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MOT教育と知的財産

MOT社会人大学院には、大抵の場合知的財産に関する科目が設けられています。私が通った社会人大学院にも知的財産権という科目があり、自分にとってはある意味楽勝科目だったので(実際講師から「間違ってないよね?」と聞かれたことがあり)しっかり履修しました。MOTという立場からして(広くいえば企業経営という立場からして)知的財産は必要不可欠な項目の一つとして認識されるようになり、しっかり科目として取り上げられるようになったのはうれしい限りです。

MOTらしい知的財産って何だろうという疑問は、実際に科目を履修した頃からずっと持っていました。自分が受けた授業は、いわゆるエンジニア向けの基礎的な知的財産権に関するテキストを使ったものでした。これも一つのやり方です。MOT社会人大学院の受講生が知的財産の専門家になる必要は全くないので、基礎知識を知り、実際に様々な経営判断(そこまで行かなくても事業上の判断でもいいですが)をする際に知的財産の側面からの思考ができればいいわけです。しかし、経営に資する知財を標榜するのであれば、基礎知識を教えるだけではなく、経営の実務に活かすことのできる知的財産の講義があってもしかるべきです。

例えば、事業部門において新商品を開発する際に知的財産上どのような点に留意すべきか、といったレポート課題を出して勉強させることが考えられます。この課題、意外と難しいのです。第三者特許の調査、自社特許の棚卸し、そしてその結果に基づくパテントマップ作成までは基本段階です。パテントマップ作成に基づく設計方針の検討は次の段階です。結構抜けやすいのが、新商品設計に伴う購買上の処理です。新商品ですから他社から部品、資材を購入することが往々にして考えられます。この際、その部品、資材に関する知的財産の免責条項をどうやって入れるかが後々問題になることが多いです。設計方針が決まれば、必要な知的財産のライセンス交渉、新しい設計事項に関する特許出願、意匠出願といった通常の流れが待っています。一方、設計回避がどうしてもできず、諸事情によりライセンスを取得することができない場合、リスクを負って事業を進めるか、やはり撤退するかの重要な判断をすることになります。

他に、受講生が勤務する会社において100件の外国出願を行うことが決定された場合、どういった出願をどの国にどれだけの件数出願するか、といったレポート課題を出して勉強させることも面白いです。件数配分は外国出願戦略の基本中の基本であり、しかも肝ですから、自社の事業分野に照らしてどの国に出願件数を配分するのか、また、パリ優先権出願とPCT出願とをどうやって配分するか、といった検討事項に基づいてどのような解を出すかが重要となります。

さらに、こんな出題も考えられます。例えば、電池業界において自社を含む4社が次のような状況にあった場合、事業戦略(アライアンスを中心に)及び知財戦略はどのようにあるべきかを考えよ、という問題です。前提条件として、

自社…製造量世界2位、伸び率世界2位、有力特許世界2位
A社…製造量世界1位、伸び率世界4位、有力特許世界1位
B社…製造量世界3位、伸び率世界3位、有力特許世界3位
C社…製造量世界4位、伸び率世界1位、有力特許世界4位

これは相当な難問です。事業戦略という観点からは誰と手を組むか(特許のクロスライセンスも含んで)、知財戦略からは誰と手を組んで誰を特許で攻撃するか、という視点で考えることになります。

もう一つ、歴代の有名な特許訴訟において、敗訴した企業はそもそもいかなる事業戦略及び特許戦略を取るべきであったか、という問題も考えられます。歴代の有名な特許訴訟としては、例えばハネウェルvsミノルタ、セガvsコイル、コダックvsポラロイドといったところが考えられます。これらの特許訴訟は、事業戦略の展開という側面からも有力な示唆を与えてくれると思います。

こんな授業だったらMOTで面白くできるように思いますね。だれかしないかな~。協力しますよ(^^)。

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