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Bilski最高裁判決を学ぶ

昨日、弁理士会の会派の研修で、米国Finnegan事務所の吉田直樹米国特許弁護士による「米国弁護士の視点から見たビルスキー最高裁判決と米国特許実務」(長いな)という研修会を受講してまいりました。Bilski最高裁判決については、既に概略があちこちのホームページ等で解説されており、また、先日の早稲田のRCLIP国際知的財産戦略セミナーでも竹中俊子先生の司会で講義があったので、ある意味知識の確認の意味で受講したのですが、Bilski最高裁判決の細かいところまで判決文をreferしながら解説していただいたので、頭の中が良く整理できて聞き甲斐のあるいい研修会でした。

既にご存じの方も多いと思うので、Bilski最高裁判決についての詳細は割愛しますが、要は、CAFCが提示した米国特許法101条に言う特許適格性の判断における"Machine-or-Transformation test"を唯一のものとするCAFCの判断を否定し、とは言えBusiness Methodそのものには特許適格性がありとしつつ、Bilskiの出願クレームについては"abstract idea"であるとの理由で特許適格性を否定したわけです。加えて、ご存じState Street Bank事件においてCAFCが提示した"Useful, concrete, and tangible result"という判断基準も採用しないことを宣言しています。

多分、Bilski発明について特許適格性を否定しつつ、純粋ビジネス方法発明についての特許適格性は肯定した判決ゆえ、実務家の大半は予想通りの結論となり、胸をなで下ろしただろうと思いますが、一方で、最高裁は"process"に関する特許適格性の判断基準を具体的に指し示すことなく(講師曰く、それは最高裁の仕事ではないということなんでしょうと)"Machine-or-Transformation test"は判断基準の一つではあるが、それに限らないと判示したことから、現時点では統一的な判断基準が「ない」状態にあります。敢えて言えば、Bilski最高裁判決においてBilski発明の特許適格性を"abstract idea"であるとして否定したことから、当該発明が"abstract idea"であるのかどうか、が判断基準となり得ると言えそうです。しかし、最高裁は"abstract idea"の具体的判断基準については何も判示していないので、では具体的にどうなのかと言われると明確な解はなさそうです。

論理的に考えるならば、

① Machine-or-Transformation testに合致しているがabstract ideaである
② Machine-or-Transformation testに合致していないがabstract ideaではない

の2種類が考えられます。現在、米国特許商標庁は、これら①、②の具体例及び新たな判断基準についてのパブリックコメントを求めているそうです(プレスリリース)ので、何かアイデアがあればコメントをされてはいかがかと思います。とは言え、私には当面これといった具体例もアイデアもないんですが…。

と言うのも、"Machine-or-Transformatin test"で特許適格性を否定された方法発明はまず例外なくabstract ideaであると言え(つまり単なるルールを設定したに過ぎない)、論理的には両者は異なるものの、結論は殆ど同じ所に落ち着くのだろうと思うのです。今回の研修会でも紹介されていた、Bilski最高裁判決後に最高裁が特許適格性関連の問題に関与した事件が3件ありますが、2件は医療方法または検査方法、1件はマーケット手法といずれもコンピューターや機械等の直接的な関連性もなく、また、何かしら物理的状態の変化をもたらしたものでもないので、"Machine-or-Transformation test"に合致せず、かつ、abstract ideaであると言えそうな事例でした。米国の場合、医療方法の特許性は認められるので、例えば新規検査薬の検査基準を設定し、検査値により特定疾患の罹患を判定するといった医療方法または検査方法は限界事例になると思いますが、これは新規検査薬について特許を取得すればいいのだろうと思うので、医療方法または検査方法について特許適格性を認めなくてもいいように思います。

ただ、現状の"Machine-or-Transformation test"において、従前は特許適格性が認められていた事例がこのテストによって特許適格性が否定されることもあり得、この点についてはテストの適用基準の微調整は必要かも知れません。つまり、Machineに結びつく発明については、日本におけるハードウェア資源云々の話にも似ているので問題はないかと思うのですが、Transformationの要件において"physical objects or substances"をtransformしなければならないとなっている点は、判断基準として狭いとの指摘があり得ると思います。例えば、コンピューターによる画像処理方法、暗号化方法のように、コンピューター内部で処理が完結してアウトプットも特段表示する必要もない場合、何をTransformしたか(電気信号がTransformしたのは確かだが、それはphysical~に該当するのだろうか)という議論は当然あり得ます。米国特許商標庁の審査官が使用している"Machine-or-Transformation test"のフローチャートについても、これできれいなスクリーニングができるのだろうかという何となくの疑問がありましたので、この点も含めて再度議論がされることを期待したいところです。

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