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特許事務所の人材育成やら組織運営やらの雑感

本日もちと議論を巻き起こしそうな不穏当な議論になるかもしれませんので、予めご容赦を。どうも、似たような話題が最新号のパテント誌に掲載されているようなのですが、一日外出してたので、見ずに書いてる関係でとんちんかんな議論になるかもしれませんがcoldsweats01

特許事務所において実務経験がない(いわゆる未経験者)弁理士が一人前の弁理士に成長していくまでどの程度の期間を要するかについて考えたことがあります。私は、未だに自分が過去に書いた明細書を後日振り返ると様々な改善点を見つけてしまい、悔恨の念に駆られることがあります。当然、記載不備にかかわる拒絶理由通知に直結するような改善点でもなく、権利活用の際に何かしらの議論の種になるような改善点でもなく、このように記載すればもっと発明の把握が容易になるような書き方になったのではないかといった、ある意味ごくわずかな改善点なのですが。とは言え、毎日勉強であることは間違いありません。従って、私が一人前の弁理士なのかどうかと言うと、自分自身はまだ勉強の身であると思っています。
とは言え、普通、特許事務所で一人前の弁理士と呼ばれる場合、パートナーや管理職にある弁理士から詳細なチェックを受けることなく特許庁への提出書類をほぼ単独で完成できる弁理士を指すことが多いです。パートナーに就任するには、事務所個々の事情があり、業務上の能力が優れていることだけでパートナーに就任できるかどうかはまちまちでしょうから、パートナー就任イコール一人前の弁理士、ということにはならないと思っています(より正確には、一人前の弁理士になった後にパートナーに就任するかどうかの話になる)。

で、未経験者の弁理士が一人前の弁理士と呼ばれるまでに成長するにはどの程度の期間を要するか、という問題です。よく言われるのが、自分が作成した明細書についての中間処理(拒絶理由通知書対応=手続補正書、意見書作成)が一通りできると一人前の弁理士と呼ばれる、あるいは、明細書作成手続において、チェック担当である管理者(大抵パートナー弁理士)の詳細なチェックを受けなくても、クライアントに対して明細書草案の納品ができるまで明細書草案の完成度が高まると一人前の弁理士と呼ばれることが多いように思っています。これら条件を満足するまでに、当然個人差が大きくあるのですが、3~4年で上に書いたレベルに達することが多いように思っています。当然、特許事務所毎に未経験者に対する研修プログラムが異なり、効率的な人材育成を行っている特許事務所も存在しますので、もっと早く一人前の弁理士になれるという感想を持っておられる弁理士先生も多いかと思います。
弁理士試験合格者は、独立志向が高い方(お一人で独立されるばかりでなく、複数の弁理士が集合して新しい特許事務所を起業される方も含めます)が多いという印象がありますので、未経験者の弁理士からすると、早く一人前の弁理士と呼ばれたいと考える方が多いのではないかと思っています。また、特許事務所の経営者の立場からすると、一定の明細書の質を担保する必要はあるものの、未経験者の弁理士が数多くの対特許庁提出書類を作成することに越したことはありませんので、研修受講なりチェックを受ける時間をできるだけ早く明細書作成時間に振り当てて対特許庁提出書類の作成件数を増やしてもらうことを望みます。
弁理士の独立志向と経営効率上の要請からすると、従って、未経験者の弁理士ができるだけ早く一人前の弁理士になる条件はそれなりに揃ってきます。なお、このことは、一人前の弁理士になれるレベルの低下を直ちに招くことはないです。(クライアントが要求する業務レベルを下回ることはあり得ませんので)

そして、一人前の弁理士に晴れてなった以降は、かなりの業務について上司=管理職または経営者の詳細な指示を待つことなく、自らの裁量で遂行できることになります。つまり、一人前の弁理士になった場合、パートナーとアソシエイトとの立場の差はあるものの、個々の弁理士が独立して業務遂行する割合が大きくなります。当然、特許事務所にも企業と同様の組織が存在し、特に特許事務所の規模が大きくなると、いわゆる管理職的立場に立つ、すなわち実務に加えて管理業務の遂行が期待される人間が増えてきますので、そういった管理職的立場に立つ弁理士と実務のみを遂行する弁理士との間には何らかの上下関係が成立します。とは言え、自分の経験も交えて考えると、一般的な企業の事務職と特許事務所勤務の弁理士とを比較すると、特許事務所勤務の弁理士のほうが仕事に対する裁量を大きく持っていると思っています。特に、企業の事務職は集団で一つの業務を遂行する(各人が個々に分担を持っていたとしても)ことが比較的多いのに対して、特許事務所の弁理士も集団で一つの業務を遂行する(訴訟案件等の大型案件は特に)ことがあるものの、その頻度は企業に比較して低いように思っています。

実は、ここがいわゆる士業の特徴であり、この士業の特徴が、上に書いた未経験者の弁理士に対する事務所内研修や組織構成に大きく反映されていると思っています。つまり、できるだけ早期に一人前の弁理士になることを期待され、また、組織が企業のそれよりもフラットな構成を取ります。
一人前になったと事務所内で考えられた弁理士は、自らの裁量で業務を遂行できる範囲が非常に大きくなります。給料体系的には実現できているかどうかはともかく、ある意味で個人事業主的な要素がかなり強くなります。

一方、クライアントたる企業からすると、クライアントは特許事務所に対して出願代理等を依頼するというスタンスを取ります。個別担当者に対する信頼度が高い場合は、実質的には特許事務所を経由してその個別担当者に業務を依頼することになる場合もあるのですが、大抵はクライアントと特許事務所という構造になります。どのような信頼関係が醸成されているかが如実にわかるのが、上述のように特許事務所業界は人材流動性が高いので、それなりの確率で担当者が退所してしまう事態が生じた時です。この場合、クライアントは出願代理を引き続きその事務所に依頼するのか、あるいは、担当者との信頼関係が強固であるから担当者が転職した転職先に依頼するのか。どのように考えるかについては、幾つかのファクターがあるのですが、確率的には引き続きその事務所に依頼することが多いように思っています。つまりは、クライアントは対企業という観点で特許事務所との付き合いを考えていることが多いと言うことです。
クライアントが対企業という観点で特許事務所を見ているが故に、クライアントは特許事務所の責任者、より詳しくは、最高責任経営者たる所長、あるいは事案によってはクライアントの窓口になっている経営者(パートナー)に対して各種連絡を行い、業務を依頼することになります。そして、その依頼事項や連絡事項は速やかに特許事務所内、最低限当該クライアントを担当している人々(明細書担当者のみならず事務担当者まで)に伝達され共有されることを期待します。企業の組織はそのように運営されることを期待されているので、特許事務所もそのように運営されているはずであるという見方をします。

では、特許事務所はクライアントの期待通りの運営がされているのか。大規模特許事務所の場合、企業に類似した組織構造を持ち、管理職による運営が整然となされているのだろうと思いますが。問題となるのが、各弁理士の独立志向と組織運営が時に異なったベクトルを向く可能性があり、この場合、経営者はどのような組織運営をすべきなのか、です。ベクトルの向きが食い違うかどうかは、経営者の問題ばかりではなく、組織に属する個々の担当者の意識にも大きく依存します。

少し長くなりましたので、本日は問題提起で終わります。尻切れトンボですいませんm(__)m。

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