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2010年7月

産業財産権制度の経済的効果ねぇ

ご無沙汰しています。最近暑いですね~。私も既に夏バテ気味で、家に帰って風呂に入ってメールチェックをすると既に夢の中状態にあり、BLOGを書く元気がないままでいます。今日は少し涼しいのでちょっとだけ書くことにしましょう。

特許庁では毎年産業財産権に関する様々な事項について調査報告書を発行しています。実際には入札により決定された外部調査機関が調査報告書の作成を委託され、年度末にだいたい各種報告書が出揃うことになっています。最近は調査報告書がPDFで特許庁HPに公開されるようになりました。このような調査報告書の中で、ちょっと異色なのが、毎年特許庁が一定以上の出願を行っている企業に対してアンケート調査を行っている「知的財産活動調査」に関連して、その妥当性や調査項目の見直し等を行うことに加えて、特許庁が行う産業財産権政策の妥当性を探る意味で産業財産権制度の経済的効果を検討する報告書が毎年発行されています。報告書の名称は毎年変更になるのでフォローするのがなかなか難しいのですが、今年度は「我が国の持続的な経済成長にむけた企業等の出願行動等に関する調査報告」という名称だそうです。

産業財産権制度の経済的効果の調査自体が世間にどれだけの知名度があるか何とも言えませんが、例えば大学でこのような研究を行っている研究室は極めて少ないです。私が知っている範囲で有名な方というと、例えば一橋大学イノベーション研究センターの長岡貞男教授、専修大学経済学部の山田節夫教授、東京理科大学知的財産戦略専攻(MIP)の石井康之教授、青山学院大学法学部の菊池純一教授、東京大学大学院技術経営戦略学専攻の元橋一之教授くらいでしょうか。しかも、これらの先生方の大半はイノベーション論や計量経済学が専門で、その一環として産業財産権制度の経済的効果についても研究されている方ばかりです。ちなみに、上に書いた報告書が継続的に行われていることが一つのモチベーションになってきているのか、あるいは知名度が高まっているのかは定かではありませんが、若手研究家は最近増えてきているので期待はしています。

産業財産権制度の経済的効果については、米国ではかなり以前から経済学者を中心として検討が行われてきたようです。例えば、「特許制度の存在は産業発展に寄与するのか、それとも阻害するのか」といった命題を(計量)経済学的観点から検討するものです。このあたりの研究のまとめは、「知財創出―イノベーションとインセンティブ」という書籍に記載されています。ちなみに、上の命題についてはどちらの結果も出ているようです。

ここで考えるべき事は、計量経済学であれイノベーション論であれ、一つの命題に対する真偽を検証するためには、何らかの仮説を立て、この仮説に基づいて実証研究を行った結果、この仮説が立証された/されないことを元に命題が証明されたか、ということを検討するわけです(社会科学系の研究のみならず、自然科学系の研究だって同じアプローチですね)が、その際の仮説の立て方、また、仮説を検証する際のモデルの設定と現実との間に相当の乖離があるために、どのような結果が得られたとしても(例えば上の命題で言えば特許制度の存在が産業発展を阻害するという衝撃的な結果が立証されたとしても)その結果を素直に信じることがしにくい、ということです。

例えば、ちょっと乱暴な言い方ですが、昭和63年法改正で改善多項制が導入されたわけですが、この改善多項制は、それまでの1発明1出願の原則下では発明の多面的保護が図りにくいとの指摘があったために導入されたと言われています。そこで、改善多項制導入により発明の多面的保護が図られたのであれば、特許発明の利用率も上昇するはずであるとの仮説を立て、これを、権利者に対して特許発明の利用率が改善多項制導入の前後で変化したかどうかアンケートを取り、その結果から仮説を検証しようといった議論をするわけです。実務家の感覚からすると、そもそも改善多項制が導入されたからといって特許発明の利用率が上昇するとの仮説自体がかなり荒唐無稽なものに近いわけですから、そもそも仮説自体が信用が置けないことになり、従ってどのような結論が出たとしてもその結論を鵜呑みにすることができないのです。この事例はあくまで仮想的なものですが、様々な産業財産権制度の経済的効果を検証する事例を見ていても(個別の事例について批判するのはここでは避けておきます)かなりの確率で仮説の立て方や検証の仕方に対して実務家として違和感を感じることがあります。

この「違和感」の理由を、研究者が産業財産権制度の実務を知らないことに求めるのは簡単です。しかし、一方で、研究者は実務と仮説等との間に乖離があることを承知で、しかし、現在存在している検証手法では実務との間に乖離のある仮説しか検証可能ではないので「仕方なく」不備のある仮説や検証方法を使って検証をしており、実務にどれだけ近接できるかというのは将来的課題として残さざるを得ないことも考えられます。そもそも、産業財産権制度の実際的運用は単純ではなく、しかも、例えば産業財産権制度がもたらすものが企業の収益、ひいては国家全体の産業にどのように影響するかについては、他のfacotorが多すぎて単純モデルでは説明がつかないのですから、どのような精緻なモデルを作り上げたとしても完璧なものは現時点では作り上げることが不可能です。

考えるべきは、研究者が産業財産権制度の現状をどれだけ理解し、自身が行っている研究と実務との乖離がどれほどあるのかを認識しているのかどうか、そして、それをどのようにして改善しようとするのかにあると思います。加えて、研究報告を我々が読む際に、結論だけを見て研究報告自体の価値を安易に評価しないこと、さらに結論「だけ」に対して過剰反応しないことが必要だと思います。より良い研究報告がされないのであれば、その研究自体が税金の無駄遣い(特許庁からの委託研究ですから元は税金ですね)との指弾を受けるわけです。

お知らせ

本日は皆様にとりあえずのお知らせを。

本日(7/14)付けで、10年勤務してきた今の会社を退職し、特許事務所に勤務することと相成りました。今の会社で特許実務、企画管理実務、おまけで特許戦略業務に従事し、その前の会社で6年間特許実務に従事してきましたので、16年ぶりに特許事務所業界に復帰することになります。この間、明細書作成業務を直接的に行ってはいませんでしたが、緊急案件で外部事務所に依頼できない時などはせこせこと自社出願のための明細書作成業務をしてきましたので、16年というほどのブランクはない(とは言え、ここ6年ほどは特許実務から離れていましたのでこれは明確なブランク)のですが、この間、出願関係及び権利解釈関係の特許法も判例も大きく変化してきていますので、一から勉強し直しの気持ちで精進するつもりでおります。

直接お目にかかれる方には、その際にお話しできることもあるかと思います。とりあえず、引き続きのご愛顧の程よろしくお願いいたします。

と言うことで、まずは略儀ながら書中にて失礼いたします。

企業内弁理士の務め(reloaded?)

ご無沙汰です。BLOG更新が途絶えているので知人に心配されてしまいましたが、一応生きております。ただ、あちこちで体調不良やら「疲れている」発言をしているうちに、6歳の息子までが「疲れた」と言い始めており、ちと責任を感じております。ま、体調は大分回復しましたが、夜はさっさと寝るようにしているので、まだまだBLOGを頻繁に更新するのは難しいかな、と。

さて、巷では選挙の当確に一喜一憂しているようですが、それとは全く関係ない(投票はしてきましたよ)話題をしたいと思います。このところ、弁理士会(弁政連)は、弁理士試験合格者数増加+国内出願件数の激減=仕事不足(表向きの理由は、合格者数増加→質低下、出願件数激減→産業競争力低下、という言い方をしてますがね)という図式を持ち出して、これらを政策的に解決すべしと言う論調を張っています。全体的議論については、過去私のBLOGで何回も論じてきたように、弁理士業界全体でその傾向に気付いていないので旧体質を維持している(あるいは気付いていても旧体質を変えられない)ことで、危機的状況を招くに至っていると思っています。本日は、上に書いた状況の中で将来起こりうるであろう事態を、ある側面についてミクロ的に見ようと思います。それは「企業内弁理士」の存在です。

企業内弁理士については、以前もこんな記事を書きました。また同じ内容か、というご批判は甘受するとして(ネタがないんですよぉ)、弁理士試験合格者数増加が招く状況についてちと考えてみたいと思います。

昨今の弁理士試験合格者数増加に伴い、かなりの企業の知財部門に遍く弁理士が勤務するようになっていると思います。加えて、一部の出願ランキング上位の企業においては、知財部門に20名以上の弁理士が勤務するようになっていると思います。数多くの企業の知財部門に弁理士が在籍することは、その企業の知財活動に法律的な裏付けがもたらされるという面では好ましいことだと思いますし、その企業の知財部門と特許事務所との関係にも好影響を及ぼすことも期待したいところです。で、一企業の知財部門に多数の弁理士が在籍することはどうなのか…これについては、企業が企業内弁理士に何を求めているのか、そして、企業内弁理士がどのような形で企業の知財活動に貢献するのか(言い換えれば、「弁理士」ならではの企業内知財活動とは何か)を考えないといけません。

弁理士が知財部門に在籍することで企業の知財活動に貢献できることとして、思いつくままに考えてみると、一番には企業の知財活動(それは個別の権利形成活動であっても知財戦略であっても)に産業財産権的側面からの裏付けを与え、法律解釈論的にバックボーンを与えること、それから、法改正情報や判例情報(主に日本)を知財部門内に提供すること、特許事務所と企業との間に立って、双方の立場を理解する者としてよりよい関係を築き上げること、といったところでしょうか。

しかし、日本知的財産協会等の知財関連団体に所属している企業にとっては、研修を通じて知財部門の担当者のスキルをかなりのレベルにまで向上させることが可能であり、法律論的にも相当のレベルの知識を獲得した人材が企業知財部門には数多くいるようになっています。また、法改正情報についても、知財関連団体から頻繁にかつ詳細な法改正情報や判例情報を入手できるようになっています。「弁理士ならでは」の活動を企業知財部門内で追求することは相当難しい状況にあります。辛うじて、企業知財部門と特許事務所との間の橋渡し的存在にはなり得るでしょうが、企業としてそういった存在が企業に欠かせない人材であるかどうかは疑問です。

こう考えると、弁理士会の会費を支払ってまで企業内弁理士を雇用するインセンティブは非常に低いものになってしまいます。更に言えば、付記登録のための研修費用まで企業負担にしようなどと言えば、部門内の反感を買う可能性が多々あります。企業内弁理士は、自身の存在意義を今まで以上に問われる、ということです。確かに、日本知的財産協会等の研修を受講したからといって皆が優秀な知財部門員になれるわけではないですから、企業内弁理士であっても「弁理士」という傘の下で安穏とすることなく日々研鑽を続けることで、企業から求められる人材になり得るのだと思っています。

では、翻って、弁理士試験合格者数増加の現状において、「弁理士」という資格の価値が薄れたのか。私はそんなことはないと思っています(当然、前提として「弁理士」としての職務を全うする、専門性を十分に発揮することが求められますが)。次の画像は、7年ほど前にビジネスIPRという団体で私が講演をした時のスライドです。

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IT業界には部品メーカーとサービスメーカーに付加価値が集中し、製品を製造するメーカーは単なるアセンブリメーカーでしかないので付加価値は薄い、ということを「スマイルカーブ」と称しています(曲線が笑っているように見えるので)。このアナロジーとして、発明を生むのは発明者しかなし得ないことを考えると事業部門の付加価値は非常に高い、また、発明を明細書という書面を通じて権利化するのは弁理士のみ行いうることを考えると明細書を作成する弁理士も付加価値は非常に高い、この両者の間で、知財部門は単に発明提案書を特許事務所に手渡すだけの業務であるならば付加価値は低いので、これを「知財スマイルカーブ」と称して紹介してみました。当然、知財部門の担当者は、企業の知財戦略を理解して個別の権利形成業務において緻密な判断をし、権利活用に際して有用な権利形成をなし得るように特許事務所と共同で権利形成活動を行うならば、十分な付加価値があると言えるでしょうが、そこまでの考えをもって権利形成活動をしている知財部門員はどれだけいるのか。弁理士は権利形成業務に絶大なる強みがある、と信じています。そして、その強みを企業内で十分発揮できるならば、企業内弁理士の存在意義は高まりうるのだと思うのです。

…まぁ、私は権利形成業務から離れて7年くらい経過していて、多分戻れませんから、権利形成業務に従事している企業内弁理士の皆さんには是非頑張って欲しいと思うのです。皆さんの認識と日々の行動が、知財業界における弁理士の評価に影響します。

弁理士とは?

7月1日は「弁理士の日」です。この日は、弁理士制度の始まりである「特許代理業者登録規則」が明治32年7月1日に施行されたことを記念して、平成9年に制定されました。毎年、日本弁理士会は弁理士の日を記念してイベントを開催しています(今年のイベントはこちらを参照)。

さて、本日は、「弁理士と弁理士試験のブログ-弁理士試験の勉強法-」で有名なドクガクさんからの呼びかけ(この記事にもあります)に応えて、「弁理士とは?」というお題で書かせていただきます。とは言え、私が弁理士登録をしてから20年以上経過しているので、ちとお古の話題になるかもしれませんし、そもそもこのBLOG、知的財産権関連の話題でもかなりニッチかつマイナーな話題ばかりディープに追及しているところなので、弁理士制度の知名度向上にどれだけ貢献できるのか、ちと不安ではあります。

「弁理士」とは何であるか、については、例えばWikipedia)等を見ていただくと非常に詳細な説明が提供されるようになりました。とは言え、Wikipediaの日本版が提供された当初は弁理士という項目すらなく(「特許」の記載も非常に貧弱でした)、弁理士の知名度もこの程度かな、という気がしていました。もっと振り返ってみると、私が弁理士登録をした平成元年の頃は、弁理士という国家資格の知名度は非常に低いし、産業財産権制度自体の知名度も、エンジニアにはそれなりにあったもののそれ以外の一般的な知名度も非常に低かったと記憶しています。つい10年くらい前まで、政治や行政の世界では「チザイ」=地方財政の略という認識のほうが高かったようです。

私が特許業界に入るまでの経過を思い出してみると、理系大学生のころは「特許」という言葉は知っていても産業財産権制度全体を説明する授業はほとんどなく(機械、電気系学科では選択科目であったらしいんですが、私は物理屋という変わり者なので)、企業に入社して新人研修の時に結構詳細に説明されたことが始まりとなります。私が最初に入った企業は知的財産を非常に重視しており(入社当時から業界内で大型訴訟があり、私が入社した企業が被告でした)、小さい特許部ながら当時から社内弁理士が2人も所属していました。また、配属先の上司が発明提案マニアで、月に1件は提案書を書くことを自ら課していて、「君もどうだね」と誘われるままに私も提案書を何件か書きました。その中で弁理士という資格に興味を持ち、特許業界に足を踏み入れることになったわけです。

弁理士という資格の知名度がいまひとつである理由は、産業財産権制度の利用者は企業に偏っており、しかも、産業財産権制度における出願件数の過半数を占める特許制度を利用する人=発明者はエンジニアがほとんどですから、エンジニアでない会社員であるとやはり産業財産権制度に馴染みのないことが多いことなのだろうと思っています。つまり、国民全体で考えると、弁理士という資格を持った人に直接対面した人はかなりの少数派に属するわけです。他の士業であると国民一般との接点が何らかの形であるのですが、弁理士は産業財産権の客体である発明、考案、意匠、商標を介して国民一般との接点を持つべきところ、これら客体を生み出す人々(商標だけは「生み出す」のではなく「選択する」わけですが)は国民一般の中の少数派なのです。当然、それがいけないわけではありません。

ただ、弁理士という存在が昔からそうだったのかと言うと、多分そうではないだろうと思います。ご紹介するデータは、100年ほど前からの特許出願件数、実用新案登録出願件数と弁理士登録数、及び弁理士数と弁理士一人当たりの特許+実用新案登録出願件数のグラフです。特許出願件数及び実用新案登録件数はWIPOの統計データです。但し、実用新案登録出願件数については1977年からという比較的最近のデータになっています。旧実用新案と新実用新案については、どうも足し合わせた数字になっているようです。これ以前のデータについては、「工業所有権制度百年史」に掲載されているデータで補充しました。また、弁理士登録数は、弁理士制度100周年記念誌及び110周年記念誌にデータがありましたので、これを引用しています。

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このグラフを見て、戦前にかなりの弁理士数がいたことがお分かりかと思いますが、このあたりの事情は、弁理士試験の難易度やら何やらがあると思うので、ここでは深く追求せずにいます(正確には私も「これ」と判断できる資料がないので…)。戦後は、だいたい1960年頃をスタートとして特許出願件数及び弁理士登録数は右肩上がりになり、特許出願件数は2002年をピークに減少傾向にあるものの、弁理士登録数は右肩上がりを続けていることがわかります。

で、私がポイントとしたいのは、特許+実用新案登録出願総数を弁理士登録数で除した、つまり弁理士1人当たりの特許+実案取扱件数(本来は代理なし案件を除外したいんですが、そこまでは調べきれていないのでご勘弁を)を見ると、1960年以降のいわゆる高度経済成長時代にはこの数字が100を超え(正確には1955年あたりには100を超えています)、1985年頃が最高の数値(170くらいになります)をマークしたものの、その後激減し、現在は50程度の値になっていることです。これは何を意味するのか。

1960年頃からの特許+実案出願件数の激増は、日本の各種産業が目覚ましい発展を遂げつつあった中での研究開発成果の権利化、という説明がつくと思います。自動車産業、電機産業を中心に、国内企業間のある意味での過当競争が国際競争力を生むという図式が成立した時期であり、国内企業間の競争の一環として膨大な数の特許+実用新案登録出願がされたという理解を私はしています。しかし、例えば1960年で見てみると特許+実案出願数が10万件程度で弁理士登録数が1,000人強であるところ、1985年では特許+実案出願数が50万件程度で弁理士登録数が2,900人の伸びに留まっていることから、弁理士登録数は出願件数増に対応した分増加していません。

弁理士の総数をどうするかというのは高度な行政判断が加わっているので、このこと自体を議論する意味はあまりないと思っていますが、弁理士1人当たりの取扱件数の激増は、出願件数の激増をもたらした主に大企業からの案件に特許事務所が経営的に大きく依存する構造と、また、大規模特許事務所を中心に、特許事務所内に明細書作成補助者を大規模に雇用する構造とを生み出したと思っています。そして、この構造は、出願件数が減少した現在でもかなり温存されており、これが一部の特許事務所の経営に大きく影響していると思っています。また、数十年前からあった、一部の大企業に見られる件数主義と、それに対応して大量に出願案件を受件して能率よく出願代理を行った、これも一部の特許事務所とが相俟って、厳しい言い方ですが「代書屋」としての弁理士像が一部に形成されたように思います。

一般には知名度が低く、大企業を中心として「代書屋」的な見方をされている弁理士は、ではどうしたらいいのか。ものすごい難問であり、私も明確な答えを見つけ出すに至っていないのですが、取っ掛かりは愚直に出願代理→中間処理(特許庁との手続)の専門性を高め、質の高い権利形成活動を行うことに尽きると思います。弁理士業界全体でみると、以前とは比べ物にならないくらい権利形成活動において「質」を追求する方々が増加したように思いますので、この流れは絶やしてはいけないと思います。加えて、企業側も、質の高い権利形成活動を弁理士と一体になって追求する活動が必要だと思います。企業は知財戦略を立て、この戦略に基づいて個々の権利形成活動を行うわけですが、往々にして企業の知財戦略と当該権利形成活動との間の相関について弁理士に十分な情報が伝わっていないことがあるように見ています。企業の知財担当者が自社の知財戦略を理解し、これを代理人たる弁理士に伝えた上で、当該権利形成活動がその知的財産戦略にどのように寄与してくれることを企業が期待しているかについての情報も伝える必要があります。双方の活動が相俟って、企業と弁理士とが運命共同体的な連帯感を持って権利形成活動をしてこそ質の高い権利形成活動が実現できるのだと思っています。

加えて、以前のこのBLOGで紹介した、大企業の特許出願数が減っているからこれからは中小企業だ、という論調にも注意したいと思います。上に書いたような一部の特許事務所が未だに抱えている体質のままで中小企業にアプローチしても、それは中小企業が抱えているニーズにマッチした解決策を提示することは難しいでしょう。

…とまとめには至りませんが、個々の弁理士が弁理士とは社会にとってどんな存在であるべきかを深く考察することが求められているように思います。自戒を込めて。

(追伸)ようやく、この間特許庁図書館で「工業所有権制度百年史」を閲覧し、古い時代の実用新案登録出願件数データを入手してきました。そのため、弁理士数と弁理士一人当たりの出願件数のデータも追加できました。こんなデータ、日本弁理士会も公開してないはず。参考になれば幸いです。

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