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現代の技術マネジメントは大変です

相変わらず青息吐息状態なので、短めに(と言いながら長くなるのは突っ込まないでねhappy01)。

つい最近、「されど、愛しきソニー」という本を読みました(何故この本?という詮索はしないでおいて下さいcoldsweats01)。著者は、つい最近までソニーの役員(SVPとかEVPって言いますね)を務めておられた蓑宮武夫さん。1960年代にソニーに入社されてますので、ファウンダーである井深さん、盛田さん、そして大賀さん、出井さんなど歴代の社長、会長を全てご存じの世代になります。従って、ソニーが急成長を遂げて世界的企業となっていく過程を体験した方です。

内容は、自分がソニー内で経験してきたもの作り、人材育成、マネジメントなどについて実例を挙げて何が良かったかを蓑宮さんなりに解明し、現在のソニーとのズレを説き明かそう、というものです。今までありがちだったソニーの将来像を否定的に捉えている類似本と違い、題名にもあるように、ソニーに対する熱烈とも言える愛社精神に基づき、こうすればソニーは復活するという蓑宮さんなりの処方箋でまとめているところからもわかるように、決して否定的なトーンでまとめられたものではありません。幾つかの資料はソニーから提供されているようです。

蓑宮さんはソニーの会社時代を徹頭徹尾エンジニア及びエンジニアのマネジメントとして過ごされているので、エンジニアに対する応援メッセージが非常に色濃く出ており、昨今の業績不振を会長、社長が二人とも文系出身であることに理由付け、ソニーのトップマネジメントは理系出身でなければいけない、といった、愛社精神故の暴論とも言える発言(とは言え、出井さんそのものを批判しているわけではありません)もあり、全面的に賛成することはできませんが、エンジニアが元気な会社は業績がいいであろうことは大体推測できることであるので、私としてもエンジニアを応援したい気持ちでは一致します。ただ、「ハードがソフトを変える」といった、ネット時代ではなかなか受け入れにくい発言もあり、若干時代遅れの部分もなきにしもあらず、と思っていました。

ソニーが様々なハードウェアのイノベーションを発表していた時代から比較すると、現代は、コンペティターの数も比較にならないほど多く、また、ついこの間までは異分野だと思っていた企業が、ネットワーク+デジタルという追い風に乗って種々新規参入してきているので、誰をコンペティターと考えればいいのか複雑になっていることもあり、多方面で様々な企業と競い合う必要が出てきます。例えば、AppleはiPod(iTunesの方が先ですが)参入までデジタルミュージックプレイヤー分野とは縁遠いPCメーカー専業であったわけですが、iPodの成功により一気にCE分野に参入し、更に、iPhoneにより通信機器分野でも確固たる地位を確保するに至っています(全世界的シェアはまだまだですが)。Amazonにしても、ついこの間まではネット通販の世界的最大手という捉え方(あと、クラウディングコンピュータ分野でも世界的な地位がありますが)をすればよかったのですが、Kindleの登場により電子書籍端末での大きな地位を確保し、これを基盤にネットワークビジネスを拡大しようとしています。日本では販売していませんが、ソニーは米国でReaderという電子書籍端末を販売し、いい位置につけています。

このような時代、ソニーのみが独創的なイノベーションを創出することは簡単ではありません。例えば、VHS時代には重要特許を保有している企業は数社であったのに対して、DVD時代は10社程度、Blu-rayでは数十社になるとの話もあります。当然、1つの製品を作るために必要な特許数も飛躍的に増加します。世界的な大競争の中で、蓑宮さんが経験してきたある種牧歌的とも言える(その頃の当事者が必死であったことは全く否定しません。ただ、競争環境が全然違う、ということです)環境とはがらっと違う、ということです。

従って、経営トップが文系だ理系だという議論ではなく、トップが誰であっても技術イノベーションに基づいて効率的な経営をしないといけない、ということです。そのために何をすべきか。イノベーションを効率的に生む方法論については随分と議論がされてきていますが、私自身の中で決定打と思えるものを発見するに至っていません。今言えることは、エンジニアの自由な発想を妨げない環境が大事であること、新規技術に対する目利き力が技術企画・管理を行う人間に求められていて、簡単に技術開発テーマを諦めてはいけない、そのためにはテーマ選定時に徹底的な調査が必要であるとともに、技術トレンドの潮目の変化があれば潔く撤退・変更することも大事、そして、全社を挙げて技術を育て、標準化・知的財産も含めたビジネスモデル構築を全社の知恵を使って行い、そして時に他社や国家を巻き込んで産業の育成を図る必要がある、という、極めて抽象的なことです。

イノベーションは時に一企業の何気ない製品発表によりパラダイム・シフトが生じます。古くは、VHSのデジタルサーボを1ICで実現し、これが外販されることでVHSの低価格化が一気に進んだこと、最近では、台湾のメーカーが携帯電話のほぼ全機能を1チップに集約したものを外販し、中国の中小企業がこれを使って超低価格の携帯電話を大量に製造することで、携帯電話メーカー立ち上げの閾値が一気に下がったことが挙げられます。現在、中国の携帯電話メーカーの大半は山寨機と言われて模倣品扱いされていますが、最近の中国のイノベーションは、そういった数多くの模倣品メーカーが立ち上げられ、多くが淘汰されていく中で、ごくわずかのメーカーが生き残り、海外進出をするに至るまでの競争力を獲得して大企業への道を短期間に辿る、という一種独特な進化をしますので、山寨機と称して下に見ていると大変なことになる可能性があります。既に、上に述べた1チップの実現により、中国ではある種のプラットフォーム化が実現され、性能よりも機能的差異が競争力の差になっているようです。つまり、中身の差は大した問題ではない、ということです。こんな時代に技術マネジメントを行うのは大変なことですが、競争に勝たないと明日はないわけで、その競争に勝てるよう、自分ができることをきちんとやらねば、と思うわけです。

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