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大企業と中小企業とで知財戦略は異なるのか(その2)

以前、「大企業と中小企業とで知財戦略は異なるのか」という記事をこのBLOGに掲載しました。その時は同じようなことを考えている人がどれくらいいるのかを検索することなく記事にしてしまったので、改めてインターネットで検索してみました。そうしたら、結構色々な情報が検索できてびっくりしました(知らなかったのは自分だけだったのですね、恥ずかしい(#^_^#))。

例えば、特許庁は「中小企業に対する知財戦略支援事例分析報告書」という報告書をまとめて中小企業の知財戦略の事例を公開しています。また、みずほ情報総研のアナリストの方は結構詳細なレポートを公開されています。土生さんという弁理士は、私と結構似た視点で知財を考えている方で、中小企業の知財戦略についてこんな記事を書かれています。考えてみると、大企業と呼ばれる企業は比較的長い時間をかけて知財戦略を検討しており、独立した知財部門を持って運営をしていますから今更大企業に向けて知財戦略を語る必要はない、一方、日本のものづくり力を支えている中小企業の中には独自の技術を持つ企業も少なくないが、予算面での制約等もあり知財戦略に優れた企業はそれほど多くない、政府としてもここにてこ入れをして中小企業の国際競争力を知財の面からサポートしよう、ということなのだろうと思います。

自分が前に書いたことや今回紹介した記事と幾分重複することを承知で、つらつらと中小企業の知財戦略について考えてみることを記してみます。

まず、中小企業の場合、自身の経営戦略や事業戦略が不明確な場合が往々にしてあります。ここを明確に定義することから始めなければなりません。それは、知財戦略と事業戦略と経営戦略との三位一体といった議論より前に、知財はそれ自体で企業を救うものではなく、知財はあくまでもその企業の事業を円滑に進めるためのものだからです。企業は事業ありきです。時に知財の専門家は知財の重要性を語りすぎるがために、そして経営に関する知識不足のためにミスリードしがちです。経営戦略や事業戦略を実現する上で知財がそれをどれだけサポートできるか、これが大事です。経営戦略や事業戦略が明確化したときに、例えば徹底的に下請けに徹する(これも重要な経営戦略でしょう)のであれば、コストダウンを最重要視する、その場合、知財は経営の舵取りをする上でそれほど重要なファクターとはならない可能性があります(当然、コストダウンのための技術革新があれば権利取得の必要性はありますが)。このような企業に対して知財戦略を綿密に練る必要性は薄いでしょう。

次に、事業分野の特殊性に目を移す必要があります。知的財産権がどれだけ有効性を持つかは事業分野によって異なります。例えば、化学、薬学、バイオなどの場合、一つの権利を持つことでその事業をコントロールすることも可能です。この場合、知財戦略の重要性は非常に高まります。ただ、この場合も製品のプロセスのどの部分に対してコントロール権を持つかを十分に考える必要があります。大企業であれば製品のプロセスの全てについてコントロールすることは可能でしょうが、中小企業の場合、プロセスの一部しかR&Dができない場合もあります。最終的なexitがどこにあるかも考慮して知財戦略を考えなければなりません。一方、機械や電機の場合、一つの権利で事業をコントロールすることは事実上不可能です。この場合、上に書いた経営戦略で示された会社の事業範囲を考慮して知財戦略を立てる必要があります。会社の事業範囲を超えて多数の特許権を保有すれば堅固な特許網を築くことができ、参入障壁を作ることができますが、そのためには多大な金銭的サポートが必要です。前にも書いたように、身の程を知った知財戦略が大事です。

さらに、知財は攻めだけではなく守りも必要です。とかく弁理士は出願をしないと金銭的報酬を得られないので出願を奨励しがちですが、例えば新規分野に参入するのであれば必要な他社特許の調査が不可欠です。大企業が中小企業を訴えるには、それなりの事業規模がないとpayしないのである程度までは無視する行動を取りますが、もし大企業から特許で攻められた場合、よほどのことがないと勝ち目はありません。ある意味、中小企業が成功する条件としてのニッチ市場というのは特許としてもニッチな場合があると思っています。ニッチなうちにニッチな分野で特許を固める戦略も重要です。

最後に(というか長くなってきたので)中小企業はリソース的に常に不足した状態にあると思います。外部リソースを思い切って導入することは非常に大事です。但し、知財に関しては社内に担当者を少なくとも1人置いて(兼任でもいいです)、そこに技術情報を全て集約する体制を取ることが重要です。

まだまだあるように思いますが、思いついたら徐々に補充していきますので。

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