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池井戸潤「下町ロケット」(補遺)

前の記事で、一気呵成に感想を書いたら、案の定書こうと思っていた話題を幾つか書き漏らしましたcoldsweats02。なので、ちと脈絡がないのですが、補遺を。

まず、佃製作所が金策に詰まるところですが、私も又聞きレベルで申し訳ないですが、金融機関は財務諸表に基づく評価はできるものの、技術に基づく評価はなかなかできない、という話を聞きます。技術評価は外部機関に依頼することも最近では時々行うようですが、外部機関を使って技術評価をした場合、それなりの費用がかかるので、コストをかけたものの否定的な評価が出た場合はその費用は誰が払うんだ?ということになり、金融機関はなかなか重い腰を上げないようです。ただ、小説では金融機関として「銀行」ばかりが出てきた印象がありますが、中小企業の場合、地元密着型の金融機関として信用金庫や信用組合のお世話になっている企業が結構あります。で、信用金庫などは長期間にわたってその地元で地元密着型企業との付き合いがありますし、そんなに新規融資先が現れるわけでもない様子なので、地元密着型企業を大切にする印象があります。私が話を聞いたある信用金庫は、中小企業支援センター(もう終了しましたが)として活動し、その中で知財評価にも積極的に取り組む姿勢を持たれていました。あと、金融支援という側面で言うと、中小企業庁や中小企業基盤整備機構を中心とする中小企業に対する支援策が数多くあり、(条件は色々とあるのですが)緊急的な金融支援策を取り得ます。この辺りは、小説には登場しない中小企業診断士、社会保険労務士、税理士、公認会計士などの専門職の支援を仰ぐ(当然、商工会議所などもありますが)ことで道が切り開けることもあります。ま、小説では、この辺りの支援策も検討したが…ということなんだろうと思います。

もう一つ、小説では比較的善人と悪人とがわかりやすく、カリカチャライズされた形で描かれていました。登場人物の正確や立場を明確にし、読者が感情移入しやすいためのことだとは思いますが、当然ながら、現実は善人と悪人の境目は不明瞭であり、いずれかにカテゴライズするのは困難です。例えば、知財訴訟を得意とする弁護士は、実は事件毎に原告側に経つと思えば被告側に経ち、また、原告/被告代理人として対立することもありますが、次の事件では共同代理人としてタッグを組むこともあり、実に立場が目まぐるしく変わります。小説内のナカシマ工業の代理人弁護士は、多分に顧問契約を締結しているのだろうと推測しますが、とは言え、職業倫理を超えてまで企業側に与することはないので、ちと悪人に描かれすぎかな、と思いました。私が存じ上げる知財関係を得意とされる弁護士先生は、どなたも職務遂行は真摯にかつ公平に行う方ばかりで、尊敬に値する方ばかりでした。

…こんなところで思ったことのほとんどを書きましたので、この項はこれで終わりにしますm(_ _)m。

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