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MDの終末に思う

まずお断りから。本日の記事は、自分の個人的感想に基づくもので、特定の企業の公式見解であることも当然無く、また、私が所属していた企業・組織における経験に基づくものでもないことを事前にお断りしておきます。

…というちとおっかない前振りから、何の話かと訝る方もいらっしゃるかもしれませんが、本日は、消えつつあるMD(MiniDisc)についての個人的感想です。

知人のブログで、MD再生機器が既に販売されているところがほとんどないことから、MD規格は過渡的なものであったのではということが書かれていました。で、私が考えるところは概略次のようなものです。

MDは1992年に発表されたわけですが、当時の傾向を振り返ってみると、CDというデジタルミュージック時代を切り拓いたメディアが音楽産業を席巻する中で、次はアナログコンパクトカセット(いわゆるカセットテープ)を代替するデジタルデータ記録メディアが待望されていたのだと記憶しています。実は、デジタルデータ記録メディアとしては、DATが1987年に発表されていますが、このDATはVHSのようにヘリカルスキャン方式の磁気記録を採用していましたから、簡便性という観点からすると(DATも民生用のものを当初は随分推進していたと記憶していますが)一般への普及はなかなか難しいものがあったのだと思っています。これ以外の理由も含めて、DATは業務用で一時期隆盛を誇りました。

この当時、実はMDと対抗する規格としてDCC(デジタルコンパクトカセット)というものがありました。DCCは、CDの時にはソニーと共同で規格を詰めたフィリップスが松下(パナソニック)と共同で規格推進をしています。DCCはある意味でアナログコンパクトカセットの延長線に位置づけられるもので、アナログコンパクトカセットの大きさを引き継いだ上でテープにデジタル記録をするものでしたが、MDは2.5inchというコンパクトなメディアにCDとほぼ同一時間(登場当時はそうではなかったのですが)を記録できること、3.5inch FDのようなシャッター構造を採用したシェル(カートリッジ)に保護されているので運搬性に優れることなどの理由から結構決着は早く着いたように記憶しています。

このMDは、非可逆圧縮アルゴリズム(ATRAC)によりCDのオーディオデータが圧縮されて格納されています。ディスク寸法を小さくしながらCDの記録時間にできるだけ近づけるためには、音声圧縮技術を採用することが必須だったと言えます。MDでは、先に書いたように、ATRACという非可逆圧縮方式(コーデック)が採用されています。MDが発表された当時を考えると、音声圧縮技術が実用化を迎えた黎明期とでも言うべきものであり、後にATRACの音質について様々な批判が出るわけですが、ある意味で致し方なかった選択であると言えます。ご存じMP3(MPEG Audio Layer-3)は、MD発表の数年後に規格が定まりましたので、MDにMP3を採用することは難しかったと言えます。とは言え、音声圧縮技術はMD以降に格段の進歩を遂げましたので、MD規格でATRACを必須とすることがもしかしたらMDそのものの普及を阻害する要因のいくばくかになったのかもしれません。とは言え、MD規格を制定したソニーは、その後、ATRACの改良及びMDそのものの改良を怠りなく行い、私としては現在のATRACについて音質面で云々すべきところはないと思っています。実際、私は自分が所有するWalkmanに格納されている音楽データは全てATRACで圧縮しています。

さて、このMD、日本ではMDウォークマンなどの携帯型MDプレイヤーが大きく売れましたので、普及率は相当なものがあったのですが、海外に目を転じてみると、プレイヤーも含めてMDの営業成績は惨憺たるものだったようです。つまり、MDは日本独自規格ではないのですが、日本での普及率ほどには海外の普及率は高まらなかったようです。海外の人に聞いたわけではないのでその真相は不明なところが多々ありますが、日本の場合、ダビング文化とでもいうべきものが広まっていて、MDはこのダビング文化に当て嵌まったのだろうと思っています。

もう一つ、非可逆圧縮データとは言え、MDにはデジタルオーディオデータが格納されています。これを無制限にダビング/コピーできるとすると海賊版を多数生むことにもなりますので、SCMS(シリアルコピーマネジメントシステム)と呼ばれるコピーガード技術がMDには採用されています。従って、VHSで見られたようなダブルデッキを作っても、MDからMDにはアナログデータコピーしかできません。著作権保護技術が必要であることは納得できるわけですが、ユーザーの利便性の観点からすると十分な満足が得られなかったとも言えます。余談ですが、私の手元には100枚以上のMDがありますが、MD内にあるデータを書き出せば必ずアナログになってしまいますので、結果的に死蔵状態になっています。その後、ソニーはHi-MDという、データをPCに転送できる規格も作ったわけですが、時遅し、と言うべきでしょうか。余談ですが、ソニーはMD内のデータをWalkmanやHDDにデジタルで吸い出せるコンポを売り出しているようです。一時期、真剣に購入を考えたのですが、そこまでしてもなぁと思い返し、結果的にMDは死蔵状態のままです。

そして、iPodに代表される、デジタルデータをメモリ内に大量に保管できる機器の登場により、74分あるいは80分のオーディオデータしか格納できないMDは徐々にその役目を終えたのだと言えます。

このように考えてみると、MDは規格発表当時としては画期的な製品だったと思うのですが、オーディオデータをどのように扱い、そして保管するかという周辺環境の激変により急速に時代遅れとの評価を得たのではないかと思っています。従って、決して過渡的な規格ではなく、一時代を確実に築くことはできたものの、時代の流れに抗うことはできなかった、という言い方がよいのではないかと思っています。

オーディオデータについては、iPodも様々なコーデックに対応していますし、先進的なオーディオファンはover CD spec、つまり、16bit、44.1KHzを超える音質のデータを求めるようになっています。こうなると、オーディオデータはメモリオーディオなりネットワーク上のストレージに格納することがこれからも当分続くのだろうと思いますが、どのような機器で、どのように聴取するかという形態については大きな変遷があるように思っています。ただ、コーデックを変えるとそれまであるデータが使えなくなることもあるので、なかなか悩みどころなのですが。

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