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特許事務所の事業構造

本日はちょっと辛口のお話を。

ある知財系BLOGの記事から、こんな2chのスレがあるのを教えて貰いました。

潰れそうな特許事務所について語るスレ
ブラック特許事務所の見分け方☆Part6

知っている方も多いのかもしれませんが、まぁ、2chのスレですから、書いてあることの全てについてその信憑性を云々しても仕方ないものの、一部はある種の内部告発的な内容にも読め、さもありなんと思う部分があります。

長年、特許事務所は大企業依存型の事業構造をしており、かつては大企業を中心として質より量の特許政策をとっていたため、大量の特許出願を代理する必要がありました。一方で、政府の政策として弁理士の大幅な増員は抑制されていたため、実質的に弁理士が特許出願の全てに深く関与することは物理上無理とも言える状態にありました。このため、特許技術者という明細書作成(の補助)者の存在が必要不可欠であったわけです。なお、私は今でも特許技術者の存在が不要だとは言いません。明細書作成技術に優れた特許技術者は数多くいます。きちんと弁理士が最終的責任を負う(見ればいいというわけではないですよ)のであれば、問題はないわけです。

問題だったのは、少数の弁理士と多数の特許技術者というアンバランスな状態でした。何が問題かというと、特許技術者のスキルも多様ですから、全ての特許技術者が優れた明細書を作成するわけではないので、当然の如く、弁理士は特許技術者が作成した明細書を逐一チェックし、法律上問題のないレベルに保証する責任を持ちます。数的バランスが崩れた状態では、そもそもチェック体制を確保することも難しいです。こうなると、その特許事務所の明細書の質を担保する体制を確立することはできにくくなります。同様に、特許技術者を教育する(明細書作成技術はOJTが一番であると私は未だに思っています)ために、弁理士が直接指導しうる特許技術者の数も一定範囲に限られます。この結果、やはり特許事務所の明細書の質を担保することは難しくなります。

もう一つ、事務所内の所得配分に関する問題もあるのですが、これは、事務所によって弁理士と特許技術者との間にさほど給与体系に差をつけていない、ある意味で公平な実力主義を取っているところもある一方で、対外的な信用度の差を理由に資格の有無で厳然とした給与の差をつけている事務所もあるようで、一律なことは言えません。給与体系は特許事務所によってまちまちですし、人材の流動性も非常に高いので、事務所も給与体系の見直しを適宜行っているようですから、ここではこれ以上の話はしません。

そうこうしているうちに、大企業を中心として特許出願数の見直しを図る動きが顕在化し、一方で知的財産そのものに対する必要性が認知されたことを契機に弁理士の合格者数が飛躍的に増加し、特許事務所の経営形態も変わらざるを得なくなっています。とは言え、旧態然とした特許事務所もあり、現時点ではまだらな状態にある(つまり過渡期にある)のだろうと思っています。多分、国内のクライアントからの大量出願に対する依存度が高い大事務所は、何らかの経営形態の見直しに迫られていると思っています。一方で、外国のクライアントからの出願に対する依存度が高い特許事務所は、国内のクライアントほど日本市場(特許の観点からの)の魅力度が変化してはいなさそうなので、とりあえず危機感を募らせてはいない様子です。

もう一つ、現在の特許事務所のほとんどは小規模事務所であり、小規模事務所の中には小回りの良さを活かしてどんどん経営形態を変化させて時代に対応している事務所も多く見受けられるのですが、一方で事務所は一つの企業体ですから、この企業体内で自己完結してしまうがために時代の流れに取り残されそうな事務所もあるようです。小規模事務所の良い点でもあり悪い点でもあるのが、人間関係が非常に狭い範囲で固定されることです。これは中小企業であれば当然のことなのですが、人間関係が固定されることが人材の定着率の向上につながらないのが困った問題です。

上に書いたような特許事務所の事業構造の変化に対応する一つの解として、このBLOGでもさんざん書いてきた知財コンサルティングへの進出があると認識されているようです。ただ、大企業に依存した事業構造を持つ特許事務所が知財コンサルティングを行うには、かなりの自己改革が必要だと思います。知財コンサルティングへの進出と並行して、大企業たるクライアントに選ばれるにはどうしたらいいのか、という視点も当然ながら必要です。

特許出願の質の向上を必然的に選択することになった企業は、特許事務所の業務の評価をし、この評価に基づいて特許事務所を選別しています。この作業自体は決して最近の出来事ではなく、ある規模以上の(どこから、とはっきり言えないのが難しいところですが)特許出願をしている企業であれば、かなり前から(これもいつから、とはっきり言えないのが難しいです)行っている作業です。まぁ、特許事務所の立場からすると、企業の特許担当者にも業務の質にかなりの差があり、何とかして欲しいと思う場合もあるだろうなぁ、と思うんですが。実際、特許事務所であれ企業知財部であれ、担当者のレベルを揃えるのは至難の業です。大抵の場合、言い方は悪いですが、全体の評価は最低レベルの評価に引っ張られてしまいます。特許業務はその人の適性に左右される問題が結構あるので、ある意味冷徹な判断が必要となります。また、上にも書いたように、教育するにしても指導者が教育できる人数は限られますから、やはり特許事務所の事業構造は変化せざるを得ないのだろうと思います。

パラダイムシフトが起こる場合、全ての関係者がhappyであり得ることはなく、何らかの痛みを伴わざるを得ません。弁理士が高所得者である(あるいは弁理士になると高所得者になれる)という幻想を持っている人は少数派になっていると信じたいのですが…できれば使命感と達成感を求める人が知財業界で多数派になって欲しいと思っています。

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