« 知財戦略とKPI | トップページ | 音楽は何を与えてくれるのか »

電気自動車はいつ普及するのか

BLOGの更新頻度が落ちていてすいません。体調不良がずっと続いているので…bearing。お盆休みでちょっと復活したのですが、また低空飛行状態です。まぁ、死なない程度に頑張りますので温かい目で見ていただけるとありがたいですhappy02

で、最近考えていてなかなか結論が出ないことがあります。それは、電気自動車が世界的にどのようなスケジュールで普及するか、ということです。電気自動車がどのように世界的に普及するかについては、日本が誇る自動車産業の将来を占う上でも関心が非常にあります。

電気自動車をどのように捉えるか、つまり、IT産業並みにモジュール化が極端に進むことで自動車産業が水平分業化産業に急激に変貌するのか、あるいは、やはり安全対策や単なる工業品の一種として捉え難い(嗜好品的側面がある)ので摺り合わせ型産業のまま進むのかについても議論があります。日本を中心とした摺り合わせ型自動車産業の恩恵に与っていない人々は、標準化のところでもお話ししたように、産業自体の構造変革を促すことで一発逆転を狙っていますから、モジュール化、標準化、水平分業化は諸手を挙げて歓迎でしょう。最近は車体設計や安全性測定のみを単体で行う外注業者もちらほら出現してきていますので、水平分業化の可能性がないわけではありません。一方、今までの摺り合わせ型産業で製造された自動車の完成度を知っている人間にとって、PC並みの信頼度(決して貶しているわけではないですが、やはりPCは自動車と比較したら故障しやすいでしょう)しかない自動車を運転するのは一抹の怖さを感じると思います。

ただ、現時点でオートバイが広く普及していて一日の走行距離も大したことがないような地域(中国内陸部、インドなど)において、電動スクーターを若干大型化したような電気自動車(これを自動車と呼んでいいかどうかわかりませんが)が普及する可能性は否定できません。この場合、通常のガソリン自動車に搭載されている蓄電池レベルでも走行距離的には問題ないはずです。例えば、インドのタタがナノの電気自動車版を作ったらどうなるか、という仮想的質問のようなものです。

また、電気自動車の普及を考える際に2つほど(相互に絡んでいるのですが)要因を考える必要があります。一つは電気自動車に搭載される電池の性能です。いよいよリチウムイオン電池が搭載された(ハイブリッド車を含む)電気自動車が出現してきていますが、未だにリチウムイオン電池の性能が電気自動車の走行距離を含めた特性のネックになっています。リチウムイオン電池の性能は飛躍的に向上しているのですが、まだまだ高出力化、そしてそれに伴う小型化には更なる向上が望まれるところです。気になるのが、IBMがリチウムイオン電池の次世代ともいえるリチウム空気電池プロジェクトを強力推進するというニュースが流れています。リチウム空気電池は、もしかしたら電気自動車搭載という実用化まであと数十年はかかるかもしれません(リチウム空気電池は産総研が頑張っています)が、天下のIBMが研究開発を加速するということはあなどれないかもしれません。リチウムイオン電池は日本、韓国、中国という東アジア諸国が誇る工業製品ですから、その優位性はより長期にわたって確保してほしい気がしています。

もう一つは、現在のガソリンスタンドに代わる充電施設をどうするかといった社会インフラの整備です。既に、充電済み電池を交換するステーションを日本で展開する予定のベンチャーが起業したようですが、このビジネスを成功させるには電池の標準化という厄介な作業が避けて通れません。現在、上に書いたように各社が切磋琢磨して電池性能の向上を図っている現状では、標準化作業は非常に困難でしょう。また、通常は家庭で充電して長距離ドライブの時はさすがに連続走行時間を超えてしまうので充電するというパターンがほとんどでしょうから、果たして充電施設そのものがどこまで利用されるかという疑問があります。また、直接充電するステーションを置いたとしても、電気はガソリンに比べて単価は非常に安いですから、ステーション設置のためのコストをきちんとペイできるのか、という根本的な問題があります。社会インフラの問題ですから、国家的な観点とそれに基づくサポートが必要だと思います。なお、発展途上国での電気自動車の発展は、この社会的インフラの整備が結構なネックになるかもしれません(逆にいえば、国家が推進したらあっという間に整備されてしまう可能性もあります)。携帯電話は、(その発展途上国にとっての)外国のインフラ会社がプロジェクトファイナンスの手法を使って巨額の投資をして携帯電話ネットワークを構築したので発展途上国では固定電話を超えるスピードで携帯電話が普及しましたが、電気自動車の場合、自動車会社がこういった充電施設インフラを整備するインセンティブはなさそうなので、国家的後押しが必須だと思います。

…とこのように現時点で考えうる要因を幾つか説明したのですが、自分として結論めいたことはまだ述べられません。色々な可能性があり、あるシナリオでは日本の自動車産業に相当な影響があるだろうと思えます。考えなければならないことは、電気自動車は驚異的な安価で提供できる可能性があるのですが、自動車という存在は安全を抜きにして考えることができないので、価格と安全性のバランスをどこで取るか、という非常に難しい判断を各国の自動車メーカーに投げかけているということです。企業責任の問題なのですが、時に企業責任をあいまいにしてでも価格で勝負する企業は出てきますから、そういった企業がどのような形で淘汰されるのかのように思えます。

« 知財戦略とKPI | トップページ | 音楽は何を与えてくれるのか »

企業経営・技術経営」カテゴリの記事

コメント

電気自動車については、簡単に普及するだろうという意見と、いやいやそんな簡単ではないですよ、という意見とが錯綜していて、コメントにも書いたように、よくわからないというのが私の現状の認識です。

内燃機関から電気自動車への転換というのは、社会的インフラを根本からひっくり返さないといけないように思うので、1台、2台が走っているならともかく相当数の電気自動車が走るとなるとガソリンスタンドと並行して充電スタンドをどうやって確保するんだ、しかも、ガソリンより単価が圧倒的に低い電気でどうやって利益を確保するんだ、ということがネックになるようにも思います。ただ、電気自動車がたくさん走るようになれば何とかなるようにも思います。やってみないとわからないので、利益はともかくモデルを根付かせる、つまり「走りながら考える」必要があるのだと思います。この当たりは国家的サポートがないと難しいですね。

推敲途中で送信しちゃいました。^^);

で、標準化について難しいという点についても、アダプタによって調整する方法もあるわけで、そうなってくると、インフラが整備されるまでの過渡期特有の問題だけなのか・・・。

ん~、やってみないと分からない基本的な問題がありそうな気もしないではないです。

 何を今更というタイミングでのコメントで申し訳ありません。

 電気自動車ですが、バッテリユニットを標準化して着脱自在なものとし、パワーステーションではそのユニットそのものを交換することでエネルギーを売却するという手法は容易に想到しますよね。それってダスキン型ビジネスモデルとでもいえるようなもんだと思いますが、何がネックになるんでしょうねぇ。
 まぁ、最初に思い当たることは場所がないとか、ユニットが重すぎるとかなんでしょうが、何か他に大きな問題があるような気もしないではありませんし・・・。

いやいや、私も本心は電気自動車の普及については懐疑的ですからお気になさらずに。例えば東大の藤本先生などは電気自動車の普及が早急に進むことについては懐疑的な見解をお持ちで、その理由も納得のゆくところです。

この記事を書いたのは、実は慶応大学の清水先生がずっと研究されている電気自動車(特にインホイールモータ)をオープンソースモデルで普及しようという動きが発表されて、その発表を見るとモータをどんどん普及させれば電気自動車はどんどん普及するんだといった風潮に見えたので、それは甘いのではないか、という気持ちがあったからです。

ただ、現時点での日本の自動車産業の優位性を決して甘受するばかりの国や企業ばかりではないので、一発逆転を狙って何を仕掛けてくるかわからないという何となくの恐怖心があるので、目配りだけはしないといけないな、と思っています。おっしゃる通り、米中の組み合わせは世界の流れを変えてしまう可能性があります。

コメントが少し過激になったこと、お許し下さい。

ご指摘のように、中国というインフラが依然として整っていない地域においては、可能性がないわけではないですね。仮に「アメリカの技術力」と「中国の資本力」が結びついたときには、地殻変動が生じる可能性もあると思います。10年前には考えられなかった事が次々に生じており、状況が変化してますし・・・、
ここで「普及しない」と言った点について、訂正とお詫びをさせて下さい。

専門家のご意見、ありがとうございます。

現時点では、BLOG本文に書いたように、自分自身の確固たる意見は固まっていません。これだけ内燃機関自動車が普及している現時点において、電気自動車に移行するインセンティブは切実たるものはありません。従って、「本格的」普及となると数十年単位になることが容易に予想できますし、おっしゃる通り「ない」可能性もかなりあると思います。

ただ、世の中の見通しがこれだけ不透明だと何があってもおかしくないとも思えます。携帯電話の時も発展途上国での普及は非常に遅いペースで推移するだろうとかなりの人が思っていましたが、予想はあっけなく覆りました。一番気になるのは中国の動きです。一発逆転を狙って政府主導で電気自動車振興策が取られた場合、中国は電気自動車一色になる可能性はあります。他国ではインフラがおっしゃる通り大きなネックになるでしょう。

電気自動車は破壊的イノベーションになりうる下地を持っています。目配りはしなくてはいけないと思っています。

冷めた見方かも知れませんが、電気自動車の普及はないと思います。多少増加するでしょうが、ハイブリッド車にとって代わることはないと思います。
私のブログにも書きましたが、「電気自動車」自体を作ることは、どのメーカーも容易にできます。ご指摘されている安全性についても、現在の内燃機関の車よりも確実に高まるでしょう。それは、パワーユニットのレイアウト自由度が高いため、衝突安全基準を容易にクリアできる、 爆発の虞も少ないため、ロールオーバー時の基準も容易にクリアできるからです。
問題は、インフラと急速充電技術なのです。特にインフラの問題は、難しく、ガソリンが極めて高騰する、又は消滅するという事態が生じない限りは、変化しないと思います。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 知財戦略とKPI | トップページ | 音楽は何を与えてくれるのか »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
フォト
無料ブログはココログ