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ビジネスモデル特許あれこれ

私が今の会社に入社した頃、ビジネスモデル特許(特許庁はビジネス関連発明と呼んでいます)ブームに沸いていました。私が少しコンピューターに詳しいということで、社内に新設されたビジネスモデル特許を専門的に扱う部署に配属され、以来2年間ほどビジネスモデル特許の社内的プロモートや社内で生まれたビジネスモデル特許の出願処理などを担当していました。ビジネスモデル特許は当たり前ですがビジネスモデルを背景としているので、ビジネスモデル特許を扱うことは社内の様々なビジネスモデルを理解するのに役立ち、後に経営的な観点から特許を見ることができるようになりました。

それから7年、既にビジネスモデル特許ブームも去り、特許庁が発表している資料から見ても特許出願の波も一応収まったようです。現在は時期的に丁度審査請求件数が大幅に増加しているようですが、ここ数年特許庁はビジネスモデル特許に対して非常に厳しい特許要件を課しており、特許査定率も一桁台に迫ろうかという数字のようです。詳しくはこちらを。

今振り返ってみると、ビジネスモデル特許ブームというのは米国において一時期ビジネスモデルそのものではないかと思われる発明に特許が付与されてしまい(後に米国特許商標庁もそのことは誤りであったと発言しています)、これがあたかも黒船来訪のように報道されて過度とも言える反応をした結果だと思っています。この結果、従来からあるビジネスモデルや、コンピューターシステムを前提としないビジネスモデルそのものに関する発明が数多く出願され、一時期的に特許庁もコントロールしきれない事態に発展していったわけです。この責任の一端は、十分な理解もせずにビジネスモデル特許を取り上げたマスコミ、そしてビジネスモデル特許に関する十分な知識もないままに出願人の言われるままに特許出願をしてしまった弁理士にもあると思っています。そのとばっちり(悪い言葉ですが)は、きちんとした実体的なコンピューターシステムを前提として優れたビジネスモデルを構築し、これに基づいて特許出願をしている出願人に来てしまいます。

考えてみると、ビジネスモデル特許ブームの頃に出願された優れたアイデアは、今頃になって実世界での実現がようやっと可能になったものも少なくないように思います。例えば、デジタルデータによる音楽配信は、ビジネスモデル特許ブームの頃には単なるアイデアであるか、あるいは(光)磁気記録メディアを媒介しないと実現できなかったのですが、今は、例えばiTuneに見るように実体的なメディアを目にすることなく音楽配信を行うことができるようになりました。コンテンツデータを好きな場所で視聴する仕組みも、まだ不十分ではあっても、例えばロケーションフリーといった機器によって実現できるようになりました。電子商取引にしても、Amazon.comに見るように(古い言葉ですが)パソコンを通じた通信販売は既に一大勢力になっています。

であれば、ビジネスモデル特許ブームの頃に出願された優れたアイデアをもう一度特許として見直し、活用の途を考えてもいいのではないかと考えています。このためには、判例において機能実現手段を比較的限定的に解釈している風潮を見直し、柔軟に考えるべきではないかと思っています。例えば、「~手段」を実施例相当手段に限定するような考え方はすべきではありません。当業者の設計基準を考慮して解釈しなければいけません。折角付与されたビジネスモデル特許なのですから、十分に活用されなければいけないと考えています。

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