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2008年8月

エコ・パテント・コモンズ

ある知財関係のメーリングリストでエコ・パテント・コモンズが話題になり、肯定的な見方と批判的な見方をする人がいました。私の考えは、エコ・パテント・コモンズ自体は突き詰めると非常にアナーキーな方向に進む可能性があり、環境関係の特許は全て無償公開すべしとの論に傾く危険性を孕んでいるのですが、オープンソース運動と特許とのある意味での共存点を模索する運動としてかなり高く評価したいと考えています。何より、環境運動は全世界的な問題であり、エコ・パテント・コモンズの活動により少しでも社会貢献ができるのであれば、非常に小さな一歩であっても歩みを進めることが大事なのだと考えています。

さて、肯定的な見方をする人が、エコ・パテント・コモンズはオープンイノベーションを推進する意味でも重要だとコメントしていました。私は、エコ・パテント・コモンズはオープンソース運動との関係で捉えるのが正しい見方であり、オープンイノベーションとは峻別すべきと考えています。それは、環境に関する特許は社会貢献に資するものであり、全て無償公開すべしとの論はオープンソース運動的であり、企業がこの論に対して一定の解を示したのがエコ・パテント・コモンズだと思うからです。

オープンソース運動はソフトウェアを特許や著作権で囲い込むことに否定的な、あるいは批判的な見方をする人が推進していると考えられ、オープンな場においてこそソフトウェアの発展が図られるとの考えであると理解しています。企業からすれば特許や著作権による囲い込み、言い換えれば参入障壁がなければ安心して営利活動を進めることはできないのですが、オープンソース運動がこれだけの大きな流れを形成してしまった現在において、オープンソース運動を単純に批判してオープンソース運動により得られるメリットを享受しないことは大局的に見てその企業の利益につながらないようになってきました。いい例がデジタル家電に組み込まれたLinuxソフトです。デジタル家電は非常に単純に言えばLinuxパソコンに特定の機能を実現するソフトウェアを搭載することで構成されています。この場合、個々のデジタル家電に対してOSを開発することは非常に非効率的であり、また、Windowsを使うのはコスト的にメリットがあるとも言えません。こう考えると、企業はオープンソース運動に対して一定の理解を示すことを迫られます。一定の理解とは、オープンで十分なところ、つまりプラットフォーム部分についてはオープンソース運動のメリットを享受し、競争力を有する差異化部分については独自チップを開発する等によりブラックボックス化する、あるいは特許や著作権による囲い込みを行うことです。開発した内容を全て知的財産により権利化するのではなく、真に必要な範囲においてのみ自社のコントロール下に置くわけです。

一方、オープンイノベーションは、R&Dの源泉を広く社外に求め、また、R&Dの結果を社内に内部留保することなく社外に公開することであると理解できます。この場合、R&Dの成果物は知的財産により適切に保護されることが前提となります。オープンイノベーションにおいて知的財産は通貨として機能するという名言は以前このBLOGでも紹介したと思います。R&Dの流通に伴い知的財産も流動化が促進されるべきであり、オープンイノベーションの促進は知的財産の流動化のインフラが前提となります。

こう考えると、エコ・パテント・コモンズにおいて一定の環境関係の特許を公開するという考えはオープンソース運動に非常に近いものであり、オープンイノベーションの流れとは峻別すべきであると考えられるわけです。昔から一部の日本企業では既に会社のR&Dの方針により開発を断念せざるを得なかった分野に関する特許に対しては無償公開をしていますから、環境関係の特許でこのような条件に当てはまるものがあるのであればエコ・パテント・コモンズに登録すればよいのでは、と考えます。それは、企業の競争力に影響を与えることなく社会貢献を行い、ひいては自社の利益につながることだと思うからです。

国際競争力を持つ日本の産業はどこに

最近MOT関連の話題ばかりしていて知財の話題はどこに行った!とお叱りを受けそうですが、もう少しだけおつきあいくださいませm(__)m。

大前研一さんという著名な経営コンサルタントの方がいます。この方がWeb上で連載記事を書かれており、この最新記事が結構MOT論(それもなかなか正鵠を得ておられる)を展開しています。後編もあるようなので期待大です。この記事で私が理解した大前研一さんの論は、日本の産業構造が実は大きく変化しており、より詳しく言えば日本が高い国際競争力を保っている産業は川下から川上、言い換えれば装置産業から素材産業にシフトしており、この点からこのところの日本悲観論とも言える論調に対して明らかな疑問を呈しています。そして、日本産業の強みを生かせる分野として、クローズドで摺り合わせ型の分野であると指摘しています。

この議論自体、実はそれほど新鮮なものではなく、私がMOT社会人大学院で学んでいた頃に授業で講義された内容や、また、東京大学の藤本隆宏教授が以前から指摘していた内容において既に指摘されていた事項です(だからと言って大前研一さんの議論が古くさいであるとか価値がないとかというつもりは全くなく、改めてまとめた議論をしていただいたことに感謝しています)。実際、大前研一さんの記事に記載されているように、素材産業における日本の企業の国際競争力は際立っていますし、また、クローズドで摺り合わせ型の産業分野の代表と言われる自動車産業はこの世の春を謳歌しているように見えます。

ただ、自分が今所属する企業は川下の装置産業であり、オープンイノベーションでモジュラー型の影響を思いっきり受けています。オープンでモジュラー型の装置産業は、国際的な産業構造の変化をもろに受けた産業であり、クローズドで摺り合わせ型の研究開発をしていて、垂直統合型の生産を行うことにより利益を自社内に全て留保して莫大な研究開発費の回収を行うことで成長を続けてきたところ、オープンでモジュラー型に産業構造が変化したことにより一気に製品自体がコモディティ化し、莫大な研究開発費の回収もままならない状態に陥っているわけです。この分野における日本企業の国際競争力は一気に低下しています。かと言って、装置産業で生きてきた企業が一気に素材産業に移行できるわけはなく、販売価格の急激な下落に苦しみながら低利益率でも何とか生き永らえてきています。

では、装置産業に未来がないのかというと、そうとばかりは言っていられないのも現状です。オープンイノベーションでモジュラー型に変化した産業構造を元に戻すことはできませんから、企業自身がオープンイノベーションの利益を最大限に生かし、世界の最先端開発知識を旺盛に吸収し、いかに早期に産業化するか、言い換えれば現実の装置、製品として実現化するか、そして、生産拠点の最適化を含めた低コスト化を実現するかに注力すべきなのだろうと考えています。そして、自社のR&Dの逃げ切りを実現するために知的財産が(ほんのわずかの期間であっても)参入障壁として機能するように知的財産戦略を組んでいきたいとも考えています。

製品の低価格路線(その2)

この間から低価格路線のことについて話をしています。低価格路線というのは必ずしも破壊的イノベーションにつながることではなく、むしろグローバル化の一環として理解する方が素直であると言えます。一番いい例としては、いわゆる白物家電と言われる洗濯物や冷蔵庫が挙げられると思います。日本の大手家電メーカーは白物家電については高級路線を貫いていると思います。一方、中国のHaierであるとか韓国のLGであるとかは機能を絞った低価格商品を大量生産、販売することで自国のみならず世界的市場を獲得してしまったわけです。

高級路線を貫くか低価格路線を進むかは企業の経営判断ですから一概に是非を論議することは難しいです。ただ、グローバルに製品を販売する戦略として低価格路線は好適であると言えるでしょう。当然、低価格製品を受け入れていた国(通常は一般地域と言うべきか発展途上国と言うべきか)も購買水準が上昇してきますので、いずれ高級路線の製品が売れてくるわけです。中国は丁度この端境期にある様子で、テレビなどはブラウン管テレビが地場産業で薄型テレビが海外メーカーでいくら販売店がブラウン管テレビを前面に押し出しても薄型テレビばかり売れてゆく、という現状があるようです。

全てのカテゴリーで低価格路線が進むかどうか、現状でははっきりしないところがあるように思います。以前BLOGでも書いたように、PCは低価格路線の(ある意味でパンドラの箱が開いてしまったので)路線は避けられない道でしょう。携帯電話も、一般地域、発展途上国では圧倒的に低価格路線の製品ばかり売れます。デジカメはちょっと判断が難しいところですが、低価格で高機能の製品を大手メーカーが推進すれば道は開けるかもしれません。テレビは、既にブラウン管テレビが世界中で売れてますので、むしろ薄型テレビへの買い換え需要を待つことになります。この場合、液晶であれプラズマであれブラウン管テレビと価格競争力を持ちうる製品ができるかどうか…難しいところです。買い換え需要の場合、ブラウン管の寿命がきて買い換えるならともかく画質の良さといった薄型テレビの買い換え訴求力がどれだけ消費者に受け入れられるか、です。

低価格路線の製品を支えているのは、前にも書いたように台湾、中国のEMCメーカー(例えばFoxconn=HonHai)です。EMCメーカーの強みは設計、製造のレベルの高さと低廉な製造コストです。このEMCメーカーの強みがいつまで続くのか、数年単位では問題ないでしょうが、10年単位の長いスパンでは何とも言えません。つまり、設計から製造までの垂直統合による強みが製造コストの長期的な上昇によってどこまで継続できるか、という点で若干の疑問があるように思います。当然、製造拠点はより安いコストを実現できる国に移転するわけですが、そうなると設計と製造拠点との間に地理的な溝ができてしまいます。これではEMCメーカーの強みを保てるかどうかわかりません。

いずれにしても、低価格路線への流れは止められないわけなので、高級ブランドの象徴となっている日本の製造業がどのように対応するか、真剣に考えないといけないと思っています。

ちょっとまとまりがなくなってすいません。

MOT教育と知的財産

MOT社会人大学院には、大抵の場合知的財産に関する科目が設けられています。私が通った社会人大学院にも知的財産権という科目があり、自分にとってはある意味楽勝科目だったので(実際講師から「間違ってないよね?」と聞かれたことがあり)しっかり履修しました。MOTという立場からして(広くいえば企業経営という立場からして)知的財産は必要不可欠な項目の一つとして認識されるようになり、しっかり科目として取り上げられるようになったのはうれしい限りです。

MOTらしい知的財産って何だろうという疑問は、実際に科目を履修した頃からずっと持っていました。自分が受けた授業は、いわゆるエンジニア向けの基礎的な知的財産権に関するテキストを使ったものでした。これも一つのやり方です。MOT社会人大学院の受講生が知的財産の専門家になる必要は全くないので、基礎知識を知り、実際に様々な経営判断(そこまで行かなくても事業上の判断でもいいですが)をする際に知的財産の側面からの思考ができればいいわけです。しかし、経営に資する知財を標榜するのであれば、基礎知識を教えるだけではなく、経営の実務に活かすことのできる知的財産の講義があってもしかるべきです。

例えば、事業部門において新商品を開発する際に知的財産上どのような点に留意すべきか、といったレポート課題を出して勉強させることが考えられます。この課題、意外と難しいのです。第三者特許の調査、自社特許の棚卸し、そしてその結果に基づくパテントマップ作成までは基本段階です。パテントマップ作成に基づく設計方針の検討は次の段階です。結構抜けやすいのが、新商品設計に伴う購買上の処理です。新商品ですから他社から部品、資材を購入することが往々にして考えられます。この際、その部品、資材に関する知的財産の免責条項をどうやって入れるかが後々問題になることが多いです。設計方針が決まれば、必要な知的財産のライセンス交渉、新しい設計事項に関する特許出願、意匠出願といった通常の流れが待っています。一方、設計回避がどうしてもできず、諸事情によりライセンスを取得することができない場合、リスクを負って事業を進めるか、やはり撤退するかの重要な判断をすることになります。

他に、受講生が勤務する会社において100件の外国出願を行うことが決定された場合、どういった出願をどの国にどれだけの件数出願するか、といったレポート課題を出して勉強させることも面白いです。件数配分は外国出願戦略の基本中の基本であり、しかも肝ですから、自社の事業分野に照らしてどの国に出願件数を配分するのか、また、パリ優先権出願とPCT出願とをどうやって配分するか、といった検討事項に基づいてどのような解を出すかが重要となります。

さらに、こんな出題も考えられます。例えば、電池業界において自社を含む4社が次のような状況にあった場合、事業戦略(アライアンスを中心に)及び知財戦略はどのようにあるべきかを考えよ、という問題です。前提条件として、

自社…製造量世界2位、伸び率世界2位、有力特許世界2位
A社…製造量世界1位、伸び率世界4位、有力特許世界1位
B社…製造量世界3位、伸び率世界3位、有力特許世界3位
C社…製造量世界4位、伸び率世界1位、有力特許世界4位

これは相当な難問です。事業戦略という観点からは誰と手を組むか(特許のクロスライセンスも含んで)、知財戦略からは誰と手を組んで誰を特許で攻撃するか、という視点で考えることになります。

もう一つ、歴代の有名な特許訴訟において、敗訴した企業はそもそもいかなる事業戦略及び特許戦略を取るべきであったか、という問題も考えられます。歴代の有名な特許訴訟としては、例えばハネウェルvsミノルタ、セガvsコイル、コダックvsポラロイドといったところが考えられます。これらの特許訴訟は、事業戦略の展開という側面からも有力な示唆を与えてくれると思います。

こんな授業だったらMOTで面白くできるように思いますね。だれかしないかな~。協力しますよ(^^)。

オープンイノベーションと知的財産

このBLOGでイノベーションと知的財産との関係、及びオープンイノベーションについては自分の考え方を時々書いてきましたが、よく考えるとオープンイノベーションと知的財産との関係については書いてこなかったように記憶しています。ちなみに、ちょっと前に「知財はオープンイノベーションを阻害するのか」といった題で記事を書いたのですが、ここではオープンイノベーションとオープンソース運動とを混同して書いており(大汗)、本当は全面的に書き換えたいところですが、一旦公表したのでこれはこれで大恥の証拠として残しておきます。オープンイノベーションの流れは企業にとって積極的に取り入れる必要のあるものであり、オープンイノベーションの環境下において知財はどうあるべきか、という議論は重要と言えます。

と言っても、では自分自身オリジナルの考え方があるわけではなく、例えばイノベーションと知財政策に関する研究会の報告書とか見た感想程度のものですので、あまりご期待なさらずに。

オープンイノベーションの重要なポイントは、イノベーションを積極的に社外に求め、また、社内で創出されたイノベーションをこれまた積極的に社外に公開する点にあります。イノベーションには知的財産が付随し、大胆な言い方をすればイノベーションの結果が知的財産として保護されます。従って、オープンイノベーションの積極的な展開は知的財産の流通促進無くして実現しないと言えます。上述の報告書で「オープンイノベーションにおいて知的財産は通貨としての価値を有する」といった表現がされています。イノベーションを社内に導入する際にはそれに伴う知的財産を買収するなりライセンスを取得する必要が生じますし、イノベーションを社外に公開する際にはそれに伴う知的財産も売却し、ライセンスを与え、さらには知的財産そのものも公開することが必要となります。従って、日本ではあまり実現されていないイノベーション及び知的財産の流通市場及び誰が見ても納得の行くイノベーション及び知的財産の価値評価が求められます。この点、アメリカは一歩先を進んでいるように見えます。

オープンイノベーションを推進するに当たり、どの技術を社内に残し、どの技術を社外に公開するかという判断が必要になります。一つの考え方として、コア技術は自社に残し、そうでない技術は積極的に社外に公開するという判断があります。この判断自体今に始まったことではありませんが、オープンソースという文脈から見て脚光を浴びているようにも思えます。つまり、公共性が強く独占に適しないと判断される技術分野に関する知的財産、例えばLinux関連の特許や環境技術関連の特許については権利者が積極的に公開して(時にライセンス料なしで)しまう、という動きがあります。このような例として、Open Invention NetworkEco Patent Commonsがあります。Linux関連の技術について特許を取得することに抵抗を感じる人もいらっしゃるかと思いますが、よく考えてみると誰かが特許を取らなければ他社が特許を取ってしまう可能性があるわけで、Linux関連技術について特許を取得した上でこれを広く公開すればその部分に関しては特許侵害との警告を受けずに済むわけです。ある意味、安全地帯を設けることにつながるわけです。

一方、知的財産の流通促進は危険性を伴うものでもあります。オープンイノベーションの提唱者であるHenry Chesbrough教授の最新作である「オープンビジネスモデル」ではオープンにすべきはイノベーションではなくビジネスモデルであると説き、その上で知財の流通促進を積極的に行っている企業が紹介されています。しかし、知的財産の流通促進は、埋もれていた優秀な技術及びそれに付随する知的財産がいわゆるパテントトロールに渡ってしまう可能性をも高めてしまう可能性があります。当然、R&Dを行っている企業にも同一のチャンスがありますので一律にパテントトロールに有利であるとは言えません。ただ、上述の「オープンビジネスモデル」で紹介されている企業の中にはパテントトロールとの線引きが難しそうな企業も含まれており、企業としてもオープンイノベーションは両刃の剣となりかねません。

いずれにしても、上に書いたようにオープンイノベーションの流れは企業にとって積極的に取り組むべき課題であることには間違いありません。これに伴い、一定の範囲で知財もオープン化が進むと考えますが、さて、どこまで進むのかは議論が分かれるところです。時にオープンソース推進者は知的財産制度そのものの否定の議論をしがちですが、これは現実的とは言えません。一番穏当なのは、上述したコア技術とそうでない技術との線引きをしてコア技術の知的財産はきちんと自社内で保護するという指針かと思います。ただ、オープンソースの流れも無視できませんので、問題の多いソフトウェア関連発明のみ別の特許制度とし、差止請求を認めないといった制度改革(前にご紹介したEPOのScenarios for the futureでSoft IPとして言及されている制度です)もあり得るかもしれません。

生まれ来るこどもたちのために

たまには知財と全然関係ない話を。今日会社からの帰り道に聞き覚えのある歌が流れていました。ふと足を止めてみると、なにやらプロモーションビデオらしき映像が街中のスクリーンに。歌は、オフコースの「生まれ来るこどもたちのために」でした。この歌、発表当初から知っていて(歳がばれますね(^_^;))、メロディも秀逸ですがそれ以上に歌詞が結構刺激的で印象に残った歌です。こういったBLOGでは著作権の関係で歌詞は紹介できないのでちょっともどかしいのですが、かいつまんで言うとその当時(1979年ですからロッキード事件とかがあった頃です←知らない人のためにWikipediaを引用しておきました)政治的不満がたまっていて日本の行く末を憂い、「生まれ来るこどもたちのために」何ができるかを問い、一人でも進んでいく静かな決意を語っている歌詞です。

オフコース及びソロの小田さんの歌詞というのは時にして「あなた」という対象を女性ではなく子供に置き換えても違和感のないものがあるのですが、これは最初から「生まれ来るこどもたちのために」ということで次世代を担う子供たちを対象とした曲です。なかなか静かなテンポでスケール感の大きな曲です。何人かのアーティストもカバーしているようですし、結構有名な曲なんだな、と改めて思い知らされました。

色々調べてみると、私が聞いたのは、AIDSチャリティプロジェクトのビデオのようです。確かに、「生まれ来るこどもたちのために」我々ができることとしてAIDS問題は非常に重要なことです。

さて、曲も歌詞もここではご紹介できないので、試聴サイトをご紹介して終わりにしましょうか。

特許と経済学??(その2)

この間このBLOGでご紹介した「知財創出/イノベーションとインセンティブ」を読み進めています。前回は結構好意的な印象である旨お話ししましたが、段々と読み進めていくうちに経済理論で知的財産制度を満遍なく議論するには経済理論がそれ程進んでいないという気持ちになってきました。例を挙げると(本当に)きりがないのですが、例えばP2Pファイル交換が当たり前になってきた音楽業界において、決まり切った値付けよりも買う側が好きな額を決めるやり方の方が制作者側にとって取り分が大きくなる可能性があるという理論付けをしており、その際に値付けのやり方を正当な額の上下にランダムに設定するといった仮定をしています。気に入らない音楽については正当な額よりも下回る値付けが続くであろうことを無視しているかのように。また、改良発明とインセンティブとの関係に関する議論でも、単一の基本発明とそれに基づくまた単一の改良発明についてしか議論がされておらず、n対nについての議論はまだまだのようです。

確かに、経済学理論はどちらかというと大規模のデータを処理することには慣れておらず、金融工学においてようやくブラック=ショールズ方程式のようにrandomnessを正規分布に仮定してこの正規分布に乗るデータについて処理を可能としています。また、知的財産に関するデータそのものがどのような法則に従って動いているか(例えば企業のR&D費用の増加は特許出願件数の増加につながるのか、つながるとすればどのような関数で記述できるのか)が未だ解明されていないので、そもそも経済学理論による解析ができるのか、という根本的な疑問があります。

私がこのところ注目しているのが、経済物理学という学問です。この学問は、経済に関する大規模データを物理学的に解明することができるか、ということを研究しています。まだ歴史の浅い学問であり、経済学者からも結構批判のある学問のようですが、近年の大規模データベースの構築及びコンピュータの処理速度向上に伴ってデータが何らかの物理学的法則に則って行動するのではないか、という期待を持って研究されているようです。知的財産に関する大規模データベースというと、一番に思い浮かぶのが特許電子図書館(IPDL)に格納されているデータベースです。このデータベース内に保管されているデータ内に何らかの相互関係があるのか、あるいは、他の統計データとの間にどのような関係があるのかを検証することで、新しい知見が得られるかもしれません。当然、今言った方法論は過去様々な角度で検証されてきているのですが、新しい方法論が見つかることを期待しています。

経済産業研究所でも来年3月に「大規模業務データから何を学ぶか-経済学と物理学の統合アプローチ」というシンポジウムを開催するそうですし、ちょっと注目しておきたい分野です。

製品の低価格路線

このところ2回ほどこのBLOGで話題にした低価格路線、超低価格PCやPNDは破壊的イノベーションで説明できそうですが、低価格路線そのものは破壊的イノベーション以外の理由で起こるようにも思えます。例えば、最近はNokiaを始めとして世界的にトップシェアを競う携帯機器メーカーは低価格端末をものすごい量販売することでシェアを高めています。これは、発展途上国を中心に低価格端末に値頃感のあるマーケットをNokia等が重視する戦略をとっているからだと思っています。日本の携帯機器メーカーは中高級端末を製造するのに長けているわけですが、世界的に見て中高級端末を購買できる階層は限りがありますので、世界的には大したシェアをとれずにいるように思えます。結局、それは携帯端末をグローバルに販売する気があるのかないのか、という戦略の分かれ目のようにも見えます(日本の携帯機器メーカーが中高級端末に偏ってしまったのは国内の携帯機器端末の開発手法にもよるとの話もありますが)。

超低価格PCの場合、今のところ先進国を中心に販売が進行しているようですが、当然のように発展途上国にとっては今まで手の届かなかったマーケットに対して魅力的な価格帯でのPCが販売されるわけですから、超低価格PCはマーケットそのものを一気に拡大するポテンシャルを持っています。このような観点で作られたものとして、他にはインドのタタモータースが発売を予定しているナノという自動車があります。この場合、国民的自動車という観点で作られたので、厳密にはマーケットのグローバル化とは違うのですが、低価格路線によりマーケットを一気に拡大するポテンシャルを持っているという意味では共通すると思っています。昔は、トヨタがパブリカを国民的自動車として販売しましたね。

こういった低価格路線の製品を製造する場合、発展途上国で設計から製造までするならコスト的に可能性がありそうですが、先進国で設計から製造までしたのではコスト的に割が合いません。そうなると、電子機器の場合、Foxconnのような(巨大)EMSに設計から製造まで委託することになります。ブランドを持つメーカーは製品仕様を提示するだけです。こうなると、メーカーはブランドイメージを保ったまま自社の販売網を利用して販売するだけ(だけ、というと語弊がありますが)ですね。

マーケットのグローバル化は、製造業という概念を根底から覆す発想が必要と言えます。ただ、低価格路線の製品の場合、中国製DVDプレイヤーの場合のように知財のコストが製品原価に占める割合が高くなりますので、知財のコストを織り込んでなお利益を出せる体質が必要となります。

特許担当者あれこれ

何度かこのBLOGでも書いたように、私はかつて毎年の特許出願件数が200件ほどの企業の特許担当者として勤務していました。実質自分が入社してから特許出願体制が確立したようなもので、当時の部長及び同僚とともに一から作り上げる楽しさをenjoyさせてもらった気がします。事業範囲も狭く、同業他社の毎年の特許出願件数も同じように200件程度でしたから、大抵の同業他社の特許出願の内容は覚えてしまっており、パテントポートフォリオマネジメントはたいそうなデータベースを用いずとも頭の中に出来上がっている状態でした。出願前の特許調査もほとんどの場合(展示会に出展するとか緊急な場合を除き)事前に徹底して行うことができ、設計回避や第三者特許対応を比較的余裕を持ってすることができました。今考えると結構理想的な権利形成業務ができたのではないか、と思っています。

ただ、ほぼ数年で立ち上げた特許出願体制ゆえ、ある程度歴史のある大企業が有する過去の経験から裏付けられたノウハウに欠けることは認めていました。そこで、ある機会があったので、自分の勉強のために大企業の知財部門に転職することにしました。

大企業でかなりの件数の特許出願を毎年行っているだけあって、体制もやり方も非常にシステマティックですし、なにより特許出願をマスで管理する発想にはびっくりもし納得させられるところもありました。ただ、特許出願件数が多い分パテントポートフォリオマネジメントを緻密にできるかというと万全とは行きませんし、出願前の特許調査もやってはいるものの徹底的にできるとも限りません。

どちらがいいか、簡単に判断はできませんが、各企業には企業なりの課題があり、苦労があると言うことのように思います。前にいた会社の場合、いいことばかり書いてしまいましたが、私が所属した頃の一番の課題は発明者からの発明発掘をいかにシステマティックにするか、ということでした。知財に関する意識がまだまだ低かったので、こちらが定期的に御用聞きに行かないと新規商品に関する情報を提供してくれなかったり、最悪の場合全く情報を提供することなく新商品が展示されてしまったりしたこともありました。また、年間の特許出願件数が200件程度になるとシステムの導入を検討する時期だったのですが、これも手つかずで終わってしまいました。理想的には、前の会社の丁寧さを持って今の会社の権利形成業務に当たればいいのですが、過去のしがらみ等があってなかなか一人で頑張っても大変なことが多いです。

ちょっと愚痴になりかけたので今日はこの辺で。

日米の特許出願件数の順位逆転に思う

ここ数日、パテントサロンでも色々な新聞でも紹介されていますのでご存じの方も多いと思います。世界知的所有権機関(WIPO)が2008年度版の世界特許報告を公表しました。結構どのニュースもメインに取り上げていたのが、日本の国内特許出願が米国に抜かれて40年ぶりに2位になったということでした。出願件数というのは各出願人の出願戦略の総和的な意味を持つので件数だけを取り上げて云々するのはあまり意味のないことのように思うのですが、一方でその国のR&Dの勢いを表すとも言えなくもないのでニュースソースとしては大事なのだろうと思います。

日米の順位逆転についてあまり詳しく論じた記事がないので、自分なりに考えてみます。日本の国内特許出願の順位を詳細に見てみると、かつて上位に名を連ねていた大手総合電機メーカーの幾つかがかなり出願件数を減らしているのに対し、大手自動車メーカー(及び大手部品メーカー)及び業績好調な事務機器メーカー(1社ではないですよ)が出願件数を伸ばしていて、勢力地図が大きく変貌を遂げていることがわかります。ちなみに、特許庁はこういった公式の数字を出していないのですが、ここ2年ほどの特許行政年次報告に付属している統計数字をちょっと加工すると(CSVデータで公表してくれているのでこんな芸当ができます)大体の出願件数ランキングが作れます。これは大きくいえば日本の産業界の勢力地図が大きく変貌しているとも言えます。特に、自動車メーカーの場合、ガソリン車からエコカーへのターニングポイントに位置していたり、安全技術の一環としてのエレクトロニクス技術の応用といった今まで自動車業界がR&Dを行ってきていなかった分野へ進出していることが大きな要因のように思えます。このような出願件数ランキング上位の出願人の出入りが一時的に日本の国内特許出願の件数を減らしているのではないかと思っています。事実、ここ数年日本の国内特許出願の件数は微減傾向にあり、いつ米国に抜かれてもおかしくない状況にありました。

一方、米国の国内特許出願を見ると、日本企業が旺盛に出願しているのですが、加えて欧州、韓国、中国からの出願数も増加していることがわかります。登録件数ランキングは米国特許庁が数年前から公表しなくなった(ランキング公表が特許の質とは関係ないのではないかといった理由で)のですが、IFIという特許調査会社が毎年自身のデータベースで検索した結果を発表してくれています。このランキングでは日本企業+韓国+欧州といったところしか見えてきませんが、上述の特許行政年次報告に公開されているデータを見ると各国から米国へ特許出願が集中してされていることがわかります。つまり、米国はやはり世界的に見ても巨大な市場ですからこの市場での優位性を保つため各国とも特許出願を旺盛に行うのだろうと思えます。その結果が国内特許出願の順位に現れているのだと思えます。

現実に、米国特許庁は出願件数の急激な増加に苦しんでおり、特許査定率も急激に低下するとともに審査待ち期間もかなり長くなってきています。それでも、審査官を大幅に増員することで審査待ち期間の長期化に歯止めをかけようとしており(実際に一定の効果はあったようです)、色々な施策をとって状況を改善する努力をしているようです。昨年に予定されていた規則改正(分割出願数の制限など)もその流れの一環です。

さて、日米の順位逆転は今後も続くかというと、当面はこの状態が続くように私は見ています。それは、日本の国内特許出願を基礎とした外国出願の率(特許行政年次報告ではグローバル率と称しています)は依然として低く、まだまだ国内特許出願のみに止まっている件数が多いからです。グローバル化の時代、日本のみを市場とする産業は限られており、世界的な市場拡大を図るのであれば米国をはじめとした世界出願の必要性はもっと高まると思えます。その流れの中で、日本への国内特許出願はもっと絞り込まれるのではないかと考えられます。この点、先日の私のBLOGの記事でちょっと言及し忘れました(すいません)。理想的には国内特許出願=外国特許出願なのですが、審査請求件数全件と同じでちょっとこれは理想論過ぎる(これも前に言いましたね)のでグローバル率を70~80%にするのが目標でしょうか。一方、米国へ特許出願する流れは当面やむことはないと思われます。米国の景気減速はいかんともしがたいですが、世界最大の市場であることは当面揺らぐことはないでしょうから。

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