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自動車産業の知財活動を読んで

ちょっと遅くなりましたが、「知財 この人に聞く〈Vol.2〉トヨタ歴代知財部長」を読みました。Vol.1の丸島さんといい、ごくわずかではありますが面識のある方のインタビュー記事でしたので、なかなか楽しみながら読むことができましたhappy01

読んだ感想は、土生さんがBLOGでコメントされている部分もなかなか面白かったのですが、それ以上に、トヨタ自動車という会社が知的財産活動の王道を歩んでいるな、という感想が強かったです。つまり、製品を出す時には特許保証をきちんとすることが前提と言うこと。自動車の部品は2万点とも3万点とも言われているので、これらについて特許保証をすると言うのは並大抵な作業ではありません。そして、自社開発技術に対して旺盛に特許出願をし、権利取得作業を行う。巻末の図表を見ると、2007年には8000件くらい国内出願をしているようですし、海外出願も数千件のオーダーに達しているようです。本の中でトヨタ知財部が160~170名と紹介されており、私が所属している電機業界だと同じ出願件数を行うには数百人の知財部員が必要ですから、その生産性の高さ(知財部員1人あたりの出願件数)に驚いてしまいましたcoldsweats01

ただ、自動車業界というのは、他の業界からその時に応じて様々な技術を導入しているものの、基本的には製品のフレームワークが激変しているわけではない(電機業界だと垂直統合から水平分業へ劇的に変わりましたからね)し、コンペティターが突然変わる、しかも大勢出てくるということもなかったでしょうから、ある程度決まった競業他社の動向を丹念にウォッチングしていれば足りたという有利な面があるかも知れません。電機業界だと「特許の藪」と言われるように一製品に関連する特許が数千件、時には数万件あって個々の対応をしていると大変ですし(当然、対応はしていますよscissors)、競業他社はグローバルにあちこちいますし、しかも競業他社の数も半端でないですし、OEMだODMだファブレスだ、で生産体系が激変しかつ複雑化していますので敵だと思って球を投げたら自社ビジネスの他部門に影響を与えることもままあります。特に、日本の電機業界は「総合」を掲げていて事業範囲が手広いので、あれこれ考えていると手が出せなくなってしまうおそれもあります。

これから、自動車もカーエレクトロニクス時代の中で標準化、パテントプールを考慮しないといけないようです(本の中で言及されていました)。今まで自動車業界はDe Facto標準はあってもDe Jule標準はあまりなかったそうなので、電機業界と同じ悩みを持たれるのかも知れません。

あと意外だったのが、排気ガスの触媒装置に関するGMとの訴訟で、GMがマスキー規制に代表される米国での排気ガス規制以前から排気ガス対応の技術を面々と開発しており、ある意味で日本の先を行っていたとのことでした。例えば東京大学の藤本先生の本などを読むと、米国市場で日本の小型車の販売が伸びたのが、排気ガス規制に米国の自動車産業がうまく対応できなかったのに対し、日本の自動車産業は本田技研のCVCCであれトヨタ自動車の触媒装置であれいち早く対応できたことを契機とする、という表現があったのですが、特許という観点からすると若干の修正が必要なのでは、と思いました。そして、本当にGMを初めとする米国の自動車産業が将来を見越した先の長い技術開発をしていながら、なぜ80年代になって日本車の跳梁跋扈(言い方がよくないですかね)を許してしまったのか、これについてもより深い考察が必要であるように思いました。

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