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弁理士業務の将来展望に関する報告書

今年の4月に、弁理士会の「弁理士業務の将来展望ワーキンググループ」(ものすごく長いな)というWGが弁理士業務の将来展望に関する報告書を発行しました。この報告書自体は弁理士会の会員のみがアクセスできる電子フォーラムでのみ現在公開している(来週に弁理士会会員向けの報告会があります)ので、きっと部外秘扱いなのだろうと思うので、PDFファイルが手元にあるのですが公開しないでおきます。お知り合いに弁理士がおられる方は見せてもらえるようお願いするといいかもしれません。

内容は、世界経済の現状分析から始まって知財業界の分析、弁理士のコア業務たる産業財産権の権利形成業務の将来展望、そして、結論である弁理士業務の将来展望に関する幾つかの提言、という結構盛りだくさんなものです。全体を通した論調は、弁理士は冬の時代に突入した、このままでは弁理士のコア業務は尻すぼみ状態である、新たな業務ウィングを広げるべきである、というかなり厳しい警告とも言えるもので、弁理士自身が関与したものとしてはかなり大胆な物言いだと感心しました。

読んだ感想を。弁理士が冬の時代だというのはその通りだと思います。私は、これからは弁理士は冬の時代だと直感したのがかれこれ15年近く前になります。正確には出願代理人としての弁理士は冬の時代だと思ったのです。理由は単純です。弁理士全体で見た時の出願明細書等の質の低さ、特に、大規模事務所に見られる粗製濫造とも言える構造がどこかで破綻をきたすと思ったからです。そこで、より発明創造の上流に遡っていい権利を取ろうということと、自分自身の安定した収入源確保のために企業知財部への転職を思い立ちました。特許事務所勤務から企業知財部への転職というキャリアパスはその頃では結構珍しかったのですが、今はそれなりのキャリアパスになっているように思います。

それから、今後の事務所が考えるべきこととして専門性の向上と事務所経営の効率化が挙げられています。この2点、前々から私も考えていて、このBLOGにも書いた気がします。今まで特許事務所はいわば「指示待ち」状態で仕事を受件していたわけで、その姿勢から脱皮するためにはクライアントから積極的に選ばれるための専門性と、そして、特許事務所全体がまだまだ小規模経営に止まっていることを考えると、経営の効率化が喫緊の課題だと思います。

あと、クライアントたる企業の現状や弁理士への期待について種々ヒアリングしていますが、企業知財部の現状把握はやはり外部から見ているためか一定の限界があり、私が考えるに、企業はもっとシビアな見方をしていると思っています。具体例を挙げると、弁理士業務の将来展望として国際性を高めることが挙げられていて、その理由として、企業が外国出願により重点を置くから、ということが述べられています。確かに、企業が今まで以上に外国出願に重点を置くことは間違いないでしょう。しかし、そのことが直ちに国内特許事務所の受件増につながるとは言えません。なぜなら、現在国内特許事務所が行っている外国出願業務は海外現地代理人へのチャンネル業務であり、企業が国内特許事務所を使ってまでも外国出願業務を依頼しようとするインセンティブとして考えることは、海外現地代理人とのやり取りを日本語で行えるというメリットか、コストパフォーマンスに優れているか、あるいは相当の専門性があるために依頼する価値があるか、のどれかです。そのどれもなければ、知財部員の語学力を高めて海外現地代理人と直接やり取りをするほうがコスト的にも優れ、また、直接意図を伝えられることで意思の疎通を密接に図ることができます。この話、最近話題の特許審査ハイウェイで中間処理が中抜きされやすくなるということとは別物ですからお間違いなく。

弁護士と同様に弁理士余りも取り沙汰される現状、弁理士を取り巻く環境は非常に厳しいと言えます。最近の合格者は合格したら早速知財業務に従事するのではなく、将来のある種保険的な発想で資格だけ持っている人も多いようですが、パイは限られていますので、個人的には今のうちに知財業務に従事したほうがいいのでは、と思います。

それから、弁理士全体を見回して、どれだけ現状に対する危機感を持っている弁理士がいるのか、時々不安になります。研修会や委員会に参加している弁理士の発言を聞いていても、心配になることが結構あります。世界経済や知財業界に乗り遅れないように、日々アンテナを張り巡らせていなければならない、と自戒を込めて。

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コメント

あ゛、やってしまいましたcoldsweats02時々迷惑コメントがついてきて、「よぉし、削除だ!」と消したつもりが、間違って消してしまいました。ごめんなさいねm(_ _)m

再録しておきます↓

アンテナを張ったのはいいけれど、ノイズを拾っちゃって、そのノイズが意味のある信号に聞こえちゃって、自爆するようなことがあってはいけませんよね~。
(自戒をこめて。^^);;

け、消された。^^);

こんにちは、勉強進んでます?

弁理士ってある意味純粋培養の部分がありますから、ちょっと外界を覗いてみたら面白そうな世界があって、つまみ食いしたら猛毒に当たってお腹をこわすこともあるかもしれませんねsmile気をつけなければ…

よく読んでいただければわかるように、「粗製濫造」云々という状況は私が15年ほど前に感じたことであり、今もそうであるとは言っていません。名だたる企業であればおしなべて明細書の質を管理していますし、弁理士や特許事務所の評価をしています。粗製濫造というビジネスモデルは破綻していると思うので、もし未だにそういった考え方に囚われている弁理士がいたら困りものです。

事務所は最終的には企業の了解で出願するわけですから、粗製濫造ならそれは出願人の意向というべきでしょう。安価であればサービスもそれなりになりますから、企業によっては粗製でも安ければいいってところがまだまだ多いってことでしょうね。そういった点、企業と弁理士の認識のずれはないといえます。認識がずれているというのであればそれは知財部の責任でしょう。

企業が特許出願数を追い求めていたのは、そのピークが80年代だと私は思っています。90年代に入り、先進的な企業は方針を徐々に転換し、件数削減にとりかかっていました。その時点でも、大規模事務所はその現状にあまり気付かず、粗製濫造を続けていたように思っています。

企業の思惑と特許事務所に所属する弁理士の認識とのズレは、私は簡単に解消できないように思っています。危機感で解消できるならば(きつい言い方ですが)苦労はしません。企業との圧倒的な情報量の差をどうするのか、この点を解決しないと難しそうです。

私もこの報告書を読みました。骨のある報告書だったと思います。
ご指摘のように、「大規模事務所における明細書の粗製濫造とも言える構造」は、確かに、その通りだと思います。このような構造は弁理士業界の「人材育成の観点」からも好ましくないと思います。
ただ、こうした構造は、企業側の姿勢からも、出来上がった問題のように思います。無意味に出願件数を増加させ「数だけ」を追いかける。こうした企業側の知財運営が背景にあったように思います。
しかし、私は、あまり悲観していません。私の周りの若い弁理士の中には、本当に危機感を持って仕事に向っている方がおられます。これから若い力が弁理士業界を活性化していくと思います。

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