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2009年6月

知的財産の学術研究にあれこれ思う

日本知財学会の年次学術研究発表会に出席できなかったので、予稿集を注文したところ、本日到着しました。ざっと眺めてみて、雰囲気をつかむことができました。

このところ目立っているのが、知財専門職大学院やMOT専門職大学院の学生(社会人学生だと思います)の発表です。題名に惹かれて予稿集を読んでみるのですが、かなりの確率で残念ながら期待はずれの内容になっています。方向性は良いのですが、ありものの資料をまとめたとか、簡単な特許調査をしました、とか、企業の知財部門が新規事業参入の際に作成する簡単な特許調査レポートと大差ないレベルです。

まあ、自分が経験したのでよくわかるとおり、社会人大学院は平日に仕事をこなして夜に授業を受け、土曜日は一日中授業を受けており、その合間に研究をしていますので、実際に修士発表(論文をまとめるとも限らないので)に割ける時間は実はごくわずかしかありません。全日研究に没頭できる博士課程前期(後期でも一緒ですね)の学生とは置かれている境遇は全然違います。従って、研究内容の薄さを責めても酷であることは重々承知しています。が、仮にも学会の研究発表会ですから、それなりの学術レベルが要求されるのは当然でもあります。当日の発表が内容豊富であったことを祈ります。

背景には、知財に関する学術研究が(法律論はかなりの蓄積があるものの)歴史も研究者の層もまだまだ薄いことがあるのだと思っています。欧米では、かなり昔から経済学者が特許制度の必要性を検証しており、イノベーション論の観点からも様々な学術的アプローチがされています。日本では数理経済学、イノベーション論のいずれも、ごくわずかな例外を除いて特許制度を正面から扱った例はなく、かなり学術的空白を生じていると言えます。

上に書いた知財専門職大学院は研究者を育成することが役割ではありませんから、知財に関する学術研究の担い手となることは困難です。東京理科大学が博士課程後期としてイノベーション専攻(中に知財マネジメントがあります)の課程を今年から設けましたが、まだ成果と言えるものはなさそうです。他に、一橋大学のイノベーション研究センターや東京工業大学のイノベーションマネジメント専攻で知財に関する学術研究を行っているようですが、まだまだ数は少ないです。東京大学の知的資産経営総括寄付講座は知財に関する学術研究は行っているものの学生の受け入れをしていませんし、同様に東京大学の政策ビジョン研究センターにも研究ユニットがありますが、これも学生の受け入れをしていません。

知財に関する学術研究の裾野を広げる意味では、もっと知財に関する学術研究を行い、研究者の育成を行う機関が増えるべきだと思います。が、きっとニーズが少ないんでしょうね。

特許翻訳の難しさ

最近、海外の対応部門と情報共有するために部門内での議事録を英訳する作業に没頭していました。議事録ですから話し言葉がメインであるものの、部門内での施策を説明した会議ですから専門用語が頻繁に出たりして、なかなか難易度は高かったです。しかも、confidentialityが高いので外注もできず、同僚と二人で苦労しながら英訳しましたcoldsweats02

で、スピーカーである部門内の部長にチェックをお願いしたところ、「直訳過ぎる」とのお叱りを受けてしまいました。う~ん、これでも意訳したつもりなんですが、どうも、特許翻訳で染みついた癖が直らないようです。

特許翻訳は、明細書で伝えるべき技術内容を正確に伝えるためと、言い回しが法律的なbackgroundを持っているので、意訳をする勇気がなかなか持ちにくい、という印象を持っています。当然、本当に直訳すると現地で意味不明になってしまうことが多々あるので、現地のnativeに理解してもらえるようなtransformationをした上で翻訳をするわけです。一方、社内の資料であれば相手方の理解が第一ですから、日本語の表現にとらわれずにスピーカーの言いたいことを表現の奥から読み取って英語として素直な表現にすることが求められます。この差は自分なりに理解していたつもりだったのですが、もう一歩踏み込んで翻訳すべきだったようです。

特許翻訳というのも、本来は日本語の表現を一体解体して、明細書の言わんとするところを深く理解した上で英語として再構築し、しかも、法律的に問題のない言い回しをすることが求められるはずです。が、現実は逐語対応ではないものの逐文対応の翻訳が主で、多分現地の代理人からすると表現として洗練されていないものが多いのでは、と推測します(米国代理人は、「この発明は自分がしました」という宣誓書があるがために、表現をいじると代理人たる他人の発明とのコンタミを恐れて、まず日本から送った原稿をいじりません)。あと、逐文翻訳でないとチェッカーがチェックしにくいからと言うよくわからない理由を言う人もいますが、それはちょっとないなぁdespair、と。

こう考えていくと、特許翻訳でもまず普通で素直な、しかも洗練された英語表現が前提なのでは、という気がしてきます。当然、技術の理解とテクニカルタームの正確な使用も必須です。ただ、自分はずっとチェックをする側に立って好き勝手言っていたわけですが、今回のように実際に英文を作成する側に立つと苦労が身にしみて分かります。まずは、わかりやすい日本語明細書が前提、ということかもしれません。

オーディオマニアへの道?

世の中は知財戦略計画2009が発表されたりして結構話題満載ですが、本日は知財とは全く関係のない話でhappy01

自分は中学生の当たりからオーディオなるものに興味を持ち、その頃は隆盛を極めていた第一家電や石丸電機、そしてヤマギワ(この頃は高級オーディオでも有名だったのです)に通ってバカ高いステレオセットを見て、当然聴いて憧れていたものです。今はA&Vフェスタに名前を変えてしまいましたが、その頃はオーディオフェアはものすごい熱気を帯びた展示会で、時々通っては最先端のオーディオを見ていたものです。

大学生になってようやくアルバイトで自分の自由になる金を手に入れ、大学生協でローンを組んでステレオのコンポーネント(古そうな言い方ですが、今でもソニーのサイトとかでは使ってますね)をこつこつと買い貯め、ごくごく安物ではありますが、自分の思い通りのシステムを組むことができた喜びは今でも鮮明に覚えています。社会人になると、なぜか周りにオーディオマニアと呼ばれる人々が何人もいて、そういった人からお下がりのスピーカーを安く譲ってもらったり、果ては古くなって使えなくなったプリメインアンプのパワーアンプ回路を改造してくれる人もいたりして、なかなか単品の価格はそれほど高くありませんでしたが(何せ単品で10万円以上するのが当たり前の世界ですから)、充実したオーディオライフを過ごすことができました。以前このBLOGでご紹介した寺垣武さんのご自宅にお邪魔したのもこの頃です。

その後、家庭を持ってオーディオに金をかけることもできず、MDを録音するためにMDレコーダー兼プレーヤーを買い足したのと、テープデッキが経年変化で動かなくなってしまった(機構部品が多いので寿命が来るのは宿命ですねsad)ので、ごくごく安物に買い換えたのと、プリメインアンプが接触不良でとうとう寿命が来たので(何度も修理したんですけどねcrying)、偶然に引っ越しで使わなくなったプリメインアンプを知人(パテントサロンの管理人さんだったりしますhappy01)から貰い受けた以外は、何とか長持ちをさせながら今に至っています。そろそろCDプレーヤーもディスク読取が怪しくなってきているので買い換えたいと思いつつも、まだ聴けるからいいかぁ、となだめすかしながら使っています。

さて、20年以上我が家に鎮座しているスピーカー、上に書いたように以前の職場の先輩から貰い受けたもので、まともに買うと結構な値段がするようです。久しぶりに、少々大音量で鳴らしてみたら、今まで聴いていたCDが全然違う音がするのでびっくりしてしまいましたhappy02。普段、子供がいればTVばかり見ていますし、音楽を聴く時は大抵BGMでしか聴かない(私はきちんと聴きたいのですが、妻がいるとどうしても癒し方向になるので大音量では鳴らせないのです)ので、そのスピーカーでは蚊の鳴くような音でしか再生していません。きちんと鳴らしていないもったいなさを恥じて、これからは時々きちんと鳴らしてあげないと音が劣化してしまうなぁ、と反省していました。

ただ、ステレオセットは居間にあるので、私一人で音楽を聴いている時間は大してありません。妻も音の善し悪しについてあれこれ批評するたちではないので、音が鳴っていればよさそうで、単品の買い換えに理解をしてくれるようには思えません。リスニングルームを持つなんて夢のまた夢ですしね。

ただ、オーディオマニアの道ははまり込んだら奥が深いです。上に書いたように、単品で10万円なんて序の口です。音響というのは、元の波形を忠実に再現するという観点からすれば極めて定量的なのですが、人には好みの音があって、好みの音質を再現するという観点からすると今度は非常に定性的になります。メーカー毎の個性があり、しかも単品毎にも個性があります。そして、単品の組み合わせで音質はがらっと変わってきます。到底道を究めることはできません。どこまで追い求めるか…。

知財政策の決定プロセス

この話、一度したかも知れませんが、書きたくなったのでwink

今の会社での仕事の中に、社内の他部門、他社、さらには政府関係団体等との渉外という仕事があります。結構地味な仕事で、特段目立つわけでもなく、大抵は部門長であるとか知財担当役員の裏方としてプレゼン資料やら発表原稿やらを作ることがメインですが、そのプロセスの中で、知財政策がどのような過程を経て作成され、決定するかというのがおぼろげながらに見えてきました。

知財政策の場合、特許庁及び経産省がまず知的財産研究所などの外部研究団体に委託研究という形で政策課題に関する研究をしてもらいます。以前は知的財産研究所オンリーだったのですが、最近は一般入札をしていることもあるせいか、他の団体も時々やっているようです。これでまず1年。次に、産業構造審議会という経産省内の審議会に常設されている知的財産委員会の下部に小委員会を設置し、ここで有識者の意見等を統合し、報告書案を提出してパブリックコメントを求め、最終の報告書を完成する。これで1年くらい。そして法律改正作業に入って改正法案を国会に提出し、商工委員会、本会議での議論を経て採決。とまあ、結構時間のかかる作業です。

産業界としてこのプロセスに関与できる機会としては、上に書いた産構審の委員として参加するのが最も直接ですが、産業界の有識者の数は限られていますので、そんなにチャンスがあるわけではありません。産構審での議論や法律改正作業の途中で、経産省なり特許庁は産業界の各団体と緊密に意見交換をし、そのやり取りの中で軌道が微調整されることがあります。このプロセスが、産業界として知財政策に関与できる重要な機会となります。産業界の各団体として一番に挙げられるのが日本経団連でしょう。ここには知的財産委員会があり、定期的に開催される会合で経産省、特許庁との意見交換がされます。他に、業界毎の団体、例えば電機業界だと電子情報技術産業協会(JEITA)などがあり、それぞれ知的財産に関する委員会を持っているので、この委員会が特許庁等との情報交換を行います。他に、忘れてならないのが日本知的財産協会です。

あくまでも私見ですが、知財政策の決定プロセスは、業界団体との様々な折衝や法曹界の意見を参考にするなど非常に多岐に渡りかつ複雑なものですので、一見「?」と思う内容でも実は背景とする事情があるはずですし、法律改正作業の当事者でないとわからない部分があるようです。とは言え、政策決定プロセスはできるだけ透明である必要がありますし、利害関係者に対する説明責任は十分にあるわけです。そうは言っても、実際に一個人の政策ウォッチャーができる役割は実は微々たるもので、こういったプロセスの内情を知った上で発言なり行動をすることが求められているのだろうなぁ、と思ったりします。

日本的経営スタイルもいいところがありますね

昨日のNHKクローズアップ現代で、「人に優しい企業の挑戦」と題して、この不況下にあってもリストラ、給与カット等をせずに、それでも高成長を遂げている(ちょっと足踏みしているようでもありますが)会社が幾つか紹介されていました。

相変わらずNHKですから会社名を一切言わないのですが、紹介された順に樹研工業(世界一小さいプラスチック製の歯車を作ったことのある会社)、伊那食品工業(かんてんぱぱのブランド名で知られている全国シェアNo.1の会社)及び林原グループ(トレハロースを安定的に量産できる技術を開発した会社)です。

それぞれの会社は個々にかなり強烈な個性を持っている会社です。それぞれご存じの方も多いかと思いますので、個別の紹介はここでは省略します(日経ビジネスで紹介された経験がそれぞれあるかと思います)。共通するのは、成果主義や株主至上主義といった米国流グローバルマネジメントからかなり遠い位置にある経営主義、すなわち安定雇用、長期的視点に立った成長戦略、短期的成果を度外視した技術開発戦略といったかつての日本的経営とも言える主義を持ちながらも、それぞれ非常に高い技術開発力を発揮して独創的な商品を開発し続けていることです。つまり、一時期時代遅れと言われてきた日本的経営スタイルを採用していてもイノベーションを継続的に起こすことが可能だ、ということです。

また面白いことに、これらの会社の経営者が、例えば松下幸之助であるとか井深大であるとか戦後すぐの時期に世界的会社を創立し、運営してきた名経営者の哲学を信奉しているのです。松下幸之助にしても井深大にしても戦中・戦後の激動期を生き抜いてきた経験がありますので、この世界的不況といった大変換期にあっても通用する経営哲学を持ち得ていたのかもしれません。

一方で、番組中でコメンテーターとして出演していた伊丹教授(東京理科大教授、として紹介されていましたねwink)が指摘されていたように、日本的経営も両手を挙げて賞賛できるわけではなく、安定的雇用等は時に馴れ合いや人間関係の固定化を招いて良くない面もあるわけです。ですから、日本的経営スタイルが見直されたとしても全くの復古があるとは言えません

いずれにしても、どんな経営スタイルであっても、ものづくりをメインとする会社にとって圧倒的な技術開発力を有することがアドバンテージをもたらす源泉となるのだな、と改めて思い知らされました。ただ、それが難しいんですよね。

大学の特許出願は非効率的??

先週金曜日、芝浦工業大学で「オープンイノベーションの時代における知的財産権戦略」と題したシンポジウムが開催されたので、出席してきました(これは夜に開催されましたから、会社をさぼっていったわけではありません、念のためwink)。出席者はそれほど多くなく、ちょっと宣伝不足ではないかな、と残念に思っていました。

内容は、最初の2つは殆ど知っていることばかりでした。まあ、これは予想できたことです。最後の、芝浦工業大学の田中教授の発表は、不覚にも知らなかった内容だったのでちょっとだけ興味がわきました。ざっと説明すると、大学が出願している創薬に関する特許出願は創薬企業の特許出願に比較して出願タイミングもあまりよろしくなく、また、特許の質が実施例に記載された化合物の数に反映されるとの前提で、特許の質もあまり芳しいものではない、という内容でした。色々と前提条件はあるものの、なるほどと納得のゆくものでした。田中教授の出身が三菱化学の研究者ですから、それなりに説得力のある発表だったと思います。なお、この発表の内容は、昨年の日本知財学会の学術発表会や「研究・技術・計画」誌でも発表されているようです(購読しているのに知らなかったcoldsweats02)。

政府の知的財産戦略大綱が発表された頃を境に、各大学は文部科学省の補助金を元にまずTLOを整備し、次いで知的財産本部、そして一部の大学は産学連携本部を立ち上げ、これらの組織により大学内の知的財産活動を推進してきています。2008年度の特許行政年次報告書によると、大学において知的財産活動に従事している人間は2007年度で2500人にも上ると推計されており、かなりの人材が大学に集結していることがわかります。私が存じ上げている元企業知財部の方も随分と大学で知的財産活動に従事されています。それだけの英知を集結しながら、特許出願の効率が悪いのは、企業人としてはそうなのか、という印象しかありませんが、国民として考えると、補助金として投入されている税金の無駄遣いにもつながるので、ちょっと困ったな、という気がします。

いずれにしても、企業であれば特許出願のパフォーマンスをきちんと検証しますので、大学にもそういったプロセスが必要だな、と感じた次第です。

中国のITセキュリティ機器の強制認証について(さらに続き)

今日も短めに。

先日、日中ハイレベル経済会合が行われて、その会合の際にITセキュリティ製品の強制認証制度について意見交換がされたようです。マスコミ報道によると、あまり進展がなかったようで、まぁ、中国としても「やります」と啖呵を切った以上簡単に引き下がることはできないでしょうから、仕方ないところかと思います。

マスコミで、前回のBLOGでご紹介した以降、もう一つ結構詳細に紹介した記事が出ました。読んだ限りでは、やはりどうもよくわかりません。厳しい言い方をすれば、記者は本当に実施規則まで読んでるのかな、という疑問があります。知財業界が一番気にしているソースコード開示について記事ではあるともないとも書いていません。もう一つ。中国国内ではあまり報道されていないとのことですが、それは多分当たり前で、中国国内にITセキュリティ製品を製造する大手メーカーはあまりないからではないかと推測されます。欧米諸国は日本と同様に問題視して中国との折衝を行っているようです。

この制度、やはり世界的に見て例のない制度ですし、国家安全保障という観点からしてもITセキュリティ製品に関する各種技術資料をおいそれと国外に提示することもできませんから、できたら撤回するか、あるいは世界的にポピュラーな相互認証制度の採用を代わりにしてもらうかを中国当局にお願いしたいところです。

研究と実務の超えがたいギャップ

今日は会社をさぼって(当然有休ですよ←ばれたらまずいかなcoldsweats01)シンポジウムに参加してきました。幸運にも知り合いに一人も会わずに参加できました。

内容自体は結構興味深いものもあり、参加してよかったと思うのですが、幾つか、大学の研究者の研究発表がちょっと気になるところが。最近の傾向として特許データベースを使った知的財産研究が流行っており、今回もそういった発表がありました。研究成果の常として、単なるフレームワーク提示ではなく実際に適用してうまくいきました、という話をします(それがないと単なる概念の提示なので面白味がありません)。しかし、その実際に適用した結果を見ると、その業界に属する人間であれば当たり前の結果か、あるいは、実情はそうではないんです、というものに終わっていて、ちっとも深みがありません。結局、知的財産研究のための研究に終始していて、産業にいかに寄与するかという観点が欠けているか、その気がないかのどちらかなんでしょう。

理由として考えられるのが、知的財産の研究者が実際の産業界での実務経験に極めて乏しく、一定の成果が得られた段階で満足してしまうからだと思われます。逆に、産業界での実務経験が豊富な人材も知的財産の研究者にいらっしゃるのですが、そういった方は逆に自身の体験を説くだけに終始してしまい、研究というフレームワークに載らないことばかりされています。結局、この間のギャップは解消されません。この話、知財学会の研究発表会を聴いていても同じことがずっと気になって、自分自身は結構いらついています。本当は自分がやればいいんでしょうが、体力が持たないのと自分自身の年齢を考えると研究の最前線で働ける年月に限りがあってもう遅いかな、と思うのがあって困っています。

誰か同じことに気付いている人はいないんでしょうか…。

ビジネスマンとしての弁理士

ちょっと疲れ気味なのでできるだけ短めに(と言いつつ、書き始めると長くなるのが悪い癖coldsweats01)。

特許事務所に所属する弁理士と企業知財部との間に情報格差があるという話は何度過去のBLOGでしてきました。企業知財部には各国代理人、政府及び知財協から膨大な情報が提供されてきますので、情報格差は致し方ない部分もあるのですが、特許事務所に所属する弁理士が企業のニーズをどれだけ把握しようと努力しているかという姿勢も時に欠けるのではないか、という印象を持っています。なお、企業のニーズと言ってもビジネスマンとして知っておくべき常識に近いところも含まれます。

考えてみると、特許事務所に所属する弁理士のうち、特許事務所の経営に携わっている弁理士がどれくらいいるのでしょうか。統計によると、日本に存在する特許事務所のうち1人弁理士事務所の占める割合は確か8割程度です。しかし、経営者でない弁理士のうちどの程度の規模の特許事務所に勤務しているかを考えると、かなりの割合の弁理士が中規模以上の特許事務所に勤務しており、おしなべて考えると、経営者でない弁理士の割合は全体の半分程度になると記憶しています(このあたりの統計データ、どこかにあったはずなのですが、ちょっと見あたりません)。経営者でない弁理士が世事に疎いという短絡的な決めつけ方はしませんが、少なくとも、かなりの割合の弁理士が、特許庁の審査官・審判官と企業知財部の特許担当者と、そして事務所内の同僚・先輩・後輩とで構成される人間関係で固定された生活を送っていてもおかしくないわけです。こういった生活環境に置かれて、自ら外部に出る態度を取らないと視野狭窄を起こす可能性が出てきます。

前に紹介したかもしれませんが、私の弁理士試験合格同期生に知財戦略コンサルティングシンポジウムのネットワーキングパーティーでばったり会った時に、「知財経営なんて受験時代に習わなかったよね」と言われて唖然とした覚えがあります。知財経営は時代の流れでもあるのですが、知財を経営に活かすという考えはずっと前からあって、習うとかいう問題ではないんですが…sad

特許実務に没頭していると世事に疎くなることもありうべし、というのは自分の経験からしても頷けるところです。しかし、知的財産政策も様々な経済状況をベースにして立案されていますし(特に最近はそう)、コンサルティングを行うまでもなく特許実務を行う上でも当該技術に関する業界動向や経済状況全体を把握することでよりよい権利取得ができるのだと思います。これからは国際化だ、と語学力を磨くのも重要ですが、並行してビジネスマンとしての知識涵養を図ることも同様に重要だと思っています。この点が解決されないと、企業知財部と特許事務所との力関係はなかなか改善されないと思うのです。

ターンキ・ソリューション???

太陽電池市場が非常に注目されています(こんなサイトがあります)。ここ数年、欧州を中心とする政府の太陽電池導入に対する経済的支援と、米国オバマ大統領がグリーン・ニューディール政策を掲げることによる市場拡大の見込みが市場を活気づけているんだと思います。

ただ、かつて日本のお家芸であった太陽電池市場ですが、最近はドイツのQ-Cellsにトップシェアを奪われたりしまして(参考:Wikipedia)、ちょっと見る影もないというと関係者に怒られますが、冴えない状況になっています。日経マイクロデバイスの5月号では、韓国、中国、インドメーカーの急激な追い上げについて特集を組んでいます。

この日経マイクロデバイスの特集号でも取り上げられているように、技術的集積があまりないと思われる新興企業が急激に太陽電池の生産を立ち上げられる背景には、ターンキー・ソリューションという、ノウハウ込みの製造装置を丸ごと供給するメーカーの存在があります。太陽電池の製造装置メーカーでこのターンキー・ソリューションを提供しているメーカーとして有名なのが、アプライド・マテリアルズという会社です。

このアプライド・マテリアルズという会社、半導体製造装置の売り上げ世界一の会社であり、それまでの(特に日本の)半導体製造装置会社が特定の半導体製造会社との結びつきが強かったのに対し、どの半導体製造会社に対しても一律の優秀な半導体製造装置を供給し、これにより製造ノウハウのない新興企業でも半導体の製造立ち上げを容易にできるようになったと記憶しています。ある意味、ターンキー・ソリューションの先駆けだったと言えます。これ以降、日本の半導体製造業界は斜陽の道を進むことになったわけです(これだけが理由とも言えませんが)。

いわゆるモジュール化が進んだ市場では、トータルな製品を製造するノウハウに乏しくても、モジュールを組み立てるだけで製品を製造することが曲がりなりにもできます(市場立ち上がりの当初は特に)。しかし、半導体や太陽電池のように、製造プロセスそのものにノウハウが埋め込まれているような製品の場合、製造プロセスのノウハウが先行企業内に留まっている限り後発メーカーの追従スピードは緩やかなものにならざるを得ません。しかし、ノウハウ込みの製造装置がパッケージで供給されてしまうと、大量生産による価格の急激な低下により、市場自体が一変してしまい、先行者利益はそこで吹っ飛んでしまいます。先行者は知財等により何とか参入障壁を築こうとしますが、ノウハウは権利化することが難しいですし、そもそも知財だけで参入障壁を築くのは困難です。

太陽電池も半導体と同様、ターンキー・ソリューションの存在により市場の急激な変化が起こっています。日本メーカーは変換効率を向上することで対処しようとしていますが、日本であれば設置場所が狭いので変換効率が高い(一方で価格の高いであろう)商品は受け入れられるでしょうが、米国のように変換効率が低ければ大面積での設置を考えて全体的なコストを削減する方向に考えるであろう場合、変換効率の向上が必勝シナリオとは言えません。

ターンキー・ソリューションを提供する企業の出現は必然であると割り切り、太陽電池モジュール単体での販売ではなく、新たなシステムを構築するといった発想で他社の追随を振り切るしかないのかも知れません。一例として、最近話題になっている色素増感型太陽電池は製造プロセスが全く違うのでコスト低減の可能性があり、蛍光灯での発電も可能な場合があり、しかも着色が可能ですから、家全体を色素増感型太陽電池で覆ったり、CE機器の発電装置としての応用など様々な使い道が考えられます(このあたりどこかの記事の受け売りですが、リンクが見つからないので申し訳ありません)。

BLOGを書く態度

最近、知財に関する報道が新聞等で以前より頻繁になされるようになり、それだけ世間の認知度が高くなったのだと思っています。で、知財関連のBLOGを見ていると、この新聞等での報道を見て、それに対する感想を述べているのは良いのですが、報道の元となっている政府機関等の発表であるとかプレスリリース等を見ずにあれこれと批評しているのを散見します。

例えば、「薬の服用法にも特許…政府方針」というネット記事が先日出ました。この記事は、知的財産戦略本部の先端医療特許検討委員会が出した報告書に基づくものなのですが、この報告書を見てあれこれ批評をしていると思われるBLOG記事は限られています。そして、報告書を見ずして「特許権侵害はどうするのだろう」といった批評をしているわけです。

たかがBLOGと言う人もいるでしょう。しかし、このネット社会ではBLOGも時に世論を喚起する力を持ちますし、BLOGを読んで自分の情報とする人も多いわけです。

自分がBLOGを書く時、何かしらの情報を引用する場合はできるだけ1次情報に基づき、しかもその1次情報をきちんと読み込んで内容を把握してから引用するようにしています。それは、情報を提供する場合の最低限のマナーであると共に、misleadしないためのものでもあります。1次情報に当たれ、というのは会社生活をしていると自然とたたき込まれるものだと思うのですが…。

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