« ニッポンの発明力? | トップページ | 知的財産部門の業務改善… »

「クラウド化する世界」に思う

Amazonでは結構話題になっている、「クラウド化する世界」をやっと読み終えることができました。この著者は、クラウディングコンピューターの登場を、個別の発電所から大型発電所+送電網への移行になぞらえて歴史の必然と捉え、企業におけるデータセンターの終焉を高らかに謳った人です。この本では、上に書いた論を丁寧に説明するとともに、コンピューターシステムの歴史的変遷が社会的にどのような影響を与えたか、そして、インターネットやクラウディングコンピューターの登場が社会や人間そのものにどのような影響を与えるであろうか、ということを若干悲観論に傾いた観点に立って述べています。

私は、以前からWeb 2.0的世界がバラ色であることを唱える楽観論者の言に対してかなり引いた目で見ていたので、「クラウド化する世界」の著者の説明に納得するところもありながら、しかし、一方でやはり納得のいかない部分もあるなぁ、と思って読み進めていました(こう書くとかなり私はひねくれ者ですね)。

クラウディングコンピューターがもたらす世界がバラ色であると考える根拠の一つとして、世界中の人々の思考が全てクラウディングコンピューターの中に蓄積され、誰でもアクセス可能な状態で提示されうる、ということがあります。確かに、こうやって私がBLOGを書くことなどにより私の知識はクラウディングコンピューターの中に蓄積され、誰でもアクセス可能になるわけです。加えて、例えばAmazonのサイトで好みの本を検索するという一見能動的とは言えない行動によっても、私の本の嗜好がクラウディングコンピューターの中に蓄積され、誰でもアクセス可能になるわけです。コンピュータ学者が以前から説いている概念の一つとして、コンピュータは人間の外部記憶手段である、というものがあります。人間はつとに忘れやすい動物ですから、不揮発性の外部記憶手段としてのコンピュータを人間が常時アクセス可能になることで、人間の能力は飛躍的に向上する、ということです。

さて、上に書いたことは本当に実現できるのでしょうか。まず、人間の知識は全てクラウディングコンピューターの中に蓄積できるのか。現代において情報と呼べるものはことごとくデジタル化され、蓄積することができ、また、人間の判断や嗜好そのものをルール化することでコンピュータの情報解析能力は飛躍的に向上しています。しかし、暗黙知の概念を出すまでもなく、人間の思考や情報化される前の未分化の概念、そして感情はどうやって情報化するのか。別に人間がコンピュータより優位でなければならないという議論をするつもりはありませんが、人間の知識を全て情報化してもなお人間という存在の全てには到達し得ないと思えるのです。

このあたり、ちょっと話が飛躍するかもしれませんが、「クラウド化する世界」の著者がバックグラウンドとする教育であれ文化が西洋的であることに起因するのかもしれません。つまり、西洋的とは非常に分析的であり、対象とする事象を個々の現象に分割し、この現象をいかに理知的に説明するか、ということです。ある意味、理化学的な発想です。私も理系の端くれですから、そういった教育訓練を受けてきています。一方で、私は東洋人で、東洋(特に東アジア)の思想は総合的、統合的な物の見方をすると思っています。西洋医学は症状を細分化して対症療法を行いますが、東洋医学は患者の状態を全体的に観察し、これを統合的に解決すべく様々な療法を行います。分析できないところがあっても、それを無理に分析するのではなく、統合的に見ることで解決を図るわけです。人間という存在はまだ解明できない部分が多々あり、これを情報という側面だけで捉えてもその全てを把握することはできないのでは、と思います。

そうは言っても、クラウドコンピューティングにより実現可能な世界はすぐそこまで来ており、その可能性には魅力があります。一方で、人間の知識が丸裸にされることによる危険性もすぐそこに迫っています。個人情報をさらした覚えはなくても、個人検索はかなりの精度で行える時代が来るでしょう。こうなると、コンピュータに接する人間の倫理性が強く求められます。ただ、この倫理ってのが難しいんですよね。

« ニッポンの発明力? | トップページ | 知的財産部門の業務改善… »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ニッポンの発明力? | トップページ | 知的財産部門の業務改善… »

2018年9月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
フォト
無料ブログはココログ