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2009年5月

レビューを信じてはいけません

今日は日曜日なので知財と関係ない話を。

Amazonを始めとしたe-commerceサイトやkakaku.comのような価格比較サイトでは、ユーザーからのレビューが投稿できるようになっています。このレビュー、Web 2.0的に言えば"Wisdom of crowds"ということでインターネット上の知を拡大する行為として好意的に捉えられていますし、"The wisdom of crowds"という題名の書籍(邦題は「みんなの意見は案外正しい」)まで出版されています(順番としては書籍のほうが先みたいですが)。

さて、このユーザーからのレビューを私も参考にしようと思ってみていることが多いのですが、書籍部門は比較的正鵠を得ていると思うものがおおい一方で、ミュージック部門はアーティストに関する単なる好き嫌いの表明に終わっていたり、一方的な非難の場になっていたりで、どうも信用がおけるものになっていません。ミュージック部門というのはやはり裾野が広いので雑多な意見の寄せ集めになりがちなのかもしれません。書籍部門は(私がビジネス書ばっかり見ていることもあるかもしれませんが)他人の目を意識した冷静な書き方が揃っているように見えます。

レビューという存在は、言うまでもなく他人にその書籍なりCDなりをお薦めする際に自分として何を考えているかを書くもので、他人に納得してもらえるために客観的な観点から述べる冷静さを持たないとレビューとしては今ひとつの存在になってしまいます。ビジネス書は知識を伝達するものですから、その読者もビジネス書から提供される知識の善し悪しを冷静に判断しやすいと思いますが、ミュージックというのは人間の感性に訴えるものですから、客観性を持つこと自体結構難しいものだと思います。プロのレビュワーは、その点を理解しつつ、多方面の音楽を聴いてきて得られた知識なり感性を磨いてレビューを書いていますし、そのレビューが参考にならなければ商売になりませんから、プロの書くレビューは納得のゆくものが多いです。一方、Amazonなどにあるミュージックのレビューは全くの個人が書いているものですから、そこまでのレベルを期待するのが難しいのは当たり前です。

ただ、そうなると"Wisdom of crowds"は必ず正しいとは言えなくなりそうです。

価格比較サイトの場合、このレビューが結構サイトの評判そのものを左右しかねませんので、色々な努力をしているようです(参考記事があったのですが、どこかに行ってしまいましたcoldsweats01)。確かに、例えばkakaku.comのクチコミを見ていても、酷評といえるものは私が見る限り見あたらず、非常に整然とした印象を受けます。

まあ、どんな時代でも、人の意見を鵜呑みにせず、冷静な判断をするべきだ、ということなのでしょう。

知的財産管理技能検定は知財人材育成に役立っている?

企業における知財人材の育成については何度かこのBLOGで取り上げてきたかと思います。最近、「企業における知的財産管理技能検定の位置付け」という題の記事が掲載されていました。この記事は、幾つかの大企業に知的財産管理技能検定をどのように社内で位置づけているかをアンケートした結果に基づくものです。

この知的財産管理技能検定、知人がやっているのであまり批判めいたことは言いづらいのですが、私個人が考えるに、今ひとつその有効性が見えてきません。確かに、知財部門における知的財産教育の必要性は言うまでもありません。専門性が求められる部署ですから、業務遂行に必要な知識は備えていないと困ります。気になるのが、それを検定という形で標準化することにどれだけの意味があるか、ということです。企業は自社の知財部門に属する人材に対して自社なりの教育プログラムで教育し、人材育成をしています。検定という形で標準化したからと言って社内教育の手間が省けるわけでもありませんし、各社必要とされる知識は一律とは言えないので、例えば検定2級合格を社内の何らかの職能級とリンクさせるのも難しいでしょう。それに、自己啓発という観点からしても、知財人材の転職が盛んとは言いにくい(特許事務所間を除けば普通だと思います)ので、検定を取ったからと言って資格を取ったという考えにはなりにくいでしょう。

企業にとって一番の悩みは、多分、マネジメントクラスの人材をどのようにして育成するかにあると思っています。マネジメントクラスになると、否応なく他部門の人間とのコンタクトが増えますし、知財戦略の立案にもかかわってくるようになります。こうなると、知財関連の知識だけでは立ちゆかなくなってきます。元々、企業の知財部門の人間は圧倒的に理系大学出身ですし、入社して特許担当者になっても企業のエンジニアとの接触がほとんどですから、言葉は悪いですが、ビジネスマンとしての基礎知識(経済、経営、社会など)にこだわることなく社会人としての生活を続けることが可能です。しかし、マネジメントクラスになると、エンジニアよりも事業本部、本社部門のマネジメントクラスとの接触が多くなり、こうなると、理化学的知識+知財知識だけでは対応できなくなります。では、ビジネスマンとしての基礎知識をどのように習得するかと言えば、これは自己啓発やOJTによるものが多くなってきます。検定と言った客観的な指標が通用しない領域です。

こう考えると、知的財産管理技能検定はどうも中途半端な気がしています。一時期、知財実務を長い間やってきた証の意味をこめて1級受験を考えていたのですが、今は「取ってどうする」という疑問に対する明確な答えが見つからないのでpendingにしています。何か役に立つようなことがあるといいんですが。

ウォークマン買い換えました(その2)

このBLOGが4万アクセスを超えましたhappy02平日は平均して100人以上の方においでいただいています。ひっそりBLOGを書いている割にはたくさんの皆さんにおいでいただき、作者としてはひたすら感謝です。m(_ _)m今後ともよろしくお願いいたします。

さて、ちょっとしつこくてすいません。ウォークマンを買い換えた話を先日のBLOGの記事にしました。で、このウォークマンNW-X1060の紹介記事がネットに載ってました。この紹介記事でも、音質は抜群、でも付属ヘッドフォンはちとpoor、と書いてありました。やっぱりねsmile、ということで。

で、未だに通勤途中ではずっと音楽を聴いています。デジタルアンプで音質が格段の向上を果たした関係で、今まで聴いていた音と全然違う印象を受ける曲ばかりです。音質がいいと思って聴いていた曲が、実はほんの細かいところで解像度に欠ける部分が聞こえてきたり、それまで音質がいいと思って聴いていなかった曲が実は非常にリアリティを持って聞こえてきたりで、日々新たな発見をしています。年代が新しくなると音質がどんどん向上するのかというと一般的には向上しているものの、アーティストのこだわりであるとか、あとは最近は作った音が多いので変に音質がよくなかったり(携帯電話向けに音のバランスを調整していることもあるそうですから)しますので、何とも言えません。

まあ、当分は面白く聴かせてもらえそうです。

特許バトルロイヤル??(続き)

本日はTwitter並に短めで。

先日、朝日新聞のGlobeで「特許バトルロイヤル」という特集記事が組まれたことをこのBLOGの記事でご紹介しました。当初、Web版には新聞本紙の一部しか掲載されていなかったのですが、その後、コンテンツが徐々に追加され、最終的には新聞本紙の全部が掲載されました。さらに、本紙では紹介されなかったキーパーソンのインタビュー記事まで追加されています。サムスンの知財トップや韓国特許庁長官、中国ZTEの知財トップ、中国特許庁の副局長(田局長ではなかったのがちと残念)、そして日本でも知名度の極めて高いレーダー米国CAFC判事と面子を見ると錚々たるものです。

こうやって眺めてみると、この特集、かなりの準備期間を経て担当者が結構な取材をした結果だと思えます。さらっと読むとたいしたことが書いていないように思いますが、きちんと取材をした結果として、ある意味非常に中庸な内容に落ち着いたのでしょう。他のメディアも、知財関係に限らず様々な取材対象を扱う時はきちんと取材してほしいと思ってしまいました。

過剰品質と言われても…

またまた、東大の第3回知的資産経営総括寄付講座公開セミナー「新興国市場開拓に向けた日本企業の製品戦略」に参加して参りました。感想はと言うと…だいたい知っていることばかりでちと面白味に欠けましたpout。大学の先生というのはこういった内容を紹介するだけで飯を食えるのは気楽かも、と思ってしまいました。紹介された処方箋も思いつくことばかり(だったらやれよ、ということはさておきcoldsweats01)でした。

このセミナーの中で、日本企業は過剰品質ではないか、という指摘があったので、私なりに製品の品質について考えてみます。

例を挙げていたのが、CD-Rについて日本メーカーと台湾メーカー(それも他社ブランドのOEMとして納品している大企業とノンブランドでしか売れない中小企業と)で品質に格段の差があるということでした。日本企業は非常に厳しい品質基準を持ち、その結果、製造コストがかかってしまう、台湾大企業は日本企業の製品と比較してせいぜい20%程度の品質のものしか作らない(OEM先からその程度のものしか要求されていない)、台湾中小企業の製品品質は装置メーカー任せである、その結果、極めて安価に製造、販売することができ、一気に世界市場のシェアを獲得してしまった、というわけです。この際、(実はDVD-Rですが)日本メーカーと台湾メーカーの品質の差を書き込み能力の差で示した例として、ある雑誌に掲載された計測例が紹介されていました。

例えば台湾メーカーのDVDは、上に紹介した例にも見るように惨憺たる結果で、日本企業が考えたら不良品の山ばかりでこれを自社ブランドとして売るなどという判断は到底できないわけです(台湾メーカーは自社ブランドとして売ってはいないので、ある意味割り切ってはいるわけですが)。売ったら明らかにブランドイメージの毀損につながります。まあ、それ以前に日本企業のポリシーとして、書き込んだ情報がそのうち消えてしまいます、という商品を売ろうとしたら、経営陣はもとより技術開発者自体がものすごい反発をするでしょう。それが日本企業のいいところといえばいいところなのだと思います。私自身も、買っても書けないDVDを平然として販売する業者というのは心情的に理解できませんし、これをまた平然と受け入れていると思われる消費者も理解の埒外にあります。なので、メディアに関しては日本製品が過剰品質かと言われるとむしろ台湾製品のほうが過小品質なのだと思ってしまいます。

しかし当然、品質だけを追い求めて結果的に当該市場の平均的購買力から見てプレミアム化してしまったのでは、シェア拡大は夢のまた夢になってしまいます。品質は市場が決定する要素も多分にあるのは事実で、そういった意味で、各国市場に合わせた商品企画が必要ではあります。そうは言っても、安易に品質を下げればブランドイメージの毀損にもなるので、多分に高度な戦略的判断に基づいた決定が必要です。また一方で、トップメーカーは全方位戦略ということが経営戦略論では言われますので、エントリーモデルからプレミアムモデルまでの幅広い品揃えが求められる局面もあります。

品質の問題は、CD-RやDVD-Rのように商品自体の性能に深く関わってくる場合や、自動車のようにユーザーの生命に直接関係する場合は、安易な切り下げはしてはならないと思っています。セミナーでは中国のある自動車メーカーがドイツの安全性評価を受けたところ、1つ星しか獲得できず、中国の自国民からも非難の声が上がったと紹介されていました(ニュース記事はこちら。他のニュースによると、この自動車が「中国から来た鉄くず」と揶揄されたとのことです)。

一方で、品質に関する大胆な割り切りも必要な場合があります。例えば、iPodは再生される音楽の音質に対して特段注意を払っているとは思えません。設計の段階で、一定以上の音質があればよしとしている感があります。一方、日本の大手CEメーカーがシリコンオーディオプレーヤーを作った場合、(それがある意味での競争力であるとの認識をしているのだと思いますが)、音質に関するこだわりは決して捨てていません。このBLOGの少し前の記事で紹介したソニーのウォークマンもそうです。その結果、日本での売価はだいたい4万円強と少々お高めになってしまっています。ただ、このウォークマン、搭載されている機能に比較して値段は非常に努力しているとは思います。そのため、新製品でありながらMade in Malasiaなのです。新製品の立ち上げから海外子会社等との調整をした開発者の努力には頭が下がる思いです。ちなみに、Apple社が音質に全く注意を払っていないと言えば嘘になります。iPod用にかなり音質のよいヘッドフォンを作ってますから(しかもバカ安ですcoldsweats01)。

ちょっと長く書き連ねましたが、要は、日本企業のポリシーはそれはそれで間違っていないと思いつつ、市場に合わせた商品企画及び製品のラインアップは不可欠である、ということです。で、各企業は実は言われるまでもなく市場に合わせた商品企画の重要性を認識して実行に移しています。なかなかそれが日本にいると見えないんですが…。

雑感あれこれ

今日は短めに。

最新号の日経ビジネスと日経エレクトロニクスで、低価格薄型テレビに関する共同特集を行っています(URLを表示したいのですが、毎週最新号の中身に変わってしまうので、今週木曜日までの限定ということでこちらこちらを)。日経ビジネスの方は薄型テレビの水平分業化へのトレンドを受け入れる論調のため、技術革新のために苦心して設計しているメーカーに対して風当たりの厳しい言い方になっています。日経エレクトロニクスは、むしろ環境重視のために先進メーカーは苦労していますね、という論調に近いです。

確かに、液晶パネル自体がこのところの不況と特に台湾メーカーを中心として汎用品の生産能力が格段に向上したために生産過剰気味のこともあり、薄型テレビ自体は急速なコモディティ化をとげています。日経ビジネスにもあるように、汎用品をあちこちから集めて力業で製造することも可能になりつつあります。しかし、そういった力業で作った製品が消費電力の面で好ましいのか、また、そもそも寄せ集め的な製品が耐用年数だけ持つのか、というちょっとした疑問もあります。

この点、とっくに水平分業化を成し遂げてしまったPCの場合、安かろう悪かろうという時代はとっくに過ぎ、Acerなどのメーカーは全世界的な販売網を確保しながら大量調達、大量生産により安価な製品を安定した品質で作り上げることを可能にしています。いずれ、薄型テレビも試行錯誤を繰り返しながらそういった世界に突入するのかも知れません(ただ、テレビって各国で好まれる仕様が微妙に異なったりするので、PCほどの画一的な生産はどこまでできるかchallengingな作業ですが)。それまでに、トップメーカーは安値攻勢に負けないほどの価格競争力と商品競争力及び品揃え(高級品から普及品まで)を実現しないといけません。難しい所です。

それからもう一つ。

電気自動車の世界的シンポジウムが開催されているようです(紹介記事)。このシンポジウムで、プラグインハイブリッド車に関する標準化が盛んに議論されているようです。具体的には、プラグインハイブリッド車を構成する部品の要素、プラグインハイブリッド車の充電電圧等、さらに充電池そのものの仕様まで数多くの議論があるようです。問題は、こういった標準化作業は欧米企業を中心にまたも策定が開始されたようで、日本政府及び企業はあまり表立って活動をしていない様子なのです。

単体のハイブリッド車と比べて、プラグインハイブリッド車の場合、社会的インフラの整備が重要なKey factorになると思います(他社のプラグインハイブリッド車を買ったら家で充電できなくなるのでは買うインセンティブがなくなります)。こうなると、標準化作業が避けて通れなくなります。日本企業はプラグインハイブリッド車の技術は世界で最も先進的だと思いますが、欧米企業の思惑は、自身に有利な標準化作業を進めることにより日本企業が優位に進めている技術革新を封じ込め、標準化された技術を新たに開発せざるを得ない状況を作り出してしまうことにあると思われます。これでは、何のためにプラグインハイブリッド車をこつこつと技術開発してきたのか、先が思いやられます。

世界的標準化の重要性及び日本国として標準化を重要視することは知的財産推進計画に既に掲載されていることです。そうでありながら、プラグインハイブリッド車の標準化作業で遅れをとるとなれば、日本国政府の縦割り行政の弊害とも言えるのではないでしょうか。もし、日本の自動車メーカーが何らかの思惑を持って取り組んでいるのであればいいのですが、政府を含めて無策であるならば大変なことになると思います。

ウォークマン買い換えました

今日は日曜日ですから、知財と関係ない話をhappy01

ハードディスクウォークマンを買ってから4年ほど経ちました。HDということで記憶容量が20GBもあるので入りきらないという不自由はなかったのですが、いかんせんHDなので胸ポケットに入れるのは大きくて重く、また、本体の操作があまり使い勝手がよいとは言えず、付属のコントローラが月日が経って壊れかけてきたので、そろそろ買い換え時かな、と思い、内蔵メモリを使ったウォークマン(型番でいうとNW-X1060)が新商品として発売されたので、早速買いました。

このウォークマン、iPod touchを結構意識したものか、有機EL3型パネルをタッチパネルとしてこのタッチパネルで全部の操作が可能になっています。また、本体ボタンも幾つかあって主要操作はボタンでもできるようになっています。Aシリーズから継承したワンセグ視聴(及び録画)、そして、FMラジオ、無線LAN接続が可能なのでYoutube視聴及び簡易ブラウザによるインターネットブラウジング、と盛りだくさんな内容です。一通り試してみたところ、ワンセグも綺麗に見ることができますし、家での無線LAN接続なのでどこでもOKかわかりませんが、Youtubeも簡単かつ綺麗に視聴することができました。とは言え、ほとんど音楽を聴くために買いましたので、あくまで自分にとってはおまけの機能ですが。

で、音楽再生機能です。なんと、この小さい本体の中にデジタルアンプを搭載しています。ソニーは最近高級オーディオばかりでなく、普及機であるシステムコンポ(最近はHDを搭載しているのでHDコンポと言うそうですが)にもデジタルアンプを搭載しているのでびっくりしてはいけないのですが、なんとも贅沢な機能だと感心してしまいました。で、デジタルアンプを搭載したことで音はどうなったかというと、リズムを中心として音が非常に締まった感じがあり、デジタルアンプを搭載したことの効果はかなりあると感じました。

しかも、デジタルノイズキャンセリング機能まで搭載しています。このノイズキャンセリング機能、付属のヘッドフォンでないと効果がありません。早速試してみました。それほどノイズキャンセリング機能は強い感じはしませんが、実際に電車の中で聴いていると室内音がかなり低減されていることが実感できます。それでも、話し声や車内アナウンスは聞き取れるのでちょっと不思議な感覚です。ただ、付属のヘッドフォンがインナーイヤー型の密閉式のもので、いつも使っているオーバーヘッド型の密閉式のものに比べるとやはり音質がかなり違い、自分としてはオーバーヘッド型の密閉式のヘッドフォンの音質が気に入っているので、現時点では試してみただけになっています。出張とかで長時間電車の中にいる時にもう一度使ってみるつもりでいます。

シリコンオーディオとしてはかなり高額な部類に入るので、万人向けとは言えませんが、音楽を聴く機能に高い機能を要求する人にとっては「買い」だと思います。すっかり通勤の友になっていますhappy02

弁理士業務の将来展望に関する報告書

今年の4月に、弁理士会の「弁理士業務の将来展望ワーキンググループ」(ものすごく長いな)というWGが弁理士業務の将来展望に関する報告書を発行しました。この報告書自体は弁理士会の会員のみがアクセスできる電子フォーラムでのみ現在公開している(来週に弁理士会会員向けの報告会があります)ので、きっと部外秘扱いなのだろうと思うので、PDFファイルが手元にあるのですが公開しないでおきます。お知り合いに弁理士がおられる方は見せてもらえるようお願いするといいかもしれません。

内容は、世界経済の現状分析から始まって知財業界の分析、弁理士のコア業務たる産業財産権の権利形成業務の将来展望、そして、結論である弁理士業務の将来展望に関する幾つかの提言、という結構盛りだくさんなものです。全体を通した論調は、弁理士は冬の時代に突入した、このままでは弁理士のコア業務は尻すぼみ状態である、新たな業務ウィングを広げるべきである、というかなり厳しい警告とも言えるもので、弁理士自身が関与したものとしてはかなり大胆な物言いだと感心しました。

読んだ感想を。弁理士が冬の時代だというのはその通りだと思います。私は、これからは弁理士は冬の時代だと直感したのがかれこれ15年近く前になります。正確には出願代理人としての弁理士は冬の時代だと思ったのです。理由は単純です。弁理士全体で見た時の出願明細書等の質の低さ、特に、大規模事務所に見られる粗製濫造とも言える構造がどこかで破綻をきたすと思ったからです。そこで、より発明創造の上流に遡っていい権利を取ろうということと、自分自身の安定した収入源確保のために企業知財部への転職を思い立ちました。特許事務所勤務から企業知財部への転職というキャリアパスはその頃では結構珍しかったのですが、今はそれなりのキャリアパスになっているように思います。

それから、今後の事務所が考えるべきこととして専門性の向上と事務所経営の効率化が挙げられています。この2点、前々から私も考えていて、このBLOGにも書いた気がします。今まで特許事務所はいわば「指示待ち」状態で仕事を受件していたわけで、その姿勢から脱皮するためにはクライアントから積極的に選ばれるための専門性と、そして、特許事務所全体がまだまだ小規模経営に止まっていることを考えると、経営の効率化が喫緊の課題だと思います。

あと、クライアントたる企業の現状や弁理士への期待について種々ヒアリングしていますが、企業知財部の現状把握はやはり外部から見ているためか一定の限界があり、私が考えるに、企業はもっとシビアな見方をしていると思っています。具体例を挙げると、弁理士業務の将来展望として国際性を高めることが挙げられていて、その理由として、企業が外国出願により重点を置くから、ということが述べられています。確かに、企業が今まで以上に外国出願に重点を置くことは間違いないでしょう。しかし、そのことが直ちに国内特許事務所の受件増につながるとは言えません。なぜなら、現在国内特許事務所が行っている外国出願業務は海外現地代理人へのチャンネル業務であり、企業が国内特許事務所を使ってまでも外国出願業務を依頼しようとするインセンティブとして考えることは、海外現地代理人とのやり取りを日本語で行えるというメリットか、コストパフォーマンスに優れているか、あるいは相当の専門性があるために依頼する価値があるか、のどれかです。そのどれもなければ、知財部員の語学力を高めて海外現地代理人と直接やり取りをするほうがコスト的にも優れ、また、直接意図を伝えられることで意思の疎通を密接に図ることができます。この話、最近話題の特許審査ハイウェイで中間処理が中抜きされやすくなるということとは別物ですからお間違いなく。

弁護士と同様に弁理士余りも取り沙汰される現状、弁理士を取り巻く環境は非常に厳しいと言えます。最近の合格者は合格したら早速知財業務に従事するのではなく、将来のある種保険的な発想で資格だけ持っている人も多いようですが、パイは限られていますので、個人的には今のうちに知財業務に従事したほうがいいのでは、と思います。

それから、弁理士全体を見回して、どれだけ現状に対する危機感を持っている弁理士がいるのか、時々不安になります。研修会や委員会に参加している弁理士の発言を聞いていても、心配になることが結構あります。世界経済や知財業界に乗り遅れないように、日々アンテナを張り巡らせていなければならない、と自戒を込めて。

特許バトルロイヤル??

ちょっとBLOGの更新が空いてすいませんでしたm(_ _)m。ゴールデンウィーク中は子供と遊び続けていて、疲れがたまってしまい…sad書くネタはありますので徐々に復活します。

さて、今週の月曜日、朝日新聞の朝刊にGLOBEという折り込みがあり、今回の特集は「特許バトルロイヤル」という題名のものでした。新聞の方は都合6ページにもわたる長文のもので、Webにも徐々に掲載されてくるようなので、今見て全部掲載されていなくともちょっと待っていたほうがよさそうです。

内容は、特許制度の現状を結構多角的に掘り下げた、マスメディアが取り上げる特許関係の特集記事としては出来のいいものです。主題だけ挙げると、米国テキサス東部地裁に特許訴訟が集中する現状、パテントトロールの跋扈、特許オークション市場、特許(出願)へのfunding、中国・韓国企業の知財の取り組み、特許と標準化といったところです。個々にコメントしたいことは山々なのですが、一々コメントしていると膨大な量になるので、全体的な感想で。

米国テキサス東部地裁に特許訴訟が集中する理由については、かのヘンリー幸田さんが書かれたこの記事が参考になると思います。自分が所属する会社の担当者も、テキサス東部地裁まではるばる出かけていったとの話を聞きます。この現象、私が感じるには米国のプロパテント政策の結果というよりもパテントトロールが多数出現したことで顕在化したのだろうと思っています。つまり、テキサス東部地裁の原告勝訴率が高いのはプロパテント政策も関係なくはないと思いますが、それよりも保守的な土地柄のせいだと思えます。まぁ、Ward判事の考え方はプロパテント政策っぽいかもしれませんが。

しかし、ここ数年間の米国最高裁の特許関係の判決を見る限り、裁判所はプロパテント政策に揺り戻しをかけようとしているように見えます。加えて、パテントトロールによる行き過ぎた権利主張についても判例で一定の制限を加えようとする意図が見られます。その流れの延長線上にオバマ政権で審議が再開した米国特許法改正があります。この改正内容の中には、GLOBEでも紹介されていた、裁判管轄の改正も盛り込まれています。米国特許法が現時点の法案の内容で改正されれば、テキサス東部地裁への出訴数も激減すると思われます。そうなると、パテントトロールとしては有効な手段を一つ失うことになるかもしれません。

プロパテント政策の揺り戻しに加えて、世界金融危機の影響を受けて特許オークション市場や特許インベストメントファンドへの出資者も減っているようで、聞くところによるとGLOBEで紹介されたOcean Tomoの直近のオークションはちょっと低調だったようです。この金融危機ですから特許の流動化が加速されてもおかしくないんですが、投資家にとって知的財産関係への投資に対する魅力は以前ほどではなさそうです。

このBLOGでも何度か話題にしたように、現在の特許制度にはかなりの制度疲労がたまっているように思います。本来は抜本的な改革が必要だと思うのですが、産業界の利害関係は一致しませんし、各国の方向性も必ずしも一致しているとは言えません。現時点では特許制度がどのような将来を迎えるのか、ちょっと予測しづらいです。このところの日本政府はプロパテントからプロイノベーションという話をしていて、確かにイノベーションを阻害するような特許制度は困るな、と思っています。とは言え、ではプロイノベーション時代の特許制度はどうあるべきか、という具体像が提示されていないのも困りもんなんですが。

余談ながら、GLOBEの特集記事、知財系BLOGのいくつかが取り上げられていますが、新しい情報がないなど評価は結構辛口です。私は、さらっと書かれている内容の背後に結構膨大な取材の跡が見られ、また、紹介されている内容も全国紙レベルでは初めてではないかと思われるものも多いので、もう少し評価が高くてもいいのでは、と思っています。

中国のITセキュリティ機器の強制認証について(続きその2)

もう夜も遅いので短めに。

中国の強制認証制度については2度ほど記事にしてきました(こちらこちら)。この、中国の強制認証制度に対するメディアの報道に対する批判的な記事が掲載されました。

現時点では、中国がITセキュリティ機器に対してどのような強制認証制度を採用するのか、実施細目は発表されているようですが、その中身について踏み込んで報道した記事が見あたらないので、果たしてずっと懸念されていたソースコードの開示が強制されるのかどうかについて私自身もコメントができません。だったら原文を読め(すいません、原文のリンク先は探せてませんcoldsweats01)というご批判もあるかと思いますが、中国語はからっきしダメなのでご勘弁をsad。上に書いた記事からすると懸念は杞憂とのことですが、現時点ではまだよくわからない状況のようです。

ただ、(知的財産権侵害という観点から若干離れますが)ITセキュリティ機器の強制認証制度は、この記事にもあるように、ちょっと諸外国では例を見ない制度です。確かに、中国は以前から電気機器の安全性に関する強制認証制度を持っていて、これについては、例えば日本であれば電気用品安全法により経産省が指定する認証機関による認証が必要ですから、中国で従来行われている強制認証制度自体は特段の問題を生じていないように思っています。しかし、ITセキュリティ機器については「強制」認証制度を持つ国がないようですから、中国の意図が色々な推測を呼ぶのは仕方がないところです。従って、特段中国を後進国扱いしているわけではなく、むしろ中国が先進諸国と同様になって欲しいからこそ様々な懸念を表明していることになると思っています。

そして、ソースコード開示については、中国政府自体がさらに情報を公開し、もしそういった懸念が単なる杞憂に過ぎないのであれば関係諸国にきちんと説明する義務があると思います。それをしないのであれば、中国の国内市場が巨大であることにあぐらをかいた怠慢、あるいは不合理な措置であるとの批判を甘受しなければならないと思います。

追記:上に書いた実施細則、探せないのも癪なので必死に探したら、中国の国家認証認可監督管理委員会公示公告ページにありました。でも、やはり中国語ですcryingどなかた、わかった方がいたらお教えください。

「最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話」

少し状況がわかってきたので話題にすることにします。

『盗用疑惑で発行元が謝罪、社内調査で「7話が著作権侵害」』(YOMIURI ONLINE

「最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話」で盗用疑惑があった件です。実際に盗用があったのかどうか、なかなかはっきりしなかったのですが、発行元の調査によると、一部盗用の事実があったとのことです。

私が話題にしたいのは、この著者の方の対応です。著者のBLOGによると、

『脇が甘いところもありましたが、私はこの度の想定していた著作権に関する問題も、事後に誠意ある対応を示すことにより理解していただけると信じていました。(法律上、著作権者から事後承諾を頂ければ問題ありません)』

という発言をされています。

まず、「法律上~問題ありません」との発言にはちょっと首をひねらざるを得ません。著作権侵害は行為そのものが問題なのであって、事後的にその行為を取り消したからと言って行為そのものを行った事実は取り消せません。例えば、窃盗行為をしてそれを悔い改めて盗品を返還したからと言って窃盗行為そのものが取り消せるわけではなく、場合によっては刑に服する必要が生じます。

次に、この著者の方、問題が明らかになって以降、自身を被害者のごとく言うばかりで、自身の行為に対する謝罪の姿勢を示していません。ご本人は、上にも書いたように「悪いことをした」という認識がないせいだと思うのですが、リスクマネジメントという観点からするとあまりよい対応ではないように思えます。まず、行為の善悪はともかく、騒動を起こしたこと自体に対する真摯な態度が必要ではないでしょうか。それから、自身が行った行為の是非を第三者の意見を聴きながら冷静に対応し、速やかに発表することが大切です。

BLOGを始めとして個人が情報を容易に発信することができるようになった現代だからこそ、情報の取り扱い方、及び情報の発信の仕方には十分注意したいと思います。

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