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薄型テレビは水平分業型モデルへ

ソニーが経営体制を刷新するという発表がありました。この理由として、何度も指摘されながら赤字体質を脱することのできなかったテレビ事業のてこ入れというのがあるようです。

薄型テレビについては、このBLOGでも何度も取り上げてきた話題です。ここ数年の経営環境の変化を一番如実に表しているのが、Vizioを初めとする製造委託メーカーを巧みに使った安価な薄型テレビの登場だろうと思います。今まで、薄型テレビは垂直統合型モデルでの製造が一般的であり(Samsungだって垂直統合型モデルを徹底して極めているわけです)、ソニーがSamsungから液晶パネルを調達したこと自体が結構驚きをもって捉えられたくらいでした。それが、Vizio等の登場により、一気に垂直統合型モデルから水平分業型モデルへの変換が急務となったわけです。

テレビ事業が水平分業型モデルに転換するのを阻んでいたと思われるのが、薄型テレビのバリューをどこで持たせるかというポイントを、各メーカーが画質、デザインといった内部リソースに頼らざるを得ない部分に置いていたことや、大画面の液晶パネルそのものの調達が自社工場を含めた限られたプレーヤーしか実現できていなかったことだと思っています。しかし、Vizioを初めとするメーカーは、安価でそこそこの画質、という新しいバリューを持ち込み、それが薄型テレビ市場そのものの底辺を一気に拡大しました。また、液晶パネルも、台湾メーカーがそこそこのパネルを大量に製造していますので、製造委託メーカーへの依存が可能となったわけです。

この点、東芝はかなり前にパネルの自社製造を早々に諦め、製造委託メーカーを有効に活用するとともに、高価格モデルについては画質に関する技術を自社で独自に開発し、パネルの外部調達のデメリットを打ち消してそれほど高価格でなくても高画質な製品を提供し、市場で結構なプレゼンスを獲得しているのは注目すべきでしょう(国内だけで考えると最近はシェア2位だそうです→参考記事)。

ちょっと話を戻して、テレビ事業が水平分業型モデルになるためのマインド的な問題を挙げておきます。PCのように水平分業型モデルを徹底して極めている事業の場合、サプライチェーンマネジメントが優れていることも特徴の一つです。つまり、価格維持のために売れ残りを徹底的に排除する管理ができている、ということです。PCの販売方法は生鮮品の販売にも例えられます。1年間に3~4回のモデルチェンジをするPCにとって、売れ残りは投げ売りが避けられませんので、いかに売れ残りをせずに、しかも品不足をもたらすことなく売り切るか、というのが至上命題です。このため、各PCメーカーは厳密な市場予測をしているようです(特許公開公報を検索すると結構ヒットします)。BTO、CTOもある意味での売れ残り防止のための策です。テレビ事業に現時点でこのようなハードルを課すのは結構酷な話のように思えますが、時代の流れとして仕方ないかもしれません。売れ残りを避ける、という意味で弾力的な製造ができる体制も必要です。これを実現するためには、むしろ国内で製造することの強みがあるかもしれません。つまり、売れ残りで価格低下に歯止めがかからなくなる状況より、売り切ってしまうならば国内製造のコストでも堪えうるかもしれません。

さて、テレビ事業が水平分業型モデルに移行した段階で、市場競争力をどこに求めるかを再度考えないといけないと思っています。市場自体が急速に低価格モデルに移行していますので、そこそこの画質で安価なモデルを提供することはmustでしょう。一方で、独自機能を搭載したモデル、画質に妥協を許さないモデルも、市場全体のニーズからして外せません。これらを迅速に実現できる開発、製造体制の構築が必須です。

ただ、水平分業型モデルって知財的にはちょっと面白味に欠けるんですねぇ。外部リソースを大胆に使いますから、自社技術が発揮できる分野が限定されるので。

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