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2007年4月

オープン化と知的財産権

ここ10年ほどの流れとして、オープンソフトウェアやWeb 2.0に見られるように、ソフトウェアを始めとして知識そのもののオープン化がどんどん進んできています。一方、知的財産権というのは端的に言うと限られた人間による知識の囲い込みですから、上に書いたオープン化という流れから反しているようにも見えます。最近話題になっている、「特許はイノベーションを阻害するか」という議論もこの延長線上にあります。

上の疑問に関する明確な回答はなかなか見つかりません。ただ言えることは、オープン化されたソフトウェアであれ知識であれ、現状の知的財産法は保護の客体としており、知的財産権の侵害という行為から無縁ではないということです。従って、知的財産権の侵害行為に対して権利者が主体的に見て見ぬふりをする(ある意味バッファーゾーンを設けると言ってもいいでしょう)か、オープン化された知的財産権に対して制度的に侵害行為を無効化する施策をとるか、などの方策を考える必要があります。

この問題を複雑にしている背景として、知的財産権の保護は何らかの形で権利者の経済的保護に関連しており、上に書いたように侵害行為を無効化する施策なり見て見ぬふりをすることは権利者の利害に影響を及ぼす可能性が高いです。そもそも、オープン化された客体に関する知的財産権をどのように認定するかという入り口の議論で制度的改革は相当紛糾しそうです。

このあたりの議論を明確にするには、古くて新しい「知的財産権と経済発展あるいはイノベーションの関係」という議論をきちんとしないといけなさそうです。古い文献では特許の過度な保護は経済的発展にマイナスであるという結論が出ているそうですが、業界によっても特許の実質的な効力は異なる(化学・薬学業界では必須特許の獲得が全てですし、電機業界は必須特許の獲得だけでは業界の主導力を得られません)ことと、特許による適切な保護は過度の競争を抑制し業界全体の安定的な発展をもたらすとも考えられるので、果たして文献に書いた結論が本当に正しいのかどうか、検証が必要なのではと思っています。ああ、時間が欲しい…。

音楽は自分にとって

どうもこのblogは自分なりの知財に関する考え方を覚え書きのようにしてとりまとめている場所になっている(そもそもそんな意識はなかったんですけど)ので、堅苦しい話題ばかりが並んでしまっていますが、当然年がら年中自分が堅苦しいことばかりを考えているということはなく、自分が色々と考えている時間の中で知財に関することを考えているのは最大で全体の3割程度だと思っています。そんなもんですって。さもなければ息苦しくなってしまいます。3割でも多いでしょ。

…などと言い訳がましく書いているのは、たまには堅苦しくない話題をこのblogで書こうと思ったからで。

音楽という存在は自分にとってかつては空気みたいなものでした。普段はいつも触れているのにないと非常に困る、という意味で。最近は家庭での生活と職場での生活が全体の大半を占めるようになり、自分一人での単独行動の時間の割合が短くなってきているので、音楽をずっと聴いているというライフスタイルではなく、時間の余裕ができたときに(大抵は通勤時間)音楽を聴くようなパターンになっています。そのせいか、以前より音楽にどっぷり浸かっているという感覚が少なくなり、手軽に聞けるジャンルの音楽を聴くことが多くなってきています。それはそれで否定すべきことではなく、自分の聴き方も一つの選択肢としてあり得ると思います。音楽に関する職業に就いていれば音楽から離れることはあり得ませんが、年齢を重ねるに伴って仕事や家庭に割く時間が必然的に長くなり、結果として若い頃より音楽を聴く時間が短くなると共に音楽が提供する世界に没頭することも結果的に少なくなるでしょう。

ただ、この結果は何となく寂しい気もします。小さい頃から音楽が好きで、10代~20代の頃は何もしていなければ本を読むか音楽を聴くかしてきた自分にとって、音楽からどんどんと距離を取っていく生活は青春という人生の輝ける時期からの距離が離れていってしまうことにも似て、微妙な喪失感すら感じます。まぁ、音楽がどこか遠くに行ってしまったわけではなく、求めればいくらでも得られるわけですが、何かしら音楽に熱中できない自分がそこにいるわけです。

自分は今ハードディスクに何百曲もの音楽データを貯め込み、これをいつでも聴ける環境にあります。鞄の中にCDが何十枚もあるようなもんです。技術の進歩は嬉しいんですが、だからといって以前のように貪るようにして音楽を聴くことはありません。以前のように音楽と共に生きたいとも思うのですが、時間が許さないということ以上に自分の気持ちが音楽に集中しない現実があります。

そうは言っても将来音楽から縁を切るようなことにはならないと思っています。音楽で癒されることもありますし、元気をもらうこともあります。いい曲を聴けば単純に感動します。その気力で明日を迎えることもあります。やはり音楽は自分にとってなくてはならない存在であることは間違いないです。

研究者への道

MOT大学院を修了して2年、一時期は仕事に没頭していたのですが、やはり一度始めた研究の道、なかなか興味は尽きないものです。MOT大学院を修了した際に、もし博士課程に進むとしたら「イノベーションと特許」について研究したいと思っていました。このことについては、既にこのblogでも話したかと思います。

イノベーションと知的財産について研究をしている人は非常に少ないです。私が知っている限りでは、一橋大学イノベーション研究センターの所長である長岡貞男教授、九州大学の永田教授、東京大学先端研の後藤教授くらいでしょうか。海外では経済学の観点から特許の有用性を研究した論文が結構出ているようです。

イノベーションと知的財産という題で何が面白いかということについて、既にblogでお話ししたことと重複することを承知で考えてみます。まず、イノベーションを測定する尺度として特許が使用できるかどうか。この裏の問題として、特許はイノベーションを促進するのか阻害するのかという議論があります。この議論をするためには、イノベーション論に関する理解は当然として、特許の効果を含めたイノベーションモデルを構築する必要があります。ただ、出来立てのベンチャー企業であれば話は少し単純化できますが、一般の企業においてイノベーションと特許との相互作用をモデル化するのは単純ではありません。加えて、特許の有効性そのものを定量化するのも難題です。特許権は特許請求の範囲という言語で表現されているため、周辺技術との差異化も文言でなければ比較できません。こう考えると、相当の大胆な仮説を設けない限り、研究が一歩も進まないのです。

もう一つ、研究の課題として「効率的な特許戦略(特に定量的な特許戦略)」というものがあります。これは、2回ほど日本知財学会で発表しました。なかなか一般聴衆に理解していただけなかったのですが、方法論としては自分なりに面白いと思っています。特許戦略を遂行するに当たって何を考え、何を考えなくてよいか、経営戦略論の知識を借りながら考えてみたいと思っています。ただこれも、効果的な技術予測という難問を超えないと一般解が出てこない問題なので、なかなか話が進みません。

社会人を続けながら研究者生活をするのは、収入面や時間面で非常な苦労を伴うものですが、なかなか夢は諦められないものです。

知財戦略事例集

最近、知財戦略のことばかり書いているので自分自身もちょっと飽き気味なのですが、タイムリーな情報があったのでこればかりは逃してはなるまい、と言うことで書きます。

特許庁から、知財戦略事例集という貴重な資料が発行されました。これは、国内外150企業に具体的な特許業務に関するヒアリングを行い、失敗例を含めてベストプラクティス(失敗例はベストプラクティスではないですね(^^ゞ)を500項目以上にわたって列挙したものです。全体的なまとめ方は、とりまとめを行った某鮫島弁護士の日頃の主張がそこここに見え隠れして(例えばCIPOの存在を力説したり)微笑を誘うものもありますが、関係各位の努力には頭が下がる思いがします。

こうやって、業界を横断して貴重な情報を目の当たりにすると、何かしら自社の足りない部分が見えてくるものです。その部分に対しては謙虚に他社のベストプラクティスを取り入れ、より良い業務を行えるといいと思っています。戦略と言ってもそれ程体系的なものではありません。技術担当者の日々の努力によって実現できる範囲内のことです。しかし、何より技術担当者が単なる出願業務を漫然と行っていたのでは実現は到底難しく、出願1件1件に対してパテントポートフォリオの発想で吟味を行い、自社の足りない部分を補い、得意な部分を伸ばすという姿勢で業務を行わなければなりません。このためには、結構な人的リソースを必要としますので、例えば国内出願の件数を外国出願の件数(発明数で比較して)と同数にすると言った大胆な施策が必要であるように思います。あるいは、知財部門の人員数を大幅増にすると言った。いずれにしても、今までの考え方を大幅に変更する必要はありそうです。

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