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弁理士は高給取りなのか

特許事務所に出戻りして(苦笑)、特許事務所の経営に関与(どれだけ関与してるかは何とも言えませんが)していることもあり、私がBLOGで特許事務所の現状について様々なコメントをすると、ブーメランのように結果的に自分に影響が及ぶことも考えられます。なので、どうしてもごく一般的なことしか述べられないことを最初にお断りしておきます。切れ味が以前より悪いなどのご批判は甘受します。

さて、土日はできるだけ通常業務から離れるようにしています(できるだけ、ねcoldsweats01)ので、実務べったりな思考回路を切り離し、若干であっても業界を客観視する時間ができます。その中で、ちと考えたことを説明してみます。

弁理士を志望される方の中で、少なからず「弁理士は高給である」ということが志望動機に含まれる方はいらっしゃると思います。その動機は決して否定されるものではなく、私が受験生の頃からそういった方はいらっしゃいました。自分は、弁理士というか特許業務が天職だと思っていたので弁理士試験にチャレンジしたという、相変わらずの変わり者なんですがbleah

では、本当に弁理士は高給取りなのか…弁理士会が随分前に会員向けのアンケートを取った記憶がありますが、具体的数字は頭の中から全く飛んでいます。印象としては、思ったほどの高給ではなかったな、ということでした。とは言え、なかなか悩ましい問題として、弁理士の収入(オーナー経営者になると何をもって収入というのか区分しにくいかもしれませんが)には相当の幅がある、ということです。つまり、特許業界に入りたての実務未経験の弁理士から、巨大特許事務所のオーナー経営者まで、もしかしたら3桁の幅が有り得るわけです。事実、今は公表されていない高額所得番付で、東京23区単位ではあったものの掲載されてしまった弁理士先生が数名いらっしゃったという記憶があります。私が合格した20年ほど前は、複数の自社ビルを所有されている弁理士先生もいらっしゃいましたし。で、収入に幅があることは、単純に平均を取ると、母数は少なくても高額所得者の存在が平均を高額の方向に引っ張ってしまい、多数を占める集団の平均値からずれる傾向があるという問題があります。従って、実際のところは収入の分布を子細に見ないと実像はよくわからないのです。

また、特許事務所の給料を企業と単純比較できない側面もあります。まず、規模的な問題があります。この手の議論をする時によく数字が出てくるものとして、人件費を付加価値額(簡単には粗利益を使います)で除した労働分配率というものがあります(このBLOGでもお話しした気が)。労働分配率は、大企業よりも中小企業のほうが高めに出るという話があります。それは、福利厚生にどれだけの額を投じるだとかの要因があります。高いのがいいのか、低いのがいいのか、実は一概に言えませんが、粗利益を人件費に回す割合が高い中小企業たる特許事務所は、一般企業より給料が高めに出る傾向はあります。

次に、規模的な問題と実は密接に関連している、目に見えない部分での労働者に対する企業の出費ということがあります。例えば、最近は大企業でも採用していますが、退職金の積み立て分を労働者側の運用に任せるためにその積み立て分を給料に上乗せすることがあります。また、福利厚生の出費を給料に上乗せして支払ってしまうこともあるでしょう。この辺りは特許事務所毎に考え方が非常に違うので、そういった細部のことを踏まえて収入の比較をしないといけないわけです。

大まかにはそんなわけで、弁理士の収入を他の企業の労働者と比較すること、また、他の職種に比較して弁理士が高給であるかどうかについて議論することは、実は非常に難しい問題を孕んでいます。

とは言え、特許事務所もいわゆるサービス業(第3次産業という意味で)ですから、巨額の設備投資が必要ではなく、また、人材確保という側面から高給にて好待遇する傾向もあり得るでしょうから、上に書いた労働分配率が高めに出る、つまり、全般的に給料は高めになる下地はあります。特許事務所経営者の中にも、所員への分配率、つまり、利益に対してどれだけ所員の給料を配分するかという比率を高めに設定し、厚遇をする方が結構いらっしゃるように思います。

ただ、厚遇と一言で言っても、そのやり方は事務所毎に千差万別です。いわゆる出来高制を厳密に適用する事務所もおられるようですし、年齢に伴う基本給部分の割合を大きく取る事務所もおられるようですし、この辺りは事務所毎のポリシーに直結していますので、なかなか説明しにくいところです。これが、業界全体の収入の相場観を持ちにくくしている原因かもしれません。優秀な人材確保という観点からも厚遇によって事務所に繋ぎ止める場合もあり得るでしょうから、事務所間の比較もなかなかしにくいところがあります。つまり、人事政策的観点から収入を恣意的にコントロールしている、かもしれないわけです。

しかし、(これは特許事務所に限らず企業全般に言えることですが)、高給によってのみ好待遇を与えた場合、事務所に対する忠誠心が低くなり、あるいは、その事務所にいるモチベーションにおける給料の割合が高くなり、それ以上の高給が提示されると容易に転職してしまう可能性が出てきます。あるいは、事務所内の職場環境の変化(有り得ることとしてマネジメントの考えの変更によりその人の評価が大幅に変化してしまう、あるいは人間関係の変化など)により自分の意思で転職を選ぼうとした場合、それまで好待遇を得ていたがために事務所であれ企業であれ一般的な相場との間に大きな開きが生じてしまい、転職によって大幅な収入ダウンを余儀なくされる、最悪の場合、高給取りであることが転職する際の大きな壁になってしまうことも考えられます。

この辺りの話になると、ごく一般的な人的資源管理の話である、企業において定着率を高めるにはどうしたらいいかという議論に収斂してしまいます。つまり、高給のみが好待遇ではなく、その企業での働きがい(モチベーションですね)なり働く意義を高める工夫が企業に求められる、ということになります。とは言え、ここの解答は一律ではなく、どこの企業も真剣に悩んでいるところですので、「こうすればいい」などと軽々しく言えないんですけどね。

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