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2004年8月

ま、イライラしないで、と思いつつも

ここ数年、「知財戦略」という言葉をあちこちで目にしたり耳で聞いたりします。
かく言う私も、ビジネスIPRの「戦略知財分科会」リーダーであるわけです(^_^;)。
では、この「知財戦略」という言葉が具体的に何を意味するかについては、
それを語る他人事に随分違った内容であるように思います。

例えば、経営戦略なりR&D戦略から導き出される会社や組織の方針として
の、かなり大上段な視点からの知財活動方針を知財戦略と称している人も
いますし、また、個別の特許出願の対応方針を知財戦略と称している人もい
ます。時に、後者の知財戦略については「それは戦術であって戦略ではない
ですよね」と批判の対象になります。

戦略という言葉を、ランチェスター戦略で有名なランチェスターという人は、
桃の種にたとえています。つまり、(1)外からは見えない、(2)堅固である、
(3)外見ほど美しくない、ということです。この定義からすれば、上に書いた
2つとも戦略と呼んでよさそうです。

しかし、知財戦略について他人から聞いていると、知財戦略という言葉が美し
く聞こえる言葉であるため、その具体的内容をあまり吟味せずに使っている
ことが多いように思えます。これが続くと、段々とイライラしてきます。

知財戦略という言葉を使うことを諫めているわけではなく、その指示する内容
まで説明しないと、説明する側も聞いている側も何となくわかったような気持
ちになり、お互いに誤解したまま、あるいは理解が浅いまま終わってしまう
ように思うのです。

ま、一々イライラしていても仕方ないんですが。できたら、経営戦略論を熟知
している人に知財戦略の全体像を説明して欲しいです。そうしてもらえたら、
かなり自分のイライラも解消されると思います。

事実は…

知人に「既に発表した論文をまとめただけですよ」と言われていたのですが、
買っておかないと書店から消えてしまいそう(著者には「失礼な」と言われそ
うですが(^_^;))なので、買いました。「知的財産マネジメント」という書籍です。

本屋で買って、帰りの電車の中で興味のありそうな章だけ斜め読みしました。
やはり、知人の言った通りでした。まあ、まとめて読めるのが良いのだと思い
直して…。その中で、自分の会社の知財部の組織について記載してある箇所
がありました。なぜ組織について書いてあるかというと、ご存じの方はご存じ
のチャンドラーの命題「組織構造は戦略に従う」という議論を敷衍して知的財産
マネジメントに関する分析のフレームワークを組み立てているからです。知財
組織と知財戦略との連関が大事だ、と言っているわけです。

その議論が納得ゆくかどうかはさておいて(疑問を呈しているわけではない
ですよ)、気になったのが、前提としている記事が3年以上前のものであり、
しかも、筆者は既に知財部長を退いて違う知財部長の下で異なったコンセプト
に基づいて組織運営及び戦略実行をしているわけです。まあ、その当時は
確かに記事の内容に近いことをしていたわけですから、間違った内容ではな
いのですが、「○○会社はこんなことをしている!」と成書で言われても、
現状を知っている身としてはただただ唸ってしまいます。組織構造や戦略は
企業秘密ですから、「いや、違うんですよ」とも言えませんし、一方で「そうな
んですよね」と言われても「その通りです」とは言えませんから、「そんなこと
もありましたね」と遠い目をするしかありません(^_^;)。

このように、一般にオープンにされている内容と事実とが食い違うことは結構
あります。

例えば、今日の日経のネット記事で、「特許の国際出願、日本勢が躍進」
と書いてあり、自分がいる会社のことも話題になっていました。上司たる部長
は、広報からの問い合わせに結構ばたばたしていたようです。で、ご丁寧に
ネットでの解説記事(動画)まで作られていて、その中で国際出願(PCT)の
件数増加の理由を、「デジタル家電が中国で云々」などともっともらしく説明し
ていましたが、「実は違うんだよなぁ」と思いながら見ていました。

さすがに、このblogでも本当のところはお話しできないものの、実は大した理
由ではありません。確かに、外国出願全般の件数を増加させている理由は、
企業がさらにグローバルな活動を目指しているためですが、そのことと国際出
願の件数増加とは直接リンクしません。多分、広報がそれらしい理由を付けて
くれて、新聞社としたらそれを信じて解説記事を書いたのだろうと推測します。

知財は企業秘密の固まりですから、こんなことは日常茶飯事に起こっている
のだろうと思います。そう考えると、青色ダイオード訴訟は、日亜側からすれば
第一審で事実認定の大きな誤りがあると思っているわけで、ここ数ヶ月は金に
モノを言わせたとも思える一大キャンペーンで中村教授の貢献度を低める広
報活動をしています。一方、第一審では派手に広報活動をしていた中村教
授+升永弁護士は現時点では比較的静観しているように見えます。日亜の
社長は「第三審までありますからね」とある種の余裕を見せた発言をしている
ようですから、それまでに双方納得のゆく「事実認定」がされて無事決着する
ことを期待したいと思います。

バリの青い空

ギリシャのアテネでオリンピックが開かれています。ギリシャというと抜けるような
青い空というイメージですが、青い空で自分が思い浮かべるのは、ギリシャでは
なく、一昨年個人旅行で行ったバリ島の青い空です。

276-7617_IMG.JPG

ギリシャには新婚旅行で行ったことがあり(しかも真夏(^_^;))、エーゲ海の青い海
と青い空は十分すぎるほど満喫したのですが、やはり青い空というと自分にとっ
てはバリ島を思い出します。

バリ島は、よく言われる芸術の島という側面とは別に、リゾートビーチをたくさん
持ち、南洋のリゾート地という側面を持っています。欧米からも多数の観光客が
来ており、日本の観光客も含めて最近はリゾートビーチで楽しむ観光客が多い
です。しかし、一昨年行ったときは、芸術の町と言われるウブドという内陸の
町にずっと滞在し、ビーチには1回も行きませんでした。しかも、ホテルにはプ
ールがあるというのに、プールにも入らずに…。帰り際、ガイドさんに「バリ島は
どうでしたか~」と聞かれて「ずっとウブドにいましたよ」と答えたら怪訝そうな
顔をしていましたので、かなり変わり者の旅行のようです。

真夏のバリ島はひたすら暑く、しかも熱帯ですから湿度も結構あって昼間は
地獄のようでした。夜は観劇ツアーのはしごで忙しかったので、昼間は周囲の
散策+買い物で過ごしていました。ただ、それだけではつまらないので、ある
日、ガイドブックに載っていた水田散策ツアーを妻と二人ですることにしました。
水田を見ても面白くないと言われるとその通りだろうと思うのですが、まあ、
折角来たのだから、ということで(^_^;)。途中、タダでサービスされると思った
ココナッツジュースが実は法外な値段だったという痛い経験もありましたが、
谷間に広がる青々とした稲穂の上を熱帯とは言いつつ涼しげな風が通り抜け
る光景は、何か懐かしさを覚えるような爽やかなものでした。

バリ島は生物学上もアジアとポリネシアとを分ける境界線のアジア側にあり、
アジアの辺縁と言えるところです。そのバリ島の青い空、稲穂の揺れる様を
見ていると、遙か遠い日本の稲田に続く道がうっすらと見えた気がします。
まあ、稲の日本への伝来経路はインドネシア経由ではないんですが、その
あたりは大目に見て(^^)。

バリ島話は、ガムランやら日常生活での仏教的な習慣やら色々ありますの
で、そのあたりの話はまたいずれ。

製品オリエンテッド

新商品開発の議論をするときに、技術先導型か市場先導型か、という話をします。
格好いい言葉を使えば、テクノロジー・オリエンテッドかマーケット・オリエンテッド
ということでしょうか。MOTの議論をする際、今までの日本の製品開発は技術先導
型であり、市場に受け入れられるか否かを十分検討することなく技術陣が開発を
先導し、上市したところ市場に受け入れられずに終わってしまう、という話を聞きま
す。

MOTの必要性がここにあるのかどうかという議論は今回しませんが、では、翻っ
て、市場が常に正しい答えを与えてくれるのかという問いを投げかければ、商品
開発者の大多数は「否」と言うでしょう。マーケティングの重要性は既にあちこちで
叫ばれており、全くマーケティングをせずに商品開発をする企業は少数派に属する
(特に大企業であれば)と思います。しかし、マーケティングをしたからと言って、
商品が全てバカ売れするわけではありません。

理由は幾つかあると思います。市場が気まぐれであった、事前マーケティングで
予測できなかった要因が上市の際には支配的であった、などなど。新商品開発
であれば特に考えられる理由として、市場を創造できた/できなかった、という
理由があると思います。全くの新しい価値を与える商品の場合、新市場創造とい
う役目を担ってきますので、通常のアンケートといったマーケティング作業では
消費者が新市場の存在を思い浮かべにくいです。従って、マーケティングの結果
は通常否定的に出るはずです。だからといって尻込みしたのでは大ヒット商品は
出ません。

今自分が勤めている会社で、プロダクト・プランニングの重要性が説かれることが
あります。プロダクト・プランニングとは、私が理解している範囲で説明すると、
新技術と市場とを両にらみし、市場に受け入れられる、あるいは新市場を創造で
きる製品を企画し、これを製造まで持っていく仕事です。最近はその存在を否定さ
れがちですが、自動車で言えば主査という役割と同じようなものです。プロダクト・
プランナーが市場を的確に把握し、新技術を新商品として形にする(ヴィジョナリー
とも言えるでしょう)ことで、市場を席巻し、あるいは、市場を創造する大ヒット商品
が生まれるわけです。

例えば、今や日本を代表するビール銘柄になったアサヒスーパードライは、ある
意味で狙って作ったヒット作だそうです。そのベースとなったのが、下は小学生
までも含む好みの料理の傾向を調べたデータだそうです。このデータから、これか
ら望まれるビールの味は、その当時主流になっていたこくがあって苦いものでは
なく、爽やかで切れのあるものになるだろう、という予測をしていたそうです。
そうこうしているうちに、アルコール度の高い、しかしこくよりも切れを生む酵母を
技術陣が発見し、これら2つが相まってスーパードライの開発を進めることになっ
たそうです。しかも、3年間もかけて段々と切れのよいビールを上市するプランま
で立てていたそうです。

従来の考え方で言えば、スーパードライは市場先導型なのだと思います。が、
市場は明らかに爽やかで切れのあるビールを欲しているというデータが出てき
ていたわけではありません。「そうだろう」という仮説を立て、その仮説に基づい
て具体的に商品開発をしたわけですから、私はこの例は製品主導型とでも言う
べきモデルだと思っています。

デジタル家電など、流行の言葉で言えばモジュール化が進展した製品が多く
なりつつある現在、モジュールの寄せ集めでは人件費の安い国に負けてしまい
ます。技術と市場を平等に両にらみし、製品に関する抜群の創造力を有する
人材こそがMOTに求められているのではないだろうか、と思っています。

売れる商品

今持っている携帯のジョグダイヤルってのが接触不良で誤動作ばかり
するので、携帯を買い換えることにしました。新しい機種は、preminiって
いう、めちゃ小さいやつです。

img_premini.jpg

さすがに、iモード携帯世界最小を謳うだけあって、半端じゃなく小さいで
す。見せびらかすつもりなく、会社の同僚や知人の前でメールチェックを
していると、「え、これって…」と一様に驚いてくれます。で、持ってみて
さらにびっくり(@_@)。面白かったのが、学校の合宿(詳しくは
MOT徒然日記をご覧あれ)の帰りに特急電車に
乗ったとき、隣に座られた子ども連れの奥さんが「それってpreminiですよ
ね、今持っているFOMAが故障してて、直らなかったらそれを買おうと
思ってるんです」と声を掛けてきたことです。まさか、ケータイで見知らぬ
人と会話ができるとは…。

確かに、preminiという商品は、中身はそれほど新しくない
ですが、基盤実装を徹底的に工夫することで世界最小を実現したそうで
す。特徴がはっきりしている商品というのは、好き嫌いはあるかもしれま
せんが、持つ人にある種のステータスというかその商品を選ぶ理由を
他人に誇れる気持ちを持たせてくれます。ウォークマンにしても、技術
的に革新的なものはなかった(当時としたら)わけですが、横文字で言う
ところのコンセプトが革新的だったから売れたわけです。古い言葉かも
しれませんが、「とんがった商品」だったわけです。

最近の商品は、高性能を売り物にしているものの、デジタル家電は正直
言ってどの会社でも似たような機能を実現することは以前よりもたやすく
なっているため、結果的に消費者にとってどの会社の製品も大差ない
ように思えてきます。例えば、DVD付きHDDレコーダーだったら、DVD
へのダビングが早かろうが、HDDの容量がばかでかかろうが、「それで
?」という気持ちになります。結果、CMのイメージやブランド力で勝負
する結果になります。マーケティング戦略としたら間違っていないわけ
ですが、製品開発をしているエンジニアからしたら残念な気持ちがする
ように思えます。

このあたり、MOT的にどう解決するのか、面白い課題だと思います。
答えはありませんが(^_^;)。

#この話題、MOT徒然日記にふさわしいんですが、自社製品の
#宣伝と思われるのが嫌だったので…

MOT徒然日記の影響

先週金曜日、弁理士仲間と宴会をしていて、1年ぶりくらいに会う仲間から、
MOT徒然日記読んでるよ~」「片岡さんは頻繁に更新してるけど、鈴木さ
んは更新しないねぇ」と言われて若干ショックでした。随分読者が広がって
るのね…。

MOT徒然日記は、どちらかというとMOTに通学していることにまつわる
徒然の話を気楽に書くつもりだったのですが、パテントサロン
自体が知財人にとって超有名サイトなので、どうしても知人、友人の目に
触れることが多いのですね。

気楽に書くには、「そう言えばあいつも読んでるんだよなぁ」「職場の同僚
もこの記事を読んでるんだよなぁ」などと考えずに、さらっと書いてしまうの
がいいんですが、色んな人の顔を思い出すと自然と筆が重くなります。

ま、それだけ貴重な情報を提供してるんだと言えるのかもしれませんが。
個人的にはあんまり有名人にはなりたくないです。ただでさえ、弁理士
名簿を売ってしまう人物がいるようで、自宅にマンション売り込みの電話
が頻繁にかかってくるんですから。

そうは言っても、反面うれしい気持ちもありますよ、そりゃ。読まれないよ
り読まれたほうがいいですから。このあたりは微妙ですね。

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