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知的財産の学術研究にあれこれ思う

日本知財学会の年次学術研究発表会に出席できなかったので、予稿集を注文したところ、本日到着しました。ざっと眺めてみて、雰囲気をつかむことができました。

このところ目立っているのが、知財専門職大学院やMOT専門職大学院の学生(社会人学生だと思います)の発表です。題名に惹かれて予稿集を読んでみるのですが、かなりの確率で残念ながら期待はずれの内容になっています。方向性は良いのですが、ありものの資料をまとめたとか、簡単な特許調査をしました、とか、企業の知財部門が新規事業参入の際に作成する簡単な特許調査レポートと大差ないレベルです。

まあ、自分が経験したのでよくわかるとおり、社会人大学院は平日に仕事をこなして夜に授業を受け、土曜日は一日中授業を受けており、その合間に研究をしていますので、実際に修士発表(論文をまとめるとも限らないので)に割ける時間は実はごくわずかしかありません。全日研究に没頭できる博士課程前期(後期でも一緒ですね)の学生とは置かれている境遇は全然違います。従って、研究内容の薄さを責めても酷であることは重々承知しています。が、仮にも学会の研究発表会ですから、それなりの学術レベルが要求されるのは当然でもあります。当日の発表が内容豊富であったことを祈ります。

背景には、知財に関する学術研究が(法律論はかなりの蓄積があるものの)歴史も研究者の層もまだまだ薄いことがあるのだと思っています。欧米では、かなり昔から経済学者が特許制度の必要性を検証しており、イノベーション論の観点からも様々な学術的アプローチがされています。日本では数理経済学、イノベーション論のいずれも、ごくわずかな例外を除いて特許制度を正面から扱った例はなく、かなり学術的空白を生じていると言えます。

上に書いた知財専門職大学院は研究者を育成することが役割ではありませんから、知財に関する学術研究の担い手となることは困難です。東京理科大学が博士課程後期としてイノベーション専攻(中に知財マネジメントがあります)の課程を今年から設けましたが、まだ成果と言えるものはなさそうです。他に、一橋大学のイノベーション研究センターや東京工業大学のイノベーションマネジメント専攻で知財に関する学術研究を行っているようですが、まだまだ数は少ないです。東京大学の知的資産経営総括寄付講座は知財に関する学術研究は行っているものの学生の受け入れをしていませんし、同様に東京大学の政策ビジョン研究センターにも研究ユニットがありますが、これも学生の受け入れをしていません。

知財に関する学術研究の裾野を広げる意味では、もっと知財に関する学術研究を行い、研究者の育成を行う機関が増えるべきだと思います。が、きっとニーズが少ないんでしょうね。

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