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イノベーションと特許に関する断片集

今日は少し重たい話を。

特許とイノベーションとの関係について詳細に研究しているわけではないので、文献等を的確に示すことはできませんが、思っていることを断片的に書いてみます。

イノベーション論の観点から、イノベーションの進化を特許出願(あるいは登録)件数で見ようとする試みがされています。また、特許とイノベーションとの関係を真っ向から取り上げている試みもあります。

前者の場合、イノベーションの結果として新たな特許出願が生まれるとの仮説に基づいてイノベーションの進化を定量的に図る指標として特許出願件数が使えないか、もし使えるとしたらイノベーションはどのように進化したかを探ろうというものです。ここで問題は、イノベーションと特許出願件数との間に定性的な関係があることは何となく納得できても、イノベーションと特許出願件数との間に定量的な関係があるか、については詳細に詰めないとわからない、ということです。新規な発明をしたのだから特許出願をすることは間違いありません。しかし、アバナシーが提唱するプロダクトイノベーションとプロセスイノベーションとを比較すると、経験則的に言えばプロダクトイノベーションのほうが一つのイノベーションから生まれる発明の数は多くなります。例えば、製造品そのものは多くの部品からなり、部品単位での発明あるいは組み合わせの発明が存在しうるのですが、生産方法そのものはそれほど多岐にわたって発明が生まれうるわけではなく、しかも、生産方法は特許出願すれば公開の対象となるので営業秘密(ノウハウ)として秘匿されることもあります。また、製品のライフサイクルで考えると、イノベーションが生まれにくいとされる成熟期であっても製品の差別化を考えて細部に係る発明が生まれることも経験則的に言えます(これも新しいイノベーションだと言えなくもないですが)。このあたり、イノベーション論にも知財実務にも詳しい人物が非常に少ないので詳細な研究がないように思います。

次に後者の場合、既に存在する登録済み特許とイノベーションとの関係を論じているように思います。本来、特許は新規な発明に対して与えられるわけですから、既存のものから何も奪わない、と考えるべきところです。しかし、行政庁の過誤により新規でない発明に特許が付与された、また、特許権を濫用した場合はイノベーションの進化に影響を与える可能性は否定できません。最近、ビジネスモデル特許についてこのような議論がされたことがあります。ビジネスモデル特許は各国特許庁にとっても新規なカテゴリーであったため、手持ちの資料が少なく、従ってソフトウェアの専門家からすれば既に公知と思われるような内容でも特許が付与されてしまった例があります。このような「質の悪い特許」はイノベーションを阻害するとの議論がありました。このような事態はある意味で過渡的な問題であり、特許制度そのものに対して否定的な見解を持つまでには至るべきではないと思われます。また、特許権の濫用という観点からは、独占禁止法の観点からブレーキをかけるべきで、これも特許制度そのものに対して否定的な見解を持つ理由にはなりません。上述したようにイノベーションと特許とは定性的とは言え密接な関係があると推測されますので、イノベーションを阻害しない特許制度の構築がここでは肝要と言えます。

本来はイノベーションと特許との関係について一定のモデル作りをしたいところです。それなりのモデルを作れれば、特許出願の適正件数を定量的に求めることができます。が、今まで成功した例はなさそうですので(私の単なる不勉強だけかもしれませんが)、なかなか難しそうです。

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