« 2007年4月 | トップページ | 2007年6月 »

2007年5月

弁理士の専権事項

弁理士が専権としてできることは弁理士法に記載されていますが、この全てについて満遍なくこなせる弁理士はほとんどいないでしょう。特許事務所に勤務している弁理士であれば、大半は特許明細書の作成及びいわゆる中間処理に従事しています。審判や審決取消訴訟、さらには特許侵害訴訟に従事している弁理士はきわめて少数派です。当然、特許明細書の作成の片手間に事件もの(こんな言い方をしますね)を手がける弁理士は結構いますが、経験が何よりの宝物の世界において片手間に行う仕事に対する信頼感は必然的に低くなります。意匠、商標を専門に手掛ける弁理士も全体から見れば少数派です。一方、企業に勤務する弁理士は企業全体から見れば多種多様な業務に従事するわけですが、企業ですから特許事務所以上に専門が細分化され、一人の弁理士が行っている職務は極めて狭い範囲に限られます。

では、なぜ弁理士の専権事項が多種多様にわたっているかと言えば、中小・ベンチャー企業に対して知的財産のワンストップサービスを提供するためにはこれだけの専権事項が必要であるとして先達の弁理士会役員方が努力をされた結果だと理解しています。確かに、中小・ベンチャー企業が知的財産に関して相談をする相手として弁理士を考えた場合、似たような内容の話でも「それは私の専門ではありませんから」と一々断られたのでは信用されないだろうと思います。とにかく間口は広く受け入れる、この姿勢自体は悪いことではありません。問題は、一人の弁理士がサポートできる業務範囲はある程度の限界がある現状において、自分の決して得意ではない業務範囲に関する依頼が来たときに、自分以外により専門家がいるとして紹介できるかどうか、つまり弁理士自身が職業倫理に基づく良心を持てるかどうか、にあると思っています。

このあたりの事情は、医者が掲げる専門科に通じるところがあると思います。自宅の近所で開業している開業医は第一義的に相談に行けるところですが、専門的な医療行為を受けようとなると開業医では不足する、開業医は自身の専門性の限界を悟り、専門科である知人の医師に対して紹介状を書くわけです。もし、弁理士が中小・ベンチャー企業の知的財産に対するサービスを拡充しようと考えるならば、潔く自分の専門性の限界を知り、全ての業務を請け負わない良心を持つべきではないか、と考えています。

現実として、中小規模の特許事務所であれば、ワンストップサービスに拘るあまりに決して専門性が優れているとは言えない業務についても安易に引き受けているように思われます。この行為は、弁理士業界全体に対する信頼性を低下させかねない行為であるような気がしています。だからといって、大規模な特許事務所が全ていいとは言えません。大規模な特許事務所は大規模な企業を相手にしていることが大半ですので、中小・ベンチャー企業が望む小回りのきくコンサルテーションが苦手なことが多いです。厳しい言い方ですが、身の程を知ることが大事なような気がしてなりません。

ここ数年、弁理士会自体が中小・ベンチャー企業に対するコンサルテーションを重視しているように思われるので、そうであるならば仕事を受件する態度として全てOKというのは安易な行動であると思っています。全て引き受けてしまうことに対するリスクは引き受けた側にも覆い被さってくるものです。

知的財産部門の連携

今、仰々しい題名の(企業経営に連携する知的財産部門の構築―企業内機能部門との連携に向けて)を読んでいます。もう少しで読破するところでコメントをするのも良くないんですが、どうも(というか相変わらず)ピンとくるところがありません。企業経営に連携する知的財産部門の構築という観点は悪くないのですが、理論的なところを追求しようとするとそもそも企業経営と知的財産との定量的関係という最大の難題を避けて通ることはできないにもかかわらずこの点についての言及は皆無だし、かといって、実践的なところに特化するにしてもベストプラクティスの定型化もせずに数少ない実践例(とこの本の筆者は思っているであろう)をそのまま書き下すだけだし、なんだか騙されたような気持ちのする本です。

企業戦略と知的財産戦略とR&D戦略との三位一体を図るのであれば、経営部門と知的財産部門とR&D部門との連携が欠かせないことは理解できます。では、具体的に連携をどのようにするのかについては各社各様に悩んでいるように思われます。自分がいる会社でも以前同様の議論をした際に、経理部門はどの部門とも密接な関連を有しており、各部門との連携がスムースに行われているのに知財部門はどうしてできないのか、という話をしていました。ただ、経理部門の業務はどちらかといえばdaily workに分類できるものが多いのですが、知的財産部門の業務はdaily workに分類されるものからビジネスの競争力に直結するものまで多岐にわたっており、単純な比較はできないかもしれません。つまり、知的財産部門が連携を行おうとする場合、トップマネジメントから個々の発明者まで階層的にも広範にわたり、階層別に連携の仕方も異なるために多種多様な連携のあり方を模索しなければいけない、という事情があります。

一方で、知的財産を重視した経営が必要であるにしても、企業経営にとって知的財産に関する事項は経営判断の一項目にすぎないことも事実です。連携を重要視するあまりに知的財産の有効性を過大評価してしまわぬよう知的財産部門の当事者も気をつけるべきです。要は、全社的な観点を持ちつつ他部門との連携を図ることが大事だと思います。

« 2007年4月 | トップページ | 2007年6月 »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
フォト
無料ブログはココログ