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新幹線技術を輸出しよう

この話は本館に書こうか別館に書こうか迷ったんですが…まぁ、技術に関することですので本館に書かせて下さい。趣味の話でもあるんですが。

息子が鉄道に異様なほどの興味を示している関係で、息子からの質問に的確に回答するために、鉄道関係の本(入門書ですよ)を購入して、鉄道に関する知識を導入しています。とは言え、それはやはり理系人間、どこどこにどんな列車が走っているといった知識にとどまらず、列車の構造、最近の制御方式、そして鉄道システム全体といった実にコアな話も興味深く読んでいます。元々、小学生の頃は列車に関する写真集を購入して型式の詳細な区別について深くはまっていた前科がありますので、数十年たって原点に戻った感があります。

小学生時代に、新幹線はなぜ早く走れるかについて、東海道新幹線開通時の技術的苦労を語った本を読んでいたく感動した記憶があります。今でも記憶に鮮明に残っているのが、当時200kmという前人未到の領域で高速走行するに当たって当初の懸念事項であったことの一つが、高速走行にともなって台車の蛇行が大きくなるがために脱線する可能性があるのではないか、ということだったそうです。そのため、台車(車輪を含めて)を従来線のそれより小ぶりに作ることで蛇行を抑える工夫をしたそうです。これで試験走行したところ、思ったほど台車の蛇行は激しくはなく、ある意味取り越し苦労に終わったそうです。とは言え、本当に当時は前人未到であった高速走行列車には数限りない苦労が詰まっているわけです。今でこそ新幹線が早く走るのが当たり前の時代になりましたが、どんな場合もパイオニアにはパイオニアしかわからない苦労がある、ということです。

さて、ちょっと前の記事ですが、日立が英国向けに高速列車を納入するという記事がありました。日立は、日本車輛と並んで最新型新幹線N700系をJR東海及びJR西日本に納入している会社です。日立の工場は山口県にあり、日本車輛の工場は愛知県にあるので、ちょっと遠くて行ったことはないのですが…。英国は鉄道の発祥地なのですが、高速列車という観点からすると、ヨーロッパ大陸ではTGVやICE、そしてこれらをベースとした列車が各国間を走っている事に比較するとちょっと見劣りする(ユーロスターはロンドンまで行ってますが)状態にありましたが、今回の日立製の車両導入を契機に国内での高速鉄道網の整備に本腰をあげて取り組むようです。

この英国に限らず、エコブームの中、世界的に高速鉄道網に関する関心が再度高まっています。オバマ大統領も検討を正式に表明しましたし、ベトナムでは、円借款による高速鉄道計画が始まった様子です。ある意味、新幹線から始まった高速鉄道が世界中に広がりつつあるという構図です。こう考えると、新幹線を世界に輸出できる好機が訪れたのだと簡単に考えがちなところです。

しかし、事はそう簡単ではありません。まず、世界的に見て高速鉄道システムを輸出できるだけの技術力を有するのは、TGVを有するフランス、ICEを有するドイツ、といったところです。彼らが当面のライバルです。韓国では既にソウル-プサン間に高速鉄道が走行していますが、初代の技術はTGVのものを導入しました(列車の形状はそっくりです)。台湾の新幹線は、車両は日本のもの(ベースは東海道・山陽新幹線の700系)ですが、信号等のシステムは他国のものを使わざるを得ませんでした。中国は現在各国の車両が入り乱れた状態にあります(日本から導入したものもあります、当然、国民は知りません)が、現在必死で国産車両の製造に邁進しています(何をもって国産というのかが当然微妙なところではあるのですが)。車両自体の輸出は、日本の車輛製造メーカーも結構積極的に行っている(例えば、川崎重工はニューヨーク地下鉄の車両を大量に輸出しています)のですが、システム全体の輸出にまで至った事例は少ないと記憶しています。そして、こと高速鉄道に関しては、新幹線を輸出した例は上に書いた台湾、中国の例のみです。

新幹線の優位性は、高速、軽量でかつ静粛性に優れた車両のみならず、開業45年を超えてなお線路上での人身死亡事故が1件もない、天候以外の運行遅れは極めて少ないといったシステム上の観点からも言えます。営業最高速度で日本の新幹線がTGVやICEと同程度なのは、新幹線が民家密集地を走行するがために騒音問題でこの程度に収まっているのであり、技術的には400kmも実現可能だとさる技術者の方がテレビでおっしゃっていました。

では、なぜ今まで実績がなかったかといえば、やはり日本企業なり日本国が積極的に売り出してこなかったことが理由なのだろうと思います。台湾の新幹線も、当初の取組が出遅れたために後日巻き返して車両だけは納入できたものの、システムとの整合性に非常に苦慮したようです。最近は、JR東海が各国の関係者を日本に招いて高速鉄道シンポジウムを開催し(発表はこちら)、N700系の売り込みを積極的に行っています。あと、高速鉄道が政府調達になると、WTOの政府調達規定の関係で国際基準に則ることが求められます。日本の鉄道技術はなかなか国際基準に採用されていないようなので、この点もネックになりかねません。

技術経営の専門家である参議院議員の藤末健三先生も記事で新幹線の技術移転に関して今後取り組むべき事項についてまとめていますので、こちらもご覧ください。

とにかく、世界的に見て最先端にある技術を世界的に広めることがひいては国富(古い表現だな)につながることでもあるので、関係者の方にはぜひ頑張っていただきたいです。

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コメント

政府の拘る新幹線輸出は単なる押し売り。日本の新幹線てのは、貨物輸送が可能な在来線のネットワークがあって成立する歪んだ鉄道システム。発展途上国にとって貨物輸送も可能な在来線の特急クラスを複数定時運行するシステムのが現地の為にならんか?JR貨物のコンテナ輸送システムと在来線の特急の運行システムのが適して無いか?売る側が固執しとるとなるとほとんど押し売りだわ海外に出せば、支那のようなパクリ国家のやりたい放題で盗まれに決まってろうが

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