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企業内弁理士の務め(reloaded?)

ご無沙汰です。BLOG更新が途絶えているので知人に心配されてしまいましたが、一応生きております。ただ、あちこちで体調不良やら「疲れている」発言をしているうちに、6歳の息子までが「疲れた」と言い始めており、ちと責任を感じております。ま、体調は大分回復しましたが、夜はさっさと寝るようにしているので、まだまだBLOGを頻繁に更新するのは難しいかな、と。

さて、巷では選挙の当確に一喜一憂しているようですが、それとは全く関係ない(投票はしてきましたよ)話題をしたいと思います。このところ、弁理士会(弁政連)は、弁理士試験合格者数増加+国内出願件数の激減=仕事不足(表向きの理由は、合格者数増加→質低下、出願件数激減→産業競争力低下、という言い方をしてますがね)という図式を持ち出して、これらを政策的に解決すべしと言う論調を張っています。全体的議論については、過去私のBLOGで何回も論じてきたように、弁理士業界全体でその傾向に気付いていないので旧体質を維持している(あるいは気付いていても旧体質を変えられない)ことで、危機的状況を招くに至っていると思っています。本日は、上に書いた状況の中で将来起こりうるであろう事態を、ある側面についてミクロ的に見ようと思います。それは「企業内弁理士」の存在です。

企業内弁理士については、以前もこんな記事を書きました。また同じ内容か、というご批判は甘受するとして(ネタがないんですよぉ)、弁理士試験合格者数増加が招く状況についてちと考えてみたいと思います。

昨今の弁理士試験合格者数増加に伴い、かなりの企業の知財部門に遍く弁理士が勤務するようになっていると思います。加えて、一部の出願ランキング上位の企業においては、知財部門に20名以上の弁理士が勤務するようになっていると思います。数多くの企業の知財部門に弁理士が在籍することは、その企業の知財活動に法律的な裏付けがもたらされるという面では好ましいことだと思いますし、その企業の知財部門と特許事務所との関係にも好影響を及ぼすことも期待したいところです。で、一企業の知財部門に多数の弁理士が在籍することはどうなのか…これについては、企業が企業内弁理士に何を求めているのか、そして、企業内弁理士がどのような形で企業の知財活動に貢献するのか(言い換えれば、「弁理士」ならではの企業内知財活動とは何か)を考えないといけません。

弁理士が知財部門に在籍することで企業の知財活動に貢献できることとして、思いつくままに考えてみると、一番には企業の知財活動(それは個別の権利形成活動であっても知財戦略であっても)に産業財産権的側面からの裏付けを与え、法律解釈論的にバックボーンを与えること、それから、法改正情報や判例情報(主に日本)を知財部門内に提供すること、特許事務所と企業との間に立って、双方の立場を理解する者としてよりよい関係を築き上げること、といったところでしょうか。

しかし、日本知的財産協会等の知財関連団体に所属している企業にとっては、研修を通じて知財部門の担当者のスキルをかなりのレベルにまで向上させることが可能であり、法律論的にも相当のレベルの知識を獲得した人材が企業知財部門には数多くいるようになっています。また、法改正情報についても、知財関連団体から頻繁にかつ詳細な法改正情報や判例情報を入手できるようになっています。「弁理士ならでは」の活動を企業知財部門内で追求することは相当難しい状況にあります。辛うじて、企業知財部門と特許事務所との間の橋渡し的存在にはなり得るでしょうが、企業としてそういった存在が企業に欠かせない人材であるかどうかは疑問です。

こう考えると、弁理士会の会費を支払ってまで企業内弁理士を雇用するインセンティブは非常に低いものになってしまいます。更に言えば、付記登録のための研修費用まで企業負担にしようなどと言えば、部門内の反感を買う可能性が多々あります。企業内弁理士は、自身の存在意義を今まで以上に問われる、ということです。確かに、日本知的財産協会等の研修を受講したからといって皆が優秀な知財部門員になれるわけではないですから、企業内弁理士であっても「弁理士」という傘の下で安穏とすることなく日々研鑽を続けることで、企業から求められる人材になり得るのだと思っています。

では、翻って、弁理士試験合格者数増加の現状において、「弁理士」という資格の価値が薄れたのか。私はそんなことはないと思っています(当然、前提として「弁理士」としての職務を全うする、専門性を十分に発揮することが求められますが)。次の画像は、7年ほど前にビジネスIPRという団体で私が講演をした時のスライドです。

Photo

IT業界には部品メーカーとサービスメーカーに付加価値が集中し、製品を製造するメーカーは単なるアセンブリメーカーでしかないので付加価値は薄い、ということを「スマイルカーブ」と称しています(曲線が笑っているように見えるので)。このアナロジーとして、発明を生むのは発明者しかなし得ないことを考えると事業部門の付加価値は非常に高い、また、発明を明細書という書面を通じて権利化するのは弁理士のみ行いうることを考えると明細書を作成する弁理士も付加価値は非常に高い、この両者の間で、知財部門は単に発明提案書を特許事務所に手渡すだけの業務であるならば付加価値は低いので、これを「知財スマイルカーブ」と称して紹介してみました。当然、知財部門の担当者は、企業の知財戦略を理解して個別の権利形成業務において緻密な判断をし、権利活用に際して有用な権利形成をなし得るように特許事務所と共同で権利形成活動を行うならば、十分な付加価値があると言えるでしょうが、そこまでの考えをもって権利形成活動をしている知財部門員はどれだけいるのか。弁理士は権利形成業務に絶大なる強みがある、と信じています。そして、その強みを企業内で十分発揮できるならば、企業内弁理士の存在意義は高まりうるのだと思うのです。

…まぁ、私は権利形成業務から離れて7年くらい経過していて、多分戻れませんから、権利形成業務に従事している企業内弁理士の皆さんには是非頑張って欲しいと思うのです。皆さんの認識と日々の行動が、知財業界における弁理士の評価に影響します。

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