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2011年1月

特許事務所におけるキャリアプラン

本日は時間もないので要点だけ(だったら寝ろと言う突っ込みは華麗にスルーcoldsweats01)。

最近考えているのが、特許事務所内における弁理士のキャリアパスというものです。

企業所属の弁理士の場合、ある程度の規模の企業であれば人事担当者があれこれキャリアパスを考えるもので(私もちょっとだけ関与したことがあります)、特段「弁理士だから」ということはないようです。弁理士試験合格者数が少なかった頃は、弁理士でないと知財部門の管理職に就けないという噂のある企業がありましたが、最近はその会社の方針がどうであるか、直接お聞きしていないのでわかりません。

しかし、特許事務所の場合、(一応)弁理士あっての特許事務所であり、弁理士の数がその特許事務所を評価する際の項目の一つとなり得る(私が知っている限りでは、いわゆる明細書作成補助者を1名も置かず、明細書は弁理士しか担当しないという事務所が一つだけあります←二桁の弁理士がいる場合ですよ)わけで、しかも、特許事務所業界は、ある意味で「手に職を付ける」という発想で動いているので、弁理士に対してその弁理士が満足する形での評価がされなければ結構な確率で転職してしまう傾向がありますから、事務所内で弁理士をどのように評価し、処遇するかというのは事務所経営、運営の大きな位置を占めています。

とは言え、評価、処遇と言ったところで、よくあるパターンは米国の法律事務所的にアソシエイト→パートナー(パートナーもジュニアパートナーとかシニアパートナーとかに区分するところもありますね)→カウンセルというキャリアパスを用意している事務所もありますし、企業のように○○部、××課を設けてこの課長、部長を歴任させる事務所もあるかと思います。これらのやり方の両方を掛け合わせたタイプもありますね(確か)。

ただ、企業でも同じなんですが、事務所内での評価(特にポストや処遇)と実際の実力とが連動するかと言うと、大抵は連動しているんですが、そうとも言えない場合が時々あるように思います。特に、米国の法律事務所の場合はパートナーによる共同経営(正確には個々のパートナーが独立した経営者として振る舞うことのできる)、言い換えれば事務所経営に特定の人間が大きく関与することがないことが多いのですが、日本の特許事務所の場合、一応業務法人化をしている事務所が多いのですが、そうは言ってもオーナー経営者(所長)の意向により評価なり処遇が大きく左右されることがあり得ます。オーナー経営者の存在が一律に悪いとは私は思っておらず、所長の見識と世間の見識との間に相違がなければ、オーナー経営者は決断が早いので衆議による方針決定より小回りがきいていいことが多いと思います。問題は、所長との人間関係が所内での評価なり処遇に直結してしまっている場合です。いい時は全てが好転するわけですが、悪い時は当然全てが逆方向に回り始め、なかなか止まらない。

このように、所内での評価なり処遇が特定の人間に偏って決定される場合、所内でのキャリアパスが所員に対して公表されず、また、キャリアパスがあったように思えても所長の考え次第でキャリアパスが頻繁に変化してしまうことが起きてきます。こうなると、所員としては所内での目標を失ってしまう可能性があります。

キャリアパスについて明確なポリシーなりビジョンを持っている事務所は多数派を占めるとは思えません。本来、事務所が代理する案件は5年なりのタイムスパンを持っているわけですから、この間の継続性が求められ、もっと言うならば、権利消滅まで20年というタイムスパンがありますから、非常に息の長い活動が求められます。当然、現時点での事務所の経営陣は、次世代にきちんとバトンを渡す責任があり、そのためには次世代を育成する義務もあります。このためには、事務所内でのキャリアパスを明確にすることが望ましいと言えます。

弁理士は高給取りなのか

特許事務所に出戻りして(苦笑)、特許事務所の経営に関与(どれだけ関与してるかは何とも言えませんが)していることもあり、私がBLOGで特許事務所の現状について様々なコメントをすると、ブーメランのように結果的に自分に影響が及ぶことも考えられます。なので、どうしてもごく一般的なことしか述べられないことを最初にお断りしておきます。切れ味が以前より悪いなどのご批判は甘受します。

さて、土日はできるだけ通常業務から離れるようにしています(できるだけ、ねcoldsweats01)ので、実務べったりな思考回路を切り離し、若干であっても業界を客観視する時間ができます。その中で、ちと考えたことを説明してみます。

弁理士を志望される方の中で、少なからず「弁理士は高給である」ということが志望動機に含まれる方はいらっしゃると思います。その動機は決して否定されるものではなく、私が受験生の頃からそういった方はいらっしゃいました。自分は、弁理士というか特許業務が天職だと思っていたので弁理士試験にチャレンジしたという、相変わらずの変わり者なんですがbleah

では、本当に弁理士は高給取りなのか…弁理士会が随分前に会員向けのアンケートを取った記憶がありますが、具体的数字は頭の中から全く飛んでいます。印象としては、思ったほどの高給ではなかったな、ということでした。とは言え、なかなか悩ましい問題として、弁理士の収入(オーナー経営者になると何をもって収入というのか区分しにくいかもしれませんが)には相当の幅がある、ということです。つまり、特許業界に入りたての実務未経験の弁理士から、巨大特許事務所のオーナー経営者まで、もしかしたら3桁の幅が有り得るわけです。事実、今は公表されていない高額所得番付で、東京23区単位ではあったものの掲載されてしまった弁理士先生が数名いらっしゃったという記憶があります。私が合格した20年ほど前は、複数の自社ビルを所有されている弁理士先生もいらっしゃいましたし。で、収入に幅があることは、単純に平均を取ると、母数は少なくても高額所得者の存在が平均を高額の方向に引っ張ってしまい、多数を占める集団の平均値からずれる傾向があるという問題があります。従って、実際のところは収入の分布を子細に見ないと実像はよくわからないのです。

また、特許事務所の給料を企業と単純比較できない側面もあります。まず、規模的な問題があります。この手の議論をする時によく数字が出てくるものとして、人件費を付加価値額(簡単には粗利益を使います)で除した労働分配率というものがあります(このBLOGでもお話しした気が)。労働分配率は、大企業よりも中小企業のほうが高めに出るという話があります。それは、福利厚生にどれだけの額を投じるだとかの要因があります。高いのがいいのか、低いのがいいのか、実は一概に言えませんが、粗利益を人件費に回す割合が高い中小企業たる特許事務所は、一般企業より給料が高めに出る傾向はあります。

次に、規模的な問題と実は密接に関連している、目に見えない部分での労働者に対する企業の出費ということがあります。例えば、最近は大企業でも採用していますが、退職金の積み立て分を労働者側の運用に任せるためにその積み立て分を給料に上乗せすることがあります。また、福利厚生の出費を給料に上乗せして支払ってしまうこともあるでしょう。この辺りは特許事務所毎に考え方が非常に違うので、そういった細部のことを踏まえて収入の比較をしないといけないわけです。

大まかにはそんなわけで、弁理士の収入を他の企業の労働者と比較すること、また、他の職種に比較して弁理士が高給であるかどうかについて議論することは、実は非常に難しい問題を孕んでいます。

とは言え、特許事務所もいわゆるサービス業(第3次産業という意味で)ですから、巨額の設備投資が必要ではなく、また、人材確保という側面から高給にて好待遇する傾向もあり得るでしょうから、上に書いた労働分配率が高めに出る、つまり、全般的に給料は高めになる下地はあります。特許事務所経営者の中にも、所員への分配率、つまり、利益に対してどれだけ所員の給料を配分するかという比率を高めに設定し、厚遇をする方が結構いらっしゃるように思います。

ただ、厚遇と一言で言っても、そのやり方は事務所毎に千差万別です。いわゆる出来高制を厳密に適用する事務所もおられるようですし、年齢に伴う基本給部分の割合を大きく取る事務所もおられるようですし、この辺りは事務所毎のポリシーに直結していますので、なかなか説明しにくいところです。これが、業界全体の収入の相場観を持ちにくくしている原因かもしれません。優秀な人材確保という観点からも厚遇によって事務所に繋ぎ止める場合もあり得るでしょうから、事務所間の比較もなかなかしにくいところがあります。つまり、人事政策的観点から収入を恣意的にコントロールしている、かもしれないわけです。

しかし、(これは特許事務所に限らず企業全般に言えることですが)、高給によってのみ好待遇を与えた場合、事務所に対する忠誠心が低くなり、あるいは、その事務所にいるモチベーションにおける給料の割合が高くなり、それ以上の高給が提示されると容易に転職してしまう可能性が出てきます。あるいは、事務所内の職場環境の変化(有り得ることとしてマネジメントの考えの変更によりその人の評価が大幅に変化してしまう、あるいは人間関係の変化など)により自分の意思で転職を選ぼうとした場合、それまで好待遇を得ていたがために事務所であれ企業であれ一般的な相場との間に大きな開きが生じてしまい、転職によって大幅な収入ダウンを余儀なくされる、最悪の場合、高給取りであることが転職する際の大きな壁になってしまうことも考えられます。

この辺りの話になると、ごく一般的な人的資源管理の話である、企業において定着率を高めるにはどうしたらいいかという議論に収斂してしまいます。つまり、高給のみが好待遇ではなく、その企業での働きがい(モチベーションですね)なり働く意義を高める工夫が企業に求められる、ということになります。とは言え、ここの解答は一律ではなく、どこの企業も真剣に悩んでいるところですので、「こうすればいい」などと軽々しく言えないんですけどね。

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