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グローバル化する企業と特許の対応

以前の記事に書いた、「MITチームの調査研究によるグローバル企業の成功戦略」という本を読了しました。読後の感想は結構有意義だったと思っています。この本は、世界中のグローバル企業を実地調査してグローバル企業の戦略を探るとともに、企業がグローバル化することによりアメリカ本国に産業が残るのかどうか、ということを検討しています。

結論からすると、グローバル企業は同じような製品を製造していてもグローバル化への対応は企業毎に大きく異なり、それは企業が有する「遺産」などに基づく、というものでした。これは、実際に企業に身を置いている自分の見聞きしたことからも頷けるものです。企業はその製品を世界的に販売するに当たり、様々な条件に基づいて最適な製造地を選択し、時にEMS等を用いて安価に製造委託し、そして、顧客にいち早く届けることに苦心しており、その戦略は企業毎に異なる条件に基づいて(時に競業他社を参考にするにしても)独自に決定されるものです。同じような製品を製造する際にグローバル化への対応が競業他社と同じであれば同じ結果しか得られません。これでは競争になりません。本の中で日本企業が海外進出する際には子会社を設立することが多いのに対し、アメリカ企業はEMSといった海外に既にある企業を利用することが多い、という指摘も、その傾向は強いと同感しました。その理由は、本では営業秘密の保持が挙げられていましたが、製造に関するオペレーションのやり易さも理由のように思えます。

また、企業がグローバル化することにより自国に有力な産業が残るかどうかについて、著者は肯定的な見方をしていましたが、アメリカの現状を見ると、アメリカの基幹産業(自動車産業、IT産業など)についてはR&D力はどんどん低下しているように思え、個人的には楽観視できないように思えました。

本の中で指摘されていたことで興味を持った点として、企業が製造拠点を海外に移転するなり海外の外注を利用することを決定するfactorとして人件費が低廉であることはそれほど大きなものにはならない、ということでした。つまり、人件費が低廉な国に進出する場合、労働者の質の低さ、販売地への物流費の高さ、販売地から製造地までの距離が遠くなることによるタイムラグ、その他諸々の要因を考慮すると、人件費が低廉であることのメリットはごく小さくなってしまう、ということです。

さて、(また話題をがらっと変えて申し訳ありませんcoldsweats01)企業がグローバル化するに伴い、知的財産戦略もこれに合わせて検討する必要があることは言うまでもありません。端的には、「どの国で知的財産権を取得し、活用するか」という点が一番の問題になります。単純には製造地と販売地の双方で権利取得を図ることになりますが、priorityとしては販売地が優先されます。と言うのも、販売地では完成品が市場にオープンにされますので、権利侵害の判断がやり易くなりますし、工場内での製造工程を調査するのは容易ではないからです。当然、完成品を辿って工場から出荷された時点で押さえることも可能ですから、製造地で権利取得することも重要ではあります。もう一つ考えるべきことは、製造地は往々にして発展途上国であり、発展途上国の知的財産法制度が完備されていないことが多いので、製造地での権利行使に一定の限界がある場合もあります。

電機メーカーの全世界的な出願戦略を見ると、やはり大市場たる販売地である米国、欧州、中国を優先して考えているようです。今後は、BRIsが市場としてどんどん成長してくるでしょうから、これらの国における権利取得が課題となるように思えます。また、MPEGのような技術標準に係る特許の場合、製品カテゴリー全てを包括して権利範囲にできることもあり、このような場合は広く製造地にも権利取得を図ることがあるようです。PCTの活用が有効となります。医薬品や日用品メーカーの場合、全世界的にくまなく販売されることもあってか、1つの特許が数多くの国で取得されている傾向があるようです。

まあ、予算に限りがあるので担当者は色々と知恵を出しているわけで、その努力には頭が下がる思いです。

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