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2009年7月

トラックという概念

本日は連投で。

5歳になる息子が、スキマスイッチの楽曲をいたく気に入って、車の中でも家の中でもずーっと聞かされています。特にお気に入りなのが「全力少年」。曲が終わるとすぐにトラックを戻して繰り返し聴いています。

考えてみると、こうやって特定のトラックを繰り返し聴けるようになったのもCD以降の利点なのですね。カセットテープの頃にも楽曲の頭出し機能ってのはありましたが、楽曲間の空白音を検出して頭出しするものでしたから、演出効果により楽曲間の空白音がない場合は失敗しますし、そもそもこの機能、再生ヘッドにテープを押し付けた状態で早送り/巻き戻しをしていますから、出来の悪いテープだと摩耗が心配になってしまいました(メタルテープ等の蒸着系だとあんまり気にしなくていいんでしょうが)。そのうち、ユーザーが頭出し信号を入れておくと、そのテープデッキであれば頭出し信号に基づいてトラックの頭出しをするような機能が出てきましたが、これも汎用的ではなかったですね。

CD以降はトラックという概念が標準化されて普遍的になりましたから、特定のトラックだけを繰り返し聴くということが非常に楽になりました。そうこうしているうちに、iTunesを代表とする音楽配信サイトがトラック単位での音楽販売を積極的にするようになり、アルバムという楽曲のまとまりではなく、気に入った楽曲だけをchoiceして購入し、自分の好みで聴くようになってきているようです。

前のBLOGでも書きましたが、この風潮、個人的には淋しい限りです。アーティストの中にはシングル曲を中心にプロモートしている人もいますから、そういったアーティストにとってはシングル曲が売れればOKなのでしょうが、アルバムというまとまりで自分なりの表現を追求しているアーティストもいますから、そういったアーティストにとっては今の流れはどうなんだろう?と思ってしまいます。

そうは言っても、リアルな流通形態としてはCDは未だに簡便なメディアだと思えます。自分が住んでいる地域の図書館で貸し出しているCDのリクエスト数や貸出履歴を見ると、ネットでの配信が膨大な数になっている宇多田ヒカルの”HEART STATION”のリクエスト数や貸出履歴はものすごい数になっています。日本だけの状況かもしれませんが、まだアルバムとしての価値はそれなりに認識されているようにも思えます。ただ、借りた人が気に入った楽曲だけ聴いているのだとすると、時代の流れなのかもしれませんね。

ネットブックによる価格破壊の後にくるもの

Intel社が、ネットブックの価格破壊というイメージを必ずしも好ましく思っていないという記事がありました。なるほど、Intelは自らプロセッサの高機能化とともに価格維持路線を堅持してきた戦略ですから、そもそも機能を削って低価格にしたAtomプロセッサがこれだけ売れると、メインストリームであるCentrinoプロセッサの売り上げにも大きな影響が出てくると思われ、方針転換を余儀なくされることが予想されますね。

ただ、Intelがネットブックの概念を考えていた頃は、ネットブックは「PCが高くて手を出せなかった層」のためのものであったかもしれませんが、上の記事で言及されているように、PCユーザーのかなりの部分がPCをメール送受信及びネット接続に「しか」使っていないであろうことを考えると、それまでのPC自体がオーバースペックであり、かなりのユーザー層がネットブック購入に走ることは今となれば予想の範囲内の事態であったように思えます(そういえば、このBLOGで、ネットブックはクリステンセン教授が言うところの「破壊的イノベーション」だって話をした記憶があります)。

こうなると、もう元には戻れません。更に、発展途上国において目の前にネットブックと通常のPCがあったら、迷わずにネットブックを購入するでしょう。しかも、Google Chrome OSがネットブックに搭載されたら、OSを含めた価格破壊はより進行するわけです。もしかしたらWintel連合軍もものすごい苦戦を強いられるかもしれません。

とは言え、Intelは、例えば次世代無線ネットワーク(WiMAX)や家庭内ネットワークの国際標準化に力を入れており、プロセッサが振るわなくなったからと言って直ちに業績が急激に悪くなるとも言えません。一ユーザーとしては、興味深く見せていただくのみです。

弁理士試験合格後の自己研鑽

ぼーっとしているうちに、このBLOGへの皆様のアクセスが50000アクセスを超えていましたhappy02皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げますconfident

さて、本題を。

よく言われることとして、弁理士合格は弁理士としての業務のスタートラインに立ったに過ぎず、その後は自己研鑽が欠かせない、ということがあります。これは自分が弁理士としてのキャリアプランを考えて自分なりに勉強をしてきた経験からもうなづけるところです。弁理士法改正により自己研鑽自身が義務化していますから、時代の流れも弁理士試験合格=弁理士業務一本立ちという公式が成り立たないことを示しているでしょう。

では、何を研鑽すべきなのかということについては、何となく見ているとその時代のトレンドみたいなものがあるように思います。私が合格した頃はグローバルな特許出願が盛んに唱えられていて、外国語の習得、そして海外特許実務への精通が次なるステップだったように記憶しています。その後、弁理士自身が訴訟への関与を強めるに伴い(付記弁理士もその流れですね)、法律系知識の習得をすることも一つのトレンドになったように記憶しています。これらを合体すると、米国弁護士資格の取得を前提とした米国ロースクール留学という流れになります。私も、一時期検討をしたのですが、最大の難点は財力と体力でした。どちらも限りがありますので。その後、一連の知財推進計画で知財経営がfocusされると、経営知識を身につけようとするトレンドが出てきているように思います。IPBAは弁理士側が必要に迫られて作ったセミナーだと理解しています。ごく少数ですが、弁理士試験の次は中小企業診断士試験だ、と考えておられる方もいるようです。

自分の経験からすると、資格試験の勉強にはある程度のイナーシャ(慣性力)がありますので、合格したからと言ってそこで勉強をやめるのではなく、何らかの形で勉強を続けようとする気持ちが継続するように思います。この継続性と、上に書いた周囲から言われる自己研鑽の必要性とが合体して、延々と勉強が続く泥沼にはまり込んでいくようにも見えます。

ここで注意したいのが、企業勤務弁理士を除いて弁理士は出願関連の書類を作成して生計を立てていますので(ごく少数、コンサルタント業務や出願系以外の実務で稼いでおられる方もいらっしゃるでしょうが)、特許事務所に勤務して明細書等の(補助)作成能力をみがきながら弁理士試験に合格されたならまだしも、実務経験がない状態で弁理士試験に合格し、その後、自己研鑽の掛け声に後押しされるように実務経験以外の知識習得に邁進した場合、本業の知識が疎かになったまま年月が過ぎてしまう可能性があることです。ごく最近の合格者は登録前研修をされていますが、それでも個人的には特許事務所等での実務経験は必須だと思っています。

自分の知識の何をして弁理士たらしめているのか、という観点に立つと、合格後にまずやるべき知識習得は何であるかがわかるように思っています。私は法律系知識の取得も語学研鑽も経営知識の習得も一通りしてきましたが、この間、かなりの年月を要してしまいました。振り返ってみると、それなりの年月をかけて習得したからこそわかってくる境地もあるように思います。まあ、こんな話をすると単なる説教にしか見えないかもしれませんがcoldsweats01

PATOLISが民事再生手続の開始申立をしました

特許データベース最古参のPATOLISを運営しているパトリス社がが民事再生手続の開始を申し立てたそうです(プレスリリース)。

PATOLISといえば、かつては日本特許情報機構(JAPIO)が行っていたデータベースでしたが、JAPIOから切り離されて民間の出資も入れて民営化されました。その後、特許庁(正確には工業所有権情報・研修館)が提供する無償の特許電子図書館(IPDL)が急激に機能拡充を図り、さらに、サードパーティーの特許データベース業者(派手なのは野村総研のNRIサイバーパテントでしょうか)の進出や、特許管理ソフトウェアを開発している業者(例えば日立情報システムズなど)が特許調査システムとの連携を図るなどしてこれも機能拡充を図る中で、PATOLISならではのメリットが見えにくくなってきており、そうこうしているうちに業績はジリ貧状態にあったようです。

そもそも、PATILOSは、データベース提供当初から従量制を引いており、初期の頃はぼんやり検索をしていると、とてつもない高額の請求が来るので、事前に検索式を練りに練って(ゴミ件数をできるだけ拾わないように、また、何度も検索をしないで済むように)おく必要がありました。それもこれも、PATOLISが唯一の日本特許検索データベースだったから許されていたように思います。しかし、特許文書のペーパーレス化に伴い、特許庁が公報データを当初はCD-ROMで(今はDVDになりましたね)それなりのコストで公開することを決断し、このCD-ROMデータに基づいてサードパーティーがPATOLISより安価に、あるいは定額制の特許データベースを構築するようになってからは、PATOLISを選択する必要性がだんだんと薄れてきていたわけです。このビジネスモデルをPATOLIS自身が変革しきれなかったのが問題だったのでしょう。

この間、PATOLISも社長の交代や料金の値下げ、さらには民間への出資依頼等存続のための尽力をしていたようですが、様々な努力も空しく、ということだと思います。

PATOLISにはそれまでに蓄積してきた膨大なデータもありますし、ペーパーレス化以前の公報データを電子化したデータにはかけがえのない価値もありますから、何らかの形で存続してほしいのは山々なのですが、経済原理という側面からは将来は決して明るくなさそうです。

なお、一部の知財系BLOGで、PATOLISの民事再生法手続の開始申立を不況のせいにしていた方がいらっしゃいましたが、それは大きな理由ではないでしょう。むしろ、上に書いたように構造上の理由をそもそも抱えていて、ついに力尽きた、というのが正しいのだと思います。この点、特許検索に知見を持たれている方のBLOGは正確な指摘をされています。一次情報に飛びついて安易な判断でBLOGの記事を書くと、misleadingな結論に至ってしまう点、他山の石としたいところです。

ATOKは道具である

ちょっと会社内部批判になるかもしれませんが…。

入社以来、会社のPCには個人購入したATOKを家から持ち込んでコピーし、日本語入力ソフト(昔はFEPって言ってましたね)として使っていました。唯一かつ最大の理由は、Microsoft OfficeにバンドルされているMS-IMEに比較して変換効率および変換精度が格段に良いので、ストレスなく文章入力ができることです。ATOKを使い始めてからもうそろそろ20年くらい経ちますので、もうATOKなしに文章入力をすることが非常に辛い状態になっています。体が覚えているというか(なんかエロっぽい表現ですがcoldsweats01)。

私が使っているATOK、当然、会社購入のソフトではありませんから、非常に大きな概念でいえば不法使用ソフトに該当します。業務上使用するソフトは正規購入品でなければならないのは当然であり、また、非常に厳密に言えば、外部から持ち込むことによりウィルス等の感染の危険性がありますから、社内のシステム運用担当からすれば「即刻削除してください、業務上必要だったら正規に購入してください」というスタンスになります。ただ、昨今の経済状況に鑑みると、おいそれと「では正規購入します」と言える状況ではないので、1~2度システム運用担当者と押し問答しました。「業務上これがないと業務効率がかなり低下しますから、そのままにしてもらえませんか」と。一度は引き下がってくれたのですが、とうとう年貢の納め時というか、即刻アンインストールの業務命令が来ました。まあ、こんなことで反発しても全く意味がないので、とりあえずATOKとはおさらばして、今はMS-IMEに慣れようと努力しています。

そんな中、こんな記事「抜群の変換精度でストレスなし!」がありました。自分からすれば、今更、という気が非常にするのですが、PC歴が比較的新しい方の中には一太郎に触れたこともなく、従ってATOKって何?という人もそれなりにいると思うので、改めてATOKの優秀さを紹介する記事は意味があるんだろうと思います。

まぁ、企業の事務職では文章入力そのものがメインの業務ではありませんから、ATOKの有用性についてそれほど理解がないのかもしれません。その点、特許事務所だと文章入力そのものがメインの業務ですから、日本語入力ソフトを始めとして、文章作成方法(ワープロソフトでもWordではなく一太郎であるとか、そもそもワープロソフトでは反応スピードが遅くてかったるいという人はエディターソフトを使うとか)や文章入力デバイス(キーボードもPC備え付けではなく長時間入力でも疲労感の少ない高級キーボードとか)にも非常に凝る人がいます。私も、普段の文章入力は使い慣れたエディターソフトを使っています。やはり特許事務所の人間にとって、これらは「道具」なのですね。一方、企業にいるとExcelだとかPowerpointだとかのほうが「道具」になるように思えます。この辺りは、かなり発想が違うんですね。

なお、私はジャストシステムの回し者ではありません。純粋なユーザーとしての気持ち、ってことでbleah

産業革新機構とは何?

経済産業省の肝いりで、「産業革新機構」なる官製ベンチャーキャピタルが立ちあげられようとしています(こんな記事があります)。経済産業省の担当者が概要を説明していますので、こちらの記事もご参考までに。この、産業革新機構、行政によるベンチャー支援と思われがちですが、実は知財推進計画2009にも「産業革新機構の体制を整備する」と重点施策に堂々と謳われており、知財の側面からもちょっと注目しておくべきもののようです。

そもそも、産業革新機構は、例のIntellectual Venturesが日本支社を立ち上げ、産業界に眠っている休眠特許の掘り出しや先端技術で優秀な成果を上げている大学教授等の研究者に対して経済的支援を行い、これを知財化する取り組みを行おうとしていることに反応し、「日本版Intellecutal Venturesを作ろう」という意気込みで検討されたものと記憶しています(どこかに資料があったはずなのですが、見つかりません、ごめんなさいsad)。現時点で産業革新機構が考えているスキームは、どちらかというと官製ベンチャーキャピタルの意味合いが非常に強いので、逆に知財の取り扱いはどうするんだ、と思ってしまいます。

現状では、まだ産業革新機構が具体的行動を起こしていないので、詳細な論評をすることはできませんが、個人的には、果たしてベンチャーキャピタルを行政が行う必要があるのだろうか、という根本での疑問がぬぐえません。リスクマネーだからこそ政府主導で行うべきなのだ、という論もあるかと思いますが、(ちょっと厳しい言い方をすると)一時期大学発ベンチャー1000社実現、ということで多額の補助金及び行政の支援がされ、確かに1000社起業は実現しましたが、その後、大学発ベンチャーがめぼしい成果を上げたかといわれるとちょっと疑問であり、そもそも立ち上げるべきでなかったベンチャーが補助金のおかげで立ち上げられたようなこともあり得ることを考えると、最終的には市場の評価が得られない事業は市場から退出すべきなので、その目利き能力には厳しいものが求められるべきだろうと思っています。

それにしても、前回の記事でも紹介したように、Intellectual Venturesを黒船来襲かのように報じる記事や政府の反応を見ていると、本当のところはどうなんだろうと思ってしまいます。何年かしないときちんとした評価は定まらないと思いますが。

明細書作成能力→発明創出→知財コンサル?

「明細書作成と発明創出~明細書作成能力をいかにして発明創出につなげるか」という題名のセミナーに参加してきました。この題名だけ見るとごく平凡なセミナーに見えますが、実は弁理士が発明創出課程においてどうやって知財コンサルをできるか、ということを真剣に議論したセミナーでした。つまり、弁理士が持っている明細書作成能力をキーに、企業に対してどのような知財コンサルができるか、ということです。講師は、このBLOGを書いていらっしゃる元企業知財部員(弁理士)の方をメインに、同じく元企業知財部員の方、特許事務所経営弁理士の方、そして、まとめ役として産学連携分野で大学に対して知財コンサルを行っている特許事務所勤務弁理士の方、という陣容でした。

考えてみると、この議論、弁理士会の知財経営コンサルティング委員会でずっと議論されてきた話であり、金を取るかどうかはさておき、委員会のメンバーが講師にも呼ばれず、参加者としてもいなかった(私が見たところ)のが非常に残念でした。まぁ、私が委員会に情報を流せば良かったのでしょうがcoldsweats01。その結果、後半のパネルディスカッションで会場との自由討議があった場面で、知財経営コンサルティング委員会ではこんなことを考えている(あまり委員会に参加していない人間がいうのも良くないなぁ、と思いつつ)ということをせっせと紹介することになりました。

全体の議論としては、元企業知財部員(弁理士)の方は、例えば職務発明規定の整備、発明者教育及び知財部門体制の立ち上げといった、この方がかつて企業知財部でされていた業務内容に関する知財コンサルの実例を挙げて、まだまだ企業にはニーズがあるという話をされましたが、では特許事務所に勤務する弁理士が明細書作成能力をキーとしてどうやって知財コンサルを行うかという点については全く触れずじまいでした。また、もうお一方の元企業知財部員の方は、企業知財部から見て弁理士に期待する能力について紹介されましたが、知財コンサルについてはその可能性を示すに留まりました。さらに、特許事務所経営弁理士の方は、弁理士が知的財産コンサルティングを行うに当たってその対価の徴収方法、業務の獲得方法等に関する悩みを述べておられて、その解決策についてはちょっと時間切れで詳細な説明をされませんでした。最後に、特許事務所勤務弁理士の方は、産学連携分野における知財コンサルの可能性について言及されましたが、ではどうやって大学なりTLOにアプローチするんだという議論はちょっと不足していました。

で、トータルに考えると、当たり前なのですがあまり結論の出ない話になってしまい、何となく不満が残るセミナーでした。なかなか立場の違いを相克するまでの議論にはならなかったな、という気がしました。

明細書作成能力をいかにして発明創出につなげるか、というセミナー本題に関する議論がちょっとあったので、私なりに次の2点を発言で指摘しました。一つは、弁理士自体が発明創出から権利形成、権利活用に至るまでのストーリーを描ける想像力を身につけるべきである、ということです。元企業知財部員(弁理士)の方が、因→果ではなく果→因の発想で考えるべし、つまり、原因から結論を導き出すのではなく、想像される結果から原因を導き出すべしという話をされましたが、まあ、似ているのかな、と思います。権利取得をするのは最終的には企業の経営に資するためのものですから、経営に少しでも貢献する形での権利が必要です。これは、権利活用しやすい態様での特許権を取得すること、また、群管理での特許形成といったことが含まれます。2点目は、最初の事項に関連することとして、いい権利を取るためには企業知財部と弁理士との間で緊密な情報のやり取りが必要であり、双方ともコミュニケーション能力を高める必要がある、ということです。中間処理においてどのような見通しを持って権利取得をするのか、その案件は他社特許及び自社特許との比較でどのような位置にあり、どの程度の重要性があるのか、こういった事項を企業知財部と弁理士との間できちんと共有しなければいけない、ということです。

これに関連して、標準化、規格がらみの権利形成業務をできるだけアウトソースできないか、という会場の企業知財部員の方からの質問があり、それは難しいかも、という特許事務所経営弁理士の方からの回答がありました。手間に見合うだけの費用請求ができない、というのがその理由です。これについても、1件いくら、という費用体系でいるからできないのであって、手間に見合うだけの費用請求ができればいいのではないか、という意見もありました。

最近考えていることが丁度話題となったこともあり、結構持論を滔々と述べてしまって、今となっては反省はしていますthink。ただ、現状では明細書作成能力をキーとして発明創出活動につなげ、これをきっかけに知財コンサル活動を行うというシナリオは、弁理士にとって間口が広いものの、それが直接的に知財コンサル活動につながることは難しいかもしれません。それは企業の知財活動のほんの一部であり、もっと引き出しが幾つもないと企業側の要望に応えきれないと思えるのです。知財コンサル活動をチームで行う必要がここにあります。しかし、チーム活動の中でどうやって弁理士の本分を出していくか、ここはなかなか難しいように思えます。できる人はいると思うんですけど。

「日本の電機産業に未来はあるのか」

日本の電機産業に未来はあるのか」という本を読みました。著者は長年シンクタンクで電機業界のアナリストを務め、現在はファンドを立ち上げているとともに東京理科大のMOTで非常勤講師としてエレクトロニクス産業論について講義をしているそうです。

さて、感想としては…日頃からシンクタンクなり証券会社のアナリストレポートを見てぷんぷん腹を立てている私としては、あまり気持ちの良いものではありませんでした。企業の中にいると、自分が所属している会社に関する外部測定可能な情報を駆使して書かれたアナリストレポートは、どうも会社の実態を正確に表していないな、と思えてきます。企業という実体は、多数の生身の人間が日々膨大な情報に接しながら時々刻々と変化する状況に対応すべく判断を重ね、その結果が経営活動として外部に計測可能な状態になるので、外部からは合理的でないと思われる判断であっても、実は内部の人間のみ知ることの可能な情報等を勘案するとそれ相応の合理性があり、中期的観点からすると遠回りに見えても正しかったということが結構あります。

例えば、PC事業について、これだけコモディティ化、モジュール化が進むと自社製造(子会社も含みます)のメリットは全くないとの議論が結構あります。しかし、自社製造には商品企画→商品開発→製造に至る過程を非常に短時間に行え、また、在庫調整もEMSを使うよりも素早く対応できるというメリットがあります。何よりも自社製造で十分な利益が出るのであればEMS等を使う必要はありません。こういったことは、アナリストに説明する場合は事業単位の収益をせいぜい説明できるだけでしょうし、質問があった場合にも「自社製造で十分な競争力があると考えています」と回答するに止まるでしょう。

それから、産業論を説明する際に産業全体の変化を正確に捉え切れていない気がしました。デジタル化がキーワードとして挙げられているのですが、デジタル化で何が起こっているのかの考察がちょっと浅いな、と思えました。このあたりは、イノベーション論の知識が足らないのかな(破壊的イノベーションであるとかモジュール化とか)と思えてきます。電機業界で何が起こっているのかを知るためには必須の知識だと思うのですが。

いずれにせよ、アナリストという人種はこういった思考回路をしているのだということがよく理解できました。まぁ、情報の非対称性という議論をするまでもなく、会社の実情を株主を始めとする市場関係者に正確に理解していただくために、できるだけ担当者は情報提供に努めているのだと(私が担当者の活動を脇で見ている限りは)思っていますが、それにも限界があるのでなかなか難しいです。

余談で2つほど。特許戦略の巧拙を米国特許登録件数の多寡で判断しているような記載があったのはいただけません。件数で評価するのは分かり易いのですが、当たり前ですが特許戦略は登録件数だけではありません。それから、R&D力を研究開発費と研究開発人数で見ていますが、これも何となく上辺だけを見ている気がします。確かに、イノベーション論の研究者の中でも長年にわたってR&Dの定量的評価を研究していて、なかなか決め手となる手法がなさそうなのですが、人数が多ければR&D力が強いのかというと、これも当たり前ですがそんなことはありません。しかも、研究開発人数を過去の新卒エンジニア採用数の積み上げで推測している部分があるようで、ご存じの方はよくおわかりの通り、エンジニアが会社内のキャリアでずっと研究開発に携わるとは限らないですから、積み上げれば積み上げるほど誤差が生じるのではないかな、と思ってしまいました。

「特許の壁を壊せ」??

iptopsやパテントサロンの知財系ブログを見ていても紹介されていないようなので、簡単にご紹介を。最新号(2009年7月号)の日経ものづくりに「特許の壁を壊せ」という一見物騒な題名の特集があります。題名は物騒ですが、要は最近脚光を浴びている特許流通を題材に特許の有効活用とそのための知財戦略について記載されています。

特許流通ですから、最近はお決まりのIntellecutual Venturesを持ち上げています。確かに、最近のIntellectual Venturesの言動をネットで見ていると、世に跳梁跋扈するパテントトロールとは違うように思えるのですが、実態がまだ見えてこない(というか自分がチャンネルを持っていないから見えないのですが)ので安心はできないな、という気がしています。このIntellecutal Venturesに代表される特許流通やオープンイノベーションの流れとそれに呼応したかのような米国のプロパテント政策の見直し(eBay判決もさらっと紹介されています)を黒船来襲といった例えをして、国内の特許政策の遅れを批判しています。

ただ、黒船来襲って、かつてはState Street Bank判決から堰を切ったように出願の洪水が訪れたビジネスモデル特許ブームの時も同じことが言われて、日本も乗り遅れないようにとの主張があちこちからあって辟易したことを思い出します。その後、ビジネスモデル特許ブームもあっという間に熱が冷めて、Bilski判決にあるように米国でもState Street Bank判決そのものの見直しさえされてますね。果たして特許流通も単なるブームなのかそれとも一つの潮流として定着するのか、まだよくわからないところがあります。

自動車産業の知財活動を読んで

ちょっと遅くなりましたが、「知財 この人に聞く〈Vol.2〉トヨタ歴代知財部長」を読みました。Vol.1の丸島さんといい、ごくわずかではありますが面識のある方のインタビュー記事でしたので、なかなか楽しみながら読むことができましたhappy01

読んだ感想は、土生さんがBLOGでコメントされている部分もなかなか面白かったのですが、それ以上に、トヨタ自動車という会社が知的財産活動の王道を歩んでいるな、という感想が強かったです。つまり、製品を出す時には特許保証をきちんとすることが前提と言うこと。自動車の部品は2万点とも3万点とも言われているので、これらについて特許保証をすると言うのは並大抵な作業ではありません。そして、自社開発技術に対して旺盛に特許出願をし、権利取得作業を行う。巻末の図表を見ると、2007年には8000件くらい国内出願をしているようですし、海外出願も数千件のオーダーに達しているようです。本の中でトヨタ知財部が160~170名と紹介されており、私が所属している電機業界だと同じ出願件数を行うには数百人の知財部員が必要ですから、その生産性の高さ(知財部員1人あたりの出願件数)に驚いてしまいましたcoldsweats01

ただ、自動車業界というのは、他の業界からその時に応じて様々な技術を導入しているものの、基本的には製品のフレームワークが激変しているわけではない(電機業界だと垂直統合から水平分業へ劇的に変わりましたからね)し、コンペティターが突然変わる、しかも大勢出てくるということもなかったでしょうから、ある程度決まった競業他社の動向を丹念にウォッチングしていれば足りたという有利な面があるかも知れません。電機業界だと「特許の藪」と言われるように一製品に関連する特許が数千件、時には数万件あって個々の対応をしていると大変ですし(当然、対応はしていますよscissors)、競業他社はグローバルにあちこちいますし、しかも競業他社の数も半端でないですし、OEMだODMだファブレスだ、で生産体系が激変しかつ複雑化していますので敵だと思って球を投げたら自社ビジネスの他部門に影響を与えることもままあります。特に、日本の電機業界は「総合」を掲げていて事業範囲が手広いので、あれこれ考えていると手が出せなくなってしまうおそれもあります。

これから、自動車もカーエレクトロニクス時代の中で標準化、パテントプールを考慮しないといけないようです(本の中で言及されていました)。今まで自動車業界はDe Facto標準はあってもDe Jule標準はあまりなかったそうなので、電機業界と同じ悩みを持たれるのかも知れません。

あと意外だったのが、排気ガスの触媒装置に関するGMとの訴訟で、GMがマスキー規制に代表される米国での排気ガス規制以前から排気ガス対応の技術を面々と開発しており、ある意味で日本の先を行っていたとのことでした。例えば東京大学の藤本先生の本などを読むと、米国市場で日本の小型車の販売が伸びたのが、排気ガス規制に米国の自動車産業がうまく対応できなかったのに対し、日本の自動車産業は本田技研のCVCCであれトヨタ自動車の触媒装置であれいち早く対応できたことを契機とする、という表現があったのですが、特許という観点からすると若干の修正が必要なのでは、と思いました。そして、本当にGMを初めとする米国の自動車産業が将来を見越した先の長い技術開発をしていながら、なぜ80年代になって日本車の跳梁跋扈(言い方がよくないですかね)を許してしまったのか、これについてもより深い考察が必要であるように思いました。

ウォークマン30周年!

今日も短めに。

ウォークマン(登録商標coldsweats01)が発売30周年だそうです。もう30年も経ってしまったんですねconfident。確かに、発売されたのが丁度大学1年生の頃で、その頃自分は、どこでも音楽を聴きたくて少し小型のラジカセ(この言葉も死語かも)を通学用の鞄に入れてそこそこ小さいヘッドフォンをつないでいたので、ウォークマン初代が発売開始されたニュースを聞いてものすごく羨ましく思った記憶があります。当初、確か定価が3万円くらいしたので、貧乏学生には高嶺の花だったのです。その後、いわゆるヘッドフォンステレオというものを買えたのが、大学卒業間近になってからで、そのヘッドフォンステレオも、少し使っていたら彼女に「いいなぁ、少し貸して」と言われて、どうせ戻ってこないだろうなぁと思いつつ貸したら案の定戻ってこなかった苦い思い出がありますweep

それから、本家本元のウォークマンを大体買っていますが、時々他社製品に浮気をしつつ今に至っています。カセットテープ、CD、MD、HD、そして現役のメモリー型と記録媒体については一通りのものを買いました。通勤時には大抵ヘッドフォンステレオを鞄の中に入れて音楽を聴いています。

ウォークマンというとヘッドフォンステレオの代名詞として名を馳せたので、普通名称化することにかなり気を遣っているようです。10年以上前になりますが、靴屋さんが「ウォークマン」という商号を使っていたことに対して不正競争防止法の観点から商号変更を求めた事件があったり、オーストリアで、ドイツの辞書に「ウォークマン」が普通名称で掲載されていなかったにもかかわらず対処をしなかったことを理由に、他社がウォークマンを普通名称として使うことを許した(つまり商標権侵害ではないという判断)事件があったようです。ただ、現代ではむしろiPodのほうがネットワーク対応ヘッドフォンステレオという意味では著名かもしれません。とは言え、ここで気を抜くとあっという間に普通名称化してしまうでしょうから、企業の担当者は絶え間ない努力をしないといけないわけです。そうは言っても、ウォークマンレベルの商標になると世界中の国や地域に商標登録を所有しているでしょうから、世界中にネットワークを張り巡らせて辞書や広告表示などに一般的使用がなされていないかを監視するのは並大抵な努力ではないと思います。

管理会計と知的財産

平成20年の特許法改正の際に特許料等が引き下げられました。この背景として、管理会計的手法を導入することにより将来のコストの見積がきちんとできて、その結果、引き下げても問題なさそうなので引き下げました、という説明がされたような記憶がありました。なるほど、今までの特許庁の会計はそれだけどんぶり勘定だったのね、と変に感心してしまったものです。

で、今般、特許庁から「特許特別会計の管理会計手法導入に関する調査報告書」が発表されました。ざっと見てみると、なかなか面白いです。特許庁はご存じの通り特別会計ですから、結構厳密な収支が算出できるはずです。そして、費用の中で人件費が占める割合は相当でしょうから、このコスト算出の妥当性を検証することで将来的な費用見積もできるでしょうし、どの部署、あるいはどの作業工程の人件費が突出しているかを見ることで業務改善につなげることもできるでしょう。

さて、この考え方、大規模な特許事務所だと同様のことができそうです。こんなことを言うと、特許技術者の作業は一品製作に近いので工数分析なんかできるか、という反論が当然来るのですが、審査官の審査作業だって一品製作に近いのにもかかわらず管理会計的手法を導入しようとしているわけですから、あながち不可能だとは言えません。個人的には、特許技術者の作業を聖域化することこそ業務の効率化を阻害する大きな要因だと思っています。これは、企業の知財部門の技術担当者の作業でも同様で、標準化しろとは言いませんが、最低限の工数把握はしておかないと人事計画すら立てられないわけです。

特許事務所の費用にはどうしても不透明な要素がつきまといます。それは事務所側の言い値に近いことと、量産効果がどれだけ期待できるかわからないにもかかわらず企業側からの要求に従ってボリュームディスカウントをしてしまえる体質があることからも伺えます。している事務所もあると信じたいのですが、事務所のコスト体質がどのようであるのかを把握できていない事務所は多いのではないでしょうか。費用を透明化することで事務所経営の健全化が図れると共に、企業側からのコストダウン要求に対して明確な根拠を持って対応できることで企業とのパワーバランスを改善できる可能性があるので、やって損はないと思うのですが…。

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