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オープンイノベーションと知的財産

このBLOGでイノベーションと知的財産との関係、及びオープンイノベーションについては自分の考え方を時々書いてきましたが、よく考えるとオープンイノベーションと知的財産との関係については書いてこなかったように記憶しています。ちなみに、ちょっと前に「知財はオープンイノベーションを阻害するのか」といった題で記事を書いたのですが、ここではオープンイノベーションとオープンソース運動とを混同して書いており(大汗)、本当は全面的に書き換えたいところですが、一旦公表したのでこれはこれで大恥の証拠として残しておきます。オープンイノベーションの流れは企業にとって積極的に取り入れる必要のあるものであり、オープンイノベーションの環境下において知財はどうあるべきか、という議論は重要と言えます。

と言っても、では自分自身オリジナルの考え方があるわけではなく、例えばイノベーションと知財政策に関する研究会の報告書とか見た感想程度のものですので、あまりご期待なさらずに。

オープンイノベーションの重要なポイントは、イノベーションを積極的に社外に求め、また、社内で創出されたイノベーションをこれまた積極的に社外に公開する点にあります。イノベーションには知的財産が付随し、大胆な言い方をすればイノベーションの結果が知的財産として保護されます。従って、オープンイノベーションの積極的な展開は知的財産の流通促進無くして実現しないと言えます。上述の報告書で「オープンイノベーションにおいて知的財産は通貨としての価値を有する」といった表現がされています。イノベーションを社内に導入する際にはそれに伴う知的財産を買収するなりライセンスを取得する必要が生じますし、イノベーションを社外に公開する際にはそれに伴う知的財産も売却し、ライセンスを与え、さらには知的財産そのものも公開することが必要となります。従って、日本ではあまり実現されていないイノベーション及び知的財産の流通市場及び誰が見ても納得の行くイノベーション及び知的財産の価値評価が求められます。この点、アメリカは一歩先を進んでいるように見えます。

オープンイノベーションを推進するに当たり、どの技術を社内に残し、どの技術を社外に公開するかという判断が必要になります。一つの考え方として、コア技術は自社に残し、そうでない技術は積極的に社外に公開するという判断があります。この判断自体今に始まったことではありませんが、オープンソースという文脈から見て脚光を浴びているようにも思えます。つまり、公共性が強く独占に適しないと判断される技術分野に関する知的財産、例えばLinux関連の特許や環境技術関連の特許については権利者が積極的に公開して(時にライセンス料なしで)しまう、という動きがあります。このような例として、Open Invention NetworkEco Patent Commonsがあります。Linux関連の技術について特許を取得することに抵抗を感じる人もいらっしゃるかと思いますが、よく考えてみると誰かが特許を取らなければ他社が特許を取ってしまう可能性があるわけで、Linux関連技術について特許を取得した上でこれを広く公開すればその部分に関しては特許侵害との警告を受けずに済むわけです。ある意味、安全地帯を設けることにつながるわけです。

一方、知的財産の流通促進は危険性を伴うものでもあります。オープンイノベーションの提唱者であるHenry Chesbrough教授の最新作である「オープンビジネスモデル」ではオープンにすべきはイノベーションではなくビジネスモデルであると説き、その上で知財の流通促進を積極的に行っている企業が紹介されています。しかし、知的財産の流通促進は、埋もれていた優秀な技術及びそれに付随する知的財産がいわゆるパテントトロールに渡ってしまう可能性をも高めてしまう可能性があります。当然、R&Dを行っている企業にも同一のチャンスがありますので一律にパテントトロールに有利であるとは言えません。ただ、上述の「オープンビジネスモデル」で紹介されている企業の中にはパテントトロールとの線引きが難しそうな企業も含まれており、企業としてもオープンイノベーションは両刃の剣となりかねません。

いずれにしても、上に書いたようにオープンイノベーションの流れは企業にとって積極的に取り組むべき課題であることには間違いありません。これに伴い、一定の範囲で知財もオープン化が進むと考えますが、さて、どこまで進むのかは議論が分かれるところです。時にオープンソース推進者は知的財産制度そのものの否定の議論をしがちですが、これは現実的とは言えません。一番穏当なのは、上述したコア技術とそうでない技術との線引きをしてコア技術の知的財産はきちんと自社内で保護するという指針かと思います。ただ、オープンソースの流れも無視できませんので、問題の多いソフトウェア関連発明のみ別の特許制度とし、差止請求を認めないといった制度改革(前にご紹介したEPOのScenarios for the futureでSoft IPとして言及されている制度です)もあり得るかもしれません。

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