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弁理士+中小企業診断士=?

最近、知財系BLOGを見ていると、弁理士試験合格直後の方々が結構中小企業診断士試験にチャレンジしているのを見かけます(最終合格された方もBLOG上で1名おられるようですね)。確かに、弁理士試験のような資格試験にチャレンジする人は、基本的に勉強が好きな人種で、資格試験勉強のイナーシャがかかったまま止まらずに他の資格取得や語学勉強、さらには大学(院)での勉強に突き進んでしまう場合が結構あります。かくいう私も、弁理士試験合格後に勉強が止まらずに法律系大学に学士入学してしまいました。その頃ロースクールがあったら、間違いなくロースクールに入学してたでしょうね。

中小企業診断士を目指すのは、多分に近年の傾向である知財経営(この言葉自体に様々な解釈があるがために誤解を招いていることは、土生先生も指摘される通りです)重視の風潮、そして知的財産コンサルティング業務を弁理士が行えるのかどうかという議論が背景にあるのだろうと思います。私も、MOT社会人大学院を修了した後、このまま博士課程後期に進学するか、はたまた中小企業診断士の勉強を始めるか結構悩みました。現実には社会人大学院修了でものすごいエネルギーを使ってしまったのと、丁度子供が生まれて子育てに邁進してしまったのとで、どちらも実現できずじまいでいますが。

中小企業診断士は、よく言われるのが経営コンサルタントの唯一の国家試験ということです。当然、中小企業診断士の資格がないと経営コンサルタントになれないのかというとそんなことはないわけですが、それなりに歴史のある資格でもありますし、中小企業の経営支援という国家的事業の一端を担う役割を任されてもおり、知的財産コンサルティング活動が現状(そしてずっと将来も)中小企業をターゲットとしていることから考えると、魅力的な資格なんだろうと思います。

しかし(やっぱりしかしなんですよ)、ある種の資格コレクター状態であれもこれもと資格を取得しても、それが業務に直結するとは限りません。資格取得した後のVisionが大切だと思うのです。特に、弁理士が行う出願代理業務と異なり、経営コンサルタントにしても知的財産コンサルティング活動(知的財産コンサルタントと名乗って活動されている方はごくわずかですからあえてこの名称は使いません、誰々が行う知的財産コンサルティング活動ということです)にしても、資格取得が必須ではありませんから、中小企業診断士の資格を取得した後、「それで?」と周りから言われないようにしないといけないと思うのです。弁理士に中小企業診断士の資格を追加したことだけで、果たして他の弁理士に対する差別化要因になり得るのかどうか、この点を真剣に考えないと中小企業診断士の資格を取得しても苦労するのではないか、と他人事ながら心配してしまうのです。

弁理士+中小企業診断士は現時点では希少価値だと思いますが、希少価値だ、というだけで仕事が舞い込んでくるとは思えません。実際に(中小)企業が仕事をお願いしたい、と思えるものは何なのか、それに対する洞察力が必要です。弁理士でも同じことなんですけどね。

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コメント

土生さん、こんにちは。BLOG読ませていただいています。

資格取得というのは時に供給者サイドの論理で考えがちであるのは確かで、(中小)企業の経営者が支援者として望むのは需用者サイドの論理であることも十分理解できるところですね。

自分が知財コンサル活動に興味を持っているのは、そもそも自分が大田区の町工場の息子で(もう工場はつぶれましたが)、何とか大田区をはじめとした中小企業の支援が知財面からできないだろうか、という思いからです。この視点は、ずっと忘れずにいたいと思っています。

不良社員さん、ご無沙汰しております。

昨晩から片道5時間近くかけて、ある中小企業の社長のお話を伺ってきました。その中で、知財に限った話ではないですが、中小企業の支援人材に求めることとは、これに尽きると。

「中小企業の仕事に興味をもって、一生懸命動いてくれること。」

あたりまえのことですが、大企業の出願件数が減ったから今度は中小企業だ、みたいな供給者側の一方的な論理が、シビアな経営環境を生き抜いているタフな中小企業の社長に通用するはずがありません。(知識ではなく現実として)興味があるか、行動できるか、そこに尽きると思います。
そうした興味が根底にあり、行動の一部として中小企業診断士の勉強があるのならそれは武器の一つになるでしょうし、それが供給者側の論理からくるものならば、その将来は論ずるまでもありません。

ある弁理士さん、こんにちは。

ある弁理士さんはベンチャー企業に勤務されて企業経営の実際に触れられているので、実感が湧かれるのだろうと思います。

ほとんどの弁理士は、(事務所経営という企業経営をしている人もいるわけですが)企業経営の経験がありませんから、中小企業の経営支援と言っても実際には何のことか理解できないと思います。私が所属する会社は大規模なので企業経営の全貌を理解するまでには至りませんが、企画管理という裏方の仕事を経験したことで何がポイントなのか、というのがおぼろげながらに見えてきました。ただ、それでも企業経営の要諦をつかむにはほど遠いですが。

経営学を知らなくても企業経営を立派に行っている経営者の方は多数いらっしゃるわけです。つまりは習うより慣れろ、ということです。当然、経営学を知っていると間違った道に行く確率は低くなるわけですが、経営学が企業経営にとって必須とは言えません。こう考えると、何よりも実体験が重要であることになります。

私は、中小企業診断士の資格を弁理士が取得することを全否定しません。ただ、何度も書くように、資格取得=仕事ができるということでは全くないので、その点だけを承知して経営支援実務ができる弁理士+中小企業診断士を目指していただきたいと思うばかりです。そんなに簡単な道ではないと思います。

的場さん(先生と呼ばれるのを避けてられるように思うので)、お久しぶりです。

今回の記事は、実は的場さんや鈴木正剛さんのように実際に知財コンサル活動をされている弁理士を念頭に置いて書いたものです。

弁理士というのは専権業務に守られているので、極端な言い方をすると資格取得=独立が不可能ではありません(しかし、当然ながら、それをしたら苦労の連続でしょうが)。ですから、中小企業診断士を弁理士資格の延長で考えているのであるならば、もう一度冷静になって考え直した方がいいだろうと思うのです。

また、営業能力であれ実務経験であれ、本当に知財コンサル活動をしないと何であるか理解できないものであろうから(していない私が言うと信憑性も何もありませんが)、その点を理解した上で、それでも中小企業診断士の資格取得の勉強をするのであればいいのですが、そうでないと時間と金銭を無駄遣いすることになりかねないと思うのです。

ちなみに、本文に書いた、知財系BLOGで中小企業診断士の資格取得を検討されている方とは、twitterで意見交換できましたので、「実務を経験されることが重要です」というコメントを返しておきました。

私も、不良社員さん、的場先生と同じ意見です。

「費用対効果」を考えると、なぜ中小企業診断士を受けようとするのか、理解できません。
名刺やHPに載せるとお客さんが増えるとでも、思っているのでしょうか?

私は、本気で中小企業やベンチャーを支援する能力を付けたいのなら、迷わず本やペンを「捨てて」、地道に中小ベンチャーを訪問して、その「空気」を感じる事が一番だと思います。

実際、私自身、ベンチャーに勤務して、経営の厳しさも知りましたし、知財人が関与できる限界も知る事ができました。

弁理士で中小企業診断士であるという特許事務所勤務の知り合いがいますが、まだまだ中小企業の経営を理解しているようには思いません。

的場です。こんにちは。

中小企業診断士とコンサルティング業務に関しては、以下のことが言えると思います。

1.コンサルティング業務は、専権業務ではなく、中小企業診断士しかできない業務ではない。
 したがって、コンサルティング業務を営業することは非常に大変なことであり、
 弁理士が出願業務の営業をする比ではない。

2.営業力と実務経験があれば、中小企業診断士の資格は不要。
 中小企業診断士の資格があっても、実務経験がなければ使い物にはならない。
 営業が大変である以上、実務を経験することはもっと大変なこと。

 資格取得によって営業と実務とが付いてくる、という勘違いをしていないでしょうか? ということです。
 資格取得によって、少ない実務経験でも効率的に一人前になる、ということはあると想像します。 しかし、営業力無しに実務経験をする機会をどのように得るつもりなのでしょうか? 誰か(勤務先の経営者? コンサルティング会社? 業界団体? 行政?)をアテにしているのでしょうか?

どこかに勤務している方にとっては、上記の「営業力」という言葉があまりピンと来ないので、
  資格が無くては始まらない
と考えてしまうのかな、と想像します。(勤務時代の自分もそうだったと思うので)

以上、言葉を変えて心配してみました。

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