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勉強するときノウハウはいるのか

先日、同期合格の友人の特許事務所に遊びに行って、あれこれと歓談してきました。彼は、弁理士会の知財経営コンサルティング委員会でもご一緒させていただいており、私が思うに、中小企業に対する知財コンサルを実践している弁理士の中ではトップの業績を上げていると思っています。

現在、知財経営コンサルティング委員会では、各支部を回って、知財コンサルに関する研修会を開催しています。この研修会では、なぜ知財コンサルか、という話から始まり、知財コンサルをするにあたっての観点や注意点、そして学習すべき事項の紹介という盛り沢山な内容について知財経営コンサルティング委員会の委員がご説明しています。その研修会のアンケートの中で、「もっとノウハウを教えてもらえないと実践できない」という趣旨の意見があったそうで、彼はちょっと憤慨していました。どうしてか。コンサルのノウハウというのはそう簡単に身につくものではないし、ノウハウの肝を教えてしまったら飯の食い上げになってしまうからです。

当然、弁理士会の委員会というのは、会員にとって有益な情報を提供し、また、有益となるであろう事項について研究するのが目的ですから、委員会での成果物はきちんとまとめて会員に提供する必要があります(報告書という形で)。ですから、知財コンサルに関するノウハウが委員会で議論されて有益な形でまとめられるならば、これを公表するのは当然という議論もあり得るでしょう。

しかし、ノウハウというのは一般に提供すれば提供した側は著しく不利になり、提供された側は有利になるものです。この一方的な有利=不利な関係(片務関係というとよくないか)を解消するには、ノウハウを互いに提供することで双方の不足分を補いあう関係になれればいいわけです。Give and Takeというか。この関係が大事です。当然、大学のように教育を主務とするところでは、ノウハウが目に見えた知識という形で提供されますが、この場合、対価の支払いが介在しますので、ある意味Give and Takeとも言えます。

加えて、ノウハウというのは受ける側にそれを受容して消化するだけの機能なり能力がないとノウハウとしての意味をなしません。ノウハウをもらったからといって直ちに活用できるにはちょっと距離がありそうです。それと、知財コンサルに関してはこれが一番の問題なのが、知財コンサルのノウハウは対象となる企業の事業状況なり商品特性と密接に関係していますから、ノウハウを理解できる程度までに開示すると対象企業の機密事項をある程度同時に開示する必要があります。対象企業にとってはそこまで開示してほしくない、という態度を示される場合がほとんどです。みずほ情報総研が主催している知財戦略コンサルタント事業の報告例も、対象企業からの承諾を得た範囲内でしか開示していませんから、読んだだけではどこにノウハウがあるのかよくわからない状態です。しかし、これは仕方ないのです。そういった事情を超えて、それでもノウハウが欲しいというのは、ちょっと困りものです。

ノウハウの開示で思い出すのが、弁理士試験時代における最大のノウハウで、それは我々の頃はサブノート、あるいはレジュメと呼ばれる、問題形式でまとめられた基本書のエッセンスを書いたものでした。現在では受験産業がレジュメのような資料を市販しているので、その内容について開示の有無を議論すべき事情は全くありませんが、私が受験勉強をしていた当時は市販された資料の中に参考となるべきハイレベルのものがなく、自主ゼミ内でのみ一子相伝的に先輩方から受け継がれたものが金科玉条のごとく扱われていたわけです。で、この貴重なレジュメを入手したいがために自主ゼミに入会し、レジュメが入手できたら脱兎のごとくいなくなってしまう人を少なからず見かけました。私がいた自主ゼミは来る者は拒まず、去る者は追わず、というスタンスでしたから、だからどうする、という手立てをとることはしませんでした。なぜなら、レジュメを読んだだけで合格できるほど弁理士試験は甘くない、ということです。レジュメに書いてある知識をきちんと自分のものにし、与えられた問題に対してレジュメの再構成をして時間内に書けるようにし、そして書きあげるという訓練を積み重ねてこそ合格に至るのだ、と思っていました。

結局、他人からのノウハウに頼っている限りは、例え僥倖によりノウハウを得られたとしても、それを自らのものにするのは難しいのだ、と思えるのです。知財コンサルにしても、先人達が現在でも血の滲むような努力をして一定の成果を出しつつある状況にあることを考えると、全く一から苦労するのはよろしくないので、何をしたらいいか、何をすべきでないかといったノウハウの整理は必要ですが、ヒントに近いノウハウからでも自らの力で努力する過程がどうしても必要なのではないか、と思います。

私がNiftyのFLICフォーラムで弁理士受験会議室を主催していた頃も、受験生からの相談に事細かに対応していても、極意に近いところは文章にもできませんし、また、色々とアドバイスをしてもやはり理解されないことはあったので、ノウハウの授受だけで事足れり、というハッピーな状況はなかなか生まれないことを実感しました。先人としては、踏み込んではいけないところへの立ち入り制限をし、本筋となるところを指し示すくらいのことしかできません。

それにしても…「くれくれ君」では困ると思うんですが。これからの人生。

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