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超低価格PCをイノベーション論で読み解くと

ちょっと古い話題ですいません。ASUSがEeePCという5万円程度の超低価格PCを昨年に販売して以来、各社がこのカテゴリーに参入してきています。大手メーカーでもHPが既に同様の超低価格PCを販売しており、日本企業では富士通が参入予定との発表がされています。考えてみると、この手のノートPCは日本企業のお家芸とも言える分野ですから、なぜ日本企業がこういった発想ができなかったのだろう、と思えてきます。

勘のいい方ならば思いつくことがあるかと思います。この超低価格PCは、クリステンセン教授が提唱した「破壊的イノベーション」(Disruptive Innovation)の好例であると言えます。破壊的イノベーションについては、ちょっと手元に「イノベーションのジレンマ」等の成書がないのでWebからちょっと定義らしきものを引っ張ってきてみると、

「既存の技術よりはパフォーマンスにおいて低く、既存の顧客要求も満たせない、だが、既存の技術とは明らかに違う特徴をもった新技術が、既存の大規模な市場では相手にされず、それまで存在しなかった顧客ニーズ、新市場を切り開くような一連の変化」

といったことになります。クリステンセン教授は破壊的イノベーションに関していまのところ3冊の本を出版していますが、その中で一番最初に出版された「イノベーションのジレンマ」では破壊的イノベーションの好例としてハードディスク業界を挙げています。ハードディスク業界は永きにわたってメインフレームやミニコンに使用される比較的径の大きいものが主流だったのですが、当時出始めたPC向けの小径ハードディスクは容量も小さく使い物にならないと当初は考えられていました。しかし、PCの成長とともに大容量化が進み、あっという間に径の大きい領域のものを駆逐してしまったわけです。

破壊的イノベーションの出現の背後には、既存の成功企業がその周囲にいる顧客からの要求ばかり聞いてそれ以外の潜在的顧客からの声に耳を塞いでいる、という現状があります。

この破壊的イノベーションの理論を超低価格PCに適用してみると、ノートPCの製造業者はそれを使用する顧客からの要求である高性能、軽量化といった技術課題を解決することに邁進し、低価格化という課題に対してあまり関心を持っていませんでした。しかし、全世界的に見るとPCの価格は決して安いものではなく、あまねく個人がPCを所有するという状態には至っていませんでした。ノートPCの製造業者にとっての顧客とは積極的にPCを使用する顧客であり、かなりの部分が企業において業務でPCを使用する顧客だったと言えるでしょう。しかし、PCが高価であるために購入をためらっていた顧客層は確実にいたわけです。超低価格PCは、このような顧客層のために、思い切ってハードディスク容量を下げ、液晶画面も小さくし、必要最低限のスペックに切り詰め、同梱ソフトも最小限にすることで超低価格化を実現したわけです。従来のノートPCの製造業者にとっては機能を最小限にするという発想はしなかったとは思えませんが、従来からの顧客の声には真っ向から反対する発想ですから、敢えて対応しなかったというのが正しいのでしょう。

今後、超低価格PCの市場はどんどん拡大するだろうと思われます。スペックさえ決定すれば既存のノートPCの製造業者にとって難しい課題ではないですから、対応はそれ程難しくないでしょう。とは言え、破壊的イノベーションの存在をどの企業も知っていながらまたもその罠にはまってしまったのは残念と言えます。

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コメント

こんにちは、管理人です。

わざわざご自身のBLOGにもご紹介いただいたようで感謝です。

UMPCはPC市場を変革する力を既に持っているので、日本メーカーとしても参入せざるを得ないでしょう。たとえ負け戦になると思っていても。

はじめまして

「みんなの知」のMacです。

私のブログにもUMPCとイノベーションについて多く記してあります。

UMPCはローエンド破壊ですが、日本メーカーもやっと重い腰を上げましたね。
(もちろん採算はとれないでしょうが・・・)
しかし今参入しないと置いて行かれますね。

また、お邪魔します。

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