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知的財産制度のグローバル化?

この世界的不況のさなかに読む本としては不適切かもしれませんが、「グローバル企業の成功戦略」という本を読み進めています。この本は、企業活動のグローバル化がどのような影響を及ぼしているのか、また、グローバル企業と呼ばれる企業は経済活動のグローバル化にどのような対応をしているかを500社にも上る企業の実地調査から探り出そうとするものです。3年ほど前に出版された本ですから、出版された当初は非常に時流に乗ったものだっただろうと思います。しかし、世界的不況の中で一部の国家が保護主義的政策に走ろうとする状況下でグローバル化を肯定的に捉えるのは難しいですし、また、アメリカ発の不況がこれほど早く世界的に波及してしまったのもある意味で経済活動のグローバル化が原因であるとも言えます。加えて、何年も前からグローバル化そのものの弊害を唱える人々は大勢いて、その人たちの意見の中には傾聴に値する部分もないわけではないので、現時点においてグローバル化を無条件に礼賛する気持ちにはなれないです。いずれにしても、読了した時点でまた感想を書けたら書き記します。

で、グローバル化という視点で知的財産制度を考えると(がらっと変わってすいません)、経済活動のグローバル化がこれほど進んでいるにもかかわらず知的財産制度のグローバル化はちっとも進展していません。もともとパリ条約には特許独立の原則が規定されていますので知的財産制度がグローバル化すべきかどうかという根本的な疑問もないわけではないのですが、一方で企業活動がグローバル化すれば複数の国でより効率的に知的財産権を取得するニーズが高まるわけで、知的財産制度もグローバル化の影響を受けることは必須です。そもそもPCT(特許協力条約)自体が世界統一特許の前提として締結されたわけですから、知的財産制度のグローバル化というニーズは結構前からあったと言えます。

問題は、経済活動のグローバル化に対する批判と同様に、各国の利害関係の対立、特に先進国対発展途上国という図式が知的財産制度のグローバル化の進展を一筋縄ではいかないものにしていることです。日米欧3極特許庁は積極的に知的財産制度のグローバル化に向けて様々な動きをしています(話は多岐にわたりますので、「特許」「ハーモナイゼーション」で検索していただけるようお願いします、参考までに特許庁のこのページを紹介しておきます)が、議論は遅々として進まないように見えます。当然、2国間条約による審査ハイウェイであるとか、日米欧3極特許庁による出願様式の統一であるとか、既に実現化している施策もありますので、全く進展していないわけでもありませんし、将来に期待できるところは多々あります。

知的財産制度のグローバル化は、経済活動のグローバル化と同様に、各国において存在する権利取得等の際の障壁を低くすることになりますから、各国毎の権利取得等に当たって生じるローカライゼーションに関与している人々の雇用の機会を奪う可能性を孕んでいます。例えば、欧州特許庁では最近登録の際の翻訳文提出要件を緩和するLondon Agreementが発効しましたが、この発効を遅らせていたのが、翻訳文を作成する機会が減少することを危惧した代理人の存在であると言われています。今後、例えば2国間条約によって特許の相互認証制度が成立すれば、権利取得に関与している代理人はそれまでよりも代理人手続が簡略化されることで請求できる費用がぐっと切り詰められることになり、結果として代理人事務所の規模が縮小されることが予想されます。これを致し方ないことと考えるか、何らかの保護が必要と考えるか、難しい問題です。ま、こんなことを考えている人は少ないでしょうけど。

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