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企業内弁理士と管理職

最近BLOGの更新が滞っているのは、業務多忙のせいもあるのですが、以前からお約束していて最初の章だけしか書き終えていない「知財部業務マニュアル」みたいな執筆をいよいよやろうと思いつつも、やはり時間がないので書けずにいることも理由になってます。職場の所長がKindle本を上程したこともあり、ここは事務所全体で出版ラッシュと行きたいところなので、頑張りたいところなのですが、体が言うことをきかず…weep

そんな中で、今日のネット記事で、「弁護士、弁理士はこれから食えますか?」というなかなか刺激的なものがありました。内容については記事を実際にご覧頂きたいのと、記事そのものについてその是非や批判をするつもりもないので、この記事に触発されて、自分が企業知財部員でいた頃の思い出話をしたいと思います。

自分が企業知財部員(なった当初から弁理士登録していたので、正確にはプラス弁理士)になった頃、企業知財部員で弁理士登録をしていた人はそれほど多くありませんでした。最初に勤務した企業は比較的小規模でしたし、業界自体があまり特許出願が多くなかったところでもあったので、その業界で知財部員+弁理士という方は他にお一方いらっしゃったくらいだと記憶していました。勤務した企業でも弁理士は私だけでしたし、私が入社してすぐに知財部が立ち上がったくらいの知財部の規模(最初は部長含めて数人)でしたから、法律のプロという認識で業務を進めることができましたし、知財部全体における法律的なバックボーンのような存在として勤務していました。この辺りは、そのうち業務履歴書を書くつもりですので、その際にもう少しお話しする予定です。

次に勤務した企業は大企業で、当然のようにその企業知財部には弁理士が所属していました。従って、知財部内において法律関係のアドバイスを行う機会はかなり少なくなりました。とは言え、何故か時々あちこちに呼ばれたり知財部の上司、同僚から色々な法律的意見を求められることもありました。そのうち、年齢的なこともあり、弁理士であるとともにその職場において管理職としての業務を行うことが求められるようになりました。管理職としての業務は、法律(この場合は知的財産権法のみならず労働法についても)的な知識が必要である以上に、管理職としての知識が必要とされ、また、管理業務を遂行することが業務上求められました。従って、厳密には弁理士としての業務ではなく、弁理士でなくてもできる業務が主たるものになってきました。

このことは、どのような企業にとっても管理職として勤務するならば当然通るべき道です。こうなると、先程のネット記事の質問者にもあるように、自分の専門である産業財産権法に関する知識を活かした業務が主たるものではなくなる傾向になります。従って、弁理士登録をしている意味はどこにあるのだろうという疑問が生じてもおかしくありません。

自分も、同様の疑問にぶち当たった経験があります。自分の取った道は、弁理士としての専門である産業財産権法の知識と、管理職として当然求められる会社経営への貢献とを総合し、企業経営に資する知財とは何であるかを考えることと、経営層から求められる知財活動とは何であるかを考えることと、この両面、つまり知財と経営とを結ぶ矢印の両方について考えることでした。この思考の手始めとして、丁度始まった技術経営専門大学院への入学を決意し、実行しました。この行動が丁度10年前です。

上に書いた思考は最終的に何らかの結論を得るまでには到っていませんが、ここ数年の知財管理誌や日本知財学会での発表等を見るにつけ、私と同様の考えを持たれる方が随分増えたという印象を持っています。

管理職という業務は、当たり前のことですが弁理士以外の人間であっても十分に遂行することができます。従って、弁理士のレゾン・デートルである産業財産権法に関する知識を活かす、弁理士でなければできない業務では全くありません。厳しい言い方をすれば、弁理士資格を活かすための業務だけを遂行したいと思うならば、管理職になることはお勧めしません。しかしながら、管理職としての業務を遂行する中で、弁理士ならではの視点を持って、弁理士独自の管理職業務を遂行することは可能だと私は思っています。弁理士独自の管理職業務の具体例については、個々の企業毎に経営課題も異なりますからここでは述べませんが、一例として、職務発明制度の設計に主体的に関与することも、私は弁理士ならではの視点を活かすことの可能な管理職業務だと思っています。

弁理士資格は、そもそも特許庁等の公的機関に対して行う手続を業として行うための資格ですから、求められる知識は産業財産権法、特に公的機関に対する手続を円滑に行うための知識が中心となります。ですから、弁理士資格を企業において十分に活かすためには、各人がそれなりの工夫をしないといけないのだと思っています。逆に、各人が工夫をしない限り、その人が弁理士として企業知財部に属する意味を同僚なり上司から問われ続けることになるのだと思います。日本弁理士会も独自の委員会を立ち上げ、様々な方策を検討しているようですが、弁理士会の検討に加えて、企業知財部に属する個々の弁理士が自覚して行動する必要があるのではないかと思っています。

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知的財産/特許」カテゴリの記事

コメント

今日は。。
引用された記事は面白いですね。
確かに、企業の中で資格保有者の存在価値が問われているのでしょう。

実際問題として、知財活動を円滑に行うためには、特許法に準じた出願になっているか、
その後の手続きが特許法に準じているのか、その点は問題と成る所ですから
当然保障されるような業務を遂行できるように管理して行くことが必須であると思います。
そういう意味では、資格保有者の存在は価値があると思います。

ただ、知財活動で事業に貢献しようとすれば、知財活動が事業活動に沿った形になっているのかを管理していかないと、結果として、出願して、特許を取得しただけの業務をおこなった事になります。
そうなれば、知財組織の存在意義は無いに等しいといえるでしょう。

2番目の課題を実現できないようであれば、組織の中で、それなりのポジションにとどまるしか無いと思いまし、知財組織が強化・拡大することもないと思いまし、そのような企業が生き残るかどうかにも影響しそうですね。

実際に企業の中で資格保有者が増えていますが、事業貢献という意味で見たら、
不向きな人が結構います。専門職として生きていくしかないのかなと思っています。

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