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2011年10月

日米の特許出願件数の簡単な検討

本日は短めで(いつも嘘付いてますが、本日は本当bleah)。

米国特許出願件数はここ10年ほどの間、ほぼ単調増加傾向にある一方、日本特許出願件数は最近下降傾向にあることは、時々このBLOGでも話題にしています。ちと遅くなりましたが、WIPOで毎年作成している統計データが公開されましたので、この統計データを使って少し検討をしてみたいと思います。

次のグラフは、ここ数十年間の日本と米国の特許出願/登録件数のグラフです。上に書いた定性的な議論が定量的な形で表れています。

Us_japan

さて、この傾向の背景に何があるのか、ちと気になって、日本/米国における国内/海外出願人の出願件数をグラフ化しました。何故そのようなグラフを作る気になったのかというと、米国における特許出願件数の伸びは、米国の市場の重要性、さらには米国における特許の権利活用のしやすさ(特に訴訟における被告側のdiscoveryの負担、比較的原告寄りの判断など)を考慮して、海外出願人が多数米国特許出願をしているのではないか、との推測があったからです。

そして、そのグラフです。まとめきれずに4枚になってしまって申し訳ないです。

Us_application

Us_granted

Japan_application

Japan_granted

結論から言うと、米国特許出願において、国内/海外出願人の比率は大して変わっていません。つまり、海外出願人が旺盛に出願活動をする一方で、国内代理人もそれに見合う形で旺盛に出願活動をしている、ということです。一方、日本においては、海外出願人の出願件数は増加傾向にあるにもかかわらず、国内出願人の出願件数はかなり減少しており、これが全体の出願件数の減少に寄与していることがわかります。

もしかしたら、日本の国内出願人は、日本国内に特許出願する件数を厳選する傾向に更に進んだとも言えます。その背後に、日本国内に特許出願する意義や魅力が減退したと日本の国内出願人が考えているのだとしたら(あくまで憶測の域を出ませんが)、これは由々しき問題です。

これ以上の検討は、例えばIPCのグループ毎の出願件数の傾向などを見て、産業毎の出願件数の傾向から細かい分析をしないとわからない(特許庁の資料に大まかなものが掲載されているのを見たことがあるのですが、どこにあるのかわかりません、ごめんなさいconfident)ので、とりあえず本日はここまでにします。

外国特許出願に思うこと(雑感)

本日のお話しは、正直なところ私なりの結論が全く出ていないので、単なるぼやきと思ってお読み下さいm(_ _)m。

日本国特許庁への特許出願件数が減少している一方で、大企業を中心に、外国への特許出願を強化する姿勢を打ち出していることが報道されています(例えばこんな報道があります)。この姿勢は、米国及び中国における特許出願件数の増加が背景にあるでしょうし、また、大企業が日本市場中心から海外市場への依存を高めていることも大きな理由でしょう(例えば、パナソニックは海外売上高比率を48%(2009年)から55%(2012年目標)に引き上げる目標を立てています)。

特許事務所業界でも、外国特許出願対応の重要性は随分前から説かれており、実際に、外国特許出願を得意とする特許事務所が数多く存在します。とは言え、30万件~40万件という特許出願件数の存在があるが故に、大多数の特許事務所は、その収入基盤を国内出願(ここでいう国内出願とは、日本企業の日本国特許庁への出願と海外企業の日本国特許庁への出願とを合わせたものです)に大きく依存している(いた)のが現状だと思います。例えば、平成22年度特許出願技術動向調査報告書によれば、5極(日本、米国、EP、中国、韓国)への特許出願件数で見ると、2006年の優先日ベースで日本国民が日本国特許庁に出願しているのが約30万件である一方、他の4カ国、地域の特許庁に日本国民が出願しているのが約12万件です。

H22_makuro_tyousa

代理人の有無については統計が取りにくい(国内であればわかりやすいのですが、外国出願において日本国弁理士が関与しているかどうかは統計上取ることができない)ので、日本の特許事務所がどの程度の割合で国内/海外出願を代理しているかについては正確な数字を出すことができません。とは言え、上に書いた出願件数に概ね近い数字であることは予想できます。

しかし、上に書いたように、日本国特許庁への特許出願件数は漸減(割合として、という意味であり、数字としては5万件程度の減少になります)しており、これに伴い、一部の特許事務所では経営に少なからずの影響を与えています。実際に、特許事務所のリストラ話をここ数年聞きますし、小規模事務所の吸収・合併という話も聞き及んでいます。従って、日本企業の日本国特許庁への特許出願「だけ」を頼りに特許事務所の経営を行うことに対するリスクが年々高まっていると言えます。

一方、企業側が外国出願をどのように取り扱うかについて、外国出願件数の増加が命題としてある一方、権利形成手続を含めた知的財産権関係の費用に対するスリム化、コストダウンも、もう一方の命題としてあります。これに対応して、外国出願を日本の特許事務所経由ではなく、外国の現地代理人に直接依頼する方式を(全件ではなく一部の案件だけというところもありますが)採用する企業も、わずかながらですが増加するように見受けられます(これについても、統計を取ることができませんので、漏れ聞く話、でしか言えませんが)。しかし、このような直接方式の場合、企業知財部門の担当者が英語を(しかも特許英語を)かなり自在に扱う必要があります。少なくとも、いわゆるコレポンと呼ばれる英文レター、メールを自分で起案する必要があります。出願時は定型文書で済むことが多いのですが、外国特許庁から拒絶理由等が来てこれに応答する場合、意見書案、補正書案を用意してレター/メールに記す必要があります。当然、現地代理人に一存するやり方もありますが、この場合、権利内容に対する企業側のコントロールがどこまでできるのか、ということが懸案として残ります。

また、外国出願費用のかなりの部分を占める翻訳費用についてもコストダウンの要求が強い項目になります。最近の傾向として、アジア系の特許事務所が、複数国への外国出願をする場合、特定の特許事務所に日本語原稿を渡すと各国向け(とは言え、中国、台湾、韓国以外は英語でいいわけですが)に翻訳した原稿を作成する、ワンストップサービスを提供しているようです。この場合、各国の給与水準の差に起因するのだと思うのですが、日本において英語に翻訳するよりも安価な翻訳サービスを提供してくれるようで、このワンストップサービスのある意味での「売り」になっているようです。とは言え、ワンストップサービスに限った話ではないものの、翻訳内容をどのようにして企業がコントロールするかということが懸案として残ります。

重ねて言えば、翻訳原稿のコントロールについては、上に書いたワンストップサービスに限った話ではなく、翻訳料は結果的に手間賃に近いので、複数人によるチェック体制を取ればその分コストが上昇して翻訳料に反映させざるを得なくなります。この辺りは、翻訳会社、特許事務所、企業知財部門それぞれにおいて、コストダウンの方策を持っているわけですが、また一方で、翻訳原稿の質が評価されるのは、現地特許庁からの拒絶理由通知(多くは記載不備を理由とするもの)が来てから、さらには権利活用時における詳細な検討後になることが往々にしてあります。従って、コストダウンを目的として施策を採用してからその妥当性を評価できるまでに一定のタイムラグが生じると思っています。この点は、実は慎重に行うべきではないかと思っています。

私の経験では、翻訳の質は翻訳者個々の資質に依存するところが非常に大きいので、翻訳会社全体として質の維持・向上をシステマチックに行える体制を持っているところなのか、また、翻訳者自身が特許実務を理解する意欲があるか、加えて、言い回しを含めたテクニカルタームを学習する意欲があるか、が判断の基準になると思います。最近は英語文献や日英辞書をインターネットで簡易に検索できますので、この検索結果等に大きく依存して翻訳作業を行っている方がかなりいらっしゃるように推測していますが、文章としての流れを適切に判断できる能力がないと、このような手法では不完全な翻訳原稿になるのではないかと危惧しています。

また、上に書いたように、日本の特許事務所が外国出願の窓口として対応しているやり方に対して、日本の特許事務所は実質的にどのような付加価値を企業に提供しているのかという批判をいただくことがあります。特許事務所の立場からすると、日本出願や複数国への出願を横断的に検討することができ、また、現地代理人や現地特許庁の判断の正当性を、その出願に関する深い理解を根拠に判断できるというメリットがあると思っているのですが、企業側のコストダウンの要求の前に自身の無力さを思い知ることもあります。特に、日本出願から担当している案件については、発明者との面談等を含む当該案件に対する包括的な知識を日本の特許事務所が持っているわけで、書面だけで理解せざるを得ない現地代理人では得られない、引例との対比及び本願の特徴点の把握ができるのだと思っています(これは、外国の出願人から日本国特許庁への出願を依頼された案件では逆の立場に立ちますから、そういったことを痛感します)が、その思いがクライアント様にどこまで伝わっているのか、という面からも無力さを感じます。加えて、各国の特許実務を一番知悉しているのは当該国の現地代理人ですから、いくら日本国弁理士が外国特許実務に通暁したところで、現地代理人の知識を上回ることは非常に困難です。では日本の特許事務所の存在意義は一体何であるのか、毎日自問自答している状態です。

…と言うことで、やはり結論のない話になってしまいました。毎日、少しずつでも改善しようともがいてはいますので、もう少ししたら何か見えてくるのだろうと思いながら日々仕事をしております、はい。

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