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企業内弁理士という存在

本日は一部でお約束していた話題である企業内弁理士についてのお話を。とは言え、さらっとお話しするだけですので、当て外れに感じられた方がおられたらひたすらごめんなさいm(__)m。

企業内弁理士の数は、登録している弁理士の数で勘定すると、だいたい全体の1/4程度に相当する約2500人になります。弁理士試験合格者数増加の勢いをかって(という言い方はよくないかもしれませんが)企業内弁理士の数も増加しています。以前は、同一企業内に2桁の企業内弁理士が在籍する企業はごく限られた数でしたが、今や同一企業内に数十人の企業内弁理士が所属する企業もいくつかあります。
私も、足かけ16年ほど企業内弁理士として活動をしていました。最初に所属した企業は、知財部立ち上げの時に私が中途入社したこともあり、私が退職する直前までずっと弁理士は私一人でした。その後中途入社した企業は比較的規模が大きかったせいか、私が入社した時点で既に結構な数の企業内弁理士が所属しており、その後、あっという間に企業内弁理士の数が2桁に達しました。

これだけの勢力(別に組織立っているわけではないですが)を持つ企業内弁理士に対して、弁理士会としてこれまで様々な施策を取ってきたのだと思うのですが、弁理士会から提供される情報はどちらかというと権利形成業務、しかも明細書作成、中間書類作成に関する情報が大半を占めていたせいか、企業内弁理士の立場からすると自分の業務に直接的に役立つ情報をタイムリーにしかもどこよりも早く得ることができたのかと問われると素直に肯定しづらい状態にあったように思います。企業知財部員も権利形成業務を行っている人が大勢いらっしゃいますが、権利形成業務を行う企業知財部員の主たる業務は、特許事務所に作成を依頼した明細書原稿なり中間処理書類原稿を企業の観点からチェックするものです。この作成する側の見方とチェックする側の見方は微妙に異なっていますので(いつか詳細にご説明できるといいのですが…)、弁理士の持つ知識や、さらには弁理士会が事務所経営・事務所勤務弁理士のために提供する情報が直接役立つとも言いにくいのです。
一方で弁理士会登録維持のためには企業内弁理士も月会費を弁理士会に支払う必要があり(支払主体が企業であったとしても)、月会費に見合ったbenefitが得られているのだろうかという意見もあったかもしれません(直接そういった意見を聞いていませんので、あくまで推測です)。
そんな意見を反映してなのか、弁理士会の執行部は、企業内弁理士のみを構成員とする委員会を弁理士会内に立ち上げ、様々な検討をしているようです。この委員会からどんなアウトプットが出てくるのか、私は個人的に楽しみにしています。

さて、少し話を戻して、私が企業内弁理士でいた頃、結構な数の方に企業内弁理士の企業内での業務内容、及び、企業内弁理士でいることのメリットについて質問を受けました。企業内弁理士の企業内での位置づけは企業により様々ですから、一般的なことは言えないのですが、私なりの経験に基づいたお話をその時はお返ししました。
以前にもこのBLOGでお話ししたように記憶していますが、企業知財部員として業務を遂行していく中で、どの組織からどのような情報を得るかという観点で見ると、知財部門を有する企業が所属する団体である日本知的財産協会(知財協)からの情報が一番有用であった気がします。その次は業界団体、経団連あたりでしょうか。弁理士会の場合、様々な委員会に所属して積極的に活動すると有用な情報を多く得られることがあるのですが、企業内弁理士であると弁理士会の委員会に参加する許可が得られないことも多く(業務上の意義を問われると結構答えに窮します)、こうなると知財協等を経由した情報のほうが有用であることが多くなります。従って、弁理士会に所属しているメリットをどこに求めるかについて結構悩んでいました。
一方、弁理士は産業財産権法の専門家ですから、法体系の理解を背景にして個別案件を眺めることができると私は思っていました。実際に権利形成業務を社内で行っていた頃も、また、知財管理業務を行う中で時に法改正の流れを検討することがある時も、弁理士試験勉強で得られた知識、さらには合格後に自分なりに深めた法律知識が大きく役立ったと思っています。ある意味、弁理士試験勉強で得られた知識等が、自分が物事の是非を判断する際のバックボーンであったわけです。職務発明制度に関する法改正事項の説明を社内で行う業務をした際にも、巨視的観点から様々に検討を行い、最終的に発明考案規定の改定、説明会開催、質疑応答といった一連の流れに落とし込む業務を円滑に遂行することができたと考えています。当然、こういった業務に対して弁理士が有する知識が必須ではないのですが、この知識が様々な議論を行う中での議論の深みと根拠をもたらせてくれたのではないかと思っています。

とは言え、私が弁理士であることは、私自身が企業内で古株のような顔をしていましたので殆どの方が意識していただいたようなのですが、一般的に企業知財部員が日々の業務を遂行する中で「さすが弁理士」と同僚なり上司から一目置かれるにはちょっとした努力が必要ではないかと思っています。つまり、企業知財部員が日々行う業務を遂行する上で弁理士試験の知識が必須とは言えない(ここが難しいところです)ので、企業内弁理士が業務を行うことのadvantageをそれなりに主張しないと「企業内弁理士」であることを同僚、上司が意識する機会が少ないのだろうと思うのです。
では具体的に…と言われると説明に詰まる所があります。つまり、個々の企業において企業内弁理士の位置付けは随分と異なると思うので、どのような業務を任されているか等の条件によって何を主張するかが違ってくるのです。また、自己主張が強いと周囲から認識されることは、特に日本企業において若干マイナスに働く可能性がそれなりにあると思いますので、「俺に聞いてくれ」といった顔で職場をぐるぐる回っても誰も意識してくれそうもありません。とは言え、日々の業務を遂行する中で、わずかながらでもアピールするチャンスはあるのだと思っています。そのチャンスを逃さないことが必要だと思います。
そして、そのチャンスを生かすためには、最低限日本の産業財産権法の今日的課題やトレンドについて敏感であることが大事だと思います。何かしらの機会で自分の意見を述べることがあった場合、「さすが弁理士」と思わせるだけのことを述べることが大事だと思います。特に、企業内弁理士であっても弁理士ですから、権利形成業務、特に明細書作成、中間処理作成については大抵の企業知財部員に対してadvantageがあるはずです。仮に社内で明細書作成ガイドラインのような基準作りをする機会があるならば、それこそ企業内弁理士にとっては大チャンスだと思います。また、知財部門で管理職を務めるときにも、日々の判断を過たずに行うためにも弁理士試験の際に培った知識、さらには合格後に研鑽する中で得られた知識が有用だとも思っています。

私は、16年間の企業内弁理士生活は、自分にとって実に有意義な年月だったと振り返って思っています。特に自分の場合、特許事務所経験もありましたので、企業知財部門の立場と特許事務所の立場の双方を理解し、その上で何が最善であるかを考えながら日々業務を遂行していました。なかなか得がたい経験だったと思っています。
ですから、今企業内弁理士として企業に所属している方々には、是非企業知財部門のできるだけ中枢で業務を行い、ご自分が持っておられる知識をバックボーンに縦横無尽に活躍していただきたいと思うのです。そういった活動が、後進の企業内弁理士の道をさらに開拓するのだと思います。

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コメント

コメント、ありがとうございました。

企業内弁理士と弁理士法(特に75条、さらには弁護士法72条)との関係については、前職の時に業務上の理由であれこれ検討をしたことがあります。結論からすると、企業内弁理士の業務は、弁理士法75条、弁護士法72条、さらには法務省通達等を参照すると、特段問題がなさそうだというものでした。内容は前職の守秘義務事項にあたりますのでご説明はできないのですが。

あと、個別の弁理士、さらには企業知財部門員の評価については、私が聞く範囲では「弁理士だから」ということにより特段評価が上がる、下がるということではなさそうですので、結局のところ業務が企業にどれだけ貢献したかという観点でのみ評価されるのだろうと思っています。

「企業内弁理士」というのは弁理士法上かなり矛盾を含んだ存在ですね。

特許事務所における無資格者は明細書を作成して報酬を得ることはできません。
明細書を作成できるのは弁理士だけであって、無資格者は、あくまで明細書作成の補助ができるにすぎません。
(これに違反している事務所が存在するか否かはここでは問いません。)


一方、企業においては、無資格であっても堂々と明細書を書いて報酬を得ることができます。
それだけではなく、企業においては、弁理士でなければ法律上できない業務はまずないと言ってもよいでしょう。

そうなると、そもそも企業に弁理士は必要か?という大問題を提起してしまいます。

企業には、無資格であっても、並の弁理士よりはるかに特許法や特許実務に精通した方が少なからずおられます。
「さすがは弁理士」と感心される人と同じことを無資格者が行った場合はどう評価されるのでしょうか?あるいは評価されないのでしょうか?

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