に任せてしまえそうです。
では、この、人工知能を用いた提案書作成システムにより作成された提案書は、そのままでもう明細書に近い出来になるのでしょうか。言い換えれば、提案書作成システムがあれば特許事務所の弁理士はやることがどんどんなくなるのでしょうか。この辺りになると、かなり我田引水的な議論になりがちなのですが(苦笑)、まだまだだろうと私は思っています。
自分がクライアントから提案書を渡された時に、何を考えているかというと、まず、提案書に記載された発明を把握し、ついで、この発明を記述するために明細書及び図面に何を記載するかを考えます。つまり、発明の開示という観点から開示内容及び範囲が決まりますから、過去の類似技術の公報に記載された内容はあくまで参考に過ぎないということです。また、クライアント毎にこの開示内容及び範囲が異なり得ますから、そういった観点からの検討も必要です。一方で、提案書に開示された発明の拡張等を行い、どの範囲の権利が取得可能かも検討します。これも、過去のノウハウからだけでは導き出せないところがあります。
こうやって考えると、提案書から明細書を人工知能により作成するためには、少なくとも上に書いた作業の自動化が必要です。これは書くべき/書かないでおくべき、この発明に類似する技術への適用が可能/困難、こういった作業をどのようにして人工知能エンジンに行わせるか、現時点でなかなかアプローチが見つかりません。請求項の展開(上位概念/中位概念/下位概念)も同様です。
つまりは、こういった作業が弁理士としての専門的作業であり、まだまだ人工知能では達成し得ない作業なのではないかと考えるのです。

とはいえ、汎用的な人工知能エンジンの研究が進んでいますので、人工知能が行いうることもどんどん増えてくるでしょう。何ができる/できないかについては継続的に考えていきたいと思っています。

企業知財部と特許事務所との間(謎)

毎度の内容の愚痴ですが、お付き合いいただけますようm(__)m

知財業界に30年ほど在籍し、そのうちのだいたい半分(16年)を企業知財部で、残りの半分(14年)を特許事務所で過ごしています。ですから、企業知財部に在籍している頃は特許事務所の内情をある程度把握し、また、企業知財部退職後に特許事務所に在籍していて(今の状態)、企業知財部の内情を何となく推測することができます。

特に、企業知財部時代は知財管理部門に長年在籍していて、各年度の知財計画の立案作業を間近で見て、また、対特許事務所の窓口担当者も近くにいてその方針決めもずっと見てきましたから、今現在特許事務所にいて企業知財部の担当者から様々な要望をいただくと、その背景事情をうっすらとですが理解できるように思っています。

例えば、企業が毎年の特許出願件数を増加させ、あるいは減少させたとしても、それはその企業にやんごとなき事情があってしているはずなので、「企業の技術開発力は特許出願件数にリンクするのだから、日本企業は特許出願件数を低調なままでしてはいけない」などという一般論を述べても、それはそれで理解しているところはあるけど、今年はこの件数で計画しますと企業は考えているわけで、双方の主張はすれ違い気味になると思います。

出願手数料にしても、企業が提案する出願手数料の決定権限が必ずしも企業知財部にあるとも限らず、また、仮に企業知財部に権限があったところで、企業管理部門が間接的な関与をしているかもしれません。有り体に言えば、コスト削減要求は全社的な課題かもしれず、知財部としてこれに貢献すると考えたならば、もしかしたら止む無く出願手数料の引き下げを特許事務所に提案しているのかもしれません(この辺は各社の事情が全然違うと思うので、一般論であり推測であり、ですが)。

一方で、企業知財部から出願手数料の引き下げの提案があった時、特許事務所として譲れない一線がどこにあるのかを合理的に算出できている特許事務所がどれくらいあるのか、です。つまり、特許事務所自体のコスト構造を的確に把握し、適正な利潤を確保する前提で出願手数料を考えた場合、企業知財部からの出願手数料引き下げの提案に対してそれを承諾できるのか、逆に特許事務所側から再提案できるのか、これを合理的基準に基づいてできるのか、です。

日頃私が考えている、企業知財部と特許事務所との間には密接なコミュニケーションが必要であるとの信念は、相手方の事情の理解を前提とします。当然、全ての事情を理解できるとは限りませんから、やはりそこで様々な意見交換が必要であると思います。特許事務所からすれば、特許事務所の生殺与奪権は企業知財部側にあるように考えがちですが、そこに交渉の余地がどの程度あるのかを見極めた上での取引なのではないかな、と思います。

そのためには、癒着を推奨する気持ちは全くないのですが、相手側のキーパーソンと緊密な関係を保ち、ある程度相手側の内情を窺う手立てがあるといいと思うのです。やはり相互信頼あってこその仕事ですから、そのためには相手方の発言なり態度の背後にある事情を把握することが、仕事を円滑に進める鍵になるように思っています。

上の話は主に特許事務所側の立場から述べていますが、企業知財部の担当者についても同じことが言えると思っています。運命共同体的な関係になれとまでは言いませんが、互いの主張を相手側に理解してもらうためには、通り一遍の関係ではなく、一歩踏み込んだ関係が必要なのではないかと思うのです。

弁理士数と出願件数(2016年)

色々と公私ともに多忙であるため、2016年の特許等の出願件数の統計が出ているにもかかわらず更新を怠っていましたcoldsweats02 大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m

とはいいつつ、傾向は全く変わりませんので、単にデータ更新だけって感じになっております。

20161

20162

いつものようにファイルも公開します。

「2016.xlsx」をダウンロード

人工知能と特許調査(?)

このところ夜がめっぽう弱くなってしまい、色々と書きたいネタもあるんですが、いざ夜中に書こうとすると体力ゲージが見事に0になってしまい、毎日悔やみながら過ごしておりますweep(ちと大げさ)。

さて、本日は、最近話題の人工知能と特許調査についてのお話で。と言っても、結論は「なかなか難しいよね」というところで終わります。

最近流れてきた情報で、あるセミナーにおいて機械学習に必要な教師データの取得に関連して、

しかし、深層学習をビジネスで活用する場合には、教師データの収集は容易ではない。同氏は、こうした例として、特許事務所におけるサーチャー(特許検索者)のケースを紹介した。目的の特許案件にたどり着くための効率的な検索条件を深層学習で見いだす取り組みだ。

という紹介がなされたという記事を見ました。

特許調査自体のやり方は各種書籍になってますし、例えば工業所有権情報・研修館のホームページに各種研修資料が公開されてますから、上の記事で言っている教師データってのは一般的なやり方というよりも、特定の個人の検索スキルを提供してくれるサーチャーさんはなかなかいないよね、という話だと思っています。

で、特定条件における機械学習と特許調査の関係についてはこんな論文もあったりするんですが、汎用的な観点からざっくり考えてみようと思います。

以前もこのブログでご紹介したように、先行技術調査の流れは、調査対象の技術的理解→調査概念作成→検索式作成→検索→抽出公報検討→最終結論だと言われています(私もそうだと思っています)。

この中で、さっきの記事に書いたように、調査概念作成はAIが結構苦手とする分野だと思うので、機械学習でやるならば、発明者などが自然文で作成した検索条件(式でなくてもいいわけです)から検索式を作るやり方だと思います。つまり、世に言う概念検索を機械学習でできないか、ってことです。しかし、調査概念作成は苦手だって先ほどさらっと言ったように、自然文からその概念なり意味を解釈するという作業は、汎用的な機械学習手法があまり得られていない現時点の段階ではかなり難しい作業だと思っています。

むしろ自然文の意味解釈を行い、シソーラスによりテクニカルタームをある程度収束させあるいは拡張させ、これらテクニカルタームの係り受け関係を整理して、キーワード検索を行い、さらには、特許分類とテクニカルタームとの間の関係を整理し、テクニカルタームから逆引きのようにして特許分類を特定する作業を行い、これらから検索式を自動作成する作業のほうがまだ見通しが立つのではないかと思います。

なお、特許分類には適宜テクニカルタームがちりばめられているわけですが、特許分類は技術分野毎に分類手法がかなり異なる(例えば化学分野であれば物質名が主になりますが機械分野であればその機構の動作、作用が主になる)ため、まともにテクニカルタームから逆引きしても適切な特許分類に辿り着きません。特許分類自体は階層構造を持っていますから、この階層構造を維持しつつ特定の特許分類に適切なテクニカルターム(の組み合わせ)を割り当てる必要があります。とは言え、この作業そのものが膨大な作業になりますが。

整理すると、現時点で概念検索自体がまだまだ未成熟なものである以上、これを機械学習により行うことは相当な困難を伴うと思います。つまり、特定の技術分野において(しかもかなり狭い)数多くの機械学習を行い、検索式との関係を覚え込ませれば、上に書いた論文のように何かしらの結論が得られる可能性はありますが、汎用性の高い検索式作成作業を機械学習により行うのは、そもそも現状の機械学習がさほど汎用性が高いとは言えない(汎用性を高くするためには膨大なネットワークによる計算が必要であるし、機械学習の量も半端なくなる)以上、難しいと言えます。

次に、抽出公報の検討を機械学習で行えるかどうかについて考えてみます。ここで一番の問題となるのが、調査概念と抽出公報との技術的類似性についてです。調査概念というか技術的概念をかなり狭い範囲に絞り込み、抽出公報との技術的類似性について機械学習を行えばかなりいい結果が出ると思うのですが、やはりここでも汎用性の壁が立ちはだかります。つまり、調査概念毎に正解は全く違う(当たり前です)以上、調査概念毎に機械学習を行わないといい結果が出ませんから、やはり機械学習の量が半端ないことになります。

むしろ、技術的類似性はテクニカルタームの類似度であると割り切って(この割り切り自体は合理的だと思います)、テキストマイニング技術を用いて、上に書いた自然文に含まれるテクニカルタームと抽出公報内のテクニカルタームとの類似度を算出して抽出公報の検討を行うやり方のほうが見通しが立つと思います。この際、意味解釈的な考え方を導入するとよりよいと思いますが、とはいえ、意味解釈的な考え方についてもまだまだ試行錯誤しながらの状態だと思っています。

あとは、この間謎のメモ書きを残したブログ記事に書いた、進歩性の観点からどこまで迫れるかというアプローチもあると思います。

こうやって考えてみると、技術分野を相当絞ると機械学習による特許調査ができそうにも思いますが、汎用性を持たせようとするとやはり超えなければならない壁は大きいようです。

進歩性自動判定モデル(覚え書き)

<進歩性自動判定モデル>
1.引用発明の検索
・本願が公開公報に掲載されている場合は、その公開公報に記載された特許分類(好ましくはやや広め)に分類されている公報を第一の集合とする
・第一の集合に含まれる公報についてテキストマイニングを行い、本願明細書及び請求の範囲と最も近いと思われる(シソーラスレベルで単語一致度が最も高い)複数の公報(例えば100件程度)を第二の集合とする
・ここで、シソーラスは、第一の集合における公報レベルで検討する、やり方としては、一般文献(例えば新聞)における出現頻度数百位レベルの単語は一般用語として排除し、その上で、第一の集合における単語の出現頻度数百位レベルの単語をテクニカルタームとし、このテクニカルタームの係り受け関係から(この場合一般用語との係り受け関係が好ましい)シソーラスを形成する
2.進歩性判定
・第二の集合に含まれる公報の技術分野と本願明細書の技術分野との比較を行う、通常、技術分野のdeviationは大きくないと考えるので、シソーラス展開をしないで十分
・技術分野が共通すると考えられる公報について、課題の同一性の判断を行う、課題の同一性は、発明の目的が記載されていると考えられる段落について、シソーラスレベルで単語一致度が閾値以上であるか否かで判断する
・明細書レベルでの単語一致度が非常に高いと考えられる公報は新規性否定の根拠となりうる
・明細書レベルでの単語一致度がそれほどでもない場合、技術分野及び課題が同一であると考えられる公報は進歩性否定の根拠となりうる
・この際、単語一致度がさらに低い場合は、技術分野及び課題が同一である複数の公報により進歩性否定の根拠となりうる
・現時点では、進歩性肯定の根拠となりうる要因(特有の効果、阻害要因等)については自動化の対象となり得ていない

日本のモノ作り

BLOG更新が滞っていてすいません(別に謝ることでもないかもしれませんが)m(_ _)m。このBLOGも更新を全くしないこともあり、最近は色んな方の注目もあまり受けなくなったと勝手に考えていますのでcoldsweats01、気楽に書くことにします。とにかく、まだまだ公私ともに慌ただしい日々を過ごしているので、元気ではあります。

本日のネタは、これも全く結論がない与太話を。

日本のモノ作りが日本自身も賞賛するようになってきて、それはそれで評価が高くなることでしょうからあれこれ言うこともないと思いつつ、さて、そのモノ作りの優秀性はどこまで続くか(時間的観点で)について考えると、どうも気になってきます。

例えば機械加工について考えると、旋盤工の人が旋盤でミクロン単位の加工ができますということは、仮にマシニングセンタのメーカーがミクロン単位の加工を自動化する機械を作ってしまうとその優位性が揺らいでしまう可能性があります。当然、マシニングセンタにどの程度の精度を求めるかというのは、マシニングセンタの値段やらメンテナンスやらを考えると、高精度であることが正義とばかり言えないでしょうから、何とも言えないわけですが。旋盤工の人が人出でミクロン単位の精度を実現しているのは、機械化のメリットがあまりない分野での話だとも言えます。

自宅の近所に、へら絞り加工で日本全国レベルの知名度を持つ工場があります。大型金属部品のへら絞り加工は、現時点では人手に頼ることが多いわけですが、一方で、この工場の経営者さんは、中国の存在等を理由に、比較的小さい部品のへら絞り加工については機械化を図っていますということを仰っていました。つまり、先端を行く人であるからこそ人手に頼る部分と機械化が必要な部分との棲み分けを考えているわけです。

こう考えていくと、マスコミや政府、地方自治体の一部が日本のモノ作りの能力を時に手放しに礼賛していることに大きな違和感を感じます。例えば、あるバージョンのiPodの裏面の鏡面加工が新潟の工場で行われたことは大々的に報じられていましたが、その後、鏡面加工は海外の工場で行われるようになったとの情報もあります。

日本のモノ作りの最たるものとして考えられている自動車産業にしても、日本はすり合わせを活かして自動車を製造していますが、一方で、ドイツのフォルクスワーゲンは、徹底的な部品化、モジュール化を進めることで、全世界どこでも同じ品質の自動車を誰でも製造することができる仕組みを作っています。日系の自動車企業もモジュール化を漸次進めているのですが(例えばトヨタのTNGA)、フォルクスワーゲンには一日の長があるように思っています。

マイスターの技量は機械化によって脅かされる事実があります。日本のモノ作りはどこに向かうべきか、冷静に考える必要があります。

ベンチャー企業と普通の企業と特許事務所(意味不明)

もう夜中なので殴り書き程度にcoldsweats01

企業に勤務して、一応中間管理職に就いた私は、自分の後継者を育てるのも管理職の職務であること、また、仕事の内容を自分だけがわかる状況にしないこと(突然入院とかしても誰かが代わってくれること)を教えられました。結果的に自分のポストは組織改編でなくなってしまったので後継者を育てるまでには至らなかったのですが、私の仕事の内容を自分の部署の同僚がトレースできる状態にしておくというのは、当たり前ですが今でもコツコツと継続して実施しています。

とは言え、この作業は意外と手間のかかるものでして、ヒューマンリソースも時間もそれなりに必要とします。

今、とあるベンチャー企業と知財関係での付き合いがありまして、このベンチャー企業での業務の進め方を見ていると、こういった業務の継続性であるとか後進への財産の相続性であるとかをある程度犠牲にして、スピード重視で業務を進めているという印象を受けています。逆に言えば、専門知識や人材を外部から調達することで、社内に一定の財産を蓄積する時間を省いているように見えます。あるいは適切にアウトソーシングすることで、社内に部署や業務を作らない工夫をしているように見えます。

この考え方は合理的なものであると思いますが、企業の継続性という観点からはどこかで考え方を変えざるを得ない時期がいつか来るとも思います。当然、その時期になるともうベンチャー企業とは呼べないわけですが。

さて、こう考えると、特許事務所はベンチャー企業でも普通の企業でもないと思っています。それは、業務が非常に属人的であり、また、弁理士業界の人材流動性は非常に高いので、専門知識を有するヒューマンリソースを外部から調達することが比較的容易ですから、特許事務所内において人材育成に割く時間を確保せずとも業務を遂行することができるからです。一方、案件単位の継続時間は長い(特許だと数年単位)ですから、業務の継続性は地味に必要なのですが、先程言ったように、弁理士業界の人材流動性は非常に高いので、業務の継続性を確保するためにはそれなりの努力が必要です。

業務が非常に属人的であることと業務の継続性を確保することとは、弁理士が長期間に亘って勤務するならば両立は簡単ですが、人材流動性が高いことでこの前提が崩れてきます。かつては、業務の継続性を担保するために大量の紙ドキュメントを包袋内に保管していたわけですが、ペーパーレス時代においてそのようなやり方はあまり好ましくありません。必要なデータなりドキュメントを比較的長期間(とはいえせいぜい10年程度)保管し、所内の誰もがアクセスできる環境を整えるという観点を持っている事務所はかなり少数派であるように思います。

もう一つの後進を育てるという観点は、特許事務所だとなかなか持てないように思います。それは、先程言った、業務が非常に属人的であることと、事務所内での人事異動がそれほどない(そもそもポスト自体が少ない)ので、後進を育てる必要がどの程度あるかということが理由のように思います。当然、所内の担当者の業務能力の育成、向上はどの事務所でも行っていることだと思いますが、自分が担当しているクライアントの案件をいずれ誰かに引き継ぐという発想はなかなか持てないように思います。

しかしながら、これこそが業務の継続性だと思うわけで、この発想を特許事務所にどうやって取り入れるかってのは非常に難しい問いだと思っています。

とりとめのない話で失礼wink

IoTと特許(覚え書き)

半年ほどBLOGの更新を怠っていて申し訳ございませんでした(って誰に謝ってるのか、なんですが)o(_ _)oペコッ。息子の中学受験やら何やらで平日も土日も多忙を極めており、なかなかBLOG記事を書く余裕がなかったのです。ようやく息子も中学生活を始めて、平穏な生活が戻ってきましたので、またぼちぼち更新することにしますwink

本日は、ネタとしては大きいのですが、まだ本格的な検討を始めていないので、覚え書き的な記事に止まってしまうのがこれまた申し訳ない話です(謝ってばっかりですね)coldsweats01

このところ、特許庁はIoT(Internet of Things)関連の特許審査に関する資料を充実させています。IoT関連の特許・実用新案審査基準に関するパワーポイント資料も紹介していますし、特許・実用新案審査基準や特許・実用新案審査ガイドブックにもIoT関連、さらには3DプリンタやAI(Artifical Intelligence)に関する実例等も追加しています。

IoTに関しては、ビッグデータの取扱等を含めた検討を、産業構造審議会の新産業構造部会で継続的に審議しているところですが、近いうちにこれらの資料をまとめ読みして何かセミナー風にまとめられたらなぁ、などと思っています。とは言え、議論すべき内容は多岐に亘るので、セミナーだと2時間コースですかねぇ。

特許庁は昨年のうちにIoT関連の特許・実用新案審査基準、ガイドブックの事例追加等を行い、資料も公表しています。今年になってIoT関連の事例を追加したり、3DプリンタやAIに関する事例を追加しています。昨年の時点での資料はだいたいフォローしていまして、その資料を見た限りの感想としては、特許庁としてはIoT関連技術をデータの流れを中心に見ているようです。

ここで賢明な読者であればお気づきだと思うのですが、データ処理に注目するのは今に始まったことではありませんし、特に、システムに特徴がなくデータ処理の具体的手法に特徴があるものとしては、かれこれ20年近く前に大ブームになったビジネスモデル関連発明がそれに該当するわけです。

ビジネスモデル関連発明ブームの時は、私も企業内で専門部署の立ち上げ時からその部署で担当していましたから、色々と悪夢が蘇ってくるのですが、面白いことに、特許庁は毎年ビジネスモデル関連発明に関する審査動向を報告しており、つい最近もこの内容を更新した際にIoTシステムとの関連性について言及しています。

IoTとビジネスモデル関連発明との親和性、類似性については書き始めると結構長くなるので、そのうちまとめることがあるかもしれませんが、ビジネスモデル関連発明との対比でIoTシステムを捉えた場合、特徴的なところが2点あると思っています。

一つは、IoTを狭義に定義した場合、多数のセンサから取得したデータに関する処理を特徴とすると思うのですが、ビジネスモデル関連発明の場合、サーバ=クライアントモデルを基礎とすることが多いですから、端末側にもある程度の自律性が想定されます。一方、IoTシステムではセンサー側に特段の自律性を求めることはなく、システムとして特徴的な点はサーバ側、今風に言えばビッグデータの処理手順に存在することが多くなろうと思います。ですから、特許請求の範囲においてもサーバ側のそれを重視して立案するのが良かろうと思うのです。

二つ目は、一つ目に書いたことに関連して、システムに関する請求項に加えて、いわゆるサブコンビネーションの関係にある請求項を記載する際に、サーバ側のそれは上述したように特段の問題は生じませんが、センサ側のそれはいわゆる技術的特徴事項(STF)に欠ける内容になる可能性が出てきます。この点に関して、昨年に特許・実用新案審査基準を改定した際に、サブコンビネーションの関係にある請求項にSTFがない場合の取扱について追記しています。

以上の二点についてはまだまだ派生的な議論ができるのですが(例えばサーバに関する請求項を立案しても、サーバが海外にあった場合にどうすればいいのか、など)、まずは本日はこの辺でお話を終わらさせていただければ、とconfident

スタートアップ企業などでの法務担当者の苦悩(大げさ)

特定の会社を念頭に置いた話ではないんですが、ふと思いついたことを。

スタートアップ企業で特にBtoCを主要サービスとしている企業において、自社が提供しているサービスが消費者を含めた社会に与える影響をunderestimateしてしまうことがあると思っています。特に、革新的なサービスであればあるほど、既存の商慣習、法規制、さらには既成概念との間に対立を生じることがあります。

時に、自社サービスの優位性を信じて止まない経営陣は、こういった対立を「打破」する方向に考えを進めがちなのですが、少なくとも法規制を短時間で「打破」することは難しく、スタートアップ企業等の法務(含む知財)担当者は、規制当局と経営陣との間で板挟みになることは少なくないと思っています。

明らかな法律違反である場合は現状何もできないわけですが、規制当局との間の解釈の相違だったり、現状の法律では明確な規定はないものの規制当局は全般的にネガティブな印象を持っていそうな場合は、法務担当者としてはやはりネガティブな情報を経営陣に提供することが職務であると思います。

こういったネガティブな情報を経営陣に提供するとき、明確な規制がない場合には、法務担当者は「リスクがあります」という言い方をすると思います。経営陣からすると、「リスクがあります」という報告は単なる可能性に言及しているに止まり、では、実際のところリスクは何%なんだ、大丈夫なのかそうではないのか、という疑問を持つでしょうし、そういった発言を受けた法務担当者の方は数多くおられると思います。

一方、法務担当者からすれば、リスクがあることを指摘するだけでなく、リスクの生起の可能性(しかも%まで)まで発言することはかなり難しいだろうと思います。もし自分の発言通りの可能性には結果的にならなかったときにどうやって責任を取るかと言われたら、法務担当者は萎縮してしまうでしょう。

一方、経営陣からすると、法務担当者の物言いは実に曖昧で責任逃れなものに見えるのだと思うのです。リスクがあるのはわかったから、どの程度の可能性があるかを明確にして欲しいし、その可能性を承知の上で最終的な決断をするのは経営陣なので、その根拠を教えて欲しいというところだと思います。その辺のコミュニケーションがこじれると、経営陣は、法務担当者のことを「何か新しいことを考えるとネガティブなことしか言わない消極的な奴だ」というレッテル貼りをしかねません。これではお互い不幸です。

法務担当者としては、新しいサービスが世の中に出たときにどのような影響が生じうるかを、想像力をフルに働かせてリストアップし、その影響に対して一つ一つ可能性と対処策を考え、これらをパッケージにして経営陣に提供するのがよいと思うのですが、これこそ言うは易く行うは難しです。とは言え、できるだけの対処策を講じ、必要であればサービス内容のmodifyを図って、経営陣の当初の思いを叶えられる実現策を提示できるのが、優れた法務担当者だと思います。

一方、大企業になると法務担当者も経験豊富な方が多数揃っておられるので、上に書いたような事態はなかなか生じないかと思うんですが、今度は、マーケットを牛耳るほどの大企業であると、社会的責任とか社会での評判とかを考慮する必要が出てくると思います。自分たちの行動が社会を大きく変化させ、一方で、社会との多大な軋轢を生じさせることを念頭に置いて、やはり、上に書いた想像力をフルに働かせて、万全な対策をしたというまでの検討は必要なんだと思うのです。

とは言え、法務担当者はいつも経営陣に対してブレーキをかける立場にならざるを得ないのは仕方ないんですかねぇ…think

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