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2011年9月

「共に成長する」という視点

このところ、結構業界ネタが続いていて、あまり関心のない方もいらっしゃるかと思いますが、もう少しだけお許し下さいm(_ _)m(業界ネタが面白いと思っていただける方が大勢いらっしゃることを期待していますがhappy01)。

さて、先日、twitterでふと呟いて、そのうちBLOGに書きますというネタが残っていたので、そのことについて簡単にご説明を。内容は、前回及び前々回に引き続き、企業知財部と特許事務所との関係についてです。

企業(知財部)は、特許事務所に対して弁理士を含めた出願代理業務の専門性を評価し、出願に関する代理を依頼するわけですが、とは言え、出願業務全般について特許事務所に優位性があるとは言えない部分がどうしても残ります。どのようなことかと言えば、例えば明細書をどのように記載すべきかについては、通常は特許事務所のほうが延べ件数で言えばかなりの企業よりも経験値が高いと言えます(超大企業だとそうも言えませんが)。しかし、明細書作成業務において、最終的に権利化され、(訴訟提起する/されるまで至らなくとも)権利活用の場において第三者の厳しい目に晒されることで反省点が見つかることもあります。通常、特許事務所は当該権利活用の場に出席せず、また、その場でどのようなことがあったかについて個別にフィードバックを受けることはありません。また、海外での出願を念頭に置くことが多い企業の場合、外国出願の際にできるだけ手直しをせずに済むように、明細書の記載形式をいわゆる「世界共通明細書」にすることを求める場合もあります。このような場合、企業側から明細書作成に関する指示書(マニュアル化されることもあります)が渡されることがあります。その内容は色々ですが、特許事務所の立場からすると「なるほど」と思わせる内容があります。従って、明細書作成業務について特許事務所は企業から代理委任されているのですが、当該明細書作成業務の具体的内容については、委任元たる企業から教わることもないわけではありません。これを屈辱的と感じるのか、はたまた、成長の糧とできるのか、それは特許事務所個々の問題ですから私は何もコメントしませんが、私としては、「共に成長する」という関係を築けるようになりたいと常日頃思っています。

一方、個々の企業知財担当者と特許事務所の担当者(弁理士)とで比較すると、企業知財担当者よりも特許事務所の担当のほうが出願代理業務の経験値が高いことに時々遭遇します。この場合、知財担当者と特許事務所担当者との面談(時に発明者面談と同時の場合もあります)において、特許事務所担当者がその場をリードするようなこともあり得ます。従って、(可能性として)企業知財担当者が特許事務所担当者から「教わる」(代理委任という関係からするとこの言い方は正しくないわけですが)場合も想定できます。これについても、私としては、「共に成長する」という関係を築けるようになりたいと常日頃思っています。

で、少しまとめて言うと、私としては、企業知財部や特許事務所という立場はあるにしても、双方の目的は企業で生まれた発明を価値のある権利にすることで共通する(はず)ですから、「共に成長する」という関係を築くことは可能ですし、お互いにその目的を達成するために自分ができることを追求したいと思っています。とは言え、プライドという厄介なものがあってなかなか実現できないんですけどねぇconfident

企業知財部と特許事務所との業務経験はどう役立つのか(補遺)

昨日書いた記事に、twitter上で結構なコメントをいただきましてありがとうございました。ちと記載不足の部分がありましたので、追記しておきます。

提案型営業については、実は私は大好きな領域でhappy01、隙あらばやっていますhappy02。とは言え、提案型営業が受け入れられるかどうかは、クライアントとの関係によるわけです。昨日の記事でご紹介した例は、発明者原稿の完成度が非常に高いこともあり、基本的に発明者との打ち合わせは行わずに、原稿の記載内容に基づいて明細書を作成することが求められています。このような考え方をされるクライアントは現実に何社もおられ、当然ながらそれはクライアントの知財ポリシーとしてある意味優れている(発明者教育がしっかりしている、権利取得の方針に対する指示がしっかりしている)わけです。この場合、提案型営業はなかなか受け入れていただけないだろうと思います。結局のところ、クライアントと特許事務所との間でコミュニケーションが円滑に行いうるならば、提案型営業にこだわる必要はなく、高品質な明細書作成業務を行いうるわけです。

ただ、自分は、発明者との打ち合わせを行い、企業の知財担当者から当該発明にかかる技術や業界の背景をお聞きし、この出願が当該企業の特許ポートフォリオにおいてどのような位置にあるのかを把握した上で、明細書作成業務をするのが一番得意ですし、さらに許されるならば、発明者ブレストにお邪魔して様々な提案をするところから関与したいと思っています。これ以上の提案型営業(当該企業の知財戦略なり知財管理なりに対してアドバイスをする)については、現状、そこまでの要望を持っておられる企業が少ないので、やりたい意欲はたくさんある(自分なりの自信もちょっとだけある)のですが、難しいですねぇ。

企業知財部と特許事務所との業務経験はどう役立つのか

まだ頭が整理できていない状態で、半分愚痴になることを承知でちょっとだけお話しします。

ご存じの方もそれなりにいらっしゃるかと思いますが、私は、大学卒業から企業研究職→特許事務所→企業知財部→特許事務所(イマココ)という経歴を持っています。で、最近、twitterで企業での研究開発経験が特許事務所で活かされるのかどうかという議論がありました。この議論は、大学(院)から新卒で特許事務所に入所することが、その後の特許事務所を含むキャリア形成にどのような影響があるのか、という議論の延長線でされたものです。その議論については、大体収束したと思っていますので、ここではその議論は蒸し返しません。以下にお話しするのは、では、特許事務所経験が企業知財部での業務に活用されるところはあるのか、逆に、企業知財部経験が特許事務所での業務に活用されるところはあるのか、というvice versaな話です。

まず、特許事務所経験が企業知財部での業務に役立つのか、というお話です。自分の経験の範囲内のことだけでお話しすると、私の場合は、企業知財部での自分の業務遂行には結構役立ったと思っています。

私が特許事務所から企業知財部に転職したのがかれこれ17年ほど前です。その頃は、企業知財部員の中途採用自体が皆無に近い(あっても非公式ルートでの求人なので、求人情報誌を見てもほとんどない、転職サイトなどという重宝なものもなかった)時代でしたので、求人を探すだけで結構な時間がかかりました。今は、企業知財部自体が即戦力としての中途採用に対する抵抗が劇的に低くなったので、特許事務所勤務の弁理士先生が企業知財部に転職する話も普通に聞くようになりました。

その、17年前に入社した会社では、特許事務所の管理も明細書のチェックも、経験値の高い社員が多数を占めているわけではなかったので、正に即戦力状態で実務を行うことになりました。より詳細に言えば、発明者から提案された発明を自分なりに解釈して、この発明ならばこんな明細書で出願したら良いというイメージを事前に持ち、そのための資料を揃え、できるだけ明細書作成作業に不足する情報がないようにして特許事務所に出願を依頼し、出来上がってきた明細書原稿を、自分ならこう書くだろうというイメージ及びレベルに従ってチェックし、最終的に出願代理をお願いしていました。加えて、発明者の提案原稿が未完成であるにもかかわらず出願期限が迫っている時は、私は社内の人間ですから発明者に頻繁にコンタクトすることは可能ですので、自分で明細書+図面を作成し、代理人なしでの自社出願をすることもありました。今考えれば、依頼された特許事務所の側からすると非常に厳しい知財担当者であったのだろうと思います。当時担当された特許事務所の方々にお詫びをしたい気持ちではあります。

このように、企業知財部の業務において、特許事務所での経験は十分活用できるというのが、自分の経験から導き出された結論です。

では、企業知財部の経験は特許事務所において活用されうるのか、さらには有効に活用されうるのか、についてです。実は、企業知財部OBが特許事務所に転職することはかなり昔から行われてきており、その数も、私が推測するに、特許事務所から企業知財部に転職する数を上回っていたのではないかと思います。その理由は…明細書作成能力は特許事務所で鍛錬する必要があるかもしれませんが、少なくとも発明把握能力は企業知財部で長年訓練されてきていますので、この部分の教育を省けるだけでも特許事務所からすると教育は短期間でかつ容易に行いうるとの推測はできるでしょう。なお、企業知財部で管理職を経験されてきた方が特許事務所に転職した場合、特許事務所がその方を受け入れるのは、また別の理由のようです(今回の話とはちと別のことなので割愛しますが)。

自分の場合、企業知財部の前に特許事務所経験があり、企業知財部でもこつこつと自社出願をしていたので、自分の業務遂行能力がいったいいつの経験に基づくのかが混沌としているのですが、行ったり来たりしている経験が少しは役立っているのかも知れません。

とは言え、気を付けないといけないのが、企業の知財部門に所属していると、担当する分野の発明が発明者から提案された場合、知財担当者にはそれなりの権限が委譲されていますので、会社としてのauthorizeは必要であるものの、裁量の範囲が結構広いです。で、その感覚を持ち込んだまま特許事務所の業務を遂行すると、微妙に食い違ってしまうことがあります。

一例として、特許法が要求することもあり、特許出願代理を依頼される際に見せていただける発明者提案原稿または特許出願依頼書類には、当該発明の先行技術に関する文献名が記載されている場合がほとんどになりました。この先行技術は、発明者なり知財担当者が先行技術調査をした結果、適切な先行技術文献を記載しているものと推測されます。で、当該発明にかかる技術の全体像を把握するために、特許事務所の担当者が先行技術調査を行ったところ、発明者提案原稿に記載された先行技術よりも当該発明の先行技術として適切ではないかと推測される先行技術が発見できたとします。この場合、知財体制が整っている企業であると、そもそも出願代理を依頼する際に企業側が想定している業務範囲に先行技術調査は含まれていないことが多い(企業は本来ならば先行技術を一番知りうる立場にあるでしょうから)ので、特許事務所が先行技術調査を行うこと自体、厳しい言い方をすれば越権行為と言われかねません。しかも、万が一さらに適切であろうと客観的に判断される先行技術を特許事務所が発見してしまったならば、知財担当者なり発明者なり、当該発明についての先行技術調査を行った担当者の面子をつぶすことにもなります。企業の知財担当者であれば先行技術調査を行い、それとの対比で発明把握の方向性をimproveすることは要求される業務範囲内ですが、企業の知財担当者の頃の感覚でこのような業務遂行をすると、最悪の場合、企業の心証を損ないかねません。

この辺りが、実は非常にもどかしいところではあるのです。代理人としての分を弁えるべきところなのです。最近、知財経営コンサルティングの議論をする時、提案型営業が推奨されており、上に書いたような事例であるならば、特許事務所側が積極的に先行技術の存在を調査し、それに基づいて発明把握自体を変更すべしと言う論調になりがちです。当然、知財体制が整っていない企業に対しては提案型営業を推し進めることに問題はないと思いますが、クライアントの事情を考慮せずに何でも提案型営業、という議論はしてはいけないと思います(当然ですが、私が知っている弁理士先生でそういった議論をされている人は知りませんが)。

あと、日本の社会は、未だに「この道一筋○○年」という方が尊重される風潮があるように思っています。そうなると、私のように特許事務所と企業知財部とを行ったり来たりしている人間は尻軽に思われてしまうようです(事実、尻軽なんでしょう)。私も、未だに時と場合に応じて特許事務所の立場で会話している時と企業知財部の立場で会話している時とが不断なく入れ替わりますので、よく考えると整合性の取れない議論をしていることがあるかもしれません。一方で、クライアントの担当者に対して説教めいた話をしそうになることもあります。自分の経験からすると、そういった企業知財部の判断はこのような不利な問題を生じると思いつつも、そもそもその判断は当該企業内において相当の議論がなされ、権限のある人がauthorizeしたものである以上、外部である特許事務所の一担当者がそれを指摘したところで何も変わるはずもなく、逆に「余計なお節介」と取られてしまうでしょう。そんな時、クライアントに対して知財経営コンサルティングができたらどんなに楽か、とも思うのです。そんなジレンマを時々抱えながらこつこつと仕事をしておりますsad

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