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特許と経済学??(その2)

この間このBLOGでご紹介した「知財創出/イノベーションとインセンティブ」を読み進めています。前回は結構好意的な印象である旨お話ししましたが、段々と読み進めていくうちに経済理論で知的財産制度を満遍なく議論するには経済理論がそれ程進んでいないという気持ちになってきました。例を挙げると(本当に)きりがないのですが、例えばP2Pファイル交換が当たり前になってきた音楽業界において、決まり切った値付けよりも買う側が好きな額を決めるやり方の方が制作者側にとって取り分が大きくなる可能性があるという理論付けをしており、その際に値付けのやり方を正当な額の上下にランダムに設定するといった仮定をしています。気に入らない音楽については正当な額よりも下回る値付けが続くであろうことを無視しているかのように。また、改良発明とインセンティブとの関係に関する議論でも、単一の基本発明とそれに基づくまた単一の改良発明についてしか議論がされておらず、n対nについての議論はまだまだのようです。

確かに、経済学理論はどちらかというと大規模のデータを処理することには慣れておらず、金融工学においてようやくブラック=ショールズ方程式のようにrandomnessを正規分布に仮定してこの正規分布に乗るデータについて処理を可能としています。また、知的財産に関するデータそのものがどのような法則に従って動いているか(例えば企業のR&D費用の増加は特許出願件数の増加につながるのか、つながるとすればどのような関数で記述できるのか)が未だ解明されていないので、そもそも経済学理論による解析ができるのか、という根本的な疑問があります。

私がこのところ注目しているのが、経済物理学という学問です。この学問は、経済に関する大規模データを物理学的に解明することができるか、ということを研究しています。まだ歴史の浅い学問であり、経済学者からも結構批判のある学問のようですが、近年の大規模データベースの構築及びコンピュータの処理速度向上に伴ってデータが何らかの物理学的法則に則って行動するのではないか、という期待を持って研究されているようです。知的財産に関する大規模データベースというと、一番に思い浮かぶのが特許電子図書館(IPDL)に格納されているデータベースです。このデータベース内に保管されているデータ内に何らかの相互関係があるのか、あるいは、他の統計データとの間にどのような関係があるのかを検証することで、新しい知見が得られるかもしれません。当然、今言った方法論は過去様々な角度で検証されてきているのですが、新しい方法論が見つかることを期待しています。

経済産業研究所でも来年3月に「大規模業務データから何を学ぶか-経済学と物理学の統合アプローチ」というシンポジウムを開催するそうですし、ちょっと注目しておきたい分野です。

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