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2014年3月

弁理士が依って立つべき立場(未完)

かなり大袈裟なタイトルで、本日のお話しもご批判が多々あろうかと思いますが…coldsweats01

職務発明制度改正については、特許庁内での調査研究委員会での検討が終了し、いよいよ産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会(長い名称ですねhappy01)での議論が始まるようです。で、この調査研究委員会の委員名簿が公表されているのですが、この委員の中に日本弁理士会を代表する先生は含まれていなかったようです。この事実について「何故?」とtwitterの私のTL上で仰っていた方をお見かけしたのですが、さて踏み込んで考えてみると、仮に日本弁理士会を代表される先生がこの調査研究委員会に参加された場合、日本弁理士会はどのようなスタンスで、そして誰の意見を集約、代理して発言することができるのかと考えてみると、なかなか難しい問題を孕んでいるように思います。

なお、今日の記事は職務発明制度についてのお話しでもなく、また、私は職務発明制度に関する法改正について、自分のスタンスを公表する予定もありません。というのも、10年ほど前の職務発明制度改正の際に私は前に所属していた企業で社内の担当をしていました。当然のように私は前にいた会社を代表して今さら何かを発言することはあり得ないのですが、可能性として、私の発言が、前にいた会社の見解を示しているかのような捉え方をされることもあるかと考え、そういった捉え方をされるのは私にとっても不本意ですし、前にいた会社にとっても不本意であろうと思います。ノーコメントでいることがいいという判断です。

弁理士は、個々の出願案件について、クライアントである会社なり個人の代理で各種手続を行います。従って、出願案件に関する各種手続については、弁理士は会社なり個人の意思を代理しています。一方、職務発明制度のような知的財産行政に関して、弁理士会として様々な意見を求められる(そして、様々な公的委員会に日本弁理士会から委員が派遣される)と思うのですが、それは、弁理士会はどのような知的財産行政を理想と考え、そして、それは弁理士「以外の」誰かの意見を代理して、あるいは集約して考えたものであるかと振り返ってみると、時々よくわからなくなることがあります。出願人の便宜を考慮してあるべき知的財産制度を提案することはできると思いますが、このような姿勢は、企業知的財産部門の集合体である日本知的財産協会、さらには経団連も同様に取ることができると思います。弁理士法改正であればそれは弁理士会の会員の意見を集約し、有るべき姿を提案すべきですし、それは十分日本弁理士会が行っていると思っています。では、例えば職務発明制度について、日本弁理士会はどのような立場で有るべき制度を提案すべきなのでしょうか。

ちなみに、日本弁理士会は、上に書いた研究会が報告書案をまとめようとするタイミングに、日本弁理士会名義で有るべき職務発明制度に関する提案書を公表しているはず(日本弁理士会のHPに公表されていたはずなのですが、今見ると何もありませんthink)ですので、日本弁理士会として何もしていないわけでもありませんし、私は、そういった姿勢なり行動を十分評価しています。

私が気にしているのは、提案書を作成するにしてもその評価軸はどこに設定すべきなのか、そして、その根拠は何であるかということです。この話は、職務発明制度に限らず、知的財産制度、法制全体にわたってのことです。

当然、日本弁理士会としては、各国における知的財産制度を俯瞰し、どのような知的財産制度であるべきかを高所対処からの見地に基づいて提案することは大事だと思いますし、これまでも様々な取り組みをしていることも承知しています。一方で、日本知的財産協会や経団連は企業の立場から有るべき論を展開します。日本弁理士会は弁理士の立場から有るべき論を展開するわけですが、ここでいう「弁理士の立場」と「企業の立場」との間にどのような差があるべきなのか、そして、その差は何に基づくべきかが自分の中で整理できていません。

例えば、職務発明制度において、弁理士は企業の知的財産部門の方々にお目に掛かる機会も多いですが、発明者の方々にお目に掛かる機会も多いですから、日本弁理士会は発明者の立場も考慮して様々な発言ができる、という考え方もあるでしょう。しかし、職務発明制度において、労働法のように発明者=労働者と企業=使用者とを対立構造で捉える必要があるのかどうか。一方で、仮に対立構造があったとするならば、企業の代理人である弁理士が発明者の立場に立って発言をするべきなのか。

評価軸なり考えの依って立つ場所をどう決めるかについて私の考えがまとまらない理由の一つとして、日本弁理士会の発言なり意見公表により説得力を持たせるための方策が自分自身でも今ひとつつかみ切れていないことにあります。特に、近年は産業財産権法に基づく出願件数が漸減していることもあり、例えば出願件数を増加させることで国内産業の発達に寄与すべきという論調は、ともすると出願件数増加=弁理士全体の報酬増加という我田引水的な発言であるとも捉えられかねないです。当然、出願件数増加が国内産業の発達に直接的に寄与するとも限りません(国内産業発達を実現するには他にも幾つかのファクターがあると思っています)から、我田引水であるとの指摘を間違いであると言葉を返すだけでは説得力に欠けると言われるかもしれません。

もう一つ、日本弁理士会の会務は最終的に会員に還元される(つまり個々の会員にとって利益をもたらす)内容であるべきという考え方を持っておられる先生がおられます。それは、会務活動は会員が支出する会費に基づいて行われている以上、個々の弁理士の利益につながらない会務活動の妥当性があるのか、という考え方に基づいておられるようです。このような先生方の主張にも傾聴すべきところはあります。ただ、こういった考え方も我田引水的であると考えられてしまう余地もあろうかと思います。弁理士先生方の中に様々な考え方があること自体は会内に多様性があることの証左ですので、歓迎すべきことだと思いますが、では振り返って、日本弁理士会がどのような意見を集約して発信すべきかという回答は混沌としてくるように感じます。

なかなか結論の出ない話題なので、本日は問題提起で終わってしまってすいませんが、この辺で失礼します。

アウトソーシングサービスとしての特許事務所

今日のお話は、「どうせ仕事が欲しいって話でしょ」とまとめられてしまいそうな話なのですがcoldsweats01…私の主旨としては、できるだけ客観的な判断になるように自分の考えをまとめただけです。当然、お仕事をいただけるならば喜んで、ですがhappy01

お題は、特許事務所の業務をアウトソーシングサービスとして考えてみたら、ってことです。

私が会社知財部門にいた頃から、企業内の様々な業務がアウトソーシングされるようになりました。システム部門はかなり早くから一部がアウトソーシングされていましたが、間接部門でも人事・労務関係、総務関係の業務の一部がアウトソーシングされるようになり、そのうち、知財部門の業務の一部もアウトソーシングされるようになりました。知財部門の業務の一部がアウトソーシングされたという話としては、これ(記事1)とこれ(記事2)が話題になったようです。記事1は、アウトソーシングというよりもオフショア開発に近い話で、要は業務内容の専門性というよりも、人件費の安さが決め手になったように思います。記事2は、見た目はオフショア開発に近いんですが、それよりも英語を使えて優秀な人材が豊富にあり、さらに人件費が比較的安い、ということで、これはアウトソーシングだな、と思います。

では、特許事務所の業務は外注業務なのか、アウトソーシングサービスなのか。世の中的には、外注業務は特定の業務を専門的にしかも安価に引き受けるものだという認識で、一方、アウトソーシングサービスは専門性を有する業者に対してノンコア業務を委託するものだという認識だと思っています。しかし、こう書いてみるとわかるように、外注業務とアウトソーシングサービスとの間の線引きはそんなに簡単ではないです。例えば、製品を作るときに部品の製造を外注しようと思った場合、その外注業者に対して専門性を要求するでしょうし、特に日本における部品業者や材料製造業者は専門性が非常に高いです。

特許事務所の業務も、当然のように専門性が高いわけですが、一方で、サービスの単価が安価である(だろう)ことも、企業が出願代理を依頼する理由になっているように思います。こう考えると、特許事務所の業務が外注業務なのか、アウトソーシングサービスなのかの線引きは簡単ではないように思います。

さて、こんな話を持ち出したのは、企業(知財部門)から見て特許事務所の業務はどの程度魅力的だと思われているのか、ここ数年疑問に思っているからです。その最大の理由は、ここ数年つとに自社出願の割合を増加させている企業(特に大企業)が目立つことにあります。

この辺りの事情を色々と考えていくと、なかなか支障のある話もあるのですが、興味深い事情があるように思えます。

一つは、上にさらっと書いてしまったのですが、特許事務所の業務におけるサービスの単価が安価である、という前提がどこまで妥当性のある話なのか、ということです。特許事務所は有り体に言えばサービス業ですから、サービス業における価格設定は製造業における価格設定とは微妙に違う事情を抱えていると思っています。つまり、製造業の場合、変動費たる製造原価がある程度定まり、また、設備投資という固定費があり、その上で人件費、間接費用が上乗せされた上で全体の原価が定まり、さぁ、これに利益をどれだけ乗せるかという考え方になりますが、特許事務所の場合、設備投資費用は家賃、事務機器の費用+光熱費であって、価格のかなりの部分が人件費になると思います(この辺の割合は事務所毎に随分違うはずです)。つまり、人件費をどのように設定するかで価格がかなり定まってしまうので、価格の弾力性がかなりあるということです。

一方、企業(知財部門)が特許事務所の専門性をどの程度認めていただいているか、という話もあります。大企業を中心に発明者教育がかなり行き届き、また、企業知財部門の担当者に対する教育も洗練され、結果として、特許事務所に業務依頼する際の提案書の質もかなり向上していると思います。従って、例えば明細書形式での提案書が完成していることを前提に、出願代理費用の低廉化を要求する企業がいてもおかしくありません。

また、購買部門では一般的なボリュームディスカウントという手法が特許事務所の業務に適用されることもあるでしょう。

さらに、企業全体でのコストカットを追求する中で、企業内部の人材の有効活用という観点から、技術者であった社員の専門性を活かすために、こういった社員に明細書を作成させることで出費を抑える方策をとられる企業もいるという話を聞いたことがあります。また、企業知財担当者自身のスキルが向上していますから、知財担当者が自社出願を担当することもあるでしょう。

こう考えると、特許事務所が出願代理を依頼されるためには、専門性を認めていただけるとともに、上に書いたような様々な事情を汲んだ上での価格競争力を持たないと、今後は難しいのではないか、という話になります。この辺りは、そのうち大規模特許事務所と中小規模特許事務所の比較についての記事を書く予定ですので、その時に、大規模vs.中小規模のPros/Consにからめてお話ししようと思っています。

では、話を戻して、アウトソーシングサービスとしての特許事務所の業務は、企業にとってメリットがかなり薄くなっているのか。この辺りになると我田引水と言われがちなのですが、私としては、現時点でも特許事務所への出願代理依頼にはそれなりのメリットがあると思っています。

まず、特許明細書を作成するためのスキルを育成するためのコストについて考えてみます。特許事務所において、一人前の明細書が書けるまでには数年単位の期間が必要であると言われています。明細書作成のスキルには、大きく分けて①発明把握能力、②文章作成能力があると思っています。そして、①にしても②にしても一朝一夕で養えるものではないと経験論的に思っています。しかも、これら①、②も、これで一人前かと思うとまだ先があるという、ある意味終わりのないゴールとも底なし沼とも言えます。特許事務所は、いわゆる未経験者を雇用すると、数年間の育成期間においてはなかなか売り上げが上がらず、経営的に負担がかかることがあります。しかも、困ったことに、特許明細書を作成するためのスキルはかなり属人的なところがあり、向き/不向きもあります。とは言え、特許事務所は、最終的なアウトプットが一定になるように様々な仕組みを作り、アウトプットである明細書や中間書類に対して品質的な保証をきちんとしています。従って、企業側から見れば、上に書いたコスト云々という話は全く考慮する必要なく、費用に見合ったアウトプットが期待できます。

一方、企業内において技術者なり知財担当者が明細書作成業務をした場合でも、育成コストがかかることになります。当然、上に書いたように、提案書の質が高ければハードルは低くなるでしょうし、伝統的に知財担当者が明細書作成業務をしている企業もあると聞きますので、全く無理な話でないことは確かです。加えて、知財担当者のスキルとして特許事務所が作成した明細書を評価するスキルが含まれますから、この明細書評価スキル向上のために明細書を作成する業務を行うメリットは確実にあります。従って、いわゆる自社出願にはそれなりの合理性とメリットがあると思いますが、一方で、全ての企業において自社出願が最適解であるとも思いません。

もう一つ、私としてはこちらの点が重要だと思うのですが、発明創出から出願までを一企業内で完結させた場合、発明把握や発明の豊富化(上位概念や下位概念への展開、変形例の追加など)の点で物足りなさを感じるのではないか、ということです。確かに、発明者と明細書作成者とを別人にすれば、複数人で発明を把握する作業が必ず入りますので、発明を多面的に把握することが可能であるでしょう。

しかし、この点は経験論になるのであまり説得力がないように思われるかもしれませんが、一企業内に所属する人間はえてして発想が似た方向を向くことがあり、多面的な把握をしたように思っても何かしらの不足点が後日発見されることがあります。発明なり明細書の善し悪しは競業他社が一番知っていると述べた人がいます。つまり、全くの他人による評価を経ることで権利活用に足る権利取得に近づけると思います。

特許事務所は競業他社ではないですが、客観性をある程度担保できる存在であると思います。私自身も、企業知財担当者であった頃、発明者からのヒアリングで発明を把握し、明細書作成のためにはこのような資料を準備し、このような内容の請求項を作成してもらおうと思って特許事務所との面談に臨んでも、特許事務所の担当弁理士の意見なり指摘で目から鱗が落ちた経験があります。つまりは自分が未熟であったということに尽きると思うのですが、とは言え、様々な立場の人間が関与することでより良い明細書作成作業ができるというのは私の経験上では確かなものです。

裏返すと、こういった提案を特許事務所ができてこそ、アウトソーシングサービスのメリットを企業にご提案できるということでもあるので、業界全体として研鑽に努める必要があるとも言えます。

当然、上に書いた議論は、特許事務所が提供するアウトソーシングサービスの質と価格との相対的関係にも依存しますし、企業知財部門において管理畑に所属した時間が長い私としては、自社出願を増やす企業の事情も十分理解できますので、一概に特許事務所の有利さを声高に主張するつもりもありません。とは言え、私自身は今特許事務所業界に所属していますので、特許事務所が提供するアウトソーシングサービスには企業側に明確なメリットがあると思い(固く信じ)、日々業務を進めています。

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