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米国ビッグ3の経営危機に思う

本日の話題は、あまり適切な裏付け資料がないままに書いているのでもしかしたら間違いだらけかもしれませんが、自分なりの感想、ということでご容赦を。

ここ数ヶ月、アメリカのビッグ3と呼ばれる米国自動車メーカーの危機的な経営状況及びこれに対する政府の救済策(の是非)についてニュースで報道されています。では、なぜこのような危機的な経営状況に至ったのか。ちょっと考えてみることにします。

米国の自動車産業というのは、私が考えるとちょっと特殊な産業であるように思います。つまり、日本の自動車産業が、自国の市場がそれほど大きなものでないこともあり、かなり以前から海外への輸出を積極的に行っており、例えばトヨタ自動車の場合、2007年度で国内での販売台数が200万台程度であるのに対して海外での販売台数が600万台程度と海外の販売比率が圧倒的に大きいのに比較して、米国の自動車産業は、米国という世界一の市場を抱えていることもあり、例えばGMの場合、2007年度第2四半期でみると海外の販売比率が58%と(まあそれでも大きいんですが)日本の自動車産業に比較してそれほど大きなものではありません。

米国市場のことを取り上げているのは、その特殊性にあります。米国の自動車は、大別していわゆる乗用車とSUV、ピックアップトラック、ミニバンを包括する小型トラックとに分類されます。そして、ちょっと日本の常識では考えにくいところもあるのですが(私だけの常識かな)ここ数年で考えると、乗用車と小型トラックとは販売台数でみるとだいたい50%ずつあります。乗用車と小型トラックとで比較すれば燃費のよさは乗用車が圧倒的にいいわけです。ここ数年は米国の自動車市場は米国市場の好景気に引っ張られて燃費のことを考慮することなく小型トラックの売れ行きが非常によく、米国の自動車産業もこの傾向に引っ張られて小型トラックの開発及び生産を積極的に行ってきました。しかし、この1年ほどのサブプライム問題を発端とする不景気及び原油価格の高騰に伴うガソリン価格の上昇により、小型トラックが一気に売れなくなり、これによりビッグ3の業績の急速な悪化を招いたと考えられます。

考えてみると、この傾向というのはある意味で米国の文化とも言えるのかもしれません。かつて、米国のガソリン価格は1ガロン(約3リットル)あたり1ドル台でしたが、今年は一時期的に4ドル台に到達しました。1ガロンあたり1ドル台というのは日本で考えると信じられない安い価格です。これでは燃費云々を議論する気にはなりません。これが一気に4ドル台に突入したのですから、いかなアメリカ人とて燃費のことを考慮せざるを得なくなったと言えます。燃費の良さに関しては日本の自動車産業(及び韓国の自動車産業)の得意領域ですから、一気に乗用車、特にコンパクトカーが売れるようになったわけです(とは言え、景気悪化によりコンパクトカーそのものも売れ行きが急速に悪化していますが)。

こんなわけで、米国の自動車産業は燃費のよい自動車の開発にかまけていたと言えます。景気悪化を何年も前から予測することは難しいとは言え、コンパクトカー市場を日本及び韓国の自動車産業に明け渡し、自らは利幅の大きい小型トラックに集中する戦略はいかがなものかと思えます。

そうは言っても、米国の自動車産業は米国にとって4万人もの従業員を抱える巨大産業となっています。特に、基幹製造業のほとんどを手放してかなりの製品を輸入品で賄っている米国にとって、自国に残された貴重な製造業である自動車産業まで手放すという判断はできないでしょう。こうなると、政府による救済策はやむなし、との判断になると思われます。また、ビッグ3が経営破綻すれば米国社会に与える影響は計り知れないところがあります。当然、ビッグ3の経営トップが認めているように、これまでの経営判断のミスについては徹底的な経営責任が問われると思いますので、現状のままでビッグ3が救済されるという方策は考えにくいでしょう。現在の経営陣の総退陣、厳しいリストラは避けられないところです。ただ、現在の経営陣が燃費のよい車の開発を進めるという発言をしているのは遅きに失した感があります。一つの車を開発して販売するまで4~5年という年月がかかります。これだけの時間だけビッグ3が持ちこたえられるのか、ちょっと疑問があります。

公的資金導入に対する市民の抵抗が大きいのは心情的にわからないでもありません。ただ、上にも書いたようにビッグ3の経営破綻はどうしても避けなければならない事態だと思うので、今回ばかりは何らかの形で救済が必要でしょう。とは言え、ビッグ3自体が車種のラインアップを含めて構造改革を行わない限り、明日はないと言えます。

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コメント

ある弁理士さん、こんにちはhappy01業界の方からコメントをいただけるとありがたいです。

小型トラックの比率が高いのにはそういった理由があったのですね。日本と比較してどうしてこれだけ売れるのか疑問だったのですが、よくわかりました。

技術開発については何となくそうではないかとの推測をしていました。例えば、トヨタ自動車は現在年間6000件程度の国内特許出願をしていますが、GMなどのビッグ3が米国でどれほど特許出願をしているかと考えると大したことはなさそうであろうと思われ、この点からもビッグ3の技術開発力は日本企業に比較して劣っているだろうと思っていました。

ある弁理士さんがおっしゃるように、ビッグ3が復活するには、極端な話ではありますが例えばGMがスズキから自動車を輸入してGMブランドで売るような方策しか考えにくいということは納得できるところです。短期的な観点からはちょっと復活の要因は見つけにくそうです。

以前自動車業界に身をおいていた者からコメントさせて頂きます。
まず、アメリカ市場において小型トラックの比率が高いのは、税金や保険の額が乗用車に比して安いからです。すなわち維持費が安いのです。このため、若者は乗用車やスポーツカーに乗れないということを聞いたことがあります。

また、私が知っているビッグ3の開発手法は、自社内で開発するのではなく「商社」のようにサプライヤーから「技術」を買ってくるという手法でした。これは、株主重視で手っ取り早く「利益」を出すため、仕方なかったのでしょうが、この時点で、メーカーとしての「テイ」を無くしていたと思います。

ご指摘のように、一時的に資金を注ぎ込んでも、ビッグ3は立ち直れないと思います。現時点で、技術もなければ「純粋な技術者」もいないからです。
今思えば、ダイムラーがクライスラーを「切った」時点で、ダイムラーはこのことを認識していたように思います。
彼らが生き残る唯一の道は、日本の技術や車をそのまま「商社」のように輸入して販売するしかないでしょう。極端な話かも知れませんが、GMなどはスズキから小型車や軽を輸入して、GMバッチで売り出すようなことをしなければ駄目だと思います。

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