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高機能・高価格路線、それとも低価格路線?

ソニーが大幅な業績下方修正をして、今年度は営業赤字になるようです。まあ、これだけ世界的な不況の中でグローバル化を著しく進めている企業にとって、トヨタも赤字ですから当たり前といえば当たり前なのかもしれません。ソニーの赤字の原因は世界的不況、円高差損が原因のようですが、解説した新聞記事の中には(ネット記事がないのでリンクがなくてすいません)「ソニーはかつては高機能・高価格路線でいたが、現在はソニーブランドといえども低価格でなければ消費者は買ってくれない」という指摘がありました。

この指摘、グローバルな市場を求める企業にとっては最早避けて通れない道なのだと思います。つまり、規模の経済を求めるならば高機能・高価格路線ではボリュームがかせげず、収益を伸ばすことは難しいのです。ソニーブランドのプレミアムだけで勝負するのは一定の限界があるわけです。事実、アメリカの家電販売形態もウォルマートやサーキットシティ(倒産してしまいましたけどね)のような低価格商品を中心とする小売店が大きな割合を占めるようになり、このような小売店で商品競争力を有するにはやはり高機能・高価格路線ではなく「良い機能の商品を低価格で」という路線も必要なのだと思います。

問題は、高機能・高価格路線を放棄して低価格路線に突っ走るのか、それとも高機能・高価格路線と並行して低価格路線も追求するのか、ということです。ランチェスターの法則によれば、トップ企業は全方位路線、とのことです。例えばトヨタはまさに全方位路線を採用しています。しかし、ソニーのような家電メーカーの場合、事業が多岐に渡るので、各事業において全方位路線を採用したらまず共倒れしてしまうでしょう。シェアが世界1・2位の事業であれば全方位路線を採用すべきでしょうが、そうでなければニッチ戦略に走るか低価格路線に突き進むか、になるのだろうと思います。

さて、低価格路線をいずれにしても採用するとなると、グローバルな形での設計・製造を考慮しないといけません。私のBLOGの前の記事にも書いたように、日本企業は海外進出しても子会社設立を中心としており、EMSのような外注・製造委託(時にODMのように設計まで委託)を使う比率が低いようですが、このご時世では低価格路線の商品については大幅な外部への委託が必要となると思っています。製造・設計委託は社内のR&D能力の維持、及び営業秘密の保持という観点からはマイナス要因になりますが、何らかの対処策をもって進むしかないでしょう。例えば高機能・高価格路線の商品については自社内にR&D部隊を残すであるとか、低価格路線の商品は徹底的にコモディティ化を図って仮にノウハウが流出しても大事にならないであるとか、です。

こういった事態に知財がどれだけの効果をもたらすか、結構難しいところです。薄型テレビではVizioのように台湾・中国メーカーに液晶パネル調達を含めた設計・製造委託をして徹底的な低価格化を実現している会社もあります。このような会社に対して知財の側面から商品競争力をもたらす、というのは楽ではありません。と言うのも、低価格路線の商品はそこそこの機能しか持っておらず、知的財産で保護されている高機能はあまり採用されていないからです。当然、過去のR&Dの蓄積の中から有用特許を棚卸しし、権利活用することで上に書いたような会社のコスト構造を若干でも変化させる努力は必要です。しかし一方で商品自体が価格競争力を持たないと権利行使したことによる影響はライセンス料の増加しかもたらさないことになり、会社全体としての利益改善にはなりにくいと思います。

それにしても、本当に不景気ですねぇweep

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企業経営・技術経営」カテゴリの記事

コメント

知的財産権の共有は様々な困難が出ますので、共用が良いと思います。

まず、企業規模を大きくすべし、ということを述べているわけではありません。一定のブランドイメージの下にコアビジネスとして意味のある事業が存続すべきことは言うまでもありません。

また、大企業発のベンチャーというのは今までずっと成立が難しいという議論が大半を占めています。オープンイノベーションの時代、ようやく大企業発のベンチャーについても真剣に検討される時代になってきていると思いますが、それは大企業の傘の中にいるのではなく、独立した企業として存続すべきものだと思っています。

なお、知的財産権の共有は課題が多すぎて現実的でありません。これは子会社のガバナンスをどうするかという知財戦略でコントロールできる範疇を超えています。

もう企業規模を大きくしようとするのではなく、新たなニッチマーケットを発見し、そこでイノベーションを起こして活力ある事業をする活力ある社員であふれた元気な子会社をたくさん作ればどうでしょうか?
ただし、知的財産権はグループ全体で共用するのです。

お二方のコメントをまとめてしまうのをお許しください。

差別化の問題は、エンジニアの立場からすると決して差別化することを放棄しているわけではなく、コマーシャルで言っているように「ぶっちぎった」商品を作ろうと日々努力している部隊もいるわけです。ただ、どんなにぶっちぎろうとしても他社も同じようなことを考えているので、そんなにぶっちぎれないのも事実です。機能面でダメなら商品企画で、というのもありますが、これとてすぐに追従者が出てきます。ウォークマンだってすぐに類似商品の山になりましたし。それに、ぶっちぎったところを知財で保護しようにも包括クロスライセンスでいくらでも穴が出てきます。

結局のところ総合力で勝負するのが大企業の宿命になるかもしれません。そうなると体力勝負です。そうなったときにビジネス環境をできるだけ整えられるように知財部門として何が貢献できるか、知恵が必要になります。

ある弁理士さんが書かれたような「ソニーらしい商品がない」ということは外からはよく言われますが、ソニーの方々もそれは当然に意識しているものの、規模が大きくなって構造的に難しくなっていることが問題の本質であるように思います。以前にソニー出身のコンサルの方から「商品の独自性云々が言えるような市場で商売をしていては、今のように10兆円近い規模になったソニーを支えることはできない。結局、マスマーケットで商売をせざるを得ず、そうなると商品の差別化が難しくなっていくのは必然なのですよ」という話を聞いたことがありますが、差別化戦略もアップルくらいの規模が限界なのかもしれません。
その前提で知財の役割を考えると、「差別化された製品を知財権で守る」というオーソドックスな知財の考え方が適用しにくくなってくるので、オープンイノベーションという発想が出てくるのだと思いますが、知財(特許)の役割を「参入障壁」から上位概念化して、「有利な事業環境を形成するツール」と捉え直すことが必要になるのでしょう。そうすると、そのツールをどう機能させるかは個別に考えていかなければならないので、知財の機能を出発点に物事を考えるのではなく、事業環境や収益構造を把握することから始めて知財の適用方法を考えていかなければならない(だから知財の知識以上にビジネスセンスが重要になってくる)、って話になってくるのではないでしょうか。個別性への対応能力が求められる、ってところで。

ソニーさんの問題は一つ「ソニーらしい商品がなくなったこと」だと思います。大企業化してしまい、他の家電メーカーと差別化できる商品がなく、価格競争に巻き込まれ、低収益の商品しかないように思います。
以前のソニーであれば、「ウォークマン」という絶対的な商品がありました。現在、そうした商品はありますか?「高機能」という視点ではなく、「独自性」という視点で、ものづくりをしていくことが復活のカギのように思います。

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