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2012年4月

デザイン戦略に思う(雑感)

さて、本日は二本立てで。土日も仕事をする必要があるのですが、このネタは、先程アップしたネタに関連するところで、また、随分と長い間BLOGネタとして温めてきていたので、そろそろ書かないといけないなぁ、と思って、現実逃避を兼ねてざっくりとですが書きます(だって仕事したくないcrying)。

知財業界では、デザインに関する関心がちと高まってきているようです。日本知財学会でも、デザイン・ブランド分科会が発足し、知財戦略におけるデザイン戦略の重要性を研究しているようです。この動きは、私が推測するに、ここ1年ほど前から妹尾堅一郎先生がデザイン戦略の重要性を説かれていることに呼応したもののように思っています。

確かに、デジタル時代において技術・特許により他国の企業に対して圧倒的な参入障壁を築くにまでは至らないことが多いですし、日本企業の製品は全般的にいいデザインを保有していて、他国の模倣が相次いでいますから、模倣を許さない(特に全世界的に)デザイン戦略が重要であることは論を待たないところだと思います。

しかし、一方で日本における意匠制度はフルに活用されているのでしょうか。この辺りの課題が、特許庁の産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度小委員会の資料に書かれています。つまり、日本の意匠制度は、他国(地域)における意匠登録出願件数が横ばいあるいは増加傾向にあるのに対して漸減傾向にあります。その理由は日本企業の経済状況にあるのかもしれませんが、随分前から議論されている、諸外国との出願書類、様式の統一、意匠権の類似範囲の(若干の)不明確性といった問題もあるように思っています。

確かに、特許や商標と異なり、意匠権はいわゆるB2C、しかも製造業において効果的に活用可能だと思いますので、全産業であまねく利用促進を求めることはあまり合理的でないです。とは言え、意匠権の有効活用が有効であると思われる企業の全てにおいてデザイン戦略が有効に立案されているかと言われれば、なかなか肯定できないように思います。いわゆるデザイン先進企業と言われている企業以外は、デザインを経営のツールとして、つまり、企業全体の「強み」として活用しているのかどうか、何とも言えないように思います。

一方で、上に述べたように、日本の意匠制度が出願人・権利者にとって「使い勝手の良い」ものであるかどうかについても様々な検証が必要であると思います。グローバル企業にとっては、各国毎に異なる出願様式・書類(特に図面)を求められる煩雑さがあります。また、実際に訴訟をしないと権利範囲が明確でない、という声も聞きます。これは、分野にとっては出願人が異なりながら図面を見る限りでは非常に似通った形状を有することもあり、この意匠権はどこが他の意匠と類似しないから登録されたのかよくわからないことがあります。当然、類似・非類似は取引者・需要者が有する美感に基づいて判断されるわけで、特徴とすべきところが当該分野に属する取引者・需要者が認識可能であれば非類似であるのですが、とは言え、先行意匠との差異が微差であると思うことがあります。

また、日本の場合、デザイン確定作業において、実際に製品として販売されるもの以外に、デザイン検討作業中に出てきた様々なアイデア、さらには模倣品として製造される可能性があると推測されるデザインについて関連意匠を多数出願することがあります。確かに、関連意匠と同一のデザインについては本意匠の類似範囲であることは明確にわかるのですが、関連意匠の類似範囲は、と考えるとちと悩んでしまいます。この、関連意匠が多数出願されるのは、裏返せば登録意匠の類似範囲を明確化することが難しいであるからだと言えます。重要案件である故に関連意匠登録出願を多数しているのだと思いますが、本意匠の類似範囲が事前に容易に明確になるならば、関連意匠の数も少なくなるように思います。

また、日本の意匠制度と比較して他国(地域)の意匠制度を見ると、方式審査のみの意匠制度が大きな流れとしてあることに気付きます。方式審査のみで登録される中国は、補助金制度の効果もあるのかもしれませんが、今や世界一の意匠登録出願国になりました。共同体意匠(OHIM)もだいぶ出願件数が伸びてきています。当然、方式審査のみで登録される意匠権に対する危うさは大いにあるわけですが、簡便であることの利点も無視できないのだと思います(とは言え、ここでは制度の是非までは議論しません。方式審査を無条件で礼賛できませんし、弁理士が出願件数増につながる施策を勧めると金稼ぎ目的であるとあらぬ誤解をされてしまいますので)。

また、中国の意匠制度にも改善を希望したいことがあります。中国意匠制度には部分意匠制度がありません。そして、訴訟をすれば全体観察に基づく類比判断をされることが多いです。この結果、車のフロントは○○メーカーの××に似ていて、リアは△△メーカーの□□に似ていても意匠権侵害と判断されない場合が出てきます。

で、話を戻して、日本の意匠制度がさらに有効に活用されて、日本企業のデザイン戦略をさらに有効たらしめるためには改善すべきことがある一方、デザイン戦略として考えるべきところもあるのではないか、と思うのです。産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度小委員会での議論は、例えば画面イメージの保護だけを取り上げてその是非を議論するのではなく、日本の意匠制度の有効活用と日本企業のデザイン戦略の後押しという観点から見るべきだと思っています。

ちと長くなってきたので、あと一つだけお話をします。デザイン戦略が長けているのは欧米企業だと思われがちですが、韓国Samsungも実はデザイン戦略で売り上げを伸ばしている部分があると私は思っています。Samsungが売り上げを伸ばしていった初期の頃は、価格が安くて機能が豊富であるという、かつて日本企業が欧米で売り上げを伸ばしていった手法を後追いしていたのだと記憶しています。しかし、その当時、日本の大手電機メーカーは既に高級製品としてのブランドイメージを確立していましたから、Samsung商品は「安物」というイメージでくくられていたように思います。これを克服するために、Samsungはブランドイメージ向上のためのパブリシティ戦略と、高級感をもたらすためのデザイン戦略を採用しました。結果、Samsung商品はデザインが優れているという理由で消費者に選択されることが多くなり、Samsung商品が高級品のカテゴリーに入りながら、しかし、日本の大手電機メーカーより安価であるために、日本の大手電機メーカーよりも売り上げを伸ばす結果になったのだと思っています。

…ちと時間がなかったのでとりとめのない内容になっていますし、意匠に関する私の知識不足で誤解している箇所もあるかもしれませんが、とりあえず。

MOT社会人大学院教授の最終講義に参加してきました

本日はエイプリルフールですが、この記事はエイプリルフールではないので、悪しからずbleah

ちと仕事が立て込んでいてBLOGを書く時間を捻出するのが大変なのですが、時間が経つとBLOGネタをどんどん忘れていくので、備忘録的にあまり内容がまとまっていない状態でも書くことにします。

昨日は、自分の出身MOT社会人大学院で、この3月に退任される教授の最終講義及び懇親会がありましたので、参加してきました。この教授、MOT社会人大学院の発足当初は非常勤教授だった(企業を退職したばかりで顧問職がお忙しかった様子です)のですが、その後、論文博士学位を取得され、常勤教授になられて、最終的にMOT社会人大学院に9年奉職されました。MOT社会人大学院1期生の私も、当然ながらこの先生の授業を受講し、教授の出身企業の見学会まで押しかけて参加させていただきました。

教授が授業を持たれていた科目は、企業における新事業展開に関するやり方や、デザインとMOTの融合といったものでした。この教授は、世界的に有名な衛生陶器メーカーの専務取締役まで務められた方で、出身企業における事例、特に、温水便器、光触媒といった世界的に有名な事例を中心に教えていただきました。温水便器がどのように開発されたかについては「プロジェクトX」をご覧になった方はご存じかと思いますが、当初はアメリカのアイデアであった温水便器を日本初のイノベーションにまで磨き上げたわけです。ここ数年は、営業部門等からのリクエストに応じてタンクレス温水便器を作り上げ、また、便器だけではなくシステムキッチンならぬシステム洗面所という商品展開をして施工まで行うビジネスをしているそうです。

タンクレス温水便器やシステム洗面所では、このところ知財で注目されているデザインという側面からの話を強調されていました。この教授が提唱している概念として、コンカレントエンジニアリングならぬコンカレントデザインというものがあるようです。つまり、3DのCGによるモデリングを共通言語として、商品企画から製造までこのモデリングを見ながら作業をコンカレントに行う、というものです。この手のコンセプトは、ご存じの方も多いと思いますが、自動車産業、特に自動車メーカーがかなり先行している印象を私は持っています。教授もこの点に言及されていました。

また、光触媒については、衛生陶器メーカーは当初産学協同の一環として大学から基礎技術を導入し、その後、大学の研究室と衛生陶器メーカとの共同研究という形で(衛生陶器メーカーから人員を派遣したわけですが、お一方ほどミイラ取りがミイラになったようです)研究を進め、そして、新しい用途を発見した後は広くライセンスアウトを宣言し、ビジネス展開を大きく図ったわけです。これをオープンイノベーションという概念で考えれば、この衛生陶器メーカーはオープンイノベーションを技術導入と技術提供という両方向で実現したと言えます。

過去の事例が現在のMOTにそのまま役に立つわけではないことを我々は思い知ったわけなのですが、とは言え、将来に向けての羅針盤としては非常に貴重な知識を得ることができたのだと思っています。ちなみに、「過去の事例が」云々というのは、例えば液晶パネルに関して、関西の某S社は電卓への適用から始まって技術を着々と蓄積し、TVへの展開はまだ無理だと思っていた時期にブラウン管との決別を高らかと宣言し、そして、台湾・韓国メーカーの追い上げに関しては、ノウハウの流出を極力抑制できる大工場を建築して大画面パネルの大量供給体制を確保したわけです。三重県に建築された大工場が竣工するのが、ちょうど私たち1期生がMOT社会人大学院に入学した頃に重なっています。その当時は、某S社は成功事例として捉えられていたわけです。しかし、今年になって、鴻海が筆頭株主となり、大阪府に建築された大工場の運営会社の株式の大半も鴻海が所有するようになり、世の中は手のひらを返すように某S社を批判するわけです。数人の方が、「S社は台湾メーカーに買収された」とおっしゃっていたのにはちと閉口しましたが。

その後の懇親会も、教授の人柄と熱意が表れた、大変楽しいものになりました。人生天晴れと言うべきでしょうか。ちと憧れてしまいました。

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