« 「大田の工匠」展 大田モノづくりフェスタ | トップページ | 国際標準化はスポーツの世界と同じ? »

知的財産コンサルティングの市場(その2)

ちょっと前のBLOGの記事の続きみたいな話です。

現在、日本弁理士会の知財経営コンサル委員会に所属しています。この委員会ではメーリングリストを運営していて、月1回の委員会以外にも委員間で情報交換や議論をしています。そのメーリングリストで、職務発明規定(及び職務発明制度の導入、運営)に関するコンサルティングは中小企業にとってあまり興味がないという話が出ていました。

数年前の特許法35条改正に伴い、かなりの企業で職務発明規定の導入が進んだように思います。その際に特許庁を始めとしてかなり周知活動を図ったと記憶しているのですが、現実問題として中小企業の中には自身の問題として認識しておらず、職務発明規定の導入に積極的でない(その意義を感じない)企業が少なからずいるようです。一方で、既に職務発明規定を導入した企業であれば、運用に特段問題を感じることもないようです。以上の理由から、職務発明規定(及び職務発明制度の導入、運営)に関するコンサルティングは弁理士にとって特段うまみのある業務と思っていない、という意見があったようです。

自分が所属する企業で法改正に伴う発明者との協議手続の旗振り役、及び、(同時でなくても良かったのですが)職務発明規定の改定作業を行った私としては、発明者との協議手続がすんなり進んだにせよ、実際の運用面で考えるべきことは山ほどあり、急遽職務発明規定を導入した企業であると細部まで配慮した規定作成及び運用は現実上難しいのではないか、と思っています。また、企業の中でどの程度職務発明規定を導入しているのかという現実を見ると、関東経済産業局が行ったアンケート結果によると、47.8%の企業はまだ職務発明規定を持っていないとの結果が出ています。こう考えると、職務発明規定の導入でも、職務発明制度の導入、運営でも弁理士のコンサルティング業務としてかなりのニーズがあるのでは、と思えます。

問題は、中小企業にとってその必要性が必ずしも顕在化しているわけではないので、何を取っかかりとしてコンサルティング業務を行うか、ということです。この問題は、職務発明制度に限らず、知財コンサル全体につきまとう問題です。この答えは、弁理士と中小企業との接点(チャンネル)をどこに求めるか、ということに尽きるように思います。今日は一日かけて企画書作りのための資料の読み込みをしていて、その中で中小企業支援策としての各省庁及び地方公共団体の知財支援の取り組みを眺めていました。件数だけはそこそこあるように見えるのですが、日本にある企業の99%程度が中小企業であることを考えると、そして、日本の特許出願の件数の高々10%程度しか中小企業が出願していない(出願人数ベースで行くと50%程度になります)ことを考えると、弁理士であれ行政であれ知財という側面での接点を持たない中小企業は多数に上ります。これを潜在市場が大きいと考えるのか、はたまた、ニーズがないので市場がないと考えるのか、現状ではどちらが間違っているとは言えないように思えます。

このあたり、弁理士は知財の専門家として理想論を知り、全ての企業に理想論を当てはめようとしがちな部分があります。コンサルティング業務とは「非定型的な意思決定を提供する」ことだ、とどなたかが言われており、その表現からすればコンサルティング業務は理想論を定型的に当てはめることではなく、企業の実情に合わせて必要なメニュー(ソリューションという言い方がいいかもしれませんね)を提供することなのだと言えます。とは言え、理想と現実のギャップを認識するにつれ、声を大きくして知財の必要性を特に中小企業に説いて回りたくなります。当面は、認識度アップのための広報活動が主になるのでしょうか。

« 「大田の工匠」展 大田モノづくりフェスタ | トップページ | 国際標準化はスポーツの世界と同じ? »

知的財産/特許」カテゴリの記事

コメント

職務発明規定の問題は、中小企業の場合、コンプライアンスや社内規定整備の観点から捉えないと、どうもあさってを見る気がしています。経営者が発明者の場合、弁理士であればご存じの通り、取締役会の承認が必要であるなど、意外と穴が隠れていると思っています。とは言え、弁理士側の押しつけでは何も動かないことも承知しています。

知財のコストパフォーマンス面については、それほど良くない(そう見えるだけかもしれませんが)ことも承知しています。ただ、あるアンケート結果を見ていると、知的財産の取得が様々な副次的効果をもたらしていることも見えてきます。また、費用がかかることはわかっている、でも必要性もわかっている、という中小企業が多いことも事実です。このあたりのmissing linkをどう埋めるかが課題です。

職務発明規定についてですが、うちも「上場のため」に形式的に作りました。しかし、中小、ベンチャーには、「不要」というのが実感です。そもそも、中小やベンチャーの発明者は「経営者」がなる場合が多く、大企業や中堅企業のように、発明者が会社と揉める可能性は高くありません(ゼロではありませんが・・・)。「余計なお世話」と感じる中小が多いと思います。
また「知財の必要性」については、中小企業においても感じておられる方は多いと思います。ただ、費用対効果から「他の業務に比して」コストメリットが感じられないため、積極的に動いていない企業が多いのではないかと思います。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 「大田の工匠」展 大田モノづくりフェスタ | トップページ | 国際標準化はスポーツの世界と同じ? »

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
フォト
無料ブログはココログ