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2013年4月

新規弁理士登録された皆様へのエール(なのか?)

ふとtwitterで「書く」と宣言してしまいましたのでcoldsweats01、ちょっと遅くなりましたが、4月に弁理士登録をされた皆さんに向けて、ちと辛口のお祝いを述べたいと思います。とは言っても、書く内容はこのBLOGでず~っと言ってることの焼き直しなので、非常に恥ずかしいですcoldsweats02

弁理士登録者数も昨年末で9,700人程度弱になっており、平成24年度弁理士試験合格者の方々が登録前研修を修了して登録をされると、いよいよ弁理士登録者数も1万人の大台を迎えると思っています。自分は四半世紀前に(何と!)弁理士登録をしていまして、その頃の弁理士登録者数は3,000人程度でした。その当時の特許+実用新案登録出願件数を足し合わせるとだいたい50万件弱ですので、25年間の間に弁理士登録者数は3倍強、出願件数は7割になった計算になります(詳細な数字は、以前のBLOG記事をご覧下さい)。一方、日本国特許庁を受理官庁とするPCT出願は、25年ほど前は1,500件前後であったのが最近のデータ(2011年データ)だと38,000件程度ですから、ざっと25倍程度に増加したことになります(この数字はWIPO IP STATISTICSに行くと、瞬時に教えてくれます)。なお、意匠登録出願件数や商標登録出願件数の推移は25年間にわたって統計数字を取っていないので何とも言えないところですが、2012年版特許行政年次報告書によると、ここ10年間の数字だと意匠登録出願件数は2004年の4万件をピークに2011年は3万件に減少し、また、ここ5年間の数字だと商標登録出願件数は2007年が約13万件だったのが2011年には約9万6千件に減少している(除くマドプロ)ようです。また、統計数字に出てこないのが日本の弁理士を経由して外国出願をした件数で、こればかりはいつも「わからない」という答えになります。ただ、さきほどのWIPO IP STATISTICSで、日本の特許出願を第一国出願とする外国パテントファミリーの件数を見ると、25年ほど前は4万5千件前後であったのが、2008年は7万2千件程度になっています(2011年の数字もあるのですが、パテントファミリーの集計がきちんとできていないようです)。

こんな数字を前にすると、「弁理士冬の時代」と言われることも信じられるように思います。噂レベルでは特許事務所員のリストラ、業務量削減による特許事務所閉鎖という話も聞きます。一方で、一つ前のBLOG記事にも書いたように、パテントサロンの求人スクエアを見ると、弁理士に関する求人は常時掲載されていますから(しかもリストラがあったという噂の特許事務所も)、本当のところはどうなんだろうという疑問は尽きません。

とは言え、上に書いた数字は事実を的確に表していると思いますので、新規に弁理士登録をされた方々にとって決して将来を楽観視できないだろうとは思います(このことは、新規登録された方々だけでなく弁理士全員の問題です)。

では、何をすべきか、については一つ前のBLOG記事に書いた内容と重複してしまうので、ちと精神論的な意味合いから、これからの業務をどのような心構えでしたらいいんだろうというお話をしたいと思います。

多数の資格者が競争している状況において、良く言われることは「自分なりのウリを見つけること」が勝ち抜く条件である、ということです。つまりは競争優位の条件を見つけるということです。とは言っても、「自分なりのウリ」はどこにあるのかを見つけ出すのは容易ではありません。弁理士業界全体を見ていると、一つ前のBLOG記事に書いたように、「自分なりのウリ」を外国出願に見いだすのか、あるいは、中小企業対応に見いだすのかがこのところのトレンドであるように思っています。ちょっと前は明細書や中間処理の質を「自分なりのウリ」にしている弁理士が多くいらっしゃったように記憶していますが、様々な特許事務所のHPを拝見すると、どの特許事務所も明細書、中間処理の質を謳っていますので、ある意味で競争は激しいと言えます。なお、明細書の質って何?という議論はさんざんしてますので、ここではスルーしますし、謳い文句と実際の業務の質との関係はどうであるかという議論も当然あるでしょう(大抵は一致していると思いますが)。

こうやって考えていると、「自分なりのウリ」を見つけ出し、それが競争優位の条件になって(差別化要因になって)成功へと導かれるまでには結構大変な努力が必要のようです。多くの同業者が一つの「ウリ」に殺到し、経営戦略の用語を使えば、ブルーオーシャン市場だと思って参入したらあっという間にレッドオーシャン市場になってしまうかもしれません。そして、次のブルーオーシャン市場を見つけたらまた…という循環になるかもしれません。

自分の経験からすると、「自分なりのウリ」を冷静に分析することは大前提として必須の作業ですから避けて通れませんが、競業者が少ない領域を狙って、その領域を「自分のウリ」だと思って実力を磨く作業は時に疲労感をもたらすようにも思います。何故なら、競業者が少ないと思った領域に多数の競業者が参入してきた時に、早期の参入により得られた利益(パイオニアの利益)をきちんと確保していかない限り、限られたパイを食い合う共食い状態になり、結果的に狙うべき領域の変更を余儀なくされるからです。ですから、これは実に当たり前のことなのですが、ある領域に参入したと決定した限りは、その領域において第一人者になるための努力を継続する必要があります。
もう一つ、「自分なりのウリ」が自分の資質なり興味とマッチしていないと、時に仕事が苦痛になってしまうことも起きるかもしれません。自分の場合、ソフトウェア関連特許の業務がメインですし、また、企業に対する知財コンサルタント業務もわずかながら行っていますが、これら業務は自分が心底楽しんで行える分野の業務ですから、業務が辛いと思っていてもそれを何とか乗り切る勇気なりやる気を持ち続けていられると思っています。仕事は楽しいことばかりでないのは事実です。しかし、どんな状態でも挫けずに続けられるのは、その仕事が自分の資質なり興味とマッチしている(と信じている)からです。
あともう一つ。自分はもう50歳を越えましたので、自分の仕事が社会にどのように貢献しているかということに大きく興味を持つようになりました。元々弁理士の業務は社会貢献に大きく資するものだと思います。これは、特許法1条の「産業の発達に貢献」という言葉を持ち出すまでもないことだと思います。自分が行っている業務がクライアントの製品や事業にどのように関連するのか、関連するのであれば、少しでもクライアントの事業に貢献できるにはどうしたらいいのかを考え続けていると、時に自分が社会に少しでも貢献できたかのような錯覚をします(錯覚で無いといいんですが)。ある意味で自分をそういったハイな状態に持って行くような作業は、辛い業務を少しでも和らげてくれます。
そして、クライアントの発明者や知財担当者が自分の業務で少しでも喜びを感じていただけるのならば、それは望外の喜びと言えます。裏返して言えば、そうやってクライアントに対して何らかのベネフィットを提供できる業務が「自分なりのウリ」になるんだろうと思っています(正確にはそう思ってないと仕事が続けられないcrying)。

かなり精神論に入り込んでしまって具体性がちっともないのですが、この業界の中でもかなりロートルの範疇に入ってしまった自分の、ちと辛口のエールだと思っていただければ、駄文を書いた意味があると思います。

と言うわけで、最後になりましたが、ようこそ弁理士業界へ。楽しく仕事をしましょう。まだまだ負けませんよscissors

時事放談的な散漫な記事(続き)

前回のBLOG記事では、知財政策に近い時事放談を繰り広げました。前回は、敢えて自分が現在所属する弁理士業界、特に特許事務所業界の話題を避けていました。それは、前回の記事の冒頭に記載したように、一歩間違えると生臭い話題になって、なかなか建設的な議論ができないなぁ、と思っていたからです。
しかしながら、特許事務所業界の話を少しはしないと面白いBLOGにならない(受け狙いではないですが)と思うので、非常に抽象的な、未来を臨んだ話を漠然としてみようかと思います。

このBLOGで何度も取り上げた、ここ数年の日本国への特許出願件数の漸減とその背景に関する記事でも記載したように、ここ数年の傾向として日本国への特許出願件数が漸減し、その理由は、どうも電機業界と自動車業界の出願人が全体として出願件数を減少させていることであるように推測しています。一方で、いわゆるグローバル出願率(国内出願のどれだけが外国出願されたか)は順調に増加傾向にあるようで(ここの章のトップページをご覧下さい(PDF注意))、日本の出願人が国内特許出願件数は減少させる一方で外国特許出願件数を大きく削減することはない(先ほどの資料の2ページ目を見ると、外国特許出願の総件数はほんの少し減少してますが、グラフから読み取る数字では微減程度です)ようです。

日本の出願人が国内特許出願を減少させていることは、特許事務所業界にかなりの影響を与えているように感じています。一部で有名な特許事務所年鑑を眺めてみると、大規模事務所と呼ばれている特許事務所の特許出願件数(正確には年単位の公開件数)は全般的に伸び悩んでいるように感じています。中小規模の特許事務所の特許出願件数まで子細に検討していない(一日くらい特許事務所年鑑とにらめっこしてデータ入力すればわかるんですが)ので、全体的な傾向を読むのは難しいですが、上述したように日本の出願人が国内特許出願件数を減少させている以上、特許事務所業界への影響は決して無視できません。
当然、特許事務所年鑑には、日本の出願人が外国出願する際に国内代理人を経由している場合の件数を含んでいませんし、特許事務所毎の意匠・商標登録出願件数も統計数字に入っていませんので、特許事務所業界全体の傾向を把握するまでには至りません。とは言え、日本の出願人が国内特許出願をする際の出願手続代理をする際の手数料が特許事務所業界全体で見れば収入の大きな割合を占めますので(個々の特許事務所では色々ですが)、大まかな、かつ全体の傾向を把握するには十分だと言えます。

では、特許事務所業界は「冬の時代」なのか。例えば、パテントサロンに掲載されている「求人スクエア」を見ている限り、特許事務所の求人情報が著しく減少しているようには見えません。この情報だけを見ると、特許事務所業界が不況にあるとは軽々しくは断言できません。当然、求人情報だけを見ていたのでは片面的であり、特許事務所の離職者、転職者がどの程度いるかという数字を見ないと正確なことはわからないのですが、そういった統計情報はないので、実のところは何とも言えません。
自分の周囲でも、特定の特許事務所における人員削減や事務所閉鎖の話は聞くのですが、これも実に片面的な情報にしか過ぎず、断定はできません。
こう考えると、日本の出願人による国内特許出願件数の減少の影響で、特許事務所業界の市場規模(売り上げですね)は確実に縮小傾向にあることは間違いないと思うのですが、市場規模の縮小に基づく二次的な影響は確たる数字が見つからないので何とも言えません。弁理士の収入が減少しているのか、特許事務所の経営者+勤務者の総数が減少しているのか…噂話は色々と聞くのですが。

以降は、上に書いた曖昧な情報に基づいて一定の仮定をして話を進めてみます。それは、特許事務所業界の市場規模縮小が弁理士の収入減や経営者+勤務者の総数減につながっているという仮定です。そして、この傾向は暫く(例えば10年程度)続くという仮定もしてみます。このような仮定が成立するとして、個々の弁理士は何を考えて行動すればいいのか。

幾つかの方向性が見えていて、そしてそれを実践している弁理士先生もいらっしゃいます。一つは、日本の出願人が国内代理人を経由して外国特許出願をする機会が増加するであろうから、ここをビジネスチャンスと捉えて、外国特許出願に強い弁理士、特許事務所を目指すという方向性です。
外国特許出願に強い弁理士という方向性は、国内特許出願件数が漸減している昨今の事情以前から注目されてきたという理解でいます。それは、日本の出願人が外国特許出願をする総数は、数十年というスパンで見てもだいたい右肩上がりで上昇してきていますから、これをビジネスチャンスとして捉える傾向は今に始まったことではないからです。事実、海外で活躍する弁理士先生も増えましたし、外国での法曹資格、弁理士資格を取得された弁理士先生方も増えました。また、外国特許出願に強いことをウリ(差別化要因)にされている弁理士先生も数多くいらっしゃいます。

上に述べた理由で、外国特許出願に強い弁理士という方向性は正しい方向だと思っています。ただ、これも上に書いたように、既に先達が数多くいらっしゃる中で、どのような差別化を図るかについては考察の余地があるのかな、と思っています。平たく言えば、多数のライバルが存在する中で、自分に仕事を引き入れるためにどうすればいいかを考える必要があるということです。パイは拡張しているけど、既に市場を抑えている同業者がいて、さらに参入者も数多く予想されるわけです。
また一方で、以前BLOG記事に書いた記憶がありますが、日本に在住していて外国での法曹資格、弁理士資格を所有しない弁理士の場合、国内代理人としてどの点をメリットなりアドバンテージとして訴えるかについても考察が必要だと思います。その国における知財実務経験はその国にいる外国代理人が最も優れているでしょうから、この場合もどこをウリにするかを考える必要があります。当然、自分が外国での法曹資格等を取得してしまう選択肢もあります。その手間、時間を費やすことが難しい弁理士はどうするか。
一部のクライアントで、外国出願については外国代理人(特許事務所)と直接やり取りをしてしまい、国内代理人に支払う手数料を省略する動きがあります。裏返して言えば、国内代理人である弁理士が、手数料を支払うだけのメリットをクライアントに提供できていなかったのかもしれません。
こんな事を考えていると、市場拡大を諸手を挙げて歓迎できるほどの状況にはないように思っています。

加えて、東アジアの特許事務所を中心に、その事務所に日本語明細書を提供すると翻訳も含めて諸外国への出願手続を一手に行ってしまう特許事務所があるという噂です。いわゆるワンストップサービスを行う特許事務所です。このようなワンストップサービス特許事務所は、その国における物価水準が低廉であることを利用して、日本の弁理士(特許事務所)に依頼するよりも安価な料金体系を提案しているとの噂もあります。こういったライバルとの戦いも念頭に置かないといけません。

現時点で、私に特段の解決策は思い浮かばないのですが、模範生的な回答をすれば、日本にある特許事務所であるからこそのメリットをクライアントに提供できるかどうか、そしてそれをクライアントに評価していただけるかどうかが分岐点なんだろうなぁ、とぼんやりと考えています。

もう一つの方向性として、中小企業の知財マネジメントを支援するというものがあると思っています。流行の言葉で言えば、中小企業に対する知財コンサルタント業務です。

ここ数十年の傾向として、弁理士業界はいわゆる大企業の出願代理業務により収入の多くを賄ってきていると思っています。なかなか正確な統計情報がないのですが、現在、日本国特許庁への特許出願の中で、中小企業基本法が定める中小企業の定義に合致する企業が出願した件数は10~15%程度であるとの話です(例えば2009年版中小企業白書:第2章 中小企業による市場の創造と開拓)。企業数で比較すれば中小企業の数が大企業の数より圧倒的に多く、売上高でも実は大企業全体と中小企業全体とではそれほどの差はありませんので、この数字だけを見ると中小企業に対する知財の市場に潜在的な成長性を見ることに疑問はありません。
事実、特許庁は中小企業向けの知財振興策を多く提供していますし(特許庁のHPに様々なメニューが紹介されています)、歴代の知的財産推進計画においても中小企業の知財を重視する方針が掲げられています。地方公共団体においても様々な知財振興政策が実行されています。このあたりの情報を取り上げただけでも膨大な量になります。そして、こういった政策は徐々に実効性を挙げているのだろうと思っています。

あとは、今まで大企業に対する各種知財サービスを提供することが業務の大きなウェイトを占めていた弁理士業界が中小企業に対しても同様に各種知財サービスを提供する主体になり得るかどうか、です。私の周囲には、中小企業に対して様々な知財サービスを提供して中小企業たるクライアントに絶大な信頼を得ている弁理士先生がいらっしゃいます。実践されている弁理士先生はいらっしゃるわけです。つまりは実践あるのみ、です。

一部の方々には釈迦に説法なのですが、自分の経験や既に実践されている先生方の経験談を踏まえて考えてみると、大企業向けの(大企業であるクライアントに合った)知財サービスと中小企業向けの(中小企業であるクライアントに合った)知財サービスは若干異なると思っています。端的に言えば、中小企業の多くは知財専門の部署を持たず、また、知財専門の部署を持っている場合でも大企業ほどのマンパワーを持たないことが多いので、弁理士がその分を補う知財サービスを提供することが好ましいのです。大企業向けであっても中小企業向けであっても、最終的な成果物である明細書や中間処理対応の結果物である権利に差はありません(当たり前です)。そして、中小企業向けの知財サービスには、企業全体の知財戦略、事業戦略に資する部分が少なからず含まれます(弁理士が企業の知財戦略を立案することを指してはいません)。守備範囲を広くすることが求められます。
知財コンサルタントという話をすると経営戦略や経営学、マーケティングの話がまず出てくることが結構あるのですが、最終的には中小企業たるクライアントに対してどのような知財サービスを提供し、結果としてその中小企業たるクライアントにメリットを実感していただくかということに尽きますので、ゴールを念頭に置いた上で、そのために何が必要であるかを考えると幾つか回答のようなものが見えるのではないかと思っています。また、これも自分の経験に基づくことだけですので常に該当するとも思っていないのですが、特に中小企業たるクライアントに知財サービスを提供するに当たっては経験値が重要な要素になると思っています。実際に業務を進めるに当たって様々な状況に巡り会うことがあります。こういった様々な状況に対する瞬発的な対応力がよく求められるように思っています。これについても経験値がやはり重要な要素になると思っています。
ですから、これから中小企業たるクライアントに知財サービスを提供しようと考えていらっしゃる弁理士先生には、口幅ったい言い方ですが、是非実際に経験されていただくのが一番の学習になるのではないかと思っています。書籍等を通じた勉強も大事(経験だけでは修得するのに時間がかかります)ですが、まずは実践というスタンスも大事だと思っています。

本日はかなり長くなりましたのでこの辺で。

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