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統計数字のカラクリ

MOT専門職大学院に通っていた頃、数字を扱うときには気をつけろ、と言われたことがあります。例えば、2つの数字を統計処理して、正の相関があると結果が出たからと言って、直ちに2つの数字の間に密接な関係があるとは言えない、という場合があります。

最近読んだ本で、日本のGDPと出願件数とを比較すると、非常に増減のカーブが似ている、と言うことが紹介されています。しかし、増減のカーブが似ているからと言って、双方に比例関係があるとは言えません。確かに、日本は戦後60年間飛躍的な技術革新を達成し、それと共に出願件数も増加してきました。昨日お話ししたように、イノベーションの結果として特許出願が生まれるという仮説を前提にして考えれば、GDPと出願件数との間に比例関係が成立してもおかしくなさそうです。

しかし、本に紹介されているグラフでは、横軸に年度、縦軸に件数、金額が記されています。統計処理をきちんとするのであれば、縦軸にGDP、横軸に出願件数を取り、双方の間に正の相関が強く表れたときに初めて比例関係有りとすべき所です。また、イノベーションという観点からすると、GDPという工業生産の結果値ではなく、R&D費という技術革新に対する入力値と特許出願件数との間の相関こそ有意義な結果であるとも言えます。さらに、ミクロ的に見ると、特許出願件数は旧実用新案制度の廃止、ビジネスモデル特許ブーム等により増減を繰り返している事実があるので、GDPだけを唯一の相関値にすることには不安があります。言い換えれば、特許出願件数の増減を考える際のモデルとして、GDPの値のみを変数とするモデルは不適切ではないか、と言うことです。

当然、本の著者もそのあたりを心得ていて、本の中の表現は決して断定的ではありません。ただ、グラフだけを見せられてあたかもGDPと特許出願件数との間に密接な関係があるかのように説明されると、ぼーっとしているとそれを信じてしまいそうになる落とし穴がある、と言うことです。世の中の統計数字にはこんなからくりが時々見えることがあります。気をつけなければ…。

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