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デザイン戦略に思う(雑感)

さて、本日は二本立てで。土日も仕事をする必要があるのですが、このネタは、先程アップしたネタに関連するところで、また、随分と長い間BLOGネタとして温めてきていたので、そろそろ書かないといけないなぁ、と思って、現実逃避を兼ねてざっくりとですが書きます(だって仕事したくないcrying)。

知財業界では、デザインに関する関心がちと高まってきているようです。日本知財学会でも、デザイン・ブランド分科会が発足し、知財戦略におけるデザイン戦略の重要性を研究しているようです。この動きは、私が推測するに、ここ1年ほど前から妹尾堅一郎先生がデザイン戦略の重要性を説かれていることに呼応したもののように思っています。

確かに、デジタル時代において技術・特許により他国の企業に対して圧倒的な参入障壁を築くにまでは至らないことが多いですし、日本企業の製品は全般的にいいデザインを保有していて、他国の模倣が相次いでいますから、模倣を許さない(特に全世界的に)デザイン戦略が重要であることは論を待たないところだと思います。

しかし、一方で日本における意匠制度はフルに活用されているのでしょうか。この辺りの課題が、特許庁の産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度小委員会の資料に書かれています。つまり、日本の意匠制度は、他国(地域)における意匠登録出願件数が横ばいあるいは増加傾向にあるのに対して漸減傾向にあります。その理由は日本企業の経済状況にあるのかもしれませんが、随分前から議論されている、諸外国との出願書類、様式の統一、意匠権の類似範囲の(若干の)不明確性といった問題もあるように思っています。

確かに、特許や商標と異なり、意匠権はいわゆるB2C、しかも製造業において効果的に活用可能だと思いますので、全産業であまねく利用促進を求めることはあまり合理的でないです。とは言え、意匠権の有効活用が有効であると思われる企業の全てにおいてデザイン戦略が有効に立案されているかと言われれば、なかなか肯定できないように思います。いわゆるデザイン先進企業と言われている企業以外は、デザインを経営のツールとして、つまり、企業全体の「強み」として活用しているのかどうか、何とも言えないように思います。

一方で、上に述べたように、日本の意匠制度が出願人・権利者にとって「使い勝手の良い」ものであるかどうかについても様々な検証が必要であると思います。グローバル企業にとっては、各国毎に異なる出願様式・書類(特に図面)を求められる煩雑さがあります。また、実際に訴訟をしないと権利範囲が明確でない、という声も聞きます。これは、分野にとっては出願人が異なりながら図面を見る限りでは非常に似通った形状を有することもあり、この意匠権はどこが他の意匠と類似しないから登録されたのかよくわからないことがあります。当然、類似・非類似は取引者・需要者が有する美感に基づいて判断されるわけで、特徴とすべきところが当該分野に属する取引者・需要者が認識可能であれば非類似であるのですが、とは言え、先行意匠との差異が微差であると思うことがあります。

また、日本の場合、デザイン確定作業において、実際に製品として販売されるもの以外に、デザイン検討作業中に出てきた様々なアイデア、さらには模倣品として製造される可能性があると推測されるデザインについて関連意匠を多数出願することがあります。確かに、関連意匠と同一のデザインについては本意匠の類似範囲であることは明確にわかるのですが、関連意匠の類似範囲は、と考えるとちと悩んでしまいます。この、関連意匠が多数出願されるのは、裏返せば登録意匠の類似範囲を明確化することが難しいであるからだと言えます。重要案件である故に関連意匠登録出願を多数しているのだと思いますが、本意匠の類似範囲が事前に容易に明確になるならば、関連意匠の数も少なくなるように思います。

また、日本の意匠制度と比較して他国(地域)の意匠制度を見ると、方式審査のみの意匠制度が大きな流れとしてあることに気付きます。方式審査のみで登録される中国は、補助金制度の効果もあるのかもしれませんが、今や世界一の意匠登録出願国になりました。共同体意匠(OHIM)もだいぶ出願件数が伸びてきています。当然、方式審査のみで登録される意匠権に対する危うさは大いにあるわけですが、簡便であることの利点も無視できないのだと思います(とは言え、ここでは制度の是非までは議論しません。方式審査を無条件で礼賛できませんし、弁理士が出願件数増につながる施策を勧めると金稼ぎ目的であるとあらぬ誤解をされてしまいますので)。

また、中国の意匠制度にも改善を希望したいことがあります。中国意匠制度には部分意匠制度がありません。そして、訴訟をすれば全体観察に基づく類比判断をされることが多いです。この結果、車のフロントは○○メーカーの××に似ていて、リアは△△メーカーの□□に似ていても意匠権侵害と判断されない場合が出てきます。

で、話を戻して、日本の意匠制度がさらに有効に活用されて、日本企業のデザイン戦略をさらに有効たらしめるためには改善すべきことがある一方、デザイン戦略として考えるべきところもあるのではないか、と思うのです。産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度小委員会での議論は、例えば画面イメージの保護だけを取り上げてその是非を議論するのではなく、日本の意匠制度の有効活用と日本企業のデザイン戦略の後押しという観点から見るべきだと思っています。

ちと長くなってきたので、あと一つだけお話をします。デザイン戦略が長けているのは欧米企業だと思われがちですが、韓国Samsungも実はデザイン戦略で売り上げを伸ばしている部分があると私は思っています。Samsungが売り上げを伸ばしていった初期の頃は、価格が安くて機能が豊富であるという、かつて日本企業が欧米で売り上げを伸ばしていった手法を後追いしていたのだと記憶しています。しかし、その当時、日本の大手電機メーカーは既に高級製品としてのブランドイメージを確立していましたから、Samsung商品は「安物」というイメージでくくられていたように思います。これを克服するために、Samsungはブランドイメージ向上のためのパブリシティ戦略と、高級感をもたらすためのデザイン戦略を採用しました。結果、Samsung商品はデザインが優れているという理由で消費者に選択されることが多くなり、Samsung商品が高級品のカテゴリーに入りながら、しかし、日本の大手電機メーカーより安価であるために、日本の大手電機メーカーよりも売り上げを伸ばす結果になったのだと思っています。

…ちと時間がなかったのでとりとめのない内容になっていますし、意匠に関する私の知識不足で誤解している箇所もあるかもしれませんが、とりあえず。

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コメント

こんにちは。

ヘーグ条約ジュネーブアクトについては、本文でご紹介した産構審の意匠制度小委員会で議論されているようです。特許庁が用意した資料によると、加盟国があまり多くなかったなどの理由が挙げられていますが、本当のところはどうなのか、私にはよくわかりません。

あと、Samsungについては、当初はアジアの優秀なメーカーという装いをしていたのだろうと思います。東アジア以外であれば、日本も韓国もよくわからないでしょうからね。

非常に興味深い内容ありがとうございます。勉強になりました。日本は、なぜ意匠制度でヘーグ条約に加盟が遅れているのでしょうか?

Samsungについて忘れてならないのは、海外進出初期は日本企業のような装いも巧みに組み合わせたことではないでしょうか?LGやヒュンダイも然りですが。

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