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特許技術者の評価など

この話題は、以前もこのBLOGで議論した記憶が何となくあるのですが、そもそもこのBLOG、繰り返し同じような話題をしているニッチでディープで物忘れの激しい筆者によるものですから、平にご容赦を。

さて、本日の話題は、特許事務所の特許技術者(含む弁理士)に対する評価のお話しです。殊更に特許事務所の特許技術者の評価について取り上げるのは、実情を見ていると、いわゆる会社員が会社からどのように評価され、どのように査定されるかということと微妙に違う実態があるからです。

具体的に言うと、特許事務所の特許技術者は事務職のカテゴリーに属すると思うのですが、評価、査定、及び給与体系はその人なり事務所全体の売上高にリンクする割合がかなり高い、簡単に言えば営業職、しかもフリーランスの営業に近いものなのです。ただ、売上高にどの程度リンクするのかについては、実に特許事務所毎に様々で、このリンクの仕方に特許事務所の経営陣は腐心しています。

これは、特許技術者は、その気になると月単位、年単位での自分が関与した案件の売上高の累積数字を比較的容易に把握することができるので、その意味でも営業職に近い構造になっているとも言えます。裏返せば、自分の売上高と給与との間にかなりの乖離があれば、経営陣に対してその説明を求めることができ、その説明に納得が行かなければ、究極的には他の事務所に転職するきっかけにもなりかねないのです。特許事務所の経営陣は、人材流出を防ぐ意味でも、特許技術者が納得の行く評価、査定及び給与体系を提示する必要に迫られる事が多々あります。

では、特許事務所の特許技術者の仕事に対するインセンティブは、事務所内の評価が高く、結果として高給取りになることだけなのでしょうか。クライアントからの評価が高い、さらには高品質の業務を提供することはインセンティブにならないのでしょうか。クライアントからの評価が高い、ということは、実は特許技術者が一人で実現することはなかなか困難です。それは、特許業務は特許技術者だけで完結することはなく、特許事務担当者が期日を的確に把握しながらミスを極言まで減らし、かつ、効率的に特許事務作業を遂行することも、同様にクライアントからの評価を高める要因になり、さらには特許事務所全体の体制や評価も加味されるからです。高品質の業務を目標にすることがクライアントからの評価に直結しないのは、このところ明細書の品質について議論したことからもわかっていただけると思います。

企業の場合、個人の評価が企業全体の評価に大きく反映されることは滅多にないと思っています。むしろ、チームプレーでの業務遂行能力がその企業の評価につながり、ひいてはそこに勤務する社員の評価につながるという図式だと思います。従って、チームとしてのまとまり、チームとしての目標などが重視されます。このような図式の中で、企業という集団に帰属する意識が出てくるわけです。

では、振り返って、特許事務所にはチームプレーでの業務遂行能力はどれだけ求められるのか、チームとしてのまとまりは必要なのか、特許事務所に対する帰属意識はあるのか…クライアントからの評価には特許事務作業の巧拙も含まれるというお話をしましたが、実は、大抵の場合、大過なく作業を継続していれば特許事務作業に対するクライアントからの評価は悪くはなりませんし、それを問題にする場面もあまりありません。そうなると、クライアントからの評価は、実は個々の特許技術者の評価の累積値にかなり近くなってきます。これを裏から見ると、特許事務所全体のまとまりを求めずとも、個々の特許技術者が優れた仕事(主に権利形成業務)をしているならば、クライアントからの評価が高くなる傾向にあります。

このような実情に鑑みてみると、特許技術者の評価、査定及び給与体系と特許技術者の売上との間の相関性が高くなることは、かなり必然的なものであるとも言えます。優秀な特許技術者を何人抱えているかが特許事務所の評価に強く結びついている限り、優秀な特許技術者を特許事務所内に雇用するためには売上高に見合った報酬が必要になる、ということです。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか。現実はなかなか難しいところがあるのですが、ある程度知財管理業務が洗練された企業であると、企業全体での知財実務の方針が定められており(例えば明細書はこのようなポリシーに基づいてこのような基準で作成してくださいという指示)、この方針に従った知財業務(特許事務所の場合、ほとんどが権利形成業務)が特許事務所には求められているわけです。つまりは、特許事務所に対してもチームとしてまとまった行動が求められています。そして、方針が徹底されない特許事務所に対しては管理責任が問われる可能性があります(現実にそこまで至る事態はそうそう生じませんが)。加えて、一定以上の知財サービスを提供するという観点からすると、クライアントに対する窓口業務を行っている特許事務所側の担当者(弁理士であるべきですが)は、そのクライアントに対して提供する知財サービスについて全責任を負うべきですし、そのためには提供する知財サービスに対する管理業務が必要になります。こう考えると、特許事務所であっても、企業と同様の観点(チームプレー重視など)からの業務遂行が求められてもおかしくありませんし、その観点に立った評価、査定、及び給与体系が導入されてもいいように思います。

とは言え、個人単位で権利形成業務を行う必然性も上に書いたようにありますし、理想論を縷々説明しても、それに近づける作業は並大抵なものではありません。一例を取れば、明細書作成の指導を経験の浅い特許技術者に行うことは必須である当然の作業ですが、指導をした分、指導者は明細書作成業務を行うことが出来ず、結果的に「得べかりし利益」という意味では売上高の減少につながります。この分をどのように評価するのか。この辺りになると、各特許事務所の知恵の絞りどころです。私個人としては、できたら企業寄りの業務、評価、査定、そして給与体系を実現したいところですが、簡単ではありません。

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