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このところの特許事務所業界を伝聞するに(番外編)

今回は、特許事務所業界について別の話題を書こうと思ったのですが、先日のBLOGでちょっとお話をした「特許事務所年鑑2010」が届いて、ざっと見たところ面白い現象が2つほどありましたので、まずはこの話を番外編として。

特許事務所年鑑2010は、出願ランキング上位の企業がどの特許事務所に特許出願の代理を依頼しているか、また、代理ランキング上位の特許事務所がどの企業の特許出願の代理をしているかを示したものです。なかなか、こういったランキング本が出版されることはないので、なかなか貴重だと思います。つまり、データそのものは、例えば1年分のDVD-ROMの書誌データをDB化して整理すれば、時間はかかるものの入手できるとは思うのですが、さて、そういったデータがどの程度ニーズがあるのかわかりませんから、書籍として出版するところがなかったのではないかと思います。さて、この本をどのように使うのか、色々と使い道はあるかと思います。

面白い現象のその一つは、代理ランキング上位の特許事務所の代理件数が、数年前の件数からかなり減少していることです。数年前の件数が出願人別になっていないので、具体的にどの企業からの代理依頼件数が減少したために事務所全体の代理件数が減少したのかを突き止めることはできないのですが、特許事務所年鑑2010の元データは2009年発行分公報データですから、いわゆるリーマンショックの影響は半年分程度しか受けていないと思われますし、それが証拠に出願ランキング上位の企業の出願件数は前年の傾向等を考慮すると激減しているようには見えませんので、特許事務所年鑑2010のデータだけでは判然としないところがあります。

もう一つ面白い現象として、出願ランキング上位の企業の中に、かなりの数の企業が自社出願をしていることです。それも、以前は自社出願をあまり推進していなかったと思われる企業が自社出願をしていることです。自社出願は、例えばキャノンの場合、重要出願は自社出願をしてそれ以外の出願については代理人出願にするという戦略を以前から推進していることは知られていますが、キャノン以外の企業がこれに倣って同様の戦略を推進しているのかどうか何とも言えません。と言うのも、戦略的に自社出願をするのであれば件数ベースでのコントロールが必要だと思うのですが、重要案件を自社出願しているには自社出願の割合がかなり多い企業も散見されますので、どういったメルクマールに基づいて自社出願をしているのかが外部からは推測しにくいのです。自社出願を行う場合、外部=特許事務所へのキャッシュアウトを削減することを目的とすることも考えられるのですが、実際に自社出願を推進している企業の知財担当者から聞いた話や、実際に自分が前の企業で自社出願をした経験を総合すると、企業の知財担当者は明細書作成業務だけをしているわけではないので、知財担当者の人件費を考慮すると、確かに見かけ上のキャッシュアウトは低減できても、トータルのコストパフォーマンスは特許事務所に依頼するほうがよいと思っています(具体的な数字は、ものすごい細かい話になるので、私も計算し切れていませんから、かなりアバウトな、感覚的なものに近いのですが)。従って、知財担当者が明細書作成業務を行うのは、コスト面以外の何らかの要因があってのことだろうと思っています。また、知財担当者の研修の一環として自社出願を行っている企業もあるかと思いますが、この場合は当面のコスト高は研修費込みと思えばいいことですから、問題ないかと思います。

自社出願件数の増加は、当然のことながら特許事務所側からすれば依頼件数の削減に直結しますので、特許事務所業界とすれば避けたいところです。とは言え、自社出願をする企業はそれなりの覚悟でそういった方針を採用しているでしょうから、再び特許事務所に出願代理を依頼することは考えにくいです。

あと、おまけで面白い現象とまでは言えないかもしれませんが…上述のように、各企業がどの特許事務所に出願代理を依頼しているかが一目瞭然にわかりますので、それでは、各企業がどれだけの「数」の特許事務所を「管理」しているか、というのもわかります。ある程度の件数の特許出願をする場合、当然、二桁の特許事務所とおつきあいをすることになりますが、管理をする側からすると、おつきあいをする特許事務所の数が多いと、会社の方針を各特許事務所に伝達し、また、特許事務所の「質」の管理をする手間が結構かかりますので、特許事務所の数が多い企業の場合、管理も大変だろうなぁ、と思います。件数が多ければ特許事務所の数が多くなるかというと、これは各企業のポリシーがありますので、何とも言えません。また、開発拠点のある場所と特許事務所の場所とを見比べてみるのも面白いです。

…って、こんなことを考えている人は少ないかも。

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コメント

この「特許事務所年鑑2010」、色々と切り口はあると思います。出版元の方には、もっと頭をひねっていただくと、多分面白いデータが山盛りかと。

来年度の新ネタとして、2010年との比較で減少率(増加率)ランキングとかあると、面白いでしょうね。

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